【概況】
4月18日以降のユーロ安、ポンド安を中心としたドル高を背景にドル円も上昇、4月23日には108円の壁を破って一段高に入り、25日から5月1日の日中までは109円台前半での高値圏持合いだったが、3日未明のFOMC、4日夜の米雇用統計といった重要イベント前の上昇で2日深夜には110.03円までさらに一段高した。
しかし、3日未明のFOMCでは市場予想通りに現状維持とされ、次回6月会合での利上げ確率は上昇したものの、さらに残り年3回の利上げペース加速となるような積極的姿勢が示されなかったため、ドル円は下落に転じた。さらに4日夜の米雇用統計が冴えなかったために発表当初の下落で108.64円まで下落した。発表当初の下落を消化した後は109.27円まで反発し、109円台を維持して週を終えた。
【FOMCと米雇用統計】
米連銀FOMCは3日未明の声明で政策金利を現状維持とした。これは予想通りであり、市場の関心は年3回の利上げペースが年4回へ加速するタカ派的な積極姿勢を示すかどうかであったが、声明文ではインフレ見通し等で多少の上方修正はあったものの市場に利上げペースの加速を意識させるほどの文言変更ではなかったため、発表直後にはいったんドル安反応も見られた。
しかし、今後の米経済指標が良好さを継続すれば利上げペースが加速する可能性を維持しているとの受け止め方によりユーロ、ポンドは3日夜へ安値を更新、ドル指数も上昇した。ドル円の下落はそれらとはやや異なる動きとなった。
5月4日の米雇用統計では非農業部門雇用者数が前月比16.4万人増となり、市場予想の19.3万人増を大きく下回ったが、前月は当初発表の10.3万人増から13.5万人増へ上方修正された。失業率は3.9%となり市場予想の4.0%、前月の4.1%からさらに改善された。平均時給前月比伸び率は0.1%増に止まり、市場予想の0.2%、前月の0.3%(0.2%へ下方修正)を下回った。
直近の非農業部門就業者数の伸びが予想を下回ったこと、2か月連続で20万人増に届かなかったとはいえ、長期的な雇用増を継続しているため悪い数字ではない。平均時給の伸びがやや鈍化したとはいえ、マイナスでもない。
サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁は雇用統計後のCNBCインタビューで「緩やかな引き上げの継続が望ましい」(今年の利上げ回数は)「3〜4回が適切」と述べた。また雇用者数については「8万から12万人の増加があれば景気は堅調」とし、失業率は3.5%まで下がるとした。この発言は利上げペース加速の可能性が継続していることを示している。FOMC、雇用統計を踏まえれば、6月利上げはほぼ確実で、今後の経済指標次第では9月、12月と利上げされる可能性もあるということだろう。
【高値切り上げ・その後の安値を切り上げるパターンが崩れる?】
5月4日への下落はユーロ、ポンドが続落したのとは対照的な下落であった。3月26日以降の上昇波動では一段高した後の調整安でも安値を底上げしてきたが、4日への下落では4月28日安値108.94円を割り込んだ。またこの間の調整安も最初の調整安である4月3日未明への1.35円幅を除けば下げ幅が1円に満たない程度で推移してきたが、今回の下落幅は1.36円幅となった。
現状から切り返せば4月3日未明への調整並みとしてまだ上昇基調を継続する可能性もあるが、戻しに入っても5月2日深夜高値を上抜けないで4日夜安値を割り込む場合は「安値切り下げ、その後の戻り高値も切り下がってさらに一段安入りする弱気パターン」へ入る可能性も考えられる。
中勢レベルでは概ね5か月から6か月周期のサイクルによる反騰期であるが、昨年11月天井から6か月目に入っており、この反騰期がもう数週継続する可能性もあるが、すでに戻り一巡しても不思議ない時間帯に入っているため、4日夜安値をさらに割り込む場合は中勢レベルの基調転換も警戒される。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
60分足の一目均衡表では5月3日夜の下落で遅行遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落した。4日夜安値からは小反発しているので、先行スパンが戻り抵抗となり、先行スパン突破へ進めば上昇再開感が強まると思われるが、先行スパン突破に失敗して4日夜安値を割り込む場合は転落状態が長引く可能性がある。
先行スパン突破の場合は2日深夜高値試し、さらに高値更新へ進む可能性ありとするが、先行スパンを突破できないうちは一段安警戒とみる。
60分足の相対力指数は5月3日深夜安値から4日夜へ一段安した間で指数のボトムが切り上がる強気逆行を見せているので、ひとまず4日夜安値で目先の底を付けて戻りを試しに入っていると思われる。40ポイントを上回るうちは上昇継続性ありとするが、40ポイント以下へ下落してくる場合は逆行からの戻りも短命に終わって下げ再開となる可能性に注意する。
概ね3日から5日周期の高値・安値形成サイクルでは、4月28日安値から5日目となる5月4日夜安値でサイクルボトムを付けたと思われる。このため、新たな底割れ回避のうちは7日の日中から9日夜にかけての間への上昇余地ありとするが、109円割れの状況が続く場合は弱気転換注意とし、4日夜安値割れからは新たな弱気サイクル入りとして次の安値形成期となる9日から11日にかけての間への下落が想定される。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、108.90円を支持線、4日深夜高値109.27円を抵抗とみておく。
