ドル円見通し111円台到達3分の2戻しに迫る(5月第4週)

米長期金利が上昇して日本長期金利との格差が拡大すればドル高円安になりやすいのは当然だが、状況によっては必ずしも正相関しない場合もある。

ドル円見通し111円台到達3分の2戻しに迫る(5月第4週)

【概況】

5月2日深夜と5月10日に110.00円処を付けていったんはダブルトップ型を形成しかけたが、ダブルトップ完成目安となる中間点の5月4日安値108.64円から11日安値109.15円へ底上げとなり「抵抗線フラット、支持線切り上げ型の三角持ち合い」と様相が変化した。15日の上昇で110円を突破して三角持ち合いを上放れ、一段高へ入り、16日夜、17日の下落場面でも110円台にとどまって一段高状態を維持、17日夜からさらに高値を切り上げて18日夜には111.08円まで続伸した。18日深夜に110.61円まで反落したが110.50円を上回って週を終えた。

米長期金利上昇がドル高の主要因だが、米長期金利の指標である10年債利回りは17日に3.11%台へ上昇して2011年7月以来6年10か月ぶりの高水準となった。18日も3.128%まで上昇したが、その後は上昇一服となり3.06%で終了している。
ドル指数は93.83ポイントの高値を付けて2月以降の高値を更新、ユーロドルは1.1749ドルまで下落して2月以降の安値を更新している。ドル円の上昇を含め、米長期金利上昇によるドル全面高の流れによりユーロ、ポンド、豪ドルの下落、ドル円の上昇は同調している。

【米長期金利上昇とドル円の相関】

米長期金利が上昇して日本長期金利との格差が拡大すればドル高円安になりやすいのは当然だが、状況によっては必ずしも正相関しない場合もある。2014年7月から2015年6月へのドル高円安はドル高というよりも日銀の異次元緩和による円安であり、2014年初頭から2015年1月への米長期金利低下とは逆相関で推移した。

昨年末から今年3月までも米長期金利は上昇したがドル円は下落した。まだ米長期金利の上昇レベルへの懸念よりも各種リスクオフ材料が勝ったこと、米長期金利上昇によるドル高エネルギーよりもECBや英国の金融政策引き締め化への期待が勝っていたことが背景だった。しかし米10年債利回りが二度目の3%越えへ上昇、米30年債利回りも2015年以降の抵抗線を突破して一段高へ向かう可能性が強まったことにより、市場も「米長期金利上昇=ドル高」と素直な反応に入ったと思われる。
仮に5月末にかけて上昇基調が継続する場合、米長期金利上昇規模は2016年後半からの上昇期、2015年6月への上昇期に匹敵するベクトルとなる可能性もある。

5月24日早朝には米FOMC議事録(5月1−2日会合分)の発表がある。当時は市場の予想外となるような声明文とは受け止められなかったが、6月会合での利上げは確実視され、利上げペース加速の可能性も継続した。改めて議事録が今後の利上げ姿勢をよりタカ派的なものと受け止められるかどうか、注目される。

【3月末からの上昇規模は昨年9月から11月への上昇期に迫る】

3月26日からの上昇は既に安値から6円を超えてきた。今回の上昇は概ね5か月から6か月周期の上昇と思われるが、この周期による上昇としては、前回が昨年9月8日から11月6日への2か月、7.40円幅であり、その前は昨年4月17日から5月11日への6.25円幅であった。今回の上昇規模もそれらに匹敵する。
この周期の高値は2016年12月15日天井、2017年5月11日天井(7月11日とダブルトップ)、2017年11月6日と推移しており、すでに11月高値から6か月を経過しているのでサイクルトップを付けやすい時間帯に来ているが、高値切り上げとその後の安値を切り上げる強気パターンが継続するうちはサイクルトップ形成の延長も含めて高値試しを続けやすいいと考えられる。

既に昨年11月からの下落幅に対する半値戻しを超えてきているので、上値目途は3分の2戻し=111.357円とするが、昨年9月から11月への上昇幅並みとすれば112.03円となる。2016年12月天井と2017年11月高値を結ぶラインと2017年4月底と11月底を結ぶラインはほぼ平行であり、緩やかな下降チャンネルを形成しているが、その高値ラインは112円台序盤に来ている。

高値切り上げ、その後の調整安での安値も切り上げるパターンが崩れる場合は弱気転換、あるいは3月からの上昇一巡により概ね5か月から6か月周期のサイクルにおける下落期入りとなる可能性を考えるべきと思われる。このため、5月16日夜安値110.03円を割り込み、その後に戻しても新たな高値更新へ進めずに安値更新となる場合は弱気転換が疑われる。

