ドル円日足は三羽烏高値から2円以上の下落(5月第5週)

トランプ大統領は5月24日、米朝首脳会談を中止すると述べ、北朝鮮の金委員長に書簡を送った。5月25日の北朝鮮側の反応が大いに注目されたが、

ドル円日足は三羽烏高値から2円以上の下落(5月第5週)

【概況】

米長期金利上昇とドル全面高を背景にドル円は3月26日安値から上昇期に入り、5月2日と10日に110円処の抵抗にあってダブルトップ型を形成しかけたが、5月15日の上昇でこれを突破、先週5月21日に111.39円まで上昇してこの間の高値を更新した。
しかし、23日にトランプ米大統領が米中通商協議での合意について「不満足」を表明、さらに米朝首脳会談中止の可能性を示唆したために金融市場全般がリスク回避行動に走り、米長期債が買われて利回りは低下、円買い戻しの動きにドル円は急落、23日夜には109.55円まで大幅下落した。

5月24日未明のFOMC議事録公開前に110.33円まで買い戻されたものの議事録内容には特に利上げペース加速を示すタカ派色が濃くなるものはなく、公開後は下落再開となり、24日にはトランプ大統領が米朝首脳会談中止を宣言したことで24日深夜には108.95円まで続落した。
109円割れをひとまず突っ込み警戒として下げ渋る中、25日の日中は北朝鮮側が懸念されていた米国への攻撃的な批判には走らず、米朝首脳会談実現を希望する姿勢を示したため、米朝間の険悪化への懸念がやや後退、さらに25日夜にはトランプ大統領が予定通りに米朝首脳会談を行う可能性を示したため、リスク回避的円高は一服となり、109円台前半で週を終えた。

【米朝首脳会談、米中通商協議】

トランプ大統領は5月24日、米朝首脳会談を中止すると述べ、北朝鮮の金委員長に書簡を送った。5月25日の北朝鮮側の反応が大いに注目されたが、北朝鮮の金桂冠第1外務次官は25日午前、「いつでも、いかなる方式であれ、向かい合って問題を解決する用意がある」「(米国との対話は)切実に必要だ」と述べた。懸念されていた米国への挑発的で好戦的な非難はなく、市場はややサプライズしつつも安堵した。
トランプ米大統領は25日、「(米朝首脳会談が)開かれるとすれば(当初予定通りの)シンガポールで6月12日になりそうだ」「必要ならその日から延長することになる」とツイートした。また「(首脳会談の予定を)元に戻すことについて北朝鮮と非常に建設的な話し合いを進めている」と述べた。

南北首脳会談実現と板門店宣言を受けて融和ムードが拡大していたが、二度目の中朝首脳会談、北朝鮮による米韓軍事演習への非難、トランプ大統領による首脳会談中止宣告で情勢は再び緊張化した。会談中止を宣言する程に米朝の事前協議では米国側が満足な成果を得られないという感触だったのだろうと推察されるが、その後の北朝鮮側の反応を見ると、北朝鮮側も今回の米朝首脳会談実現を自らの存続と発展のために熱望していることが推察される。まだ手放しでリスク回避感は解消したとは言えないが、ひとまず米朝が近々に軍事的緊張関係となることは回避されつつある。

米朝首脳会談問題とともに5月21日からのドル円下落要因となったリスクテーマとして、米中の通商摩擦問題があったが、これにも進展があった。
イラン及び北朝鮮に対する制裁違反として米商務省は4月に中国の通信機器大手の中興通訊ZTEに対して米国企業との取引を7年間禁止するとし、ZTEはスマートフォン製造等が難しくなって企業存続の危機に陥っていた。米中首脳の電話協議、両国の閣僚級会合でもこの問題は話し合われてきたが、25日、トランプ米大統領はZTEに対して「高いレベルの安全性を保証し、経営陣を刷新して事業を再開させる」とツイートした。ZTEが罰金13億ドルを支払い、米国製品を購入することで和解が成立するものと思われる。
米朝首脳会談問題、米中通商摩擦問題、ひとまず一服といえるが、トランプ政権が極限的に自国有利な成果を得ようとする強硬姿勢を貫いていることは、今後もまだ紆余曲折がある可能性を残しており、市場もまた振り回されることへの心構えが必要だろう。

