円高圧力強く105円をトライか(週報3月第三週)

先週のドル円は、日米双方の材料が次々と出てきましたが、どの材料もドル安・円高方向の材料であり、

円高圧力強く105円をトライか(週報3月第三週)

今週の週間見通し

先週のドル円は、日米双方の材料が次々と出てきましたが、どの材料もドル安・円高方向の材料であり、そうした中で株高の動きから火曜に一時的に反発する局面はあったものの、逆にポジション調整を招いたのみでその後は新規に売りやすい流れへと戻ったと言えます。

まずファンダメンタル要因から振り返ります。日本サイドの材料としては森友問題における与野党間の舌戦が続いていますが、短期的には収束したように見えるいっぽうで麻生財務相がG20を欠席するなど本日からの国会での紛糾が予想されます。安倍首相の責任問題にまでは発展しないというのが大方の見方ではあるものの、株式市場、為替市場ともに今週もリスクオフにバイアスがかかりやすいことは間違いありません。

ファンダメンタルでも米国要因は色々とありましたが、主要閣僚が次々と更迭、辞任を繰り返す中、着実に強硬派、保守派が増えてきています。そうした中でトランプ大統領が対日赤字問題に言及するなど不均衡是正問題は円高要因となりますし、今日からのG20は為替はテーマでは無いものの麻生財務相が欠席ということもあり、米国から何か飛び出さないとも限りません。週前半は注意が必要でしょう。

そして、最大の注目材料は水曜のFOMCです。利上げ自体はコンセンサスとなっているものの、6月以降の利上げ見通しがどうなのか。これまで同様3回なのか、あるいは4回に変わっているのかこの点に注目する市場参加者は多いと思われます。CMEの先物から予想される12月時点の利上げ織り込み度は、3回以下が66%、4回以上が34%、そして3回が最多の40.6%となっています。直近のところで市場参加者の思惑が3回に落ち着いていますので、今回は4回という見通しの方が金利市場へのインパクトは大きいでしょう。

ただ、金利上昇がそのままドル高というのは昨年までで、FX羅針盤のコラムにも以前書いた通り米国の財政赤字が大幅に拡大する状況下、金利上昇が債券売りへと繋がりそれがドル売りに繋がりやすいため、FRBとしても3回の方針を維持する可能性の方が高いと見ています。またFOMC後としては初の会見となるパウエル議長の会見内容にも注意しておきましょう。

次に需給です。残すところ10日で本邦期末となりますが、常に話題となるのが日本の海外事業における利益送金(レパトリ)です。さすがに一気に外貨が円転されるような動きは考えられないものの実需(輸出)のドル売りオーダーが水準を下げてきている中で、ドルの上値を抑えやすい要因となります。

もうひとつ気になるのが105.00にあると言われる大口のバリアオプションです。オプションの売り手としてはその手間で防戦買いを行っていたのがこれまでですが、上がればその分の売り直しも出ますし、着実のドルの高値を切り下げる動きの中で最終的には、105.00のバリアをつけにいく動きが見られる可能性が高いと言えます。これは何回かは反発する動きが見られても、最終的には何度もトライしているうちに抜けてしまうという傾向が強いためですが、次に105円台前半に動いた時には思いのほか一気に円高に動く可能性があるでしょう。

そしてテクニカルな面です。日足チャートをご覧ください。

大きくは年初来高値を切り下げる円高トレンドが続いていますが、短期的に高値安値ともに切り下げる下降チャンネル(ピンクの平行線)の中での推移を継続中と考えられます。今週の上側のライン(レジスタンス)は107円から106円台後半を下降し、下側のラインは104円台後半を下降中で現在の水準はちょうどその真ん中とニュートラルな水準でもあります。

ただここまで書いてきたように、ドル円相場を取り囲む材料は円高方向に作用しやすいことを考えると、どうも下側のラインを試す可能性に気を付ける必要があるのではないかという見方をしたいと思います。ということで、今週はやや下方向にバイアスをかけ、106.70レベルをレジスタンスに、104.70レベルをサポートと105円トライの週になる動きを見ておくこととします。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2018年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

3月19日(月)
**:** G20(〜20日)
08:50 本邦2月貿易収支
08:50 日銀会合(9日)主な意見
19:00 ユーロ圏1月貿易収支
22:40 アトランタ連銀総裁講演

