ドル円戻り一巡下げ再開か?イベント続く(6月第2週)

まず、すでに終了したG7でのトランプ大統領による共同宣言承認拒否。

ドル円戻り一巡下げ再開か?イベント続く(6月第2週)

【概況・ポイント】

5月21日高値111.39円から5月29日安値108.11円まではリスク回避感を背景として7日間で3.27円幅の下落だったが、その後はリスク回避感が緩んでリバウンドに入り、6月6日高値110.26円まで6日間で2.15円幅の上昇だった。直前の下落に対する3分の2戻しが110.29円であり、その手前まで戻したことになる。
6月7日からはリバウンドの一巡感、6月8日からのG7や第2週の重要イベントを控えた状況で戻り売り優先となって下落、8日夜には109.19円まで下げたが、これはこの間のリバウンドに対する半値押しと一致している。
まだ5月30日安値を割り込んだわけではないので、5月30日安値を新たな起点とした上昇期にあるならば、現状ないしは5月30日安値割れに至らない程度で調整安のボトムを付けて6月7日高値を超えて二段目の上昇へ向かう可能性も残している。しかし概ね5か月から6か月周期のサイクルによる戻り天井を5月21日高値でつけているとすれば、6月7日への反発はあくまでも中勢の下げ相場の範囲内でのリバウンドに過ぎず、すでに半値押しまで下げたことにより二段目の下落に入っている可能性も考えられる。

いずれへ進むのかは6月第2週の重要イベントを通過しながら市場が決めてゆくことになるが、まずは6月8日、9日に行われたG7において、トランプ大統領が米朝首脳会談への出発を理由に途中退場し、G7合意を承認しないこと、自動車輸入関税を強化する可能性があることをツイートしたことに対する市場反応がどうなるのかを見定める必要があるだろう。

【重要イベント続く】

まず、すでに終了したG7でのトランプ大統領による共同宣言承認拒否。6月1日から米国は鉄鋼・アルミの輸入関税等につき猶予対象としていたEUやカナダ等への適用を開始した。EU等も対抗措置をとるとしているが、その関税戦争化を回避するきっかけにカナダでのG7サミットは役に立たなかった。加えて自動車輸入関税強化も打ち出されているが、鉄鋼・アルミの関税適用の除外対象でなかった日本への影響もかなり出てくる可能性がある。安倍首相が防衛関連での米国からの大規模輸入を拡大してもこの問題には効果が見られない。
米国保護主義の拡大、貿易戦争問題は、メインテーマが米中問題ともされているが、米中は協議を重ねつつまだ全面対決には至っていないが、先の読み切れない状況にある。それ以外でのNAFTA、対EU、対日問題はこれから混迷度合いを深める可能性が今回のG7により高まったのではないかと思われる。保護主義拡大は全般的な金融市場リスクであるとともに、特に日本経済への影響懸念から円高へ反応しやすくなるのではないかと思われる。

6月12日の米朝首脳会談は、実際に始まって見ないと何とも言えないが、決裂の可能性が高いのであればシンガポール入りはしないだろう。それなりの成果を強調できる事前合意はできているのではないかと思われるので、有事リスク再燃という結末は考え難いので、市場も想定内で進展なら多少の楽観的なムードを醸し出す程度ではないかと思う。

6月12−13日(14日未明に政策発表、議長会見)の米FOMCでは今年2回目の利上げが確実視されているが、市場は12月に今年4度目の利上げがあるかどうかについての確率をまだ5割以下とみている。トランプ大統領の仕掛ける保護主義による世界経済への影響度合いを米連銀も計り切れていないとすれば、利上げペースを加速させる明確な意思表示は難しく、あいまいな表現や会見内容になるのではないかと考える。利上げ決定直後にはドル高反応も見られると思われるが、短時間で消化されて落ち着く可能性があるとみる。

6月14日夜のECB理事会では金融政策の引き締め姿勢を示しきれずに終わるのではないかと思われる。米国の仕掛ける貿易戦争問題、イタリア政治情勢等の不確実性がある中では、9月には姿勢を示すとしても6月段階では曖昧なところにとどまるのではないかと思われる。仮にその場合はユーロ安がドル高を助長する一方で、ユーロ円での円高により、ドル円でも円高感を解消しきれない可能性があると思う。
もちろん、内容次第ではそろってリスク回避ないしは円高要因となり、逆にリスクオン的に円安を助長してゆく反応が続く可能性があるので、イベント内容への反応度合いを見定めて臨機応変に対処してゆくのが基本だが、総じて円高反応へと進んでいく場合は、5月21日高値を当面の戻り天井とした下落の継続感が強まる可能性がある点に注意したい。

【中勢判断】

【中勢判断】

3月26日から5月21日まで凡そ2か月、6.75円幅の上昇となったが、これについては概ね5か月から6か月周期のサイクルにおいて、昨年4月17日、9月8日に続くサイクルの底を付けての上昇としてみてきた。また昨年9月8日から11月6日への2か月で7.40円幅となった時の上昇に類似した動きとみてきた。
今回の上昇では3月26日から5月21日まで2か月、6.75円幅であり、概ね昨年9月から11月への上昇に類似したものだった。5月29日へ3.27円幅で下げてから戻しているが、これも昨年11月6日から11月27日まで3.83円幅で下げてから12月12日まで戻したところに近い印象であり、6月8日への下落ですでに半値押しまで下げているため、6月7日高値で戻り一巡となって下落再開に入っている可能性がある。