【テクニカル的な現状分析】

市場心理を左右する材料的な問題は米中、米朝問題、米連銀の利上げ姿勢問題、米長期金利上昇問題、またEUにおける政治不安(特にイタリア情勢)、米国のイラン核合意離脱問題、トルコリラ暴落等新興国市場の混乱リスク等であるが、肝心なことはテクニカル的にみて3月26日からのドル高円安基調が終了してドル安円高局面に入ってゆくのかどうかの見極めということになる。もちろん、5月末の米朝動向、6月1日の米雇用統計、6月12日予定の米朝首脳会談、6月12−13日の米連銀FOMCと重要イベントが続くので、それらを踏まえての市場反応で決まってゆくのだろうが、中勢レベルのテクニカル判断としても重要な岐路に来たという認識は持っておく必要がありそうだ。

3月26日安値からの上昇については、概ね5か月から6か月周期のサイクルによる上昇とし、26日移動平均を上回る内は上昇トレンドの継続とし、高値形成期を11月6日天井を基準として4月から5月前半にかけての間と想定してきた。また上値目処は4月時点では11月からの下落に対する半値戻しとし、110円のダブルトップ型を破って一段高した段階からは3分の2 戻し=111.357 円へ引き上げた。また上昇規模としては昨年9月8日底から11月6 日天井への2か月、7.40円高並となる可能性もありとしてきた。

やや予想を超えて5月21日まで続伸してきたが、昨年11月6日天井から今年5月21日高値までは数えで日足141本であり、昨年9月8日底から今年3月26日底までの同142本とほぼ対等数値である。
3分の2戻しを実現したところから下落を開始したが、5月22日から日足は3日連続陰線=三羽烏(または黒三兵)による下落であり、この間の上昇期における調整安レベルを超える2円強の急落で26日移動平均及び26日基準線を割り込み始めている。2か月以上の上昇ないしは5か月から6か月周期の上昇から26日移動平均等を割り込む下落発生は昨年11月6日高値直後の下落、昨年7月11日天井後の下落時以来である。
こうした状況を踏まえれば、概ね5か月から6か月周期のサイクルによる上昇を一巡させて下落に転じた可能性が警戒される。

【当面の強弱判断目安】

【当面の強弱判断目安】

(1)110円台回復、さらに110.50円超えへ切り返せないうちは5月21日高値で戻り一巡、下落期に入った可能性を警戒し、5月24日深夜安値108.95円割れからは中勢レベルの下落期に入る可能性ありとみる。その場合はまず、3月26日から5月21日への上昇に対する半値押しとなる108.00円、さらに日足の先行スパンがある107.50円前後試しへ向かうとみる。

(2)110円台回復維持、さらに110.50円を超えてくる場合は5月21日高値との毛抜き型天井形成とその後の下落再開を想定する。

(3)107.50円割れからさらに続落となる場合、日足の先行スパンからの転落となるため、5か月から6か月周期のサイクルによる安値形成期となる8月から9月にかけての下落長期化を考える。その中間点として2か月半から3か月程度のサイクルによる安値形成と反発も入ると思われるので、6月12日の米朝首脳会談(予定)、6月14日未明のFOMCによる利上げと政策姿勢表明を前後するところまでは下落を継続しやすく、いったん6月後半にかけて反発を入れつつもその後に一段安へ向かうようなイメージを考える。(了)<22:50執筆>

