ドル円 上昇基調続くが貿易戦争拡大懸念(6月第3週))

6月14日未明高値110.84円を15日夜高値110.90円で上抜いた。

ドル円 上昇基調続くが貿易戦争拡大懸念(6月第3週))

ドル円 上昇基調続くが貿易戦争拡大懸念

6月8日のG7、6月12日の米朝首脳会談、14日未明のFOMC、14日夜のECB理事会、15日の日銀金融政策決定会合と重要イベントが続いたが、ドル円は15日午後高値110.90円まで上昇基調を継続、その後はやや下げたが、110円台後半を維持して週を終えた。
G7首脳会談では米国の保護主義と他国との対立が表面化、トランプ大統領がG7共同宣言を承認しないとしたが、市場は想定内としてドル高基調を維持した。
6月12日の米朝首脳会談は包括的な朝鮮半島非核化への合意文書が署名された。具体的な工程表や監視体制等を含めた不可逆的な非核化プロセスまでは示されなかったが、金委員長の訪米、トランプ大統領の訪朝の可能性等、会談継続姿勢が示されたため、朝鮮半島有事リスクについては当面は市場テーマとしては棚上げとなった。

6月14日未明、米連銀FOMCでは市場予想通りに今年2度目の利上げを決定した。またFOMCメンバーによる年間利上げ回数予想の中央値を3月会合時点の3回から4回へと引き上げた。これはドル高要因だったが市場は発表当初にドル高反応した後は目先の材料消化として反落、ドル円は14日未明に110.84円をつけてから14日夕刻に109.91円まで下落した。
6月14日夜、ECB理事会は政策金利を現状維持としたが、量的金融緩和策の債券購入プログラムについて現行の月300億ユーロの資産購入を10月からは150億ユーロに半減させること、新規の買い入れを12月末で停止するとした。しかし一方ではマイナス金利状態にある現在の政策金利を少なくとも2019年夏までは据え置く見通しをドラギ総裁が会見で示した。発表当初はユーロ高ドル安反応だったが、ドラギ総裁会見からユーロは急落に転じた。ただ、ユーロ円での円高とユーロドルのドル高が交錯しつつドル円は14日夜を上昇で通過した。

6月15日昼、日銀は金融政策決定会合で政策金利等を現状維持とした。市場予想通りではあったが、米連銀の利上げ、ECBの量的緩和縮小等と対比すると無策で緩和状態を継続せざるを得ない円の弱さが意識されてドル円は14日未明高値を超える上昇へと進み、15日夜には110.90円までわずかに高値を切り上げた。

【米中貿易戦争問題、再燃】

6月14日未明高値110.84円を15日夜高値110.90円で上抜いた。5月30日以降は5月31日、6月8日、6月14日と安値を切り上げてはその後の高値を切り上げてきた。この高値切り上げパターンは継続しているので、さらに15日午後高値越えから上昇基調を強めてゆく可能性があるのだが、14日未明高値と15日午後高値との差はわずかであり、若干高値を更新しただけで毛抜き型のダブル天井で終わる可能性も残っている。

そこで気になる問題が米中貿易戦争問題、さらに日米問題への波及ということになってくる。トランプ政権は15日朝、中国の知的財産権侵害への制裁として総額500億ドルの中国製品に対して25%の追加関税を課すと発表した。第一弾の818品目については7月6日から発動し、残りの284品目に対しても意見聴取を踏まえて発動時期を判断するとしている。これに対して中国も同規模の関税で報復すると表明し、各国が協調して米国に対抗するように呼び掛けており、米中貿易戦争が全面化する可能性が高まった。この動きを懸念してNYダウは4日続落となっている。

米中貿易摩擦問題は今年3月のトランプ大統領による高額関税適用宣言から始まっており、当初はリスク回避感から円高ドル安材料となったが、その後は米中の協議による妥協期待もあって市場テーマとしては様子見となってきた。しかし米朝首脳会談が実現し、中国が北朝鮮の後ろ盾としての存在感を増すとしても、米国が主導的に米朝関係改善への段取りを進めゆく自信を深めているとすれば、ひとまず後退していた米中貿易不均衡問題をトランプ政策の主軸として打ち出してくる可能性があり、4月、5月時点の曖昧な状況が継続できなくなると思われる。トランプ大統領も秋の中間選挙へ向けての政治アピールとして、米朝関係改善の進展とともに米国第一主義の保護貿易政策を強硬に進めてくる可能性がある。また、米中問題が焦点化すれば自ずと日米貿易不均衡是正への圧力が増すことが予想される。
米FOMC、ECB理事会、日銀金融政策決定会合と金融政策問題はひとまず通過した。今後は貿易戦争問題が主要テーマとなってくるのではないかと身構えておく必要がありそうだ。

