材料的には強弱混在、情勢読みにくい(週報6月第1週)

先週のドル/円相場は「行って来い」。一時ドル安が進行し、108.12円まで値を下げたが、その後は週初の寄り付きレベルまで値を戻している。

材料的には強弱混在、情勢読みにくい(週報6月第1週)

材料的には強弱混在、情勢読みにくい

先週のドル/円相場は「行って来い」。一時ドル安が進行し、108.12円まで値を下げたが、その後は週初の寄り付きレベルまで値を戻している。

トランプ米大統領が一度「米朝首脳会談の開催中止」と発言したものの、週末に様相が変わり「予定通り実施」の可能性が高まったことを好感し、ドル/円相場は109.70-75円と前週末のNYクローズよりも円安レベルで寄り付いた。
しかし、日経平均を中心とした株価が冴えずにドル安が進行。また、米金利の低下もあり、週の半ばには週間安値である108.12円まで値を下げている。ただ、108円は割り込めずにドルは反発に転じると、週末にかけては寄り付きレベルに近い109.70-75円まで値を上げ、そのまま109.50-55円で取引を終え、越週となった。

一方、週間を通して注目された材料は、引き続き「北朝鮮情勢」。先で指摘したように週末にトランプ米大統領が「6月12日の会談実施は可能」と発言するなか、「米政権チームがシンガポールで会談下準備」を行うなどのニュースが相次いだ。その後も、「北朝鮮の金朝鮮労働党副委員長、30日から訪米」、そして「ポンペイオ国務長官と会談」「米朝交渉は順調、との評価」「北委員長、半島非核化の意思は変わらないと認識」などといった報道が続き、再び米朝の融和観測が高まってきた感を否めない。
そのほか、「イタリア、スペインなど欧州を中心とした政治情勢」も話題となり、後者については週末に「ラホイ首相の不信任決議案が可決され、社会労働党のサンチェス書記長が首相に就任する」−−という政権交代が起こっている。また、「米国による輸入関税延長措置の期限切れ」にともなう貿易戦争再燃懸念や、「G7財務相・中銀総裁会議開幕」、週末の「米雇用統計発表」など、週間を通して注目要因目白押しだった。

<< 今週の見通し >>

足もとが5月21日に記録したドル高値111.39円を起点とした調整局面にあることは間違いないが、先週一時108.12円まで下落したのちの動きはというと、むしろドルの下値不安は和らいだ感もうかがえる。そうした意味では、価格ではなく時間的な調整、つまりしばらくのあいだ108-110円といったレンジ取引を続ける可能性も否定出来ないだろう。ただ、110円レベルをクリアに超えていくようだと、調整も一服で、ドルは再び上値トライの様相を強めることもありそうだ。

一方、材料的にも、強弱要因が混在しており情勢が読みにくい。先でも指摘したように米朝融和観測が再燃しているほか、週末に発表された米雇用統計の好数字もドル高を支援しそう。また、スペインの政権交代は悪材料出尽くし感に繋がる公算が大きく、その場合はドルの取っては好材料か。しかし、反面で「米輸入関税措置」や「まとまらないNAFTA情勢」などを背景とした貿易戦争再燃懸念はドルの弱材料となりかねないし、欧州の政治情勢でいえばスペインが解決してもイタリアやトルコへの懸念は依然としてくすぶっている。ドル高orドル安、どちらに転んでも不思議はない状況と言えるだろう。

テクニカルに見た場合、5月21日にドルは高値111.39円を示現後、108.12円まで一時3円以上値を下げたものの、比率としては上げ幅の半値にも届いておらず、そうした意味ではやや不十分。下値リスクが完全に払拭したとは言えないだろう。ちなみに、3月安値を起点とした上げ幅の半値押しは108円前後となる。今週も強いサポートして寄与するのかどうか要注目だ。
対する上値メドは、先週高値でもある109.70-80円レベルや110円など。抜けても110円前半には移動平均の200日線や52週線といった日足、週足の長期線が位置しており上値は重い雰囲気。

一方、材料的に見た場合、4月の耐久財受注や5月のISM非製造業指数といった米経済指標の発表が予定されているが、全体的に小粒な感は否めないだろう。油断は禁物だが、よほど大きく事前予想などから乖離しない限り、影響は限定的であるかもしれない。
それよりむしろ、今週は先でも取り上げた米朝や欧州を含む「各国政治要因」や「貿易問題」に関する動きに要注意か。全体的に楽観論が支配し、米株高が続けば、為替市場もドル買いで反応しそうだ。

そんな今週のドル/円予想レンジは、108.30-110.80円。ドル高・円安については、先週高値でもある109.70-80円レベルや110円などの攻防にまずは注視。ただ、抜けても110.15-30円には移動平均の200日線など長期線が位置しており、上値は重いか。
対するドル安・円高方向は、移動平均の13週線や週足・一目均衡表の基準線が位置する109.10-20円が最初のサポートで、割り込めば108円半ば、そして先週安値の108.12円などがターゲットに。(了)

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