【当面の主な予定】

5/28(月)
休 場 (英) スプリングバンクホリデー
休 場(米) メモリアルデー

5/29(火)
08:30 (日) 4月 失業率 (3月 2.5%、予想 2.5%)
08:30 (日) 4月 有効求人倍率 (3月 1.59、予想 1.59)
13:40 (米) ブラード米セントルイス連銀総裁、講演
22:00 (米) 3月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年比 (2月 6.8% )
23:00 (米) 5月 コンファレンスボード消費者信頼感指数 (4月 128.7、予想 128.0)

5/30(水)
07:45 (NZ) 4月 住宅建設許可件数 前月比 (3月 14.7%)
10:30 (豪) 4月 住宅建設許可件数 前月比 (3月 2.6%、予想 -3.0%)
16:55 (独) 5月 失業者数 前月比 (4月 -0.7万人、予想 -0.5万人)
16:55 (独) 5月 失業率 (4月 5.3%、予想 5.3%)
18:00 (欧) 5月 消費者信頼感 確定値 (速報 0.2、予想 0.2)
21:00 (独) 5月 消費者物価指数 速報値 前月比 (4月 1.6%、予想 1.96%)
21:15 (米) 5月 ADP民間雇用者数 前月比 (4月 20.4万人、予想 18.5万人)
21:30 (米) 1-3月期 四半期GDP、改定値 前期比年率 (速報 2.3%、予想 2.3%)
23:00 (加) カナダ銀行(BOC)政策金利 (現行 1.25%、予想 据え置き)
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)

5/31(木)
G7財務相・中央銀行総裁会議(カナダ 〜 6/2)
08:50 (日) 4月 鉱工業生産・速報 前月比 (3月 1.4%、予想 1.4%)
10:00 (中) 5月 国家統計局製造業PMI (4月 51.4、予想 51.4)
10:00 (中) 5月 国家統計局サービス業PMI (4月 54.8、予想 54.8)
10:00 (NZ) 5月 NBNZ企業信頼感 (月 -23.4)
10:30 (豪) 1-3月期 四半期民間設備投資 前期比 (前期 -0.2%、予想 1.5%)

14:00 (日) 4月 新設住宅着工戸数 前年比 (3月 -8.3%、予想 -8.9%)
18:00 (欧) 4月 失業率 (3月 8.5%、予想 8.4%)
18:00 (欧) 5月 消費者物価指数(HICP、速報) 前年比 (4月 1.2%、予想 1.6%)
19:00 (米) ブラード米セントルイス連銀総裁、講演
21:30 (米) 4月 個人消費 前月比 (3月 0.4%、予想 0.4%)
21:30 (米) 4月 個人所得 前月比 (3月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 4月 PCEコア・デフレーター 前月比 (3月 0.2%、予想 0.1%)
21:30 (米) 4月 PCEコア・デフレーター 前年比 (3月 1.9%、予想 1.8%) 
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.4万件、予想 23.0万件)

22:45 (米) 5月 シカゴ購買部協会景況指数 (4月 57.6、予想 58.0)
23:00 (米) 4月 住宅販売保留指数 前月比 (3月 0.4%、予想 1.0%)
25:30 (米) ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演
26:00 (米) ブレイナードFRB理事、講演

6/1(金)
08:50 (日) 1-3月期 四半期法人企業統計調査・全産業設備投資 前年同期比 (前期 4.3%、予想 3.2%)
10:45 (中) 5月 財新製造業PMI (4月 51.1、予想 51.2)
16:55 (独) 5月 製造業PMI 改定値 (速報 56.8)
17:00 (欧) 5月 製造業PMI、改定値 (速報 55.5)
17:30 (英) 5月 製造業PMI (4月 53.9、予想 53.5)
21:30 (米) 5月 非農業部門雇用者数 前月比 (4月 16.4万人、予想 19.3万人)
21:30 (米) 5月 失業率 (4月 3.9%、予想 3.9%)
21:30 (米) 5月 平均時給 前月比 (4月 0.1%、予想 0.3%)
23:00 (米) 4月 建設支出 前月比 (3月 -1.7%、予想 0.9%)
23:00 (米) 5月 ISM製造業景況指数 (4月 57.3、予想 58.0)

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る