ドル円 110円のダブルトップ形成懸念
5月2日深夜に110.03円を付けた後は3日未明の米FOMC、4日夜の米雇用統計で下落、4日夜には108.64円を付けた。
しかしその後はイベント通過感から戻し、9日未明の米国によるイラン核合意からの離脱表明による下落を一時的なものとして反騰して109.50円を超え、さらに10日夕刻には110.01円を付けて2日深夜高値と面合わせした。しかし10日夜に発表された米消費者物価指数伸び率が前日の生産者物価指数に続いて市場予想を下回ったことでドル高にブレーキがかかり、さらに米財務省がイランの個人・団体への新たな経済制裁を決定したこと、イスラエルがシリア領内のイラン軍拠点を空爆したことなどからリスク回避の動きも強まり、10日夜には109.31円まで反落した。その後も戻しきれずに安値圏で揉み合っている。
米労働省が発表した4月の消費者物価指数はは前月比0.2%上昇に止まり市場予想の0.3%上昇を下回った。またエネルギーと食料品を除いたコア指数も0.1%上昇で予想の0.2%上昇を下回った。前年比でも全体が2.5%上昇で予想と一致、コア指数は2.1%上昇で予想の2.2%を下回った。前日の生産者物価指数伸び率が予想を下回ったことも含め、米連銀の利上げペース加速には寄与しないとしてドル安反応となった。
【イラン情勢】
トランプ米大統領は日本時間9日未明にイラン核合意からの離脱と対イラン制裁再開を表明していたが、米国以外の5か国地域はイランとの合意継続を表明、イランも米国を非難しつつもそれに同調した。また米国による経済制裁再開には半年の猶予期間が設けられたことから影響が出るまでにはまだ時間的猶予があるとして市場のリスク回避低な反応は鈍かった。
米財務省は10日、イラン精鋭部隊「革命防衛隊」による不正なドル資金調達に関与したとしてイランの6個人、3団体を制裁対象に指定すると発表した。この制裁で対象者・団体は米国内の資産が凍結され、米国人との取引も禁じられる。核合意離脱表明の翌日に具体的な経済制裁が始まったことで市場は中東情勢懸念を再認識することとなった。
さらにイスラエル軍が10日、イランがシリア領内からイスラエルに向けてロケット弾を発射したことへの報復としてシリア領内にあるイラン軍の軍事拠点を空爆した。シリアを挟んでイスラエルとイランの軍事衝突がエスカレートする可能性が高まり始めたことも核合意離脱問題とともに中東情勢不安を拡大した。
中東情勢不安を背景にNY原油は10日の取引で71.89ドルまで上昇、2016年2月以降の高値を更新した。米国によるイランへの制裁再開でイラン原油の輸出が低下することが予想され、また軍事衝突等による中東情勢全般への不安感が原油相場上昇を招いている。OPECはイランの輸出減少に対しては先行きで加盟国の産油量を拡大する可能性があるが、10日時点ではそうした判断は時期尚早として具体的な動きを取らなかったことも上昇要因となった。
【ダブルトップ?】
5月2日深夜高値で110.03円をつけ、4日夜安値108.64円まで下げてからイッテコイとなる上昇で10日夕刻に110.01円を付けたがが、110円超えからさらに続伸へ進めず、中東情勢不安や米物価伸び率が予想を下回ったことなどからドル円は下落、ユーロドルは上昇、英ポンドが英中銀金融政策発表後に下落したもののドル指数は下落となった。
ドル円は高値更新からの一段高入りへ進めなかったことで、5月2日高値と10日夕高値によるダブル天井を形成した可能性が警戒される。ダブル天井完成には両高値の谷間にあたる5月4日安値を割り込む必要があるので、現時点ではダブル天井完成には至っていない。5月4日安値を割り込まずに戻せば、「抵抗線フラット、支持線やや切り上がり」の三角持合いに止まる。また4日安値まで下落してもその後に半値戻し以上へ反発すれば抵抗線も支持線もほぼフラットなボックス型持合いに止まる可能性もある。
しかしすでに3月26日からの上昇も1か月半を経過し、昨年11月からの下落に対する半値戻しも達成していること、概ね5か月から6か月周期のサイクルにおいても11月天井から6か月を経過したことを踏まえると、ダブル天井形成でドル円の戻り一巡、円高再開へ進む可能性があるということも考えるべきだろう。
【60分足 一目均衡表、サイクル分析】
60分足の一目均衡表では10日夜の下落で遅行スパンが悪化した。先行スパン転落はぎりぎりで回避しているが、安値更新なら転落に入るため、遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、上昇再開は遅行スパン好転からと考える。
60分足の相対力指数は9日の上昇で70ポイントをつけたが、10日夕刻への高値更新時では指数のピークが切り下がる弱気逆行となった。このため60ポイント超えへ反騰できないうちは下落継続を警戒し、30ポイント割れを試しやすい状況と思われる。
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月7日夜高値を上抜いたため、4日夜安値と9日未明安値をダブル底として上昇したが、5月10日夕高値でサイクルトップを付けて下落期に入った印象だ。9日未明安値を基準とすれば今度の安値形成期は12日未明から16日朝にかけての間と想定される。ただし、5月4日安値を基準とすれば11日夜で5日目となるので、11日深夜ないしは12日未明までに安値を付けて週明け反騰なら、直前の安値をボトムとした強気サイクル入りとなる可能性がある。
こうした状況を踏まえ、まず、11日夜にかけては一段安警戒を優先する。
週明けに109.50円以上へ戻して10日夕高値に迫る場合は新たな強気サイクル入りの可能性ありとし、10日高値超えなら強気サイクル入りとして15日から17日にかけての間への上昇を想定する。
12日未明へ続落し、週明けもさらに続落の場合は14日の日中から16日未明にかけての間への下落継続の可能性を優先する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、109.30円を支持線、109.65円を抵抗線とみておく。
(2)109.65円を下回る内は109.30円割れからの下落を想定し、4日安値108.64円試しへ向かう可能性ありとみる。109.30円以下で終了なら週明けの続落注意とする。4日安値を割り込む場合はダブル天井形成による中勢レベルの下落期入りを考える。
(3)109.65円超えへ戻し、その後も109.50円を上回る場合はダブル天井型というよりも三角持合い形成から上昇再開となる可能性が高まると考える。110円突破へ進めばダブル天井候補破りによる一段高入りとして111円前後を目指す上昇を想定する。(了)<8:35執筆>
【当面の主な予定】
5/11(金)
21:30 (米) 4月輸入物価指数 前月比 (3月 0.0%、予想 +0.5%)
23:00 (米) 5月ミシガン大消費者信頼感指数 速報 (4月 98.8、予想 98.3)
オーダー/ポジション状況
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