ドル円 昨年9月底を割り込み攻防期入り(2月第三週)

丸1週間の下落、さらに2月2日深夜高値からは丸2週間の下落のため、目先はいったん戻すか、下げ渋る可能性がある。

ドル円 昨年9月底を割り込み攻防期入り(2月第三週)

【概況】

1月26日以降、1月27日未明安値108.28円を年初来安値としつつ108円割れを回避して109円を挟んだ持合いが2週間続いた。1週間前の2月9日には108.04円まで下落して1月27日安値をわずかに割り込んだが戻したため、それまでの支持線に対する「徳俵」にかろうじて足が残った状況だった。
しかし、2月13日に1月27日安値及び108円を割り込んで一段安となり、さらに2月14日には昨年9月8日安値107.32円及び107円を割り込んだ。2月15日も続落して106.03円の安値を付け、2月16日には106円も割り込んで昼過ぎには105.546円の年初来安値を付けた。
105円台は2016年11月のトランプラリーで大上昇し始めた時以来、1年3か月振りの安値となった。ちなみにトランプラリー開始当初のパニックで付けた安値が2016年11月9日安値101.19円である。

2月8日から2月15日までが十字線挟みの日足陰線地合いとなったが、似た動きとして7日連続陰線で1月8日から1月16日までの間で発生しており、今年は早くも2回目の警戒地合いとなる。その時は翌日を陽線で反発し、翌々日の1月18日へ戻り高値を切り上げたが、その後は1月27日未明安値まで一段安している。2017年は3月10日の戻り天井後に8日連続陰線が発生しているが、6日連続陰線も、かなりインパクトのある下げ方と言えるだろう。

【米長期金利上昇と逆相関するドル安】

2017年12月の米連銀FOMCにおいて同年3回目の利上げが決定され、2018年3回の利上げ姿勢が示されたが、その後に米長期金利は上昇に転じ、年末年始と続伸してきた。米10年債利回りは先週後半には2.9%を超えて4年ぶりの水準に達し、30年債利回りも2017年3月以来の高水準へと上昇した。しかし、通常なら米長期金利が上昇すればドルは総じて強含みの展開となる=正相関すべきなのだが、今回は逆相関となりドル指数は12月後半からの下落で2017年9月底を割り込んで一段安となった。ドル指数の最大構成通貨であるユーロは対ドルで昨年9月高値を更新する一段高となり、ドル円はドル指数、ユーロに対してはやや遅れたが9月底を割り込む一段安となってきた。

この米長期金利上昇とドル安という逆相関は、米長期金利上昇の主要因が米景気の強さとそのブレーキ役としての利上げペース加速の可能性という問題ではなく、米国債そのものが先行きの需給緩和懸念で下落し、その結果として長期債利回りが上昇してしまっているとういうドルの弱さを示していると思われる。
昨年末に成立した大規模減税を伴う米税制改革、2月初旬の米政府閉鎖問題を当面回避するための予算合意と債務上限引き上げ、これから始まるであろう巨額インフラ投資計画等により、米財政収支の悪化が進むとの見方が強まってきているが、債券市場はそれを先取りして下落=長期債利回りが上昇しているとすれば、米連銀の利上げは債券市場動向に対する追認的な利上げとなり、米国債安およびドル安に対する短期的なブレーキとなっても、本質的なドル安は続くということになりはしないか。そうした懸念を抱かせるようなドル安、ドル円の下落が年初から始まっている可能性も考えておく必要があるだろう。

【105円割れ回避で一服できるか?】

2月16日に105.546円の安値を付けてからは106円台を回復して先週を終えた。連日の下げの後であり、11月高値からの下落もすでに3か月、年初からの下落加速も1か月を経過しているため、ひとまず下げ一服となる可能性はあるだろう。
昨年4月17日安値を9月8日に割り込んだ時は、翌営業日の9月11日から反騰、リバウンドは11月6日まで2か月間続いた。今回も昨年9月8日安値を割り込む一段安ではあるが、安値更新後に反騰する事例も多々ある。
2016年6月24日の英国EU離脱決定ショックから5か月後の2016年11月9日のトランプショック、さらに5か月後の2017年4月17日、5か月後の9月8日と、5か月毎に重要な底値を付けてきたが、昨年9月8日からちょうど5か月を経過している。こうした売られ過ぎと周期性を踏まえれば、昨年9月底からの反騰を再現する可能性も出てくるかもしれない。

底割れから一転して反騰となる場合は市場心理も総悲観から一挙に強気転換してくるためリバウンドに弾みもつく。このため、2月19日からの週で早々に安値更新へ進まない場合、あるいは107.50円超えへ反騰してくる場合は、108円台への上昇あるいはそれ以上に戻しにかかる可能性も出てくるかもしれない。この点がドル円の弱気派にとっての注意事項と考える。

