ドル円議会証言から上昇するも108円には届かず(2/28)

議長証言は利上げ姿勢が従前より積極的となった印象を市場に与えてドルは全面高となり、米10年債利回りも2.90%台を回復する上昇となり、ドル円は107.67円まで上昇した。

ドル円議会証言から上昇するも108円には届かず(2/28)

【概況】

米長期債利回り上昇を背景に2月16日安値105.546円から21日高値107.90円まで上昇したが、先週後半は米長期金利上昇が一服して緩んだことで下落、週明けの26日は106.37円まで下落する場面があった。
27日夜のパウエル米連銀議長による下院議会証言を控えて27日の日中は107円を挟んだ持ち合いで推移、議長証言は利上げ姿勢が従前より積極的となった印象を市場に与えてドルは全面高となり、米10年債利回りも2.90%台を回復する上昇となり、ドル円は107.67円まで上昇した。しかし21日高値107.90円超え、108円乗せへは一気に進めていない。ドル高は反面でユーロ安、豪ドル安等となり、ユーロ安円高、豪ドル安円高等のクロス円における円高がドル円にとってはややブレーキとなった。またNYダウが300ドル近い下落となったことで株安リスクもドル円の上昇を抑えたようだ。

【パウエル議長証言骨子】

(1)さらなる緩やかな利上げが最善、利上げペースには言及無し
(2)米経済、今後2〜3年は非常に堅調
(3)昨年末と比べて「米景気の先行きは底堅くなった」「景気への逆風が追い風に変わった」
(4)財政刺激と輸出が景気下支え、賃金は速いペースで上昇する見通し
(5)大型減税、歳出拡大策による効果により、インフレ率が目標に向かうとの自信が深まった
(6)インフレ率は今年上昇し、中期的にFRBが目標とする2%前後で安定する
(7)金融不均衡の増大は見られない
(8)米株価の2月急落は景気見通しの重石になっていない
(9)大型減税や拡張的な財政で政府債務が膨張すると見込まれていることは「持続可能ではない」
(10)3月のFOMCでは個々のメンバーが昨年12月の会合以降の動向を考慮に入れ、新しい金利の道筋を示すと予想

パウエル議長の証言後、米短期金利先物市場では市場が織り込む利上げ確率が3月で100%、4-6月が約80%、7-9月が約70%、10-12月が50%となった。
昨年12月のFOMCでは2018年に三回の利上げというのがメンバーの予想中央値だと示されたが、22日未明に公開された1月FOMC議事録では、景気やインフレ見通しへの楽観的自信が12月時点よりも上向いたことが示された。パウエル議長の証言もこの議事録に沿ったものと言えるが、今後の景気動向次第では利上げペースの加速もあり得ること、3月のFOMCではメンバーの利上げ姿勢が利上げ回数の拡大等でより積極的なものとなる可能性もあるという印象となった。
次回会合は3月20日、21日に開催される。来週末には米雇用統計があるが、それら米経済指標が良好で株安も警戒すべき程の暴落にならなければ、FOMCメンバーの利上げ予想回数中央値が3回から4回へ変わるか、3回と4回が同数に近い状況になるかもしれない。

ドル円にとっては2月16日にかけては米長期金利上昇がドル高円安要因にはなっていなかったが、米10年債利回りが2.9%台へ一段と上昇したことにより16日から21日にかけてはこれを強気材料として上昇した。先週後半は長期金利が緩んだことでの下落だった。こうした流れを踏まえると、雇用統計から次回FOMCにかけて米長期金利上昇基調が進むなら、ドル円も同調して上昇しやすいと言えるだろう。しかし、株安が警戒すべき下落となる場合や、ユーロ安、豪ドル安等がドル円の上昇を抑えることになると、108円台序盤へ乗せてもそれ以上へ進めないか、逆にリスク回避が主因となって全般的なドル高の一方でドル円は下落、クロス円での円高が目立つという展開も考えられる。
108円台前半は2月前半までの重要な支持帯だったため、逆に今後は重要な抵抗帯となりやすい。

