ドル円5月21日からの下落に対する半値戻し(6月第1週)

米労働省が発表した5月雇用統計では、非農業部門就業者数が前月比22.3万人増となり、市場予想の19万人増、前月の15.9万人増を大幅に上回った。

ドル円5月21日からの下落に対する半値戻し(6月第1週)

【概況】

5月21日高値111.39円から下落に転じ、24日深夜に108.95円へ大幅下落、28日朝に109.82円まで戻してからの一段安で30日未明には108.11円まで下落して21日からの下げ幅は3.28円幅となった。
下落当初は米中貿易摩擦問題の険悪化懸念、米朝首脳会談中止報道等によるリスク回避感が背景だった。それがら一服したものの今度はイタリア政治情勢不安でのユーロ安が新たなリスク回避テーマとなって30日未明への一段安要因となった。このイタリア情勢もひとまず落ち着き、やや過剰反応だったとしてドル円は下げ渋り、108円台後半で揉み合いとなっていた。
6月1日夜の米雇用統計発表待ちの中、1日昼への上昇で109円台を回復し、109円台序盤で雇用統計発表へ向かっていたが、発表予定時間の1時間前にトランプ大統領が雇用統計を「楽しみにしている」とツイートしたことで強い内容になるのではないかとの思惑が先走ってドル円は上昇、発表内容が強かったために22時過ぎには109.732円まで続伸したが、その後は買い一巡から109.50円を挟んだ所での推移に落ち着いて終了している。

【米雇用統計は良好、年4回利上げはまだ半信半疑】

米労働省が発表した5月雇用統計では、非農業部門就業者数が前月比22.3万人増となり、市場予想の19万人増、前月の15.9万人増(速報の16.4万人増から下方修正)を大幅に上回った。失業率は3.8%となり前月及び市場予想の3.9%から改善、2000年4月の3.8%以来18年ぶりの低水準となった。また平均時給伸び率は0.3%増で市場予想の0.2%、前月の0.1%を上回った。前年同月比では2.7%増となっている。
雇用統計後の発表だった米サプライ管理協会(ISM)の5月製造業景況指数も58.7となり、4月の57.3から上昇、市場予想の58.1を上回った。同指数は景気拡大の目安とされる50を21か月連続で上回っている。
6月12−13日に次回FOMC(連邦公開市場員会=金融政策決定会合)が控えている。今回は議長会見もある。昨年12月会合で同年3回目の追加利上げが決定され、2018年も年3回の利上げ姿勢が示された。今年は3月会合で1回目の利上げが決定されたが、その後の米経済指標の良好さから年4回へ利上げペースが加速されるのではないかとの思惑が強まってきた。

1日の米雇用統計発表後、米短期金利先物市場からの逆算では、12月に年4回目の利上げとなる確率は発表前の32%から37%へと上昇したが、まだ50%を超えたわけではない。6月会合では利上げが確実視されており、9月利上げもほぼ確実な状況と市場は見ているが、米中貿易摩擦問題利回り上昇、EU等への関税強化とその対抗的な対米関税強化のリスク等の不確実性もあり、現時点ではまだFOMCも慎重なスタンスを執りつつ、夏秋の情勢を見て12月に4回目の利上げをするかどうかを判断してゆくのだろうと思われる。

【米連銀の利上げ回数よりも貿易戦争リスク】

米連銀の利上げペース加速感が強まれば米長期債利回り上昇へも影響してくるだろうが、米長期債利回り上昇は米連銀の利上げスタンス云々よりもトランプ政権による積極財政による国債増発と、従来は米国債を金融緩和政策として購入吸収してきた米連銀が国債購入を停止したことによる需給バランスの緩和が背景である。
長期債利回りが急上昇する場合にはそれ自身がドル円上昇要因としてテーマ化しやすいが、それ以外の要因が主要テーマとなっている場合には今年1月から3月へのドル安円高期のように、米長期債利回りが上昇してもドル円は下落を継続する。米中通商摩擦問題、米国による鉄鋼・アルミ関税の適用拡大とそれに対するEU等からの対抗という米保護主義からの貿易戦争リスクが高まれば株式市場の動揺からリスク回避的な円高へより傾斜してゆくことも考えておく必要があると思う。

