【概況】
昨年11月6日天井114.73円に対する戻り天井となった12月12日高値113.75円からの断続的な下落が続き、今月も2月2日の戻り高値110.48円から一段安へ入り、2月13日に108円割れ、14日に昨年9月8日底107.32円および107円を割り込み、16日には105.546円まで下げた。
2月19日の米国休場をきっかけにドル全般への買い戻しが入って2月21日には107.90円まで戻したが、22日未明のFOMC議事録公開では、12月会合よりも1月会合の方が利上げ姿勢の積極性が増したと市場は受け止め、ユーロは対ドルで安値を更新したが、ドル円は一段高のきっかけにならず、イベント通過感と米長期金利上昇一服により週後半への下落へ向かい、週末は106円台へ下げた。
【米長期金利が一段と上昇でドル反発するも、ドル円の戻りは限定的】
2月16日までの下落はドル全面安によるものだった。米長期金利は上昇してきていたが、それ以上にドル安感が強まったことで米長期金利上昇にもかかわらずドル円は下落した。欧州の長期金利上昇および先行きの上昇継続感が米長期金利上昇感を上回ったこともあるだろう。また年末の米税制改革法成立、連邦予算債務上限引き上げ、今年始まる巨額インフラ投資等による米財政収支悪化懸念等も背景だったと思われる。
しかし、米10年債利回りが2.9%を超え、先行き危険水準ともいわれる3%を超えるのではないかとの思惑が、19日の米休場による連休、米国債の大量入札予定、22日未明のFOMC議事録公開等を意識したポジション調整に影響して16日夜からはドルが反騰、ドル円も同調して戻したと思われる。
米10年債利回りは21日に2.957%へ上昇して4年ぶり高水準となったが、その後はやや落ち着き、週末は2.868%で終了している。米長期金利上昇一服によりユーロ安も一服、ドル円も失速して終了したといえる。
米連銀は1月30-31日のFOMC(連邦公開市場委員会)議事要旨を公表、トランプ政権の減税等により短期的な景気見通しが上振れる可能性があり、大半の参加者が「さらなる緩やかな利上げが適切である公算が大きい」として利上げに積極的な姿勢であることが示された。また大半の参加者は昨年12月時点での想定よりも米経済が緩やかに上振れしているとの認識で一致、インフレが上向くとし、また数人は2%のインフレ到達の見通しに自信を強めたと発言した。
今回の議事録により、米連銀の利上げペースが昨年12月に想定された3回を超える可能性も出てきたといえる。市中の長期金利が上昇している中で米連銀の利上げペースが実体から遅れているという見方もできる。しかし2月序盤にNYダウが暴落的に下げるなど、長期金利上昇および利上げペース加速問題はかじ取り次第では金融市場全般を動揺させかねない。ひとまずNYダウが反騰入りしているため米連銀が株暴落の引き金を引くリスクはやや後退したかもしれないが、新任議長には荷が重いかもしれない。
米下院金融サービス委員会は23日、パウエル連銀(FRB)新議長の議会証言を当初予定していた28日から、27日午前10時(日本時間28日午前0時)に変更すると発表した。日本時間27日22時半には議会証言の事前テキストが公表される予定。上院銀行委員会での証言は3月1日午前10時(同2日午前0時)に予定されている。議長証言が米連銀の利上げペース加速を意識させるものになるのか、緩めるのか注目される。
【5か月周期の底打ち反騰を継続できるか】
2月16日への下落で昨年9月8日底を割り込んだことは、ドル円が中長期的な下落基調の中でさらに一段安へと進みつつある状況を示唆したものと思う。しかし、従前から指摘しているように2016年6月24日の英国EU離脱ショック、同年11月9日のトランプ大統領誕生ショック、2017年4月17日底、同年9月8日底と、凡そ5か月周期で重要な安値を付けては上昇してきたリズムがある。
昨年9月8日も同年4月17日安値を割り込んで一段安したところからいったん大きく戻した。今回さらに安値を更新したことを踏まえれば、9月8日の安値更新時点で今年の下落が示唆されていたと考えるべきだが、安値更新の後に一定程度戻しに入ることも多々ある。さらなる一段安を期待して順張り的に売りしかけた弱気派がリバウンドの中で損切りの買い戻しを余儀なくされてリバウンド継続を助長するためだ。
2月16日安値当日から日足は赤三兵(3日連続陽線)を入れて4連騰した。昨年9月8日からの反騰も赤三兵であった。しかし、今回の戻りは今のところ21日までの2.35円幅に止まりその後の下げで半値を削っているので、まだ勢い付いたとまでは言えない。1月26日安値から2月2日への戻りも赤三兵が入ったが戻り幅は2.19円幅、その前の1月2日安値から1月8日の戻りでも赤三兵が入ったものの戻り幅は2.33円幅に止まり、いずれもその後に一段安している。つまり、昨年11月高値からの下落基調の範囲における数日の小規模反発に止まるのか、昨年9月8日から2か月間戻したような中勢規模のリバウンドに入れるのか、月末月初の展開によって決まってくるのだろうと思われる。
【当面のポイント】
(1)2月21日高値107.90円超えから108円乗せ、維持へと進む場合、2月16日安値からの4連騰に続く二段目の上昇入りとなるため、リバウンドがさらに継続してゆく可能性がある。27日深夜のパウエル議長議会証言等をきっかけに上昇継続の場合は昨年9月8日から11月6日まで大幅上昇した時ほどには戻せないにしても、110円前後まで戻りを試す可能性が出てくると思う。重要抵抗線となる26日移動平均が108.55円前後、その上の52日移動平均は110.44円前後でいずれも下降中であるが、21日高値超えの場合は両線を試す可能性が出てくると思う。
