ドル円112円割れから抜け出せず低迷(週報1月第四週)

米連邦政府の暫定予算の期限が切れた。米上院は19日につなぎ予算案の採決に必要な動議を否決。20日の午前0時から政府機関が一部閉鎖状態に陥っている。

ドル円112円割れから抜け出せず低迷(週報1月第四週)

【概況】

1月8日高値113.38円では12月21日高値113.63円を上抜けず、1月10日の下落で12月序盤以降の下値支持線であった112円を割り込んで一段安、さらに1月17日には110.19円まで続落した。1月9日の日銀による国債買いオペ減額通告、1月10日の中国による米国債買い入れ停止の可能性(翌日当局が否定)、ユーロ高を中心としたドル安基調の継続が1月17日への下落背景であった。
ドイツの大連立協議が不調に終わる可能性が出てきたことでユーロが反落したこともあり、ドル円は110円割れを時期尚早として下げ渋ったが、1月18日未明の米地区連銀報告(ベージュブック)が米景気の強さを示した内容だったことでドルが反発、ドル円も18日早朝に反騰して18日昼には111.48円まで戻した。しかし、今度は米連邦政府のつなぎ予算不成立への懸念等からドルは再び軟化、ユーロは大連立成立への楽観から戻し、ドル円は110.49円まで失速、週末夜は110.70円台に止まっている。

【ドイツ問題と米連邦予算問題】

ドイツの大連立協議は不調との報道から17日まで上昇していたユーロドルがいったん反落した。ドイツのメルケル首相は2017年11月に自由民主党、緑の党との3党連立協議に失敗し、第2党であるドイツ社会民主党(SPD)との大連立協議を行ってきた。SPDは21日の党大会で連立協議入りの是非を採決する。協議入りが了承されれば両党は22日から本格交渉を開始するため、ドイツ政局不安解消でユーロが一段高へ走る可能性があるものの、仮に否決されると政局混迷が長期化するとしてユーロが急落する可能性がある。仮に了承されても両党の基本合意成立後の3月にSPD全党員による賛否投票があるため、不安要因が残ることになる。また否決の場合はメルケル首相が少数与党として重要法案を通せない弱体政権として継続しつつ、再選挙へ向かうことが考えられるが、再選挙でも決着しなければ政局混迷がより長期化することもあり得る。
ドイツの大連立が合意され、1月24日のECB理事会で年内の量的金融緩和終了姿勢が示されればユーロは一段高へ進む可能性が高まるだろうが、まだ予断は許されないところだ。

米連邦政府の暫定予算の期限が切れた。米上院は19日につなぎ予算案の採決に必要な動議を否決。20日の午前0時から政府機関が一部閉鎖状態に陥っている。共和党はトランプ大統領の選挙公約であるメキシコ国境の壁建設費を予算に盛り込むことを主張、民主党はこれに反対して決裂した。既にスミソニアン博物館、自由の女神等が閉館し、月曜からはその他の政府機関が止まり始める。
上院共和党は民主党側の合意が得られなくても2月8日までのつなぎ予算案を22日午前1時(日本時間同日午後3時)に採決する見込みだが、今後もこの問題による混乱が続く可能性がある。トランプ大統領のスイスのダボス会議出席も取りやめになる可能性がある。
1月22日の米つなぎ予算進展状況によっては解決への楽観見通しでドル反発の可能性もあるが、先行き不透明ならリスク回避でドルが全面安となり、ドル円が底割れ一段安へ進む可能性がある。

【112円割れの状況続くうちは一段安警戒 当面のチャートポイント】

【112円割れの状況続くうちは一段安警戒 当面のチャートポイント】

(1)12月序盤からの下値支持線であった112円を割り込んで一段安したが、この一段安状況を解消するには112円台回復、維持へと戻す必要がある。1月18日高値を上抜けば、安値切り上げ、その後の高値も切り上げて上昇基調に乗って112円台回復へ進む可能性が出てくるが、112円前後は戻り売りにつかまりやすいとみる。
(2)1月18日高値を超えられないうちは一段安状態の維持から、さらに一段安へ進みやすい状況のままとみる。
1月17日安値110.19円から18日高値111.48円までの戻り幅は1.29円幅である。これは1月2日安値112.05円から1月8日高値113.38円までの1.33円幅とほぼ同じである。1月8日からの下落は当初、1.02円幅となった9日夜安値112.36円で一服しかけたが、10日には早々に一段安している。今回も18日高値から19日安値まで0.99円幅で一服しているが、さほど戻せずに週末を終了しているので、110.49円割れからはそのまま17日安値110.19円割れ、さらに一段安へ進む可能性が懸念されるが、その場合は18日の戻り高値から3円規模の円高と仮定して、週末の1月26日、さらに1月29日あたりにかけて108円台を目指す可能性も十分にあると考える。

