【概況】
6月14日未明の米連銀FOMCにおいて今年二回目の利上げが決定され、メンバーによる年間の利上げ予想回数の中央値が3月会合時点の三回から四回へ引き上げられた。発表当初はドル高反応となりドル円は110.84円の高値をつけたが、これでFOMC関連でのドル高材料は一巡として、買い一巡後には急落に転じた。14日夜にはECB理事会があり、そこで金融政策引き締め姿勢が示される可能性が期待されてユーロが上昇、ドル安が継続してドル円は109.91円まで下げた。
110円割れに対する突っ込み警戒感で夕刻からは戻しに入っていたが、ECB金融政策発表直後のユーロ急落とドル反騰によりドル円は110.69円まで戻した。14日未明高値には届いていないため、現状でダブルトップ型を形成して下落に転じる可能性もあるが、14日未明高値更新ならダブルトップ破りによる一段高入りとなり、111円を目指す可能性も出てきた。
【ユーロ急落、ECBはマイナス金利を来年夏まで継続】
ECB理事会では量的金融緩和策の債券購入プログラムについて、現行の月300億ユーロの資産購入を10月からは150億ユーロに半減させること、また新規の買い入れは12月末で停止するとした。しかし一方ではマイナス金利状態にある現在の政策金利を少なくとも2019年夏までは据え置く見通しを示した。量的緩和は年末まで規模縮小ながら続き、年明けからは満期償還分の再購入はしないことでバランスシートの縮小が始まる。これは米連銀も採ってきた段階的な引き締め策だが米連銀は利上げをしながら再投資を止める方式だったのに対してECBはマイナス金利状態を来年夏まで継続すると宣言してしまった。現在のECB政策金利は主要政策金利が0%、下限の中銀預入金利はマイナス0.40%である。
ECB政策発表前に期待と予想でユーロは買われたが、発表を見て「知ったら終い」、マイナス金利長期化を逆に嫌気することとなり、上昇一巡後には急落へと転じた。ユーロドルは発表直後の高値1.1850ドルから15日朝時点安値1.1559ドルまで凡そ2.5%の暴落であり、5月30日からの上昇分をほぼ解消した。
14日夜、ドル円は上昇したが、一方ではユーロ円でユーロ安円高となり、ユーロ円は6月8日安値を割り込む下落となってきているため、ユーロ安ドル高によるドル円上昇圧力があるものの、ユーロ安円高による円高圧力もあり、今のところはドル高円安に落ち着いているという状況だ。
【米中貿易問題】
米朝首脳会談は紆余曲折ありながらもひとまず実現した。内容については批判も多々あるところだが二度目、三度目の首脳会談も想定されているため、秋の米中間選挙へ向けて非核化協議の進展によりトランプ大統領の勢力基盤拡大へ貢献する動きが継続すると思われるため、この問題によるリスク回避感が高まることも考え難い。米連銀のFOMC、ECB理事会により、当面の米欧金融政策ははっきりしてきたので、この問題もひとまず主要テーマとしては材料消化、通過扱いとなってゆくと思われる。
そうなると、6月13日に米紙が報じた米中貿易摩擦問題の交渉における対中強硬姿勢と中国側からの反発への懸念が今後の主要テーマとなってくるのではないか。
トランプ大統領による外交交渉は、強硬姿勢のエスカレート、それが行き着いたところでの対話、解決による成果の強調というプロセスが取られてきた。米中協議も再び強硬姿勢の応酬が活発化する可能性がある。また貿易問題での対日圧力も増すと思われる。これら米国保護主義による貿易戦争問題がドル円にとっては先行きの大きなリスク回避要因であり、また対米黒字拡大要因となりかねない円安加速へのブレーキとなってゆくと思われる。
【60分足 一目均衡表、サイクル分析】
60分足の一目均衡表では14日未明高値からの反落で遅行スパンが悪化し、先行スパンへ潜り込んだ。さらに14日夕刻には先行スパンからも転落したが、夜間のV字反発により遅行スパンは再び好転、先行スパンも上抜き返してきた。このため、先行スパンを上回る内は高値試し優先とし、先行スパンから転落するところからは遅行スパン悪化も伴うために弱気転換と仮定し、安値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は6月12日高値から13日高値、さらに14日未明の高値更新にかけて指数のピークが切り下がる弱気逆行を見せて急落した。しかし14日夕刻に売られ過ぎゾーンの30ポイント割れに到達してから反騰している。70ポイントには到達していないが30ポイント割れからのV字反転のため、50ポイントを上回る内は上昇継続性ありとし、50ポイント割れから下げ再開注意とする。
概ね3日から5日周期の高値・安値形成サイクルでは、6月8日安値を前回のサイクルボトム、14日未明高値を同サイクルトップとして弱気サイクル入りした。このボトム形成期は13日夜から15日夜にかけての間と想定されたが、14日夕安値からのV字反発により、14日夕安値でサイクルボトムをつけて新たな強気サイクルに入ったと思われる。次の高値形成期は18日から21日未明にかけての間と想定されるが、ダブルトップ形成により短縮される可能性もある。14日未明高値超えの場合は15日夜、週明けへの続伸を想定するが、高値更新できない内はダブルトップ形成に注意し、110.25円割れを弱気転換注意として14日夕安値試しとし、底割れからは新たな弱気サイクル入りとして19日から21日にかけての間への下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、110.25円を支持線、14日未明高値110.84円を抵抗線とみておく。
(2)14日未明高値を上抜けない内はダブルトップ形成の可能性に注意とし、110.25円割れからは下げ再開の可能性を優先して14日夕安値109.91円試しとする。110円割れではいったん買い戻しも入るとみるが、14日夕安値割れの場合はその後の下落でさらに109.50円前後試しへ向かうとみる。110円割れの状況が続く場合は5月30日安値と6月8日安値を結ぶ上昇トレンドの支持線割れとなるので下落再開感が強まると考える。
(3)14日未明高値を上抜き、その後も110.50円以上を維持するかさらに高値を更新する場合はダブルトップ破りによる一段高入りと仮定して111円台前半試しを想定する。5月30日安値から6月7日高値への上昇幅並とすればN波=111.33円、8日への下げ幅の倍返しならV波=111.34円が上値計算値となるが、さらにそれらを超えてくる場合は6月8日から14日未明への上昇幅1.66円を1日夕安値へ加算した111.56円前後まで上値目処が切り上がる可能性も考えられる。(了)<9:35執筆>
【当面の主な予定】
6/15(金)
シンガポール休場(ハリ・ラヤ・プアサ ラマダン終了日)
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合、政策金利発表 (現行 -0.10%、予想 据え置き)
15:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、定例記者会見
18:00 (欧) 4月 貿易収支 (3月 269億ユーロ )
18:00 (欧) 5月 消費者物価指数 HICP、改定値 前年比 (速報 1.9%、予想 1.9%)
21:30 (米) 6月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (5月 20.1、予想 18.5)
22:15 (米) 5月 鉱工業生産 前月比 (4月 0.7%、予想 0.2%)
22:15 (米) 5月 設備稼働率 (4月 78.0%、予想 78.1%)
23:00 (米) 6月 ミシガン大学消費者信頼感指数 速報 (5月 98.0、予想 98.5)
29:00 (米) 4月 対米証券投資
オーダー/ポジション状況
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