ドル円 要人発言後もドル安基調変わらず(1月第五週)

米財務長官、トランプ大統領、日銀黒田総裁らの発言に振り回されたものの、大きな流れは1月8日以降は円高ドル安の推移であり、

ドル円 要人発言後もドル安基調変わらず(1月第五週)

【概況】

12月序盤からは112円前後を支持線とした小持ち合いからの転落を警戒すべきというスタンスで見てきたが、1月8日高値からの下落でこの持ち合いから下放れとなった、1月17日への下落では110円割れを回避して23日の日銀金融政策決定会合までは110円割れ回避での下げ渋り的な持ち合いとなっていたが、23日の日銀金融政策現状維持および午後の黒田総裁会見終了後に円高が加速、110円割れに至った。
さらに1月24日にはダボス会議出席中の米財務長官によるドル安容認発言が報じられてドル全面安となり、25日には109円割れ、26日未明には109.49円の安値を付けた。

26日早朝には同じくダボス会議出席のトランプ大統領が財務長官によるドル安容認発言を否定する内容の発言を行ったことでいったん反騰して26日午前には109.77円まで戻したものの、110円には届かず、短時間の反騰一巡後には円高がぶり返した。
27日未明はこれもダボス会議出席の日銀黒田総裁が「インフレ目標に近づいている」旨を発言したことから円高を助長、27日未明には108.28円まで安値を切り下げた。その後、日銀筋としてはインフレ見通し等のスタンスに変化はないとの火消しもあって27日早朝はやや戻したものの、戻りは限定的だった。

【ドル安助長の動き】

1月25日のECB理事会は金融政策を現状維持としたが、市場は年内の量的緩和終了、来年の利上げサイクル入りを見込んでいる。日銀は23日に金融政策を現状維持としたが昨年1年間、新たな手立てはなく、ETFを通じた株高支援を継続するものの、国債買い入れ等は限界レベルに来ており、すでに新たな緩和的円安政策は期待できない状況にある。いずれは出口戦略を口に出さなければならなくなる時期も来るだろうと市場は見ており、極めて緩い米FRBの利上げ効果よりも、後手であるECB、日銀の緩和終了ないしはその限界露呈がドル安ユーロ高、円高を意識させる状況にあると思われる。

米財務長官、トランプ大統領、日銀黒田総裁らの発言に振り回されたものの、大きな流れは1月8日以降は円高ドル安の推移であり、これは円の独歩高ではなく、同時期にユーロドルが2017年1月以降の高値を更新してきたこと、ドル指数が同じく2017円1月天井以降の安値を更新して2014年末以来3年ぶり安値へ下落したことに見られるように、ドルの全面安の中での円高ドル安であるということだ。
米FRBは主要国の中でいち早くリーマンショック対策としての異次元的な金融緩和を終了して利上げサイクルに入ってきたが、利上げペースは微々たるものであり、それによってドルの優位性が保たれる状況にはなく、後れをもって金融引き締めに入りつつあるECBユーロの上昇を妨げていない。また最近は各所で取り上げられ始めたが、米長期金利上昇による日米金利差等がドル円の方向性を決定付けられなくなっており、ドルの弱さが目立ってきている状況にある。

NYダウ等の米国株高がバブル的な大上昇を示し、不動産価値もバブル化しつつある中、異次元的な量的緩和政策による過剰流動性が解消されず、バブル的な株高により一層増長し、資源通貨、新興国株、あるいは仮想通貨、コモディティ市場に流れ、バブル的な金融市場全般の上昇を引き起こしていることが、ドルからその他への投機マネーのシフトを招いているといえる。

もう一つは年末に成立した30年ぶりとなる大規模減税を含む米税制改革。これは海外法人からの米本国へのレパトリに対する減税もあるために一軒するとドル高要因にも受け取られるが、米企業への減税による業績支援は米国株高をさらに助長に、市場の壁を超えた過剰流動性の拡大により、ドルから他の金融市場テーマへの資金シフトとしてドル安を助長してゆく。さらに1兆ドルの巨額インフラ投資計画も同様の意味合いを持ってゆくことと思われる。