(2) 108.90円以上を維持するか、一時的に割り込んでも切り返すうちは4日深夜高値超えから戻り高値試しへ向かう可能性ありとみる。4日深夜高値超えの場合は109.50円が抵抗となるが、超えて続伸なら5月2日深夜高値110.00円試し、さらに超えれば先行きで111円台を試す可能性も出てくると思われる。
(3)108.90円割れから続落の場合は弱気転換注意とし、4日夜安値割れからは新たな下落期入りとして108.00円、次いで107.75円を段階的にめざず下落期入りを想定する。またその場合は5月2日深夜高値で当面の天井を付けた可能性も懸念すべきと思われる。(了)<6日21:00執筆>
【当面の主な予定】
5/7(月)
ロンドン休場(アーリーメイバンクホリデー)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨(3月8-9日開催分)
10:30 (豪) 4月NAB企業信頼感 (3月 7)
10:30 (豪) 4月NAB企業景況感 (3月 14)
15:00 (独) 3月製造業受注 前月比 (2月 +0.3%、予想 +0.5%)
21:25 (米) ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演
27:00 (米) バーキン米リッチモンド連銀総裁、講演
28:00 (米) 3月消費者信用残高 (2月 +106.01億ドル、予想 +160.00億ドル)
28:30 (米) カプラン米ダラス連銀総裁、講演
28:30 (米) エバンス米シカゴ連銀総裁、講演
5/8(火)
10:30 (豪) 3月小売売上高 前月比 (2月 +0.6%、予想 +0.2%)
15:00 (独) 3月鉱工業生産 前月比 (2月 -1.6%、予想 +0.8%)
15:00 (独) 3月貿易収支 (2月 +184億ユーロ、予想 +225億ユーロ)
15:00 (独) 3月経常収支 (2月 +207億ユーロ、予想 +270億ユーロ)
未 定 (中) 4月貿易収支 (3月 -49.8億ドル、予想 +275.0億ドル)
16:15 (米) パウエルFRB議長、講演
5/9(水)
21:30 (米) 4月生産者物価指数 前月比 (3月 +0.3%、予想 +0.2%)
21:30 (米) 4月生産者物価コア指数 前月比 (3月 +0.3%、予想 +0.2%)
21:30 (米) 4月生産者物価指数 前年比 (3月 +3.0%、予想 +2.8%)
21:30 (米) 4月生産者物価コア指数 前年比 (3月 +2.7%、予想 +2.4%)
23:00 (米) 3月卸売売上高 前月比 (2月 +1.0%)
26:15 (米) ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演
5/10(木)
スイス、ストックホルム、オスロ休場(キリスト昇天祭)
06:00 (NZ) RBNZオフィシャル・キャッシュレート (現行 1.75%、予想 据え置き)
08:50 (日) 3月国際収支-経常収支 (2月 +2兆760億円、予想 +2兆9293億円)
08:50 (日) 3月国際収支-貿易収支 (2月 +1887億円、予想 +1兆171億円)
10:30 (中) 4月消費者物価指数 前年比 (3月 +2.1%、予想 +1.9%)
10:30 (中) 4月生産者物価指数 前年比 (3月 +3.1%、予想 +3.4%)
14:00 (日) 4月景気ウォッチャー調査・現状判断DI (3月 48.9、予想 49.1)
17:30 (英) 3月鉱工業生産 前月比 (2月 +0.1%、予想 +0.1%)
17:30 (英) 3月貿易収支 (2月 -102.03億GBP、予想 -113.50億GBP)
17:30 (英) 3月製造業生産 前月比 (2月 -0.2%、予想 -0.2%)
20:00 (英) BOE政策金利発表 (現行 0.50%、予想 据え置き)
20:00 (英) カーニーBOE総裁会見、BOE議事録、BOE四半期インフレレポート
21:30 (米) 4月消費者物価指数 前月比 (3月 -0.1%、予想 +0.3%)
21:30 (米) 4月消費者物価コア指数 前月比 (3月 +0.2%、予想 +0.2%)
21:30 (米) 4月消費者物価指数 前年比 (3月 +2.4%、予想 +2.5%)
21:30 (米) 4月消費者物価コア指数 前年比 (3月 +2.1%、予想 +2.2%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.1万件、予想 21.8万件)
5/11(金)
07:30 (NZ) 4月製造業PMI (3月 52.2、予想
08:50 (日) 4月マネーストックM3 前年比 (3月 2.8%、予想
21:30 (米) 4月輸入物価指数 前月比 (3月 0.0%、予想 +0.5%)
23:00 (米) 5月ミシガン大消費者信頼感指数 速報 (4月 98.8、予想 98.3)
オーダー/ポジション状況
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