<< 先週の回顧 >>
先週のドル/円相場は、ドル安・円高。週のザラ場ベースでは一時105.24円まで値を下げ、年初来安値を更新する局面も観測されている。
ドル/円は、前週末のNYクローズよりややドル高の107.10円レベルで寄り付いた。その後、週の半ばにかけてドルは107円挟みで底堅い値動きをたどるなか、107.68円の週間高値を記録した。パウエルFRB議長が議会証言のなかで、「利上げ回数を増やす必要性を検討する可能性を示唆」したことが好感されていたという。
しかし、高値を付けたのちドルは急落へ。週末にかけては一気に流れが変わり105円台まで2円以上も値を下げた。一時は105.55円の年初来安値も割り込むなど、ドルは一段安の展開に。安値105.24円からは小反発に転じたものの上値は重く、週末NYは105.70-75円で取引を終え越週している。
一方、週間を通した主な材料のひとつは、「米国の保護主義政策」関連ニュース。週初からNAFTA会合などをにらみ実施される予定だった「トランプ大統領とペニャニエト・メキシコ大統領の会談が中止」に。キナ臭い雰囲気が漂うなか、トランプ米大統領が「鉄鋼とアルミニウム輸入に追加関税を課す方針」を表明したことが貿易摩擦懸念の強まりに繋がり、週末にかけてのリスク回避志向に繋がっていた面は否めない。
そのほかでは、パラリンピック後をにらんだ「北朝鮮情勢」に関する発言や報道、あるいは連日のように報じられた「トランプ政権をめぐるゴタゴタ」も一部で話題となっていた。後者について、幾つかピックアップすれば、「トランプ氏側近、ホワイトハウス広報部長が退任」「トランプ米大統領が、ツイッターでセッションズ司法長官に対する批判を展開」「米国務省のユン北朝鮮担当代表、週内に辞任へ」「トランプ政権がマクマスター大統領補佐官を4月にも交代させる準備をしている」−−などといった報道が観測されていた。
<< 今週の見通し >>
前述したように、先週ドルは年初来安値を更新しているが。まだ下げ止まった感はない。マーケットを取り巻く環境を考えても、リスクはドル安・円高に掛かると言わざるを得ないだろう。
ちなみに、円高にバイアスがかかると考える要因は大きく3つあり、順を追って説明すれば「再び下値不安が台頭し始めた米国を中心とした株価動向」、「3月期末をにらんだ本邦実需筋の為替予約やリパトリエーションと呼ばれる国内への資金還流観測などの需給要因」、「世界的な貿易戦争への拡大も懸念される米保護主義政策の行方」などになる。とくに、3つ目は週末にかけて、トランプ大統領が「貿易戦争は有用」「EUが報復措置をとれば、再報復も」と発言するなど、懸念がさらに拡大する様相を呈していることが気掛かりだ。状況次第では、さらなるドル安・円高が進行する危険性も秘めている。
テクニカルに見た場合、年初来安値105.55円を割り込んできており、リスクは引き続き下向きにバイアス。先週示現した新たな年初来安値105.24円を下回れば、心理サポートでもある105円レベルの攻防が注視されそうだ。
その下となると、しばらく取引がない空白地帯であるため明確な下値メドを指摘しにくいが、2016年安値98.65円を起点とした上げ幅の76.4%戻しは103.35-40円となる。本稿執筆時からでも2円以上離れており、やや遠いが、重要サポートとして頭の片隅にでも留めておいて損はないだろう。
一方、材料的に見た場合、2月のISM非製造業景況指数や同雇用統計といった重要な米経済指標の発表が連日目白押し。また、クオールズFRB副議長をはじめ通貨当局者の講演も少なくない。
そのほか、日本でも日銀の副総裁候補に対する国会所信聴取や、日銀の金融政策決定会合が実施される予定で注視している向きも多いようだ。さらに、ドイツの連立政権については一応のカタがついたとはいえ、先週末に実施されたイタリア総選挙の結果や英国を含めた欧州の政治要因などは、依然として波乱含み。日米以外の要因で、ドル/円が動く展開にも一応注意しておきたい。
そんな今週のドル/円予想レンジは、104.50-107.00円。ドル高・円安については、106円半ばレベルが最初の抵抗で、抜ければ移動平均の4週線などが位置する107円レベルがターゲットに。
対するドル安・円高方向は、先週記録した年初来安値105.24円、心理サポートの105円をめぐる攻防にまずは注視。割り込めば、現段階で104円台に強いサポートの見当たらないことが気に掛かる。(了)
オーダー/ポジション状況
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