しかし、今回の下落が日足レベルの循環的な円高ドル安局面としてではなく、より中長期的な円高ドル安の開始を意味している場合は、数日の下げ渋り、ないしは反騰があっても長続きしないものと思われる。例えば数日の下げ渋り持合いから一段安し始める場合や、いったん安値から2円、3円と大きく戻したものの戻り幅の半値を急速に解消する下落が発生する場合は、つかの間の強気心理回復に終わり、円高ドル安感が一段と加速すると注意すべきだろう。

2016年末からの日足を見れば循環的な推移であり、安値を更新したもののリバウンドを見せてもよい時間帯といえる。しかし週足レベルでみれば、2017年4月以降の中段持合いからの転落であり、2016年12月の戻り天井からの下落中断が再開し始めた印象を与える。月足も下落再開感を抱かせる。リバウンド期待派はこうした中長期的な円高ドル安について警戒しておくべきだろう。

【当面の強弱分岐点】

【当面の強弱分岐点】

(1)丸1週間の下落、さらに2月2日深夜高値からは丸2週間の下落のため、目先はいったん戻すか、下げ渋る可能性がある。このため、新たな安値更新を回避するうちは第一に2、3日の反発か下げ渋り、長引く場合は1週間の反発があり得ると考える。
(2)リバウンドが短い場合は19日から20日にかけて、107円前後への反発を想定するが、107円をいったん超える場合は106円割れへ失速しないうちは週末までリバウンドが続く可能性に注意する。
(3)21日以降へ戻り高値を切り上げる場合は107円台後半への上昇を想定し、次の下落再開は週末ないし週明けからと仮定する。22日未明のFOMC議事録公開から崩れる可能性に注意するが逆にそれを強気で通過すれば週末まで上昇基調が継続しやすくなると思われる。

(4)先週の様に1円程度の戻りに止まり、早々に106円割れへと崩れだす場合、および107円まで到達しても20日、21日には106円割れへと失速する場合は週後半の安値更新から104円台を目指すとみる。22日未明のFOMC議事録公開から円高ドル安が加速する場合は103円以下へ崩れる可能性にも注意する。(了)<18日21:00執筆>

【当面の主な予定】

2/19(月)
休 場 米国(ワシントン生誕日)、カナダ(家族の日)、中国、香港(旧正月)
08:50 (日) 1月 貿易統計(通関ベース) (12月 3590億円、予想 -1兆303億円)

2/20(火)
休 場 中国(旧正月)
06:45 (NZ) 10-12月期 四半期PPI 前期比 (前期 1.0%、予想
09:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)、金融政策会合議事要旨公表
19:00 (独) 2月 ZEW景況感調査(期待指数) (1月 20.4、予想 16.2)
24:00 (欧) 2月 消費者信頼感 速報値 (1月 1.3、予想 1.1)

2/21(水)
休 場 中国(旧正月)
17:30 (独) 2月 製造業PMI、速報値 (1月 61.1、予想 60.5)
17:30 (独) 2月 サービス業PMI、速報値 (1月 57.3、予想 57.0)
18:00 (欧) 2月 製造業PMI、速報値 (1月 59.6、予想 59.2)
18:00 (欧) 2月 サービス業PMI、速報値 (1月 58.0、予想 57.6)
18:30 (英) 1月 失業率 (12月 2.4%)
18:30 (英) 12月 失業率 ILO方式 (11月 4.3%、予想 4.3%)

23:00 (米) ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁、講演
23:15 (英) カーニー英中銀(BOE)総裁、講演
24:00 (米) 1月 中古住宅販売件数 年率換算 (12月 557万件、予想 561万件)
24:00 (米) 1月 中古住宅販売件数 前月比 (12月 -3.6%、予想 0.7%)
28:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC 1/30-1/31会合分)議事要旨公表

2/22(木)
14:15 (米) クオールズFRB副議長、講演
18:00 (独) 2月 IFO企業景況感指数 (1月 117.6、予想 117.0)
18:30 (英) 10-12月期 GDP、改定値 前期比 (速報 0.5%、予想 0.5%)
18:30 (英) 10-12月期 GDP、改定値 前年比 (速報 1.5%、予想 1.5%)
21:30 (欧) 欧州中央銀行(ECB)理事会議事要旨
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.0万件、予想 22.5万件)
24:00 (米) ダドリー米NY連銀総裁、講演
26:10 (米) ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演

2/23(金)
06:45 (NZ) 10-12月期 四半期小売売上高 前期比 (前期 0.2%、予想 +1.3%)
08:30 (日) 1月 全国CPI 前年比 (12月 1.0%、予想 1.3%)
08:30 (日) 1月 全国コアCPI 前年比 (12月 0.9%、予想 0.8%)
08:50 (日) 1月 企業向けサービス価格指数 前年比 (12月 0.8%、予想 0.8%)
16:00 (独) 10-12月期 GDP、改定値 前期比 (速報 0.6%、予想 0.6%)
16:00 (独) 10-12月期 GDP、改定値 前年比 (速報 2.3%、予想 2.3%) 
19:00 (欧) 1月 消費者物価指数(HICP)改定値 前年比 (12月 1.3%、予想 1.3%)

2/24(土)
05:40 (米) ウィリアムズ米サンフランシスコ連銀総裁、講演

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