ドル円 貿易戦争全面化懸念でリスク回避の動き(6/19)

6月19日早朝、米ホワイトハウスは「トランプ大統領が2千億ドル(約22兆円)相当分の中国製品に10%の追加関税を課すよう米通商代表部(USTR)に指示した」と発表した。

ドル円 貿易戦争全面化懸念でリスク回避の動き(6/19)

【概況 トランプ発言報道で早朝急落】

6月19日早朝、米ホワイトハウスは「トランプ大統領が2千億ドル(約22兆円)相当分の中国製品に10%の追加関税を課すよう米通商代表部(USTR)に指示した」と発表した。またトランプ大統領が「中国側に不公正な貿易政策を変更する意図がない」「中国の(対抗的な)関税引き上げは受け入れられない」と発言していることも報じられた。
この報道をきっかけに110.50円前後にあったドル円は110.00円すれすれまで下落している。小1時間で0.50円幅となる下落はかなりインパクトがある。
トランプ政権は先週15日朝、中国の知的財産権侵害への制裁として総額500億ドルの中国製品に対して25%の追加関税を課すと発表した。第一弾の818品目については7月6日から発動し、残りの284品目に対しても意見聴取を踏まえて発動時期を判断するとしている。これに対して中国も同規模の関税で報復すると表明し、各国が協調して米国に対抗するように呼び掛けて米中貿易戦争が全面化する可能性が高まった。

ドル円は6月14日未明の米連銀FOMCが今年2度目の利上げを決定し、年間利上げ回数のメンバー予想中央値を従来の3回から4回へと上方修正したために110.84円まで上昇したが、目先の材料出尽くしとしてその後はいったん反落して14日夕刻には109.91円まで下げた。その後は14日夜のECB理事会・ドラギ総裁会見後にユーロが急落したことでのドル高感から戻し、15日午後には110.90円をつけて14日未明高値をわずかに上回った。しかし、米中貿易戦争問題等を警戒してその後は伸び悩み、18日夜も特に主要指標の発表等の手掛かりがなかったために110.50円を挟んだ揉み合いとなっていた。

【米中貿易問題、さらに対日圧力への警戒感】

先週は米朝首脳会談、米連銀FOMC、ECB理事会、週末の日銀金融政策決定会合と重要イベントを一通り通過してドル円は上昇基調を継続してきたのだが、この流れが行き詰まった印象だ。通貨当局の重要イベント終了により、市場の関心は米中貿易戦争問題へと切り替わってきている。また米中問題と並行して米国による対日赤字解消問題での圧力強化も懸念される状況にはいってきた。
トランプ大統領による外交交渉は強硬姿勢のエスカレート、それが行き着いたところでの対話、解決による成果の強調というプロセスであり、米中貿易戦争問題も電撃的な米中首脳会談等で一挙に妥協的決着が図られる可能性もあるかもしれないが、3月にこの問題が発生して以降、中国側は受けて立つと言いつつも米国産品の大量購入姿勢を示す等、妥協的な対応をとってきた。しかしここにきてのトランプ大統領の強硬姿勢により、中国側もいったんは対抗措置に踏み込んで米国側へ打撃を与えることが駆け引き上も必要になってきたのではないかと思われる。

NYダウが5日続落し、日経平均も6月12日への上昇では5月21日の戻り高値を上抜けずに失速気味であり、日米株安による円高再燃という可能性も警戒されるところだ。

6月19日朝の安値ではまだ110円を割り込んでいないため、5月30日安値と6月8日安値を結んだ上昇トレンドの支持線はギリギリのところで維持しているが、6月8日安値と6月14日安値を結んだより短期の支持線は割り込んでいる。このため6月14日未明高値と6月15日午後高値によるダブル天井形成と、下落再開への可能性が懸念される状況に入ってきているのではないか。

【60分足 一目均衡表、サイクル分析】

【60分足 一目均衡表、サイクル分析】

60分足の一目均衡表では19日午前の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからの転落状況となっている。先行スパンは110.50円前後で横ばいだが、6月14日安値109.90円を割り込まずに先行スパンを上抜き返せば上昇再開から一段高へ進む可能性が残るが、先行スパンから転落中は14日安値試しとし、さらに底割れの場合は5月30日以降の上昇トレンドからも転落となるため下落再開と仮定して遅行スパン悪化中の安値試し優先と考える。

60分足の相対力指数は6月12日高値から14日未明の高値形成時と、15日午後の高値形成時では指数のピークが切り下がる弱気逆行となり、19日朝の下落で30ポイントまで下落している。50ポイント台回復、維持へと戻せない内は一段安警戒とし、指数が強気逆行を見せない内は安値試しが続きやすいと注意する。

概ね3日から5日周期の高値・安値形成サイクルでは、6月14日夕安値を直近のサイクルボトムとして上昇したため、14日夕安値割れ回避の内は次の高値形成期となる18日から21日未明にかけての間への上昇余地ありとした。また14日未明高値と15日午後高値によるダブルトップ形成から弱気転換する可能性があるとし、15日午後高値をさらに更新しない内は弱気サイクル入りとなる可能性ありとした。19日朝の下落で14日夕安値へ迫っているため、ダブルトップ形成からの弱気サイクル入りと仮定し、110.50円超えから続伸へと進めない内は次の安値形成期となる19日午後から21日夕刻にかけての間への下落を想定する。ただし110.50円超えから強気転換注意として15日午後高値試しとし、高値更新からは新たな強気サイクル入りにより20日から22日にかけての間への上昇を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6月14日安値109.91円を支持線、110.50円を抵抗線とみておく。
(2)110.50円超えへ進めない内は14日安値試しとし、底割れの場合は109.50円試し、さらに6月8日安値109.19円試しへ向かう可能性ありとする。109.50円前後では買いも入りやすいとみるが、110円以下での推移中は20日も安値を試しやすいとみる。
(3)110.50円超えへ反騰の場合は強気転換注意として15日高値試しとし、高値更新の場合は111円台序盤試しへ向かうとみるが、そのためには株高再開、米中問題でのリスク回避感後退等の材料的な裏付けが必要と思われる。(了)<9:45執筆>

【当面の主な予定】

6/19(火)
10:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)金融政策会合議事要旨公表
17:00 (欧) ドラギECB総裁、講演
20:00 (米) ブラード米セントルイス連銀総裁、講演
21:30 (米) 5月 住宅着工件数 年率換算件数 (4月 128.7万件、予想 131.4万件)
21:30 (米) 5月 建設許可件数 年率換算件数 (4月 135.2万件、予想 135.0万件)

6/20(水)
未 定 (英) 英中銀金融政策委員会(MPC)1日目08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨
15:00 (独) 5月 生産者物価指数 前年比 (4月 2.0%、予想 2.5%)
15:30 (日) 黒田日銀総裁、講演
21:30 (米) 1-3月期 四半期経常収支 (前期 -1282億ドル、予想 -1290憶ドル)
22:30 (欧) ドラギECB総裁、講演
22:30 (米) パウエル米FRB議長、講演
23:00 (米) 5月 中古住宅販売件数 年率換算件数 (4月 546万件、予想 555万件)

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