3月26日から現在までの上昇はドル全面高を背景としている。米長期金利上昇が主要なドル高要因であり、米長期金利上昇ないしは高水準維持のうちはドル円も上昇継続しやすいと言える。基調転換にはユーロ反騰、新興国通貨反騰等と揃ってドル高からドル安へと基調転換する必要があると思われる。
また、この2か月間の上昇中においても米中貿易摩擦問題、イラク核合意離脱問題、米朝首脳会談中止の懸念、イスラエルの米国大使館移転問題などのリスク回避的なテーマも抱えてきたが、市場の反応は限定的で、やや楽観的に受け止めてドル高基調を継続してきた。これらリスク回避要因が楽観から警戒へと変化する場合にはドル円が弱気転換してゆくきっかけとなる可能性がある点に注意する。

【中勢の強弱分岐点】

【中勢の強弱分岐点】

(1)110円のダブルトップラインを破って111円台に到達したため、110円以上を維持するうちはダブルトップ破りからの一段高状態の維持、さらに高値更新してゆく可能性も継続するとみる。上昇継続性があるうちは112円試しの可能性ありとみる。
(2) 日足レベルでは一目均衡表の9日転換線(現在109.95円)を上回るか、割り込んでも翌日に切り返して回復なら上昇継続とするが、同線割れから続落の場合は弱気転換注意とする。
26日基準線(現在108.98円)割れからは弱気転換とし、概ね5か月から6か月周期のサイクルでの下落期入りと仮定して107.50円前後を目指す流れと考える。

(3)日足で2日連続陰線を「伝い線」というが、3本目を陽線で切り返せば「伝い線打ち返し」で強気継続とし、3本連続の陰線となる場合は黒三兵として下落期入りの可能性を警戒する。(了)<20日20:55執筆>

【当面の主な予定】

5/21(月)
フランクフルト、スイス、オスロ休場(聖霊降臨祭月曜日)
トロント休場(ビクトリアデー)

07:45 (NZ) 1-3月期 四半期小売売上高指数 前期比 (前期 1.7%、予想 1.0%)
08:50 (日) 4月 貿易統計(通関ベース) (3月 7973億円、予想 4400億円)
25:15 (米) ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演
27:05 (米) ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁、講演

5/22(火)
(中) 香港市場休場(仏誕節)
(米) 米韓首脳会談(ワシントン)
06:30 (米) カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁、講演
23:00 (米) 5月 リッチモンド連銀製造業指数 (4月 -3、予想 8)

5/23(水)
   (米) 日米外相会談(ワシントン)
(北) 北朝鮮の核実験場廃棄を公開
16:30 (独) 5月 製造業PMI、速報値 (4月 58.1、予想 57.9)
16:30 (独) 5月 サービス業PMI、速報値 (4月 53.0、予想 53.3)
17:00 (欧) 5月 製造業PMI、速報値 (4月 56.2、予想 56.0)
17:00 (欧) 5月 サービス業PMI、速報値 (4月 54.7、予想 54.5)
17:00 (豪) ロウRBA総裁、講演
17:30 (英) 4月 消費者物価指数 前年比 (3月 2.5%、予想 2.5%)
23:00 (米) 4月 新築住宅販売件数 (3月 69.4万件、予想 67.7万件)
23:00 (欧) 5月 消費者信頼感指数 速報値 (4月 0.4、予想 0.4)
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨 5月1-2日会合分

5/24(木)
未 定 (南ア) 南アフリカ準備銀行 政策金利 (現行 6.50%
07:45 (NZ) 4月 貿易収支 (3月 -0.86億NZドル、予想 1.98億NZドル)
15:00 (独) 1-3月期GDP、改定値 前期比 (速報 0.3%、予想 0.3%)
15:00 (独) 1-3月期GDP、改定値 前年比 (速報 1.6%、予想 1.6%) 
17:00 (米) ダドリー米NY連銀総裁、講演
17:30 (英) 4月 小売売上高指数 前月比 (3月 -1.2%、予想 0.9%)
21:30 (米) 週間新規失業保険申請件数 (前週 22.2万件、予想 22.0万件)
22:00 (米) 3月 住宅価格指数 前月比] (2月 0.6% )
23:00 (米) 4月 中古住宅販売件数 (3月 560万件、予想 556万件)
27:00 (米) ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁、講演

5/25(金)
08:30 (日) 5月 東京都区部消費者物価コア指数 前年比 (4月 0.6%、予想 0.6%)
17:00 (独) 5月 IFO景況指数 (4月 102.1、予想 102.0)
17:30 (英) 1-3月期 四半期GDP、改定値 前期比 (速報 0.1%、予想 0.1%)
17:30 (英) 1-3月期 四半期GDP、改定値 前年比 (速報 1.2%、予想 1.2%)
21:30 (米) 4月 耐久財受注 前月比 (3月 2.6%、予想 -1.4%)
21:30 (米) 4月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (3月 0.1%、予想 0.5%)
22:00 (米) パウエル米FRB議長、リクスバンク350周年記念会合出席
23:00 (米) 5月 ミシガン大学消費者信頼感指数 確報 (速報 98.8、予想 98.8)
24:45 (米) カプラン米ダラス連銀総裁、ボスティック米アトランタ連銀総裁、エバンス米シカゴ連銀総裁、講演

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