保護主義懸念で105円トライ(週報3月第一週)

先週のドル円は、木曜までは106円台後半を中心としたもみあいが続き方向感がはっきりしませんでしたが、木曜 NY後場のトランプ大統領による追加関税発言で一気にドル安へ

保護主義懸念で105円トライ(週報3月第一週)

今週の週間見通し

先週のドル円は、木曜までは106円台後半を中心としたもみあいが続き方向感がはっきりしませんでしたが、木曜 NY後場のトランプ大統領による追加関税発言で一気にドル安へと舵を切ることとなりました。関税の対象は鉄鋼とアルミで詳細は今週発表されるものの、明らかに中国を視野に入れた動きです。

その後もツイッターで貿易戦争といった発言を繰り返しているトランプ大統領に対して、EUは対抗措置を考えている等、米国による保護主義の動きが現実化してきたことに対し、各国が反発を強めています。しかし、トランプ大統領としては公約の大きな柱に不均衡是正というテーマがあり、税制改革が一段落したことから中間選挙に向けて公約実現に動いてきただけというところでしょう。

就任直後には米国の貿易赤字や通商政策の見直しといった発言も多く聞かれ、来日時には財界メンバーを前に対日赤字に対する不満を述べ、首脳会談でも改善を要求していました。中国とも別途交渉を続けていましたが思わしい進展が見られず、その後はホワイトハウスも税制改革に時間を割くべくしばらく止まっていたテーマです。

今回の追加関税で中国をターゲットにしてきたこと、また米国にとっての赤字国上位3カ国が中国、日本、ドイツであることを考えると日本に対しても何らかの動きをしてくる可能性は高いと考えざるを得ません。政府レベルでは首脳会談時にお土産を約束しているとも思えますが現時点でははっきりとしないため、警戒感から為替市場は円高ということになります。

先週は年初来安値を下抜け一時105.24レベルの安値をつけましたが、この105円台前半はトランプ大統領当選確定前後の水準であることから、個人的にはトランプ政権にとってニュートラルな為替水準であると考えていることはこれまでにも何度か触れてきました。当面はドルの上値が重たくなる展開は続きそうですが、いったん105円前後で踊り場を形成しながらも、次なるターゲットとしては大統領当選確定直後の101.20レベルを視野に入れて来る可能性も高いのではないかと見ています。

今週の材料としては連日イベント続きですが、その中でもドル円相場に重要なイベントは9日に集中しています。日銀会合後の黒田総裁会見と米国雇用統計です。黒田総裁は再任に向けての衆議院における聴取会で2019年頃の目標達成と同時期の出口戦略検討に言及しました。これまで大規模緩和のみ発言してきた黒田総裁としては、珍しい出口戦略と時期の明示です。もちろん目標が達成すればということではあるものの、会見で質問が出て来ることは間違いありませんので、それに対する回答次第では金利上昇と円高の要因となり得ます。

米国雇用統計は長期的に改善を続けていますので、今回の結果が良くても悪くても単月の結果をもって米国の金融政策に与える影響は少ないものと考えられますが、3月のFOMCでは2018年の金利見通しが示されますので、今週の数字によっては今後の見通しに多少の影響はあるかもしれないという点で一応は注意と言えるでしょう。ただ、結果がコンセンサスからずれた場合でも、今回ばかりは悪い数字に反応しやすいのではないかと見ています。

次にテクニカルな観点から見て行きます。日足チャートをご覧ください。

先週のドル円ショートコラムで示した逆N波動のフィボナッチ・エクスパンションによって求められる各ターゲット(青、紫)と、一番下にトランプ大統領当選直後の安値101.20をピンクの水平線で示してあります。グリッドの一番下は100円の大台です。

明確に年初からの下降トレンドを継続していることがわかると同時に、前月(紫の四角が一か月)安値を下回る動きが出て来ると、下げの動きが加速しやすいこともわかります。1月も2月もそうでしたが3月も早くも前月安値を下会わる動きを見せ、現在は105円の大台そしてターゲットが重なる104円前後を目先のターゲットとしやすい流れであることがわかります。

今週はイベントも多いため調整を挟みながらではあるものの、材料的にもテクニカルにも105円の大台トライは不可避であると考えています。今週は104.20レベルをサポートに、106.20レベルをレジスタンスとする一週間を見ておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2018年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

3月5日(月)
10:45 中国2月MarkItサービス業PMI
16:00 トルコ2月CPI
**:** メイ首相ブレグジットについて議会演説
17:50 フランス2月サービス業PMI確報値
17:55 ドイツ2月サービス業PMI確報値
18:00 ユーロ圏2月サービス業PMI確報値
18:30 英国2月サービス業PMI
19:00 ユーロ圏1月小売売上高
19:00 ギリシャ10〜12月期GDP確報値
23:45 米国2月MarkItサービス業PMI確報値
24:00 米国2月ISM非製造業景況指数