(1)6月7日高値を上抜けない内は5月29日安値試しへ向かう可能性ありとし、6月8日夜安値109.19円割れからは5月30日安値試しへ向かうとみる。特にG7決裂への反応が悲観的にみられる場合、FOMCからも円高へ進む場合は5月30日安値割れへ向かう可能性ありとみる。
(2)仮に5月30日安値を割り込む場合、5月21日高値からの下落が二段目の下落期に入ったと判断し、先行きは3月26日安値試しへ向かう可能性が高まるとみる。
(3)6月8日夜安値割れを回避するか、割り込んでも5月30日安値割れへ進まずに109.75円を超えてくる場合、特に米朝首脳会談やFOMCから上昇が進む場合は6月6日高値試しとみる。高値更新できないで6月6日以降の安値を割り込むところからは(2)と同様に二段目の下落期入りと考えるが、6月6日高値を上抜く場合は3分の2戻しを超えるために全値戻しとなる5月21日高値へ迫る上昇へ発展する可能性が出てくる。ただしその場合でも、5月21日高値の手前でダブル天井を形成して下落再開となる可能性が高いのではないかとみる。

※ 金融市場全般がリスク回避優先となる場合はユーロ、ポンド、豪ドルが下落、また新興国通貨安によりドルストレートでのドル高が進む一方で、それを上回るクロス円での手仕舞い売り=円買い戻しによる円高が進んでドル円ではドル安円高となる可能性がある。つまり、ドル高と円高が併存する可能性がある点に注意する。(了)<10日22:00執筆>

【当面の主な予定】

6/11(月)
オーストラリア シドニー市場休場(女王誕生日)
08:50 (日) 4月 機械受注 前月比 (3月 -3.9%、予想 2.4%)
08:50 (日) 4月 機械受注 前年比 (3月 -2.4%、予想 3.8%)
16:00 (ト) 1-3月期 四半期GDP 前年比 (前期 7.3%、予想 7.0%)
17:30 (英) 4月 貿易収支 (3月 -122.87億ポンド、予想 -114.00億ポンド)
17:30 (英) 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 0.1%、予想 0.1%)

6/12(火)
米朝首脳会談
未 定 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)1日目
08:50 (日) 4-6月期 四半期・大企業業況判断指数(BSI)(前期 3.3)
08:50 (日) 5月 国内企業物価指数 前年比 (4月 2.0%、予想 2.1%)
10:30 (豪) 5月 NAB企業景況感指数 (4月 21 )
17:30 (英) 4月 失業率(ILO方式) (3月 4.2%、予想 4.2%)
18:00 (独) 6月 ZEW景況期待指数 (5月 -8.2、予想 -14.0)

21:30 (米) 5月 消費者物価指数 前月比 (4月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 5月 消費者物価指数 前年比 (4月 2.5%、予想 2.7%)
21:30 (米) 5月 消費者物価コア指数 前月比 (4月 0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 5月 消費者物価コア指数 前年比 (4月 2.1%、予想 2.2%)
27:00 (米) 5月 月次財政収支 (4月 2143億ドル、予想 -1270億ドル)

6/13(水)
17:30 (英) 5月 消費者物価指数 前月比 (4月 0.4%、予想 0.4%)
17:30 (英) 5月 消費者物価指数 前年比 (4月 2.4%、予想 2.4%)
17:30 (英) 5月 生産者物価コア指数 前年比 (4月 2.4%、予想 2.5%)
18:00 (欧) 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 0.5%、予想 -0.7%)
21:30 (米) 5月 生産者物価指数 前月比 (4月 0.1%、予想 0.3%)
21:30 (米) 5月 生産者物価指数 前年比 (4月 2.6%、予想 2.8%)
21:30 (米) 5月 生産者物価コア指数 前月比 (4月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 5月 生産者物価コア指数 前年比 (4月 2.3%、予想 2.3%)
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)政策金利 (現行 1.50-1.75%、予想 1.75-2.00%)
27:30 (米) パウエル米FRB議長、定例記者会見

6/14(木)
未 定 (日) 日銀・金融政策決定会合(1日目)
10:30 (豪) 5月 新規雇用者数 (4月 2.26万人、予想 1.90万人)
10:30 (豪) 5月 失業率 (4月 5.6%、予想 5.6%)
11:00 (中) 5月 小売売上高 前年比 (4月 9.4%、予想 9.6%)
11:00 (中) 5月 鉱工業生産 前年比 (4月 7.0%、予想 7.0%)
15:00 (独) 5月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 0.5%、予想 0.5%)
17:30 (英) 5月 小売売上高 前月比 (4月 1.6%、予想 0.5%)
20:45 (欧) 欧州中銀(ECB)政策金利 (現行 0.00%、予想 据え置き)
21:30 (欧) ドラギECB総裁、定例記者会見
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.2万件、予想 22.2万件)
21:30 (米) 5月 小売売上高 前月比 (4月 0.3%、予想 0.4%)
21:30 (米) 5月 小売売上高 除自動車 前月比 (4月 0.3%、予想 0.5%)
21:30 (米) 5月 輸入物価指数 前月比 (4月 0.3%、予想 0.5%)
23:00 (米) 4月 企業在庫 前月比 (3月 0.0%、予想 0.3%)

6/15(金)
シンガポール休場(ハリ・ラヤ・プアサ ラマダン終了日)
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合、政策金利発表 (現行 -0.10%、予想 据え置き)
15:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、定例記者会見
18:00 (欧) 4月 貿易収支 (3月 269億ユーロ )
18:00 (欧) 5月 消費者物価指数 HICP、改定値 前年比 (速報 1.9%、予想 1.9%)
21:30 (米) 6月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (5月 20.1、予想 18.5)
22:15 (米) 5月 鉱工業生産 前月比 (4月 0.7%、予想 0.2%)
22:15 (米) 5月 設備稼働率 (4月 78.0%、予想 78.1%)
23:00 (米) 6月 ミシガン大学消費者信頼感指数 速報 (5月 98.0、予想 98.5)
29:00 (米) 4月 対米証券投資

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