【60分足 一目均衡表分析】

【60分足 一目均衡表分析】

60分足の一目均衡表では2月27日夜の上昇で先行スパンを上抜いた。遅行スパンも好転している。このため、遅行スパン好転中は高値試しを優先し、遅行スパン悪化からは弱気転換注意、先行スパン転落からは下落期入りと考える。2月28日未明安値107.27円を割り込む状況が続き始める場合は遅行スパン悪化、26本基準線割れとなるため弱気転換注意とみる。

60分足の相対力指数は23日未明安値から26日午後安値にかけての間で指数のボトムが切り上がる強気逆行型を見せてきたが、27日夜の上昇で70ポイントを超えるところまで上昇した。今のところは弱気逆行が見られていない。27日深夜高値を上抜いた段階で指数のピークが切り下がるようなら逆行発生からの弱気転換注意と考える。

概ね3日から5日周期の短期的高値・安値形成サイクルでは、21日昼と22日未明高値をミニダブルトップとして下落していたが、27日夜の上昇で26日朝高値を上抜いたことにより、26日昼安値を直近のサイクルボトムとして強気サイクルに入ってきたと思われる。今回の高値形成期は27日から3月1日にかけての間と仮定するが、26日朝高値超えによる上昇のため3月2日にかけて延長される可能性もある。ただし、107円割れから続落の場合は弱気サイクル入りの可能性を優先して3月1日から5日午前にかけての間への下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、2月28日未明安値(107.27円)を支持線、27日深夜高値(107.67円)を抵抗線とみておく。
(2)28日未明安値割れ回避の内は高値更新余地ありとし、27日深夜高値超えの場合は107.90円から108.20円台にかけての上昇を想定する。108円台序盤では戻り売りが出やすいとし、高値から0.50円以上下落の場合は下落再開注意とするが、107.30円以上を維持して終了の場合は1日も高値を試す可能性ありとみる。
(3)28日未明安値割れからは弱気転換注意として107円試しを想定する。107円割れではいったん買い戻しも入りやすいとみるが、107円割れから切り返せずに続落の場合は下げ再開と仮定して106円台中盤試しを想定する。また106.80円以下で終了の場合は1日の日中への下落で106円台序盤、さらに106円割れへ進む可能性ありとみる。(了)<9:45執筆>

【当面の主な予定】

2/28(水)
14:00 (日) 1月 新設住宅着工戸数 前年比 (12月 -2.1%、予想 -5.2%)
17:55 (独) 2月 失業率 (1月 5.4%、予想 5.4%)
19:00 (欧) 2月 消費者物価指数(HICP 速報)前年比 (1月 +1.3%、予想 +1.2%) 
22:30 (米) 10-12月期 四半期GDP、改定値 前期比年率 (速報 2.6%、予想 2.5%)
23:45 (米) 2月 シカゴPMI (1月 65.7、予想 64.0)
24:00 (米) 1月 住宅販売保留指数 前月比 (12月 0.5%、予想 0.5%)
24:00 (米) パウエル米FRB新議長 上院銀行委員会証言

3/1(木)
10:45 (中) 2月 財新製造業PMI (1月 51.5、予想 51.3)
18:30 (英) 2月 製造業PMI (1月 55.3、予想 55.2)
19:00 (欧) 1月 失業率 (12月 8.7%、予想 8.6%)
22:30 (米) 1月 個人消費 前月比 (12月 0.4%、予想 0.2%)
22:30 (米) 1月 個人所得 前月比 (12月 0.4%、予想 0.3%)
22:30 (米) 1月 PCEコア・デフレーター 前月比 (12月 0.2%、予想 0.3%)
22:30 (米) 1月 PCEコア・デフレーター 前年比 (12月 1.5%、予想 1.5%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.2万件、予想 22.6万件)
24:00 (米) 1月 建設支出 前月比 (12月 0.7%、予想 0.2%)
24:00 (米) 2月 ISM製造業景況指数 (1月 59.1、予想 58.7)

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