ドル円見通しリバウンド続くが110.50円に抵抗感(6/21)

米国が仕掛ける関税合戦、貿易戦争は主要ターゲットが中国であるが、EU、カナダ、メキシコ、日本等、世界に向かっている。

ドル円見通しリバウンド続くが110.50円に抵抗感(6/21)

【概況】

先週は6月14日未明のFOMCにおける今年2回目の利上げ決定と、メンバーの年間利上げ予想回数の中央値を従来の3回から4回へ引き上げたことから110.84円へ上昇、いったん材料消化で反落したがECB理事会での引き締め姿勢が鈍いとしてユーロ安ドル高となったことや、日銀の金融政策現状維持を背景に15日午後には110.90円まで再上昇、わずかに高値を更新した。しかし米欧日の金融政策発表が一巡したことで買い材料も出尽くし、19日早朝にはトランプ大統領が中国に対する大規模な追加関税導入方針を示したことでリスク回避の株安円高が発生、19日午後には109.55円まで下落で14日安値109.90円も割り込んだ。
20日は日経平均、上海株が下げ一服で戻したことでリスク回避感が後退、また新興国通貨に対するドル高感が強まったことでドル円も上昇、リバウンドの戻り高値を試す流れとなった。20日夜には110円を割り込む場面もあったが21日朝は110.50円手前まで戻している。

6月19日朝、トランプ米大統領が中国による知的財産権侵害への制裁として新たに2000億ドル相当の中国製品に対する10%の追加関税を検討すると表明、中国も同様の追加の対抗措置をとる姿勢を示したため、米中の貿易戦争が全面化する懸念が強まった。
20日にはEUが米国による鉄鋼とアルミニウムの輸入制限措置への報復として、総額28億ユーロ相当の米国産品に追加関税を課すと発表した。世界的な通商摩擦激化に対する懸念は継続的に強まっている。ただ、NYダウは20日も続落して7日連続の下落となる等、やや深刻な受け止め方をしているが、ハイテク中心のナスダックは逆に史上最高値を更新する等、貿易戦争全面化による株暴落不安という観点ではまだ悲観と楽観が入り混じっている状況のようだ。

【中国株安に注意、株安円高の同調発生への警戒】

米国が仕掛ける関税合戦、貿易戦争は主要ターゲットが中国であるが、EU、カナダ、メキシコ、日本等、世界に向かっている。特に中国に対する強硬姿勢が強まっているため、中国市場では上海総合株価指数が急落、人民元が下落している。また新興国通貨、資源通貨の下落とドル高も目立っている。
メジャー通貨のユーロ、ポンドは金融引き締め姿勢の鈍化、EU離脱問題を背景に下落しており、ドル指数は19日、20日と高値を更新して昨年10月高値を突破、昨年7月以来11カ月ぶり高値に到達している。5月29日から6月14日までいったん下げてからの切り返しで一段高しているため、ドル高基調がさらに継続しやすい状況に入っている。このドル高基調はドル円にとっては下支え、押し上げ要因にはなるのだが、それ以上に警戒すべきが中国株の下落動向だと思われる。

上海株指数は2015年6月に天井をつけて暴落したが、その時にはNYダウも大幅下落、日経平均も同年6月に天井をつけて暴落して世界連鎖株安を発生させた。さらに2016年1月にも二段目の上海株暴落があり、米連銀は世界連鎖株安を警戒して年3回の利上げ予定を同年末の1回目まで先送りさせた。この間、日経平均は15年12月の戻り天井から暴落している。
上海株はその後ジリ高基調で推移してきたが、今年1月29日に戻り天井をつけ、米中貿易戦争リスク拡大を背景に下落に転じたが、今週の続落で年初来安値、さらに昨年5月安値も割り込んでおり、下落の深刻さが警戒レベルに入ってきている。人民元安も併発しているが、人民元安による通貨インフレ効果による名目株価上昇圧力を超える下げが発生している状況だ。

日経平均は今年1月23日に天井をつけて3月26日へ急落、その後は5月21日までドル円とともに戻してきたがここにきて失速し始めている。2015年の暴落時と類似した展開に入っているため、上海株がさらに下げるようだと日経平均も崩れ、株安リスクが円高のきっかけとなりやすくなる。ドル円にとっては、2017年4月17日底、9月8日底、今年3月26日底へ至る下落仮定で日経平均の下落と同調している。目先は戻り高値を試しているドル円だが、株がさらに崩れる場合は大きな圧力がかかると警戒しておくべきところだろう。