(2)21日高値を上抜けないか、わずかに上抜いても失速して106円割れへと崩れる場合、2月16日安値105.546円試しへ進み、底割れの場合は2016年12月高値から2017年4月安値までの下げ波動並みとして104.18円前後、さらに103円台序盤への下落へ向かう可能性が出てくると思う。
(3)上昇基調ないし下落基調から変化するタイミングとしては、2月27日深夜のパウエル議長議会証言、3月9日の米雇用統計、3月20−21日の米FOMCの前後が考えられる。流れが変わらなければその次のイベントまで流れは継続しやすいと考えておく。(了)<25日22:30執筆>
【当面の主な予定】
2/26(月)
14:00 (日) 12月 景気先行指数(CI)改定値 (速報 107.9)
22:00 (米)ブラード米セントルイス連銀総裁、講演
24:00 (米) 1月 新築住宅販売件数 年率換算 (12月 62.5万件、予想 65.0万件)
24:00 (米) 1月 新築住宅販売件数 前月比 (12月 -9.3%、予想 4.0%)
2/27(火)
05:15 (米) クオールズFRB副議長、米経済見通し
06:45 (NZ) 1月 貿易収支 (12月 6.40億NZドル、予想 -1.00億NZドル)
19:00 (独) ワイトマン独連銀総裁、独連銀年次報告
22:00 (独) 2月 消費者物価指数 速報値 前月比 (1月 -0.7%)
22:30 (米) 1月 耐久財受注 前月比 (12月 2.8%、予想 -2.0%)
22:30 (米) 1月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (12月 0.7%、予想 0.3%)
22:30 (米) パウエル米FRB議長、議会証言原稿
23:00 (米) 12月 住宅価格指数 前月比 (11月 0.4%、予想 0.4%)
23:00 (米) 12月 ケース・シラー住宅価格指数 前年比 (11月 6.4%、予想
24:00 (米) パウエル米FRB新議長、下院証言
24:00 (米) 2月 リッチモンド連銀製造業指数 (1月 14、予想 15)
24:00 (米) 2月 消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード) (1月 125.4、予想 126.0)
2/28(水)
08:50 (日) 1月 小売業販売額 前年比 (12月 3.6%、予想 2.3%)
08:50 (日) 1月 鉱工業生産 速報 前月比 (12月 2.9%、予想 -4.2%)
09:00 (NZ) 2月 NBNZ企業信頼感 (1月 -37.8、予想
10:00 (中) 2月 国家統計局 製造業PMI (1月 51.3、予想 51.2)
14:00 (日) 1月 新設住宅着工戸数 前年比 (12月 -2.1%、予想 -5.2%)
17:55 (独) 2月 失業率 (1月 5.4%、予想
19:00 (欧) 2月 消費者物価指数(HICP 速報)前年比
22:30 (米) 10-12月期 四半期GDP、改定値 前期比年率 (速報 2.6%、予想 2.5%)
23:45 (米) 2月 シカゴPMI (1月 65.7、予想 64.0)
24:00 (米) 1月 住宅販売保留指数 前月比 (12月 0.5%、予想 0.5%)
24:00 (米) パウエル米FRB新議長 上院銀行委員会証言
3/1(木)
08:50 (日) 10-12月期 四半期法人企業統計 全産業設備投資額 前年比 (前期 4.2%、予想 2.8%)
09:30 (豪) 10-12月期 四半期民間設備投資 前期比 (前期 1.0%、予想 1.0%)
10:45 (中) 2月 財新製造業PMI (1月 51.5、予想 51.3)
17:55 (独) 2月 製造業PMI、改定値 (速報 60.3、予想
18:00 (欧) 2月 製造業PMI、改定値 (速報 58.5、予想
18:30 (英) 2月 製造業PMI (1月 55.3、予想 55.2)
19:00 (欧) 1月 失業率 (12月 8.7%、予想
22:30 (米) 1月 個人消費 前月比 (12月 0.4%、予想 0.2%)
22:30 (米) 1月 個人所得 前月比 (12月 0.4%、予想 0.2%)
22:30 (米) 1月 PCEコア・デフレーター 前月比 (12月 0.2%、予想 0.3%)
22:30 (米) 1月 PCEコア・デフレーター 前年比 (12月 1.5%、予想
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.2万件、予想
24:00 (米) 1月 建設支出 前月比 (12月 0.7%、予想 0.2%)
24:00 (米) 2月 ISM製造業景況指数 (1月 59.1、予想 58.6)
3/2(金)
08:30 (日) 2月 東京都区部消費者物価コア指数 前年比 (1月 0.7%、予想 0.8%)
08:30 (日) 1月 失業率 (12月 2.8%、予想 2.7%)
08:50 (日) 2月 マネタリーベース 前年比 (1月 9.7%、予想
19:00 (欧) 1月 生産者物価指数 前月比 (12月 0.2%、予想
19:00 (欧) 1月 生産者物価指数 前年比 (12月 2.2%、予想
24:00 (米) 2月 ミシガン大学消費者信頼感指数 確報 (速報 99.9、予想 98.0)
オーダー/ポジション状況
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