ドル円 シリア情勢で下落、5日深夜高値上抜けず(4/11)

米雇用統計前日の4月5日深夜に107.49円まで上昇して3月29日未明高値を上抜いたが、6日夜の米雇用統計は予想より悪かったこと米中貿易戦争全面化への懸念を背景に

ドル円 シリア情勢で下落、5日深夜高値上抜けず(4/11)

【概況】

米雇用統計前日の4月5日深夜に107.49円まで上昇して3月29日未明高値を上抜いたが、6日夜の米雇用統計は予想より悪かったこと米中貿易戦争全面化への懸念を背景にNYダウが大幅下落したことにより7日未明には106.77円まで下落。週明け9日は107.20円まで戻したものの戻りは続かずに10日午前には106.61円まで一段安していた。

10日昼前、中国の習近平国家主席は中国主催のフォーラムボアオ・アジアフォーラム(スイスのダボス会議のようなアジア版賢者会議)で演説し、中国の開放政策をさらに進めること、自動車などの輸入関税削減や外国企業の出資比率制限を緩和する姿勢を示し、中国は貿易黒字を追及しないと述べた。このことが米中間の貿易戦争全面化リスクを後退させ、協議への期待を抱かせたために発言が伝わるとドル円は上昇、NYダウ先物の電子取引も大幅上昇に転じ、日経平均もつれ高となった、10日夜にはトランプ米大統領が「知的財産権、技術移転の再考に謝意」「貿易問題対処へ中国との協調に意欲」とツイートし、米中協議の可能性が広がった。NYダウはこの流れを好感して428.9ドル高と大幅上昇、ドル円も10日深夜には107.39円まで戻した。しかし、4月5日深夜高値107.49円を超えられずに11日未明にかけては失速気配となっている。

【シリア情勢が楽観へのブレーキ】

米中貿易戦争問題とともに重要テーマとなってきたシリア情勢についての懸念が重石となっている。シリアで化学兵器が使用された疑惑をめぐり、米国は国連安保理で独立調査団を新設する決議案を提出したが、11日未明にロシアは拒否権を行使して否決された。トランプ大統領はペルー、コロンビアへの歴訪予定をキャンセルし、マティス国防長官も今週末の出張予定をキャンセルしたと報じられている。1年前にはシリアへの空爆を実施した経緯もあり、米国が単独ないしは有志連合等で軍事行動に出る可能性が懸念され、米中協議期待の楽観を押し潰して円安にブレーキを掛けた印象だ。

米中貿易戦争問題については米国の大規模関税、中国の対抗的関税ともにまだ実施時期が決まっていない。両国ともに強硬姿勢だが協議はするとしており、貿易戦争全面化を望んでいるわけではない。今回の習主席発言もこれに沿ったものだが、米国は中間選挙情勢を踏まえて米国第一主義を貫きつつ、大幅な譲歩を引き出そうとしてゆくことが予想されるため、この問題はまだ楽観と悲観が交錯しつつ一喜一憂を繰りかえすとみる。また米中が協議的な妥協へ進めば、それ以外の最大対米黒字国である日本への貿易収支改善への圧力が高まる事も想定されるため、米中協議の進展は必ずしもドル円にとっては一面的な楽観的強気材料ともいえない。欧米予定の安倍首相が何を約束してくるのかも懸念されるところだ。

シリア情勢については英国の元ロシア人スパイへの毒殺未遂事件からのロシア制裁等も踏まえ、ロシアに対する強硬姿勢も見られるため、シリアで何等かの軍事行動によるアピールを行う可能性が高いのではないかと懸念する。その際にはシリアに常駐しているロシア軍との偶発的な衝突も警戒すべきと思われる。ロシアにとっては軍事プレゼンスが最大の外交資源であり、ここでは退く姿勢を見せないと思われるので、貿易問題での米中衝突状態に加え、中東をめぐる米露の軍事的地政学的な衝突状態がクローズアップされてくる可能性がある。

【60分足 一目均衡表分析】

【60分足 一目均衡表分析】

60分足の一目均衡表では、10日の上昇で遅行スパンが好転、先行スパンを突破したが、11日朝への下落で遅行スパンは悪化しやすくなり、先行スパンにも抵触しつつある。このため、先行スパン転落回避の内は上昇再開の可能性があるものの、先行スパンから転落する場合は遅行スパン悪化も伴うために下げ再開が懸念される。その場合は遅行スパンが再び好転するまでは安値試し優先と考える。

60分足の相対力指数は10日昼前からの反騰で30ポイント割れ回避から戻したが、60ポイント超えでは抵抗にあっており、11日朝時点では50ポイントを割り込んできている。このため60ポイント台回復へ戻せない内は下落再開注意とし、40ポイント割れからは30ポイント割れを目指す下落を想定する。

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは4月3日未明安値を前回のサイクルボトムとして上昇してきたが、5日深夜高値でサイクルトップをつけて下落期に入った。11日昼前の反騰により、11日午前安値を直近のサイクルボトムとして上昇期に入ったと思われる。ただし10日深夜高値で5日深夜高値を上抜けずに失速気配となっているため、ダブルトップ形成から弱気サイクル入りとなる可能性も警戒される。
10日午前安値割れ回避の内は11日の日中から12日夜にかけての間へ上昇再開となる可能性ありとするが、107円割れの状況が続く場合は下向きとし、10日午前安値割れからは底割れによる新たな弱気サイクル入りとして次のボトム形成期となる13日朝から17日朝にかけての間への下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、106.80円を支持線、107.25円を抵抗線とみておく。
(2)107円を割り込んでも切り返す内は107.25円超えから上昇再開と仮定し、10日深夜高値超えからはそのまま5日深夜高値107.48円超えへ進む可能性ありとし、5日高値超えからはダブル天井破りによる一段高として108円前後試しへ向かうとみる。
(3)106.80円割れからは先行スパン転落、遅行スパン悪化も伴うため下げ再開警戒として10日午前安値試しを想定する。さらに底割れからは新たな弱気サイクル入りとして106.50円から106.25円にかけてのゾーンを試すとみる。また107円割れの状況が続く内は安値試し優先の状況が続くとみる。
(4)11日夜には米消費者物価、12日未明にはFOMC議事録公開があるため、それらを弱気して下落する場合は106円割れを警戒する。逆に反騰の場合は10日深夜高値試しへの反発入りを想定する。シリア情勢で軍事行動入りとなる場合はリスク回避で円高が加速する可能性がある点にも注意する。(了)<9:55執筆>

【当面の主な予定】

4/11(水)
14:05 (豪) ロウRBA総裁、講演
17:30 (英) 2月 貿易収支 (1月 -123.25億ポンド、予想 -119.0憶ポンド)
17:30 (英) 2月 鉱工業生産指数 前月比 (1月 1.3%、予想 0.4%)
21:30 (米) 3月 消費者物価指数 前月比 (2月 0.2%、予想 0.0%)
21:30 (米) 3月 消費者物価コア指数 前月比 (2月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 3月 消費者物価指数 前年比 (2月 2.2%、予想 2.4%)
21:30 (米) 3月 消費者物価コア指数 前年比 (2月 1.8%、予想 2.1%)
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨

4/12(木)
18:00 (欧) 2月 鉱工業生産 前月比 (1月 -1.0%、予想 0.2%)
21:30 (米) 3月 輸入物価指数 前月比 (2月 0.4%、予想 0.4%) 
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 24.2万件、予想 23.0万件)
27:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 7.50%) 

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