【2016年6月底、2017年9月底を結ぶ支持線を割り込んだ意味】

米財務長官発言は、トランプ政権が掲げる米国第一主義=保護主義と、対中、対日、対メキシコ等への貿易不均衡是正要求に沿えばドル安による米国輸出の拡大が有効であるとの政権認識を吐露したものと思われる。もちろん、ドル安は輸入そのものが減らない限りは米国の貿易収支赤字、経常収支赤字、財政赤字拡大要因になりえるためトランプ政権の貿易不均衡是正期待に寄与しない可能性もあるが、本質論よりも眼前の米貿易輸出拡大が目に見えたほうが得策との思惑を示しているとすれば、この傾向はしばらく続くと思われる。そうしたことを承知しているからこそ、市場も財務長官発言を打ち消すトランプ大統領発言に対する反応も限定的だったといえる。

1月26日の米10−12月期GDPは+2.6%に止まり、市場予想の+3.0%を大きく下回った。2月2日の米雇用統計での非農業部門就業者数に対する事前予想は+18.3万人であり、前月の+14.8万人を超える見込みだが、米連銀の今年3回の利上げ計画をさらに加速させるような数字にはならないと思われる。1月30−31日には米連銀FOMCがあるが、現状維持、3月の利上げ示唆程度のものに止まると思われるので、一時的なドル高反応余地があっても、昨年1月以降のドル安基調を崩す要因にはならないと思う。

1月27日未明への下落で12月12日からの下げ幅は5.47円幅となり、すでに11月6日から11月27日への下げ幅3.88円を大きく超えてきている。また、この下落により、2016年6月底と2017年9月底を結んだ支持線を割り込んでいる。
昨年4月以降、戻り高値は114円台、下値支持帯は4月17日安値108.13円、6月14日安値108.80円、9月8日安値107.32円である。1月26日への下落で108.28円を付けており、4月安値および9月安値に迫っている。

【中勢判断のポイント】

【中勢判断のポイント】

(1)近年、概ね10か月から1年周期の底打ちサイクルで推移しているが、2016年12月15日高値から11か月目となる2017年11月6日高値で直近の天井をつけて下落期に入ったと思われる。このサイクルでは、昨年9月8日底を基準として、次の1年サイクルの底形成期は7月から9月にかけての間と想定されるので、途中に3か月から4か月周期の小反発を入れつつも夏、初秋へ向けての下落基調が継続しやすいと考える。
(2)今のところ、9月8日安値割れを回避しているので、110.50円を超える反発へと進む場合は9月8日安値を中心とし、昨年4月底と今回の安値を両肩とする逆三尊、三点底を形成して昨年春以降の往来相場に留まる可能性は残る。その場合は当面の戻り抵抗を111円台後半へ切り上げるが、戻り一巡後は次のドル安円高期へと進むと想定する。

(3)しかし、既に11月高値からの下落が二段目に入り、その二段目もまだ途中とすれば、9月8日安値割れ回避からの反騰シナリオよりも、9月8日安値を割り込み、11月末への下げ波動の二倍値で106.96円等を試しにかかる可能性が優先されるのではないかと考える。110.50円以下での推移中は一段安警戒とし、9月8日安値を割り込んだ後は、105円前後まで当面の下値目途が切り下がり、その後に短期的な突込み警戒感から多少戻したとしても先行きはさらに一段安へ進みやすくなるとみる。

(4)一般的には9月8日安値を割り込んでもいったん戻しに入る可能性が優先されるかもしれないが、心配すべきはドル安円高がさらに加速する可能性についてであろうと思う。市場心理的には円高のレベルは前年同期並みと思い込みがちだが、1昨年の強烈な円高レベルへ発展する可能性も考えて置く必要がある。2017年は比較的おとなしい相場展開だったが、2016年前半は強烈な円高であった。逆に円安ドル高期としては、2012年後半から2013年前半までの円安が強烈だったが2014年前半は持合い型で落ち着いた状況が続いた。しかしその後には黒田バズーカ第二弾をきっかけとして強烈な円安ドル高が進んでいる。強烈なトレンドの後の横ばい的な状況が一巡すれば再び強烈なトレンドの継続が待っている可能性を考えてるべきではないかと思う。(了)<28日22:50執筆>

【当面の主な予定】

1/29(月)
NZウェリントン市場休場(オークランド記念日)