NYダウは1日に反発したが、5月21日の戻り高値からは反落傾向にあり、また2月序盤の暴落からは下げ渋っているものの出直り上昇にはまだ入れていない。世界的な金融緩和による金余りがトランプ・ラリーと重なってバブル的な株高が発生していたが、株高がストップし、各国の長期金利上昇感が強まれば、バブルによる投機マネーの強気回転が徐々に回らなくなり、資金の逆流を引き起こす。新興国市場でも負担感が強まってくる。そうした金融市場全般の心理的な重荷感がドル円にとっても円安阻害要因となってきていることを認識すべきだろう。

【2か月上昇後の26日移動平均割れ】

【2か月上昇後の26日移動平均割れ】

3月26日から5月21日への上昇は、概ね5か月から6か月周期の底打ちサイクルによる上昇期とし、4月から5月前半にかけての間を高値形成期とし、11月からの下落に対する3分の1戻し107.99円、さらに半値戻しの109.67円を実現、110円でダブル天井型を形成しかけたが突破して3分の2戻しの111.357円試しまで上値目途を切り上げてきた。
5月21日への上昇規模は、同じく5か月から6か月周期による反騰だった昨年9月8日から11月6日へ凡そ2か月、7.40円幅の上昇となったところに近いベクトルで推移してきた。
しかし、5月21日高値からの反落で中勢の弱気転換目安となる26日移動平均や一目均衡表の26日基準線を割り込んできた。昨年11月6日への上昇が一巡した後の下落再開もまた26日移動平均割れから始まった。これらを踏まえれば、5月21日高値からは中勢レベルの下期に入っている可能性があり、5月21日高値を上抜き返すような上昇へ進めないうちはさらに一段安へ進みやすい状況にあると思われる。

5月30日までの下げ幅は3.27円幅だが、昨年11月6日からの下落は当初、11月27日へ3.88円幅してから26日移動平均を超え、12月12日高値まで直前の下げ幅に対して凡そ75%の戻りを入れたが、新たな高値更新には至らずにその後の大幅下落へと進んだ。
今回もまずは26日移動平均前後が戻り抵抗になりやすく、すでに1日高値で同線に到達しているので戻り一巡から反落開始しやすい水準と思われるが、仮にさらに続伸し始める場合は昨年12月12日への反騰時並みに110円台前半を試す可能性があるが、110円以上は戻り売りにつかまりやすいとみる。

以上を踏まえ、当面の判断目安を示す。
(1)5月21日から5月30日への下げ幅に対する半値戻しは109.745円、3分の2戻しは110.29円である。すでに半値戻しを概ね実現しているので、6月1日高値109.732円を超える場合は3分の2戻しとなる110円台序盤試しを想定するが、110円以上は反落注意とみる。仮に110.50円前後へ上昇の場合はさらに反落警戒とする。
(2)6月1日高値を超えないか、越えてからの反落で109.25円割れとなるところからは下げ再開注意、109円割れからは下げ再開と仮定して5月29日安値108.11円試しへ向かうとみる。また、108円台へ下げた後の反発で戻り高値切り下がりとなり、その後に安値を更新する場合は「高値・安値切り下がり」の弱気パターンが継続するうちは安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)5月30日安値割れの場合は5月21日から24日にかけての下落期に近い下げ方になる可能性に注意する。(了)<3日22:55執筆>

