ドル円伊情勢不安一服で戻すも109円維持できず(5/31)

米経済指標はADP、GDP改定値ともに市場予想を下回った。

ドル円伊情勢不安一服で戻すも109円維持できず(5/31)

【概況】

5月21日高値111.39円から下落に転じ、米朝首脳会談中止報道や米中貿易摩擦問題の再燃で24日深夜に108.95円まで下落。米朝首脳会談予定通り実施の可能性から28日朝に109.80円まで戻すも今度はイタリア情勢不安からユーロが大幅下落、リスク回避で米国株安、米長期債買いにより米10年債利回り低下、クロス円もリスク回避で円高が進んだために30日未明には108.11円まで一段安した。21日からの下落幅は3.27円幅となった。
30日はイタリア情勢不安一服と米経済指標が芳しくなかったことでリスク回避感がやや後退、ユーロが反発、クロス円も反発、ドル円は109.07円まで戻したが、109円台を維持できずに31日午前は反落しているところだ。

米経済指標はADP、GDP改定値ともに市場予想を下回った。
米民間雇用サービス会社オートマティック・データ・プロセッシング(ADP)が発表した5月の全米雇用報告では非農業部門の民間就業者数が前月比17万8000人増で市場予想の19万人増を下回った。米商務省が発表した2018年1〜3月期の実質GDP改定値は年率換算で前期比2.2%増となり速報値の2.3%増から下方修正、市場予想の2.3%増も下回った。リスク回避感がやや後退する中でこれら指標が予想より悪かったためドル円上昇、ユーロの反発も続いたが、深夜以降はその効果も消えている印象だ。

米長期金利指標の10年債利回りは安全資産買いで米国債が買い戻されたために前日は2.78%まで低下していたが、リスク回避感後退で2.86%へ上昇、ドル円の上昇に寄与したが、3%から転落した状況に止まっているため影響は限定的だった。
前日に一時500ドル以上の急落となっていたNYダウは306.33ドル高と反発、世界連鎖株安の拡大はひとまずストップした。

【イタリア情勢】

イタリア経財省が実施した国債入札では10年物国債の表面利回りが3.0%に上昇し、4月入札時の1.7%から大幅上昇したが順調に応札されたため安堵感が広がった。かつての南欧(PIGS)債務危機が発生した2010年から2012年にかけては7%台まで上昇していたこともあるので、現状は危機感再燃ではあるが当時と比較すればまだパニック発生となるほどのレベルには上昇していないと思われる。しかし市中で4%、5%と上昇してくるようだと他の重債務国への影響も拡大し、PIGS危機が再燃しかねない。同様の政治情勢不安を抱えるスペインの長期金利等も上昇気配にある。
イタリアは3月の総選挙でユーロ離脱を主張する「五つ星運動」と右派「同盟」が連立政権樹立で合意したが大統領がEU離脱主義者の経済相の入閣を拒否したため7月にも再選挙の可能性が高まり、その際にはEU離脱問題が焦点化するのではないかとの危惧が強まった。しかし、30日には「五つ星運動」と「同盟」が経済相候補を差し替えて連立政権樹立を目指す可能性が出てきたことで、再選挙からのユーロ離脱危機感が後退したと受け止められている。ただこの問題はまだまだ紆余曲折ありそうだ。

【北朝鮮情勢】

北朝鮮の金英哲朝鮮労働党副委員長が30日に米NYへ到着した。6月12日の米朝首脳会談実現前の詰めの協議が31日まで行われる模様。米朝双方ともに首脳会談実現を希求しているが、先週のトランプ大統領による中止宣言等も踏まえれば米国側からの要求も厳しく、どこまで北朝鮮側が妥協できるかどうか、試されているところと思う。上手く進めばよいがドタキャンの可能性もあるのではないかと注意したい。