22:30 (米) 12月個人所得 前月比 (11月 +0.3%、予想 +0.3%)
22:30 (米) 12月個人消費 前月比 (11月 +0.6%、予想 +0.5%)
22:30 (米) 12月コアPCEデフレーター 前月比 (11月 +0.1%、予想 +0.2%)
22:30 (米) 12月コアPCEデフレーター 前年比 (11月 +1.5%、+1.6%)
30:45 (NZ) 12月貿易収支 (11月 -11.93億NZD、-1.00憶NZD)

1/30(火)
08:30 (日) 12月失業率 (11月 2.7%、予想 2.7%)
08:30 (日) 12月有効求人倍率 (11月 1.56、予想 1.57))
09:30 (豪) 12月NAB企業信頼感 (11月 6 ) 
19:00 (欧) 10-12月期GDP・速報 前期比 (前期 +0.6%、予想 +0.6%)
19:00 (欧) 10-12月期GDP・速報 前年比 (前期 +2.6%、予想 +2.7%)
22:00 (独) 1月消費者物価指数速報 前年比 (12月 +1.7%、予想 +1.7%)
23:00 (米) 11月S&P/ケースシラー住宅価格指数 前年比 (+6.3%)
24:00 (米) 1月消費者信頼感指数 (12月 122.1、予想 123.0)
24:30 (英)カーニーBOE総裁、議会証言
未 定 (米)トランプ大統領 一般教書演説

1/31(水)
08:50 (日)日銀金融政策決定会合主な意見公表
08:50 (日) 12月鉱工業生産速報 前月比 (11月 +0.5%、予想 +1.5%)
09:30 (豪) 10-12月期消費者物価指数 前期比 (前期 +0.6%、予想 +0.7%)
09:30 (豪) 10-12月期消費者物価指数 前年比 (前期 +1.8%、予想 +2.0)
10:00 (中) 1月国家統計局製造業PMI (12月 51.6、予想 51.5)
10:00 (中) 1月国家統計局非製造業PMI (12月 55.0、予想 55.0)
10:30 (日)岩田日銀副総裁、講演
19:00 (欧) 12月失業率 (11月 8.7% 、予想 8.7%)
19:00 (欧) 1月消費者物価指数(HICP)速報 前年比 (12月 +1.4%、予想 +1.3%)
22:15 (米) 1月ADP全国雇用者数 (12月 +25.0万人、予想 +17.0万人)
23:45 (米) 1月シカゴ購買部協会景気指数 (12月 67.6、予想 63.5)
24:00 (米) 12月中古住宅販売保留件数指数 前月比 (11月 +0.2%、予想 +0.5%)
28:00 (米) FOMC政策金利発表 (現状 1.25-1.50%、予想 現状維持)

2/1(木)
09:30 (豪) 12月住宅建設許可 前月比 (11月 +11.7%、予想 -7.6%)
10:45 (中) 1月財新/製造業PMI (12月 51.5、予想 51.5)
18:30 (英) 1月製造業PMI (12月 56.3、予想 56.5)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.3万件、予想 23.5万件)
22:30 (米) 10-12月期非農業部門労働生産性速報 前期比年率 (前期 +3.0%、予想 +1.2%)
22:30 (米) 10-12月期単位労働コスト速報 前期比年率 (前期 -0.2%、予想 +1.0%)
24:00 (米) 1月ISM製造業景況指数 (12月 59.7、予想 58.7)
24:00 (米) 12月建設支出 前月比 (11月 +0.8%、予想 +0.4%)

2/2(金)
06:45 (NZ) 12月住宅建設許可 前月比 (11月 +10.8%)
09:30 (豪) 10-12月期生産者物価指数 前年比 (前期 +1.6%)
19:00 (欧) 12月生産者物価指数 前年比 (11月 +2.8%、予想 +2.4%)
22:30 (米) 1月非農業部門雇用者数 (12月 +14.8万人、予想 +16.5万人)
22:30 (米) 1月失業率 (12月 4.1%、予想 4.1%)
22:30 (米) 1月平均時給  前月比 (12月 +0.3%、予想 +0.3%)
24:00 (米) 1月ミシガン大消費者信頼感指数確報 (速報 94.4、予想 95.3)
29:30 (米)ウイリアムズ米サンフランシスコ連銀総裁、講演

2/3(土)
パウエルFRB新議長就任

オーダー/ポジション状況

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