ドル円見通し ダブルトップ破りからの上昇続く(5/18)

米経済指標はおおむね良好な状況が続いている。米フィラデルフィア連銀の5月製造業景況指数は34.4となり前月の23.2から上昇、市場予想の21.0を上回った。

ドル円見通し ダブルトップ破りからの上昇続く(5/18)

【概況】

米長期金利上昇とドル全面高を背景に3月末から上昇してきた。5月2日深夜と10日夕刻に110.00円処でダブルトップ型を形成していたが、15日の上昇で110円の壁を突破、ダブルトップ破り=三角持合い上放れによる一段高に入った。16日未明高値110.45円の後はドル高一服感でやや押したが110円台を維持し、17日午後には16日未明高値を超えて110円台後半に入った。

米経済指標はおおむね良好な状況が続いている。
米フィラデルフィア連銀の5月製造業景況指数は34.4となり前月の23.2から上昇、市場予想の21.0を上回った。また米コンファレンス・ボードが発表した4月の景気先行指数は前月比0.4%上昇し、市場予想と一致、前月も0.4%へ上方修正された。
米労働省が発表した週間新規失業保険申請は22万2000件となり前週から1万1000件増加、市場予想の21万5000件を上回ったが、失業保険受給者総数は170万7000人で1973年12月以来、実に44年半ぶりの低水準となった。

【米長期金利上昇継続】

米長期金利の指標である米10年債利回りは5月15日に3.095%まで上昇して7年ぶりの高水準となったが、16日に3.10%へ続伸、17日も3.11%まで続伸している。また米30年債利回りも17日には3.25%へ上昇、2月高値を突破して3年8か月ぶりの高値となった。
米長期金利とドル円は必ずしも正相関するものではない。昨年末から今年3月にかけての円高期も米長期金利は上昇していたが円高ドル安であった。2014年7月から2015年6月への円安ドル高は米長期金利の低下局面で発生している。しかし、基本的には米長期金利上昇は日米金利差拡大によるドル高円安要因であり、3月後半からの米長期金利上昇はユーロ安、ポンド安とも同調しているためにドル円においても素直にドル高要因として機能している。

【米中貿易問題、朝鮮半島情勢】

北朝鮮が南北閣僚級協議を突如中止し、米韓を非難、米朝首脳会談実現ムードがやや怪しくなった。また17日からは米中の通商摩擦問題での二国間協議が再開している。いずれもリスク要因であり、ドルが弱い状況ならドル売り材料となりやすいものだが、長期金利上昇を背景としたドル高基調で推移している中にあっては市場の警戒感も緩く、今のところは楽観的な反応に止まっている。逆に米中協議が進展の兆しが見えればドル高に、米朝首脳会談が予定通り行われる可能性が高まればドル高という反応になりやすくなっている印象だ。

米中両国は17日から協議に入っているが、中国側が米国産品の輸入拡大、航空機の大量購入等を提案しているとの報道もあり、協議進展への期待が出ている。二国間協議が決裂すれば米中双方が高額関税導入で衝突し、全面的な貿易戦争に陥る懸念もあるが、妥協的結末になればより積極的な米中関係の進展としてリスクオン心理が拡大、ドル高円安へ進みやすくなると思われる。

北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は17日に米韓合同演習「マックス・サンダー」を批判、「戦略爆撃機B52などが投入される大規模訓練は北南関係改善や朝鮮半島の緊張緩和、朝米対話局面に冷や水を浴びせる危険千万な挑発行為」「板門店宣言に反している」とした。
トランプ米大統領はこれに対して「非核化後も金正恩朝鮮労働党委員長の体制は保証される」「カダフィとは体制保証に関する合意がなかった。リビア方式とは全く異なる」と述べ、米朝首脳会談実現への期待を継続させている。
6月12日に米朝首脳会談が予定されている。6月12−13日には米FOMCもある。それらが金融市場全般の基調転換のきっかけとなる可能性もあるが、今のところはリスクに対しては楽観的、ドル高基調の継続感が優勢ということだろう。

【3分の2戻し、昨年9月から11月並上昇へ発展するか】

110円のダブルトップ型を破って一段高しているが、すでに11月から3月への下落に対する半値戻し109.675円を超えている。3月末からの上昇幅も6円を超えているが、昨年4月17日から5月11日への上昇幅6.25円幅、昨年9月8日から11月6日への7.40円幅等と同様のレベルに発展してきている。このため3分の2戻しの111.357円、さらには昨年9月から11月への上昇時の値幅並みとして112円を試す可能性も出てきている印象だ。
110円の壁を突破しての上昇のため、110円台を維持するか一時的に割り込んでも回復するうちは上昇継続余地ありと考えるところか。ただし、すでに上昇も2か月に近づいていること、概ね5か月から6か月周期のサイクルでは11月天井から6か月を経過したこと、日足の相対力指数が70ポイントを超えてきたことなど、高値警戒感も強まる水準には来ているので情勢変化には注意したい。

【60分足 一目均衡表、サイクル分析】

【60分足 一目均衡表、サイクル分析】

60分足の一目均衡表では14日午後の上昇で遅行スパンが好転、15日未明の上昇で先行スパンを突破した。その後も両スパン好転が続いているため、遅行スパン好転中は高値試し優先とする。ただし、高値更新がストップすれば遅行スパンも悪化しやすくなる。遅行スパン悪化からは先行スパンの上下限試しへの下落を警戒し、先行スパン転落からは3月からの上昇一巡による下落期入りの可能性を警戒する。

60分足の相対力指数は16日夜の50ポイント割れを切り返しているが、相場が一段高したのに対して指数は70ポイント超えへ進めずに15日に80ポイントを超えたピークからは逆行気味となっている。50ポイントを上回るうちは上昇余地ありとするが、割り込んでくる場合は弱気転換注意とする。

概ね3日から5日周期の高値・安値形成サイクルでは、5月16日夜へいったん下落してから戻していたため、11日夜安値から3日目となる16日深夜安値で直近のサイクルボトムを付けて新たな強気サイクルへ入ったとした。18日朝も続伸しているので次のトップ形成期となる19日未明から23日朝にかけての間への上昇継続とみる。ただし110.50円割れからは弱気転換注意として16日夜安値試しとする。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、110.50円を下値支持線、111.00円を上値抵抗線と見ておく。
(2)110.50円を上回るか、一時的に割り込んでも切り返して110.75円を超えるうちは111円前後試しへ向かうとみる。111円到達ではいったん売られやすいとみるが、110.50円を上回るうちは18日夜、21日にかけて高値を試しやすいとみる。
(3)110.50円割れから続落の場合は弱気転換注意として16日夜安値110.03円試しとする。16日夜安値割れからは下落期入りの可能性を警戒する。また110.50円以下で終了の場合は週明けも安値を試しやすいとみる。(了)<9:35執筆>

【当面の主な予定】

5/18(金)
15:00 (独) 4月 生産者物価指数 前月比 (3月 0.1%、予想 0.3%)
17:00 (欧) 3月 経常収支 (2月 351億ユーロ)
18:00 (欧) 3月 貿易収支 (2月 189億ユーロ)
22:15 (米) カプラン米ダラス連銀総裁、講演
22:15 (米) ブレイナードFRB理事、講演


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