【中勢見通しの判断目安】

【中勢見通しの判断目安】

3月26日からの上昇については、概ね5か月から6か月周期のサイクルによる上昇とし、同じサイクルによる上昇期であった昨年9月8日から11月6日への上昇時と類似した展開を想定してきた。5月21日高値でこのサイクルの上昇を一巡させて下落に転じた可能性が高いと思われるので、5月30日安値からの反発では新たな高値更新には至らないのではないかと考えるが、111円に迫ってきているために6月18日以降の展開次第では高値更新の可能性も検討しておく必要がある。

(1)111円台乗せ、維持へと進む場合は5月21日高値試しを想定する。高値更新の場合は111.30円台から111.50円前後への上昇を想定する。2016年12月天井と2017年11月の戻り天井を結ぶ長期の下降トレンド抵抗線は現在112円あたりに来ているので、瞬間的には112円に迫る可能性もあると思われるが、111.30円以上は反落警戒圏とみる。
(2)5月30日未明安値、31日深夜安値、6月8日安値、6月14日安値はほぼ1直線であり、6月14日安値割れからはこの支持線から転落となる。このため5月21日高値を上抜けないか、わずかに上抜いても6月14日安値109.91円を割り込む場合は戻り一巡による下落再開と仮定する。その場合の下値目途は当初、6月8日安値109.19円前後、さらに5月29日安値108.11円前後試しへと段階的に切り下がって行くと考える。さらに先行きは1月から3月への下落時並の円高として3月底試しへ向かうと考える。(了)<17日21:50執筆>

【当面の主な予定】

6/18(月)
香港、上海休場(端午節)
08:50 (日) 5月 貿易統計 通関ベース (4月 6260億円、予想 -2052憶円)
21:45 (米) ダドリー前米NY連銀総裁、講演
23:00 (米) 6月 NAHB住宅市場指数 (5月 70、予想 70)
26:00 (米) ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演
26:30 (欧) ドラギECB総裁、講演(ECBフォーラム)

6/19(火)
04:45 (米) ウィリアムズ米NY連銀総裁、講演
10:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)金融政策会合議事要旨公表
17:00 (欧) ドラギECB総裁、講演
20:00 (米) ブラード米セントルイス連銀総裁、講演
21:30 (米) 5月 住宅着工件数 年率換算件数 (4月 128.7万件、予想 131.4万件)
21:30 (米) 5月 建設許可件数 年率換算件数 (4月 135.2万件、予想 135.0万件)

6/20(水)
未 定 (英) 英中銀金融政策委員会(MPC)1日目08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨
15:00 (独) 5月 生産者物価指数 前年比 (4月 2.0%、予想 2.5%)
15:30 (日) 黒田日銀総裁、講演
21:30 (米) 1-3月期 四半期経常収支 (前期 -1282億ドル、予想 -1290憶ドル)
22:30 (欧) ドラギECB総裁、講演
22:30 (米) パウエル米FRB議長、講演
23:00 (米) 5月 中古住宅販売件数 年率換算件数 (4月 546万件、予想 555万件)

6/21(木)
07:45 (NZ) 1-3月期 四半期GDP 前期比 (前期 0.6%、予想 0.5%)
07:45 (NZ) 1-3月期 四半期GDP 前年比 (前期 2.9%、予想 2.7%)
16:30 (ス) スイス国立銀行 3カ月物銀行間取引金利誘導目標中心値 (現行 -0.75%、予想 据え置き)
20:00 (英) イングランド銀行(BOE)金利発表 (現行 0.50%、予想 据え置き)
20:00 (英) 英中銀資産買取規模 (現行 4350億ポンド、予想 据え置き)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.8万件、予想 22.0万件)
21:30 (米) 6月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (5月 34.4、予想 28.2)
22:00 (米) 4月 住宅価格指数 前月比  (3月 0.1%)
23:00 (米) 5月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (4月 0.4%、予想 0.4%)
23:00 (欧) 6月 消費者信頼感 速報 (5月 0.2、予想 0.0)
27:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 7.50% )
29:15 (英) カーニーBOE総裁、発言

6/22(金)
05:15 (英) カーニーBOE総裁、講演
08:30 (日) 5月 全国消費者物価指数 前年比 (4月 0.6%、予想 0.6%)
08:30 (日) 5月 全国消費者物価コア指数 前年比 (4月 0.7%、予想 0.7%)
16:30 (独) 6月 製造業PMI、速報 (5月 56.9、予想 56.2)
16:30 (独) 6月 サービス業PMI、速報 (5月 52.1、予想 52.3)
17:00 (欧) 6月 製造業PMI、速報 (5月 55.5、予想 55.0)
17:00 (欧) 6月 サービス業PMI、速報 (5月 53.8、53.7)


トルコ大統領選挙、総選挙

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る