3月6日(火)
09:30 豪州10〜12月期経常収支
09:30 豪州1月小売売上高
12:30 豪中銀政策金利発表
18:30 南ア10〜12月期GDP
21:30 NY連銀総裁講演
24:00 米国1月製造業受注指数
30:35 豪中銀総裁講演

3月7日(水)
09:00 ブレイナードFRB理事講演
09:30 豪州10〜12月期GDP
10:30 (ダラス連銀総裁講演)
19:00 ユーロ圏10〜12月期GDP確報値
20:00 トルコ中銀政策金利発表
22:00 NY連銀総裁講演
22:00 アトランタ連銀総裁講演
22:15 米国2月ADP全国雇用者数
22:30 米国10〜12月期単位労働コスト確報値
22:30 米国1月貿易収支
24:00 カナダ中銀政策金利発表
24:30 米国週間原油在庫
28:00 ベージュブック

3月8日(木)
**:** 日銀金融政策決定会合(〜9日)
08:50 本邦10〜12月期GDP改定値
08:50 本邦1月国際収支(貿易収支)
09:30 豪州1月貿易収支
**:** 中国2月貿易収支
16:00 ドイツ1月製造業受注
21:30 米国2月チャレンジャー人員削減予定数
21:45 ECB理事会結果発表
22:30 ドラギECB総裁会見
22:30 米国新規失業保険申請件数

3月9日(金)
10:30 中国2月CPI・PPI
**:** 日銀会合結果発表
15:30 黒田日銀総裁会見
16:00 ドイツ1月鉱工業生産
18:30 英国1月鉱工業生産
18:30 英国1月貿易収支
22:30 米国2月雇用統計
24:00 米国1月卸売売上高
26:40 (ボストン連銀総裁講演)
26:45 (シカゴ連銀総裁講演)

3月11日(日)
 **:** 米国夏時間移行

前週の主要レート(週間レンジ)

       始値  高値   安値  終値

ドル円  107.07 107.68 105.24 105.72
ユーロ円 131.59 132.18 129.58 130.27
ユーロドル 1.2289 1.2355 1.2155 1.2318
日経平均 22134.64 22502.05 21088.96 21181.64

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

2月26日(月)
 週明けのドル円は株価が下げて始まったことと仲値の実需売りが重なってドル売りが先行しました。日経平均株価は午後に入り買いに転じたもののドル円は売りが強く、欧州市場序盤には一時106.38レベルまで売られたもののそこまで。海外市場に移ってからは強い株式市場を見ながらリスクオンの動きとなり、NY市場では東京朝方の水準まで戻しての引けとなりました。

2月27日(火)
 パウエルFRB議長の議会証言を前にしてドル円は106.90を中心とした狭い値幅で様子見の状態が続きました。パウエル新議長は強い経済見通しと緩やかな利上げ継続を示したことから市場参加者は同氏としてはタカ派と取り、3月のFOMCを前にして年4回利上げ思惑からドル買いの流れとなりました。米金利上昇とともにドル円は一時107.68レベルまで上昇しましたが、米国株は利上げ思惑を嫌気して大幅安、引けにかけてはドル円も107円台前半に押しての引けとなりました。

2月28日(水)
 パウエルFRB議長の議会証言後のポジション調整と株安に押されて東京市場からじり安の展開となりました。その後LDNフィキシングで月末の実需円買いが出たこと、NY市場では株安と重なって106.57レベルの安値をつけ安値圏での引けとなりました。

3月1日(木)
東京市場では株安にも関わらず底堅い動きとなりました。前日に下げた動きに対しての調整と考えられますが、動きが出たのはNY市場に入ってから。NY朝方の強い経済指標も手伝って107.20レベルの高値をつけましたが、トランプ大統領が鉄鋼とアルミの関税に言及したことをきっかけに米国株が大幅安となり、それを見てドル円も急反落。安値106.16レベルまで1円以上もの下げを演じ安値圏での引けとなりました。

3月2日(金)
前日NY市場の追加関税発言が尾を引いて、東京市場でも保護主義を懸念した株安、ドル安のリスクオフ相場となりました。NY市場が始まる前にドル円は年初来安値を下抜け、一時105.24レベルの安値をつけましたが、105円の大台を割り込むほどの勢いは週末を前にしてありませんでした。安く始まった米国株も引けにかけてはじり高推移となり、ドル円も105円台後半に戻しての週末クローズとなりました。

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