【60分足 一目均衡表 サイクル分析】

【60分足 一目均衡表 サイクル分析】

60分足の一目均衡表では5月23日の下落で先行スパンから転落、その後も転落状況が続いてきた。28日朝の反発、30日深夜の反発でも先行スパンを上抜ききれずにいるため、21日からの下落が一服して戻しに入るには先行スパンを突破してゆくことが第一関門となっていると思われる。このため先行スパンを上抜き返せないうちは先行スパン転落、遅行スパン悪化から下落再開、30日未明安値割れからの一段安へ進みやすいとみる。先行スパン突破、維持へと戻す場合は30日未明安値からの反発継続として109.50円超えを目指す可能性も出てくると思う。

60分足の相対力指数は30日深夜への上昇で60ポイントまで戻したがその後は失速している。50ポイント台回復から上昇ならもう一段の戻しに入る可能性を示唆することになると思われるが、40ポイント割れからは下げ再開感が強まると思われる。

概ね3日から5日周期の短期サイクルでは、5月24日深夜安値から3日目となる30日未明安値で直近のサイクルボトムをつけて戻しに入ったと思われるが、既に30日深夜高値で戻り一巡、下落再開へ入っている可能性がある。108.50円割れを切り返して108.85円超えへ戻す場合はサイクルトップ形成の継続余地ありとし、30日深夜高値超えの場合は31日の日中から6月4日朝にかけての間への上昇と28日朝高値試しへ向かう可能性が考えられる。しかし、108.50円割れの状況が続く場合は弱気転換注意として30日未明安値試しとし、底割れからは新たな弱気サイクル入りとして次のボトム形成期となる2日未明から6日朝にかけての間への下落が想定される。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、108.50円を支持線、108.85円を抵抗線とみておく。
(2)108.85円を超えないうちは30日深夜高値で戻り一巡して下落再開に入っている可能性を警戒し、108.50円割れからは30日未明安値108.11円試しへ向かうとみる。底割れ回避でも108.75円以下で終了なら1日の日中も安値を試しやすいとみる。底割れの場合は107円台前半への下落へ向かうと想定する。
(3)108.85円超えの場合は30日深夜高値109.07円試しとし、高値更新できないかわずかに高値更新してからの反落で108.75円割れしてくる場合は下げ再開とみる。30日深夜高値を超え、109円台を維持し始める場合は109.50円前後への上昇を想定するが、109.50円以上は反落警戒圏とみる。(了)<9:35執筆>

【当面の主な予定】

5/31(木)
18:00 (欧) 4月 失業率 (3月 8.5%、予想 8.4%)
18:00 (欧) 5月 消費者物価指数(HICP、速報) 前年比 (4月 1.2%、予想 1.6%)
19:00 (米) ブラード米セントルイス連銀総裁、講演
21:30 (米) 4月 個人消費 前月比 (3月 0.4%、予想 0.4%)
21:30 (米) 4月 個人所得 前月比 (3月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 4月 PCEコア・デフレーター 前月比 (3月 0.2%、予想 0.1%)
21:30 (米) 4月 PCEコア・デフレーター 前年比 (3月 1.9%、予想 1.8%) 
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.4万件、予想 23.0万件)
22:45 (米) 5月 シカゴ購買部協会景況指数 (4月 57.6、予想 58.0)
23:00 (米) 4月 住宅販売保留指数 前月比 (3月 0.4%、予想 1.0%)
25:30 (米) ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演
26:00 (米) ブレイナードFRB理事、講演

6/1(金)
08:50 (日) 1-3月期 四半期法人企業統計調査・全産業設備投資 前年同期比 (前期 4.3%、予想 3.2%)
10:45 (中) 5月 財新製造業PMI (4月 51.1、予想 51.2)
16:55 (独) 5月 製造業PMI 改定値 (速報 56.8)
17:00 (欧) 5月 製造業PMI、改定値 (速報 55.5)
17:30 (英) 5月 製造業PMI (4月 53.9、予想 53.5)
21:30 (米) 5月 非農業部門雇用者数 前月比 (4月 16.4万人、予想 19.3万人)
21:30 (米) 5月 失業率 (4月 3.9%、予想 3.9%)
21:30 (米) 5月 平均時給 前月比 (4月 0.1%、予想 0.3%)
23:00 (米) 4月 建設支出 前月比 (3月 -1.7%、予想 0.9%)
23:00 (米) 5月 ISM製造業景況指数 (4月 57.3、予想 58.0)

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