【60分足 一目均衡表、サイクル分析】

【60分足 一目均衡表、サイクル分析】

60分足の一目均衡表では20日夜の上昇で遅行スパンが好転、21日早朝への続伸で先行スパンを上抜いてきている。このため遅行スパン好転中は高値試し優先と思われるが、19日午後安値からの戻りも2日目、15日高値から4日目に入るため、遅行スパン悪化からは下げ再開注意として安値試し優先とし、先行スパンから転落なら新たな下落期入りと考える。

60分足の相対力指数は21日早朝への上昇で60ポイント台へ戻している。50ポイント以上を維持する内は上昇継続余地ありとするが、50ポイント割れから続落し始める場合は下げ再開を疑う。

概ね3日から5日周期の高値・安値形成サイクルでは、6月14日未明高値と15日午後高値をダブルトップとして下落したが、14日安値から5日目となる19日午後安値で直近のサイクルボトムをつけて上昇期に入った。今回の高値形成期は15日高値を基準として21日の日中から22日の日中にかけての間と想定されるが、既に前回サイクルトップから4日目に入っているので戻り一巡からの下げ再開に注意すべき時間帯と思われる。110円台を維持する内は上昇余地ありとするが、110円割れからは弱気サイクル入りとして次の安値形成期となる22日午後から26日にかけての間への下落入りを想定する。

6月19日の下落で6月14日安値を割り込んだため、安値が切り下がりとなった。今回の上昇で15日高値を上抜けずに失速する場合、19日安値割れ回避で次の上昇へ進めば19日安値を中心とした60分足レベルの逆三尊ないしはダブル底形成による上昇入りというイメージを持てるが、19日安値を割り込む場合は二度目の安値切り下がりであり、「戻り高値を切り下げて一段安する弱気パターン」に入って下降トレンドを形成し始めることとなる点に注意する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、支持線を110.25円、次いで110.00円、上値抵抗線を110.50円、次いで6月15日高値110.90円とみておく。
(2)110.25円を上回る内は110.50円超えから110.75円前後への上昇を想定するが、110.50円以上を維持できずに失速するところからは下げ再開注意とみる。110.75円超えの場合は15日高値とのダブルトップ形成からの反落警戒とする。
(3)110.25円割れを弱気転換注意とし、110.00円割れから続落し始める場合は弱気サイクル入りとして19日安値109.55円試しへ向かうとみる。また110円以下での推移が続く場合は22日にかけて19日安値割れへ向かう可能性があると考える。(了)<9:40執筆>

【当面の主な予定】

6/21(木)
16:30 (ス) スイス国立銀行 3カ月物銀行間取引金利誘導目標中心値 (現行 -0.75%、予想 据え置き)
20:00 (英) イングランド銀行(BOE)金利発表 (現行 0.50%、予想 据え置き)
20:00 (英) 英中銀資産買取規模 (現行 4350億ポンド、予想 据え置き)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.8万件、予想 22.0万件)
21:30 (米) 6月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (5月 34.4、予想 28.2)
22:00 (米) 4月 住宅価格指数 前月比  (3月 0.1%)
23:00 (米) 5月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (4月 0.4%、予想 0.4%)
23:00 (欧) 6月 消費者信頼感 速報 (5月 0.2、予想 0.0)
27:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 7.50% )
29:15 (英) カーニーBOE総裁、発言

6/22(金)
05:15 (英) カーニーBOE総裁、講演
08:30 (日) 5月 全国消費者物価指数 前年比 (4月 0.6%、予想 0.6%)
08:30 (日) 5月 全国消費者物価コア指数 前年比 (4月 0.7%、予想 0.7%)
16:30 (独) 6月 製造業PMI、速報 (5月 56.9、予想 56.2)
16:30 (独) 6月 サービス業PMI、速報 (5月 52.1、予想 52.3)
17:00 (欧) 6月 製造業PMI、速報 (5月 55.5、予想 55.0)
17:00 (欧) 6月 サービス業PMI、速報 (5月 53.8、53.7)

6/24(日)
トルコ大統領選挙、総選挙

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