【当面の主な予定】

6/4(月)
ニュージーランド市場休場(女王誕生日)
第3回米中通商協議(北京、6月2日〜)
10:30 (豪) 4月 小売売上高 前月比 (3月 0.0%、予想 0.3%)
18:00 (欧) 4月 生産者物価指数 前月比 (3月 0.1%、予想 0.2%)
18:00 (欧) 4月 生産者物価指数 前年比 (3月 2.1%、予想 2.4%)
23:00 (米) 4月 製造業新規受注 前月比 (3月 1.6%、予想 -0.5%)

6/5(火)
10:30 (豪) 1-3月期 経常収支 (前期 -140億豪ドル、予想 -99億豪ドル)
10:45 (中) 5月 財新サービス業PMI (4月 52.9、予想 52.9)
13:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)、政策金利発表 (現行 1.50%、予想 据え置き
16:55 (独) 5月 サービス業PMI、改定値 (速報 52.1、予想 52.1)
17:00 (欧) 5月 サービス業PMI、改定値 (速報 53.9、予想 53.9)
17:30 (英) 5月 サービス業PMI (4月 52.8、予想 53.0)
18:00 (欧) 4月 小売売上高 前月比 (3月 0.1%、予想 0.5%)
18:00 (欧) 4月 小売売上高 前年比 (3月 0.8%、予想 1.9%)
22:00 (欧) ドラギECB総裁、発言
23:00 (米) 5月 ISM非製造業景況指数 (4月 56.8、予想 57.7)

6/6(水)
10:30 (豪) 1-3月期 四半期GDP 前期比 (前期 0.4%、予想 0.8%)
10:30 (豪) 1-3月期 四半期GDP 前年比 (前期 2.4%、予想 2.7%)
21:30 (米) 4月 貿易収支 (3月 -490億ドル、予想 -492億ドル)
21:30 (米) 1-3月期 四半期非農業部門労働生産性・改定値 前期比 (速報 0.7%、予想 0.6%)

6/7(木)
日米首脳会談(於;ワシントン)
10:30 (豪) 4月 貿易収支 (3月 15.27億豪ドル、予想 10.00億豪ドル)
14:00 (日) 4月 景気先行指数(CI) 速報値 (3月 104.4、予想 105.)
15:00 (独) 4月 製造業新規受注 前月比 (3月 -0.9%、予想 0.8%)
17:00 (独) メルケル独首相、ショルツ独財務相、講演
18:00 (欧) 1-3月期 四半期GDP、確定値 前期比 (速報 0.4%、予想 0.4%)
18:00 (欧) 1-3月期 四半期GDP、確定値 前年比 (速報 2.5%、予想 2.5%)
20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利  (現行 8.00%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.1万件、予想 22.5万件)
28:00 (米) 4月 消費者信用残 前月比 (3月 116億ドル、予想 140億ドル)

6/8(金)
G7首脳会談(カナダ、〜9日)
未 定 (中) 5月 貿易収支(米ドル) (4月 287.8億ドル、予想 324.5億ドル)
08:50 (日) 4月 国際収支・経常収支 (3月 3兆1223億円、予想 2兆1478億円)
08:50 (日) 4月 国際収支・貿易収支 (3月 1兆1907億円、予想 7464億円)
08:50 (日) 1-3月期 四半期GDP、改定値 前期比 (速報 -0.2%、予想 -0.2%)
08:50 (日) 1-3月期 四半期GDP、改定値 年率換算 (速報 -0.6%、予想 -0.5%)
15:00 (独) 4月 貿易収支 (3月 252億ユーロ、予想 201億ユーロ)
15:00 (独) 4月 経常収支 (3月 291億ユーロ、予想 197億ユーロ)
15:00 (独) 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 1.0%、予想 0.3%)
23:00 (米) 4月 卸売売上高 前月比 (3月 0.3%、予想 0.0%)

6/9(土)
10:30 (中) 5月消費者物価指数 前年比 (4月 +1.8%、予想 +1.9%)
10:30 (中) 5月生産者物価指数 前年比 (4月 +3.4%、予想 +3.9%)

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