3月20日(火)
**:** FOMC(〜21日)
09:30 豪州10〜12月期住宅価格指数
09:30 豪中銀理事会(6日)議事録
17:00 南ア10〜12月期経常収支
17:00 南ア2月CPI
18:30 英国2月CPI、PPI
19:00 ドイツ3月ZEW景気期待指数
19:00 ユーロ圏3月ZEW景気期待指数
24:00 ユーロ圏3月消費者信頼感速報値

3月21日(水)
**:** 東京市場休場
18:30 英国2月失業率
18:30 英国2月財政収支
21:30 米国10〜12月期経常収支
23:00 米国2月中古住宅販売件数
23:30 米国週間原油在庫
27:00 FOMC結果公表
27:30 パウエルFRB議長会見
29:00 NZ中銀政策金利発表

3月22日(木)
09:30 豪州2月失業率
**:** EU首脳会議(〜23日)
16:45 フランス3月業況感指数
17:00 ユーロ圏1月経常収支
17:00 フランス3月製造業・サービス業PMI速報値
17:30 ドイツ3月製造業・サービス業PMI速報値
18:00 ユーロ圏3月製造業・サービス業PMI速報値
18:00 ドイツ3月ifo景況感指数
18:30 英国2月小売売上高
20:00 南ア1月小売売上高
21:00 英中銀MPC
21:30 米国新規失業保険申請件数
22:00 米国1月住宅価格指数
22:45 米国3月MarkIt製造業・サービス業PMI速報値
23:00 米国2月景気先行指数

3月23日(金)
**:** ムーディーズによる南ア格付け発表
08:30 本邦2月CPI
21:10 アトランタ連銀総裁講演
21:30 米国2月耐久財受注
23:00 米国2月新築住宅販売件数
23:30 (ミネアポリス連銀総裁講演)

3月24日(土)
 08:00 (ボストン連銀総裁講演)

3月25日(日)
 **:** 英国と欧州が夏時間移行

前週の主要レート(週間レンジ)

      始値  高値   安値  終値

ドル円  106.90 107.30 105.62 106.02
ユーロ円 131.58 132.43 130.09 130.16
ユーロドル 1.2309 1.2413 1.2260 1.2290
日経平均 21826.10 21971.16 21555.49 21676.51

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

3月12日(月)
 週明けのドル円は早朝こそドル買いが先行し106.98レベルまで水準を上げたものの107円には届かず107円台では売りが残っている様子でした。その後、森友問題で書き換えられた箇所に安倍首相夫人の名前があるとの報道に株安、円高とリスクオフの動きとなり106.36まで下落。野党側の追及は続くでしょうが現状では安倍内閣の責任にまで発展するところまでは考えていない参加者も多く、その後は一進一退のままNY市場で106.31まで安値をやや更新後に安値圏での引けとなりました。

3月13日(火)
 安寄りした株は寄り付き直後から買いに転じ、森友問題に絡むリスクオフはいったん収束したとの見方からドル円も大幅高の動きとなりました。ドル買いはNY市場朝方まで続きましたが、ティラーソン国務長官更迭のニュースに急反落、日経先物、ドル円ともに完全に行って来いとなり東京前場の水準に押しての引けとなりました。

3月14日(水)
 前日NY市場の国務長官更迭の余波から東京市場ではドルの上値が重たい展開を続けましたが、値幅は狭く106円台半ば後半での小動きに留まりました。またペンシルバニア州の補欠選挙は民主党候補が勝利宣言したものの得票があまりにも僅差で確定は26日以降となることから現状では若干のドル売り材料となった程度でした。NY市場に入ってからは米金利の低下と株安の動きからドル円はじりじりと水準を下げ106.07レベルを大台間近まで弱含んだ後にやや戻して引けました。

3月15日(木)
ドル円は森友問題が尾を引いて上値が重たいスタートを切りましたが、トランプ大統領が中国に対して対米黒字の削減を要求、それに伴いドル円も円買いの動きとなりました。後場には一時105.79レベルまで水準を下げたものの、欧州市場以降は欧州通貨安がリードするドル買いの動きから引けにかけてはほぼ行って来いでのクローズとなりました。

3月16日(金)
ドル円は大統領補佐官が更迭されるとのニュースから、今後も政権人事が強硬な保守派で固められていくことを懸念し、前場から株安・円高のリスクオフ相場となりました。106円を割り込み前日安値を下抜けると一段安となり欧州市場では105.62レベルの安値をつけました。NY市場では朝方の経済指標が強かったこと、ダウが買われる動きを見て一転買い戻しの動きとなり、週末前のポジション調整も重なって106円台に戻しての引けとなりました。

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