ドル円5月天井突破、6か月ぶりの112円台へ急伸(7/12)

10日夜の先行報道により111.35円まで上昇していたドル円は上げ渋り、11日午前の発動報道から110.76円まで急落した。

ドル円5月天井突破、6か月ぶりの112円台へ急伸(7/12)

【概況】

トランプ米政権は10日、中国から輸入する2000億ドル相当の製品に10%の関税を上乗せする追加制裁を正式に発表した。10日夜の先行報道により111.35円まで上昇していたドル円は上げ渋り、11日午前の発動報道から110.76円まで急落した。クロス円全般が急落反応となったが同時にドルストレートではドル高となっていた。NYダウ先物や日経平均が大幅下落し、さらに人民元安、上海株安と続いたが、ジワジワとドル全面高の威力が円高に勝り、深夜にかけての上昇で10日夜高値に迫った。さらに高値更新からは売り方の踏み上げ連鎖により急騰モードとなって112.17円まで大幅続伸した。
112円台は今年1月以来6か月ぶりの水準となる。

7月6日に340億ドル規模の対中国制裁関税発動が報じられた時は市場も想定内として反応は薄かった。しかし今回は矢継ぎ早に第二弾が発動宣言され、2000億ドル規模へと拡大したため、米中貿易戦争の全面化がより深刻さを増すと市場は受け止めたという事だろう。また米国はNATOに対して軍事費負担の増額を要請する等、貿易、外交的な圧力を高めているが、今後は中国の対抗、さらに米国側の制裁拡大へと貿易戦争の拡大、その世界的な波及についても懸念が深まったと思われる。
第一弾に対して中国側は同規模の関税を発動して対抗したが、今回の第二弾についてはまだ対抗策の詳細が見えていない。中国が強気の強硬策を採らないことは市場にとっては先行きの両国妥協の可能性を期待させるものだが、不安感は増している。

7月10日のNYダウは219.21ドル(0.9%)安で終了したが、気になるのはOPECの増産を不十分として上昇してきたNY原油も米中貿易戦争深刻化の影響を懸念して5%安と急落したことだ。大豆やトウモロコシも下落、ゴールドやシルバー、非鉄等も下げて国際商品は全面安の様相となってきている。ドル圏投資家にとっては先行投資の手控え、投資ポジションの手仕舞い等、ドル還流の動きとなりやすい。また国際商品も世界貿易の従来常識が崩れる懸念を抱えて在庫調整、仮需要による買いが手控えられるとドル高によるデフレ圧力とともに需給見通し悪化により下落感が強まりかねず、国際商品の下落がドルをまた押し上げる要因になってくる。

【6月高値突破=三角持合い上放れ】

5月21日高値で111.39円をつけた後は、5月29日安値、6月26日安値と底上げされてきたが高値更新には至らないで三角持合い型を形成していた。11日深夜の上昇で5月高値を突破したため日足チャートは三角持合い上放れとなった。また3月26日底からの上昇は二段上げへと発展した。仮に5月29日への下落幅の倍返しとすれば上値計算値は114.65円、一段目の上昇が6.75円幅であり、それと同レベルの上昇幅となる場合は114.86円が上値計算値となってくる。つまり、ドル全面高がリスク回避の円高に勝る状況が続けば今年1月8日高値113.38円、昨年12月高値113.74円、昨年11月6日天井114.72円等を目指してゆく可能性も出てきたと思われる。

また、2016年12月天井と2017年11月高値を結んだ抵抗線も11日夜の上昇で突破し始めている。長期的な抵抗線は一時的に突破しても再び割り込むようだとオーバーランしただけで終わるケースもあるが、5月高値を超えての一段高状態を維持する=111.38円以上を概ね維持する内は高値追及の可能性が継続すると考えるべきだろう。
3月26日安値と5月29日安値、6月26日安値はほぼ1直線であり、この支持線を割り込む急落発生の場合は弱気転換として円高が本格化する可能性がある点は押さえておきたい。またリスク回避行動においてドル高を円高が勝る力関係の再逆転が発生する場合も基調転換の可能性を考えるところになると思われる。

【60分足 一目均衡表、サイクル分析】

【60分足 一目均衡表、サイクル分析】

概ね3日から5日周期の高値・安値形成サイクルでは、7月4日午前安値から3日目となる7月9日午前安値でサイクルボトムをつけ、6日高値を上抜いたところから強気サイクルに入った。10日午前にいったん急落したために10日夜高値でサイクルトップをつけた可能性が高まったが、その後の切り返しにより高値を更新しているため、現状は9日午前安値をサイクルボトムとした強気サイクルでの上昇継続中と仮定する。今回の高値形成期は11日から13日にかけての間と考えられるので、既にサイクルトップをつけて反落入りとなっても不思議ない時間帯だが、12日夜から13日の日中にかけてはまだ高値を試す余地ありと思われる。乱高下状態でもあるので111.75円を上回る内は上昇余地ありとし、110.75円割れを弱気転換注意、111.50円割れからは弱気サイクル入りの可能性を考える。

60分足の一目均衡表では11日午前の急落では先行スパンからの転落を回避して反騰した。遅行スパンも好転しているため、遅行スパン好転中は高値試し優先とし、遅行スパン悪化からは弱気転換注意として安値試し優先へ切り替える。先行スパン転落から弱気転換として下落が加速しやすいとみる。

60分足の相対力指数は10日夜高値形成時と11日深夜の急騰時では指数のピークが切り下がっているため弱気逆行となる可能性があるが、まだ高値を試す最中のため、80ポイント台中後半へ上昇する可能性がある。ただし70ポイント割れからは弱気転換注意とする。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初の下値支持線を111.75円、上値抵抗線を112.25円と想定しておく。
(2)111.75円を上回る内は112.25円超えから112.50円超を目指す可能性ありとする。112.50円以上は反落警戒とするが、111.75円を上回る内は12日夜から13日の日中へ続伸する余地ありとみる。
(3)111.75円割れを弱気転換注意、111.50円割れからは弱気サイクル入りの可能性を優先して111円台序盤試しへの下落を想定する。111.50円以下での推移中は12日深夜、13日の日中へさらに下落する可能性ありとみる。

【当面の主な予定】

7/12(木)
15:00 (独) 6月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 0.1%、予想 0.1%)
18:00 (欧) 5月 鉱工業生産 前月比 (4月 -0.9%、予想 1.2%)
21:30 (米) カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁、講演
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.1万件、予想 22.6万件) 
21:30 (米) 6月 消費者物価指数 前月比 (5月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 6月 消費者物価指数 前年比 (5月 2.8%、予想 2.9%)
21:30 (米) 6月 消費者物価コア指数 前月比 (5月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 6月 消費者物価コア指数 前年比 (5月 2.2%、予想 2.3%)
25:15 (米) ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁、講演
27:00 (米) 6月 月次財政収支 (5月 -1468億ドル、予想 -800億ドル)

7/13(金)
未 定 (中) 6月 貿易収支(米ドル)(5月 249.2億ドル、予想 272.2億ドル)
未 定 (中) 6月 貿易収支(人民元) (5月 1565.1億元、予想 1825.0億元)
13:30 (日) 5月 鉱工業生産・確報 前月比 (速報 -0.2%
21:30 (米) 6月 輸入物価指数 前月比 (5月 0.6%、予想 0.1%)
20:00 (英) カンリフBOE副総裁、講演
23:00 (米) 7月 ミシガン大学消費者信頼感指数 速報 (6月 98.2、予想 98.0)

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