(3) 独SPD党大会、米連邦つなぎ予算動向、ECB理事会等にもよるが、これらイベントをドル安円高反応してゆく場合、1月17日安値割れからの一段安により2月後半へ向けて昨年9月8日安値107.32円前後を試す可能性が懸念される。
(4) 前年同期は12月15日と1月3日のダブル天井から下落、2月28日から3月10日まで戻りを入れている。今回も時期的な展開は前年同期に近い印象があるので、一段安から円高が継続する場合は2月後半へのドル安円高基調継続を基本シナリオと考える。

(5) 2016年6月24日のブレクジットショック、11月9日のトランプショック、2017年4月17日底、2017年9月8日底と、重要な安値は凡そ5か月周期で到来している。昨年9月8日底から5か月目となる今年2月前半から後半にかけての間が安値を形成しやすい時期かもしれない。(了)<21日22:30執筆>

【当面の主な予定】

1/22(月)
14:00 (日)安倍首相、衆院本会議 施政方針演説

1/23(火)
未定 (日) 日銀金融政策決定会合
未定 (日) 日銀展望レポート
15:30 (日)黒田日銀総裁、記者会見
19:00 (独) 1月ZEW景気期待指数  (12月 17.4、予想 17.7)
24:00 (米) 1月リッチモンド連銀製造業指数 (12月 20、予想 18)
24:00 (欧) 1月消費者信頼感・速報 (12月 0.5、予想 0.6)
24:00 (米)米上院 グッドフレンド氏FRB理事指名承認公聴会
北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉、第6回協議(モントリオール、28日まで)
世界経済フォーラム、ダボス会議(ダボス、23日から26日)

1/24(水)
08:50 (日) 12月貿易収支 (11月 +1134億円、予想 +5200億円)
17:30 (独) 1月製造業PMI・速報 (12月 63.3、予想 63.0)
17:30 (独) 1月サービス業PMI・速報 (12月 55.8、予想 55.5)
18:00 (欧) 1月製造業PMI・速報 (12月 60.6、予想 60.3)
18:00 (欧) 1月サービス業PMI・速報 (12月 56.6、予想 56.4)
23:00 (米) 11月住宅価格指数 前月比 (10月 +0.5%、予想 +0.4%)
24:00 (米) 12月中古住宅販売件数 (11月 581万件、予想 569万件)
24:00  (米) 12月中古住宅販売件数 前月比 (11月 +5.6%、予想 -2.2%)

1/25(木)
18:00 (独) 1月Ifo景況感指数 (12月 117.2、予想 117.0)
21:45 (欧) 欧州中銀金融政策発表
22:30 (欧)ドラギ総裁会見
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.0万件、予想 23.5万件)
24:00 (米) 12月新築住宅販売件数 (11月 73.3万件、予想 67.5万件)
24:00 (米) 12月新築住宅販売件数  前月比 (11月 +17.5%、予想 -7.9%)

1/26(金)
オーストラリア休場(オーストラリアデー)
08:30 (日) 12月全国消費者物価指数 前年比 (11月 +0.6%、予想 +1.1%)
08:30 (日) 12月全国消費者物価指数 コア前年比 (11月 +0.9%、予想 +0.9%)
08:30 (日) 1月東京都区部消費者物価指数 コア前年比 (12月 +0.8%、予想 +0.8%)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨(12月20-21日開催分)
18:30 (英) 10-12月期GDP・速報 前期比 (前期 +0.4%、予想 +0.4%)
18:30 (英) 10-12月期GDP・速報 前年比 (前期 +1.7%、予想 +1.4%)
22:00 (米)トランプ米大統領、ダボス会議で演説
22:30 (米) 12月耐久財受注 前月比 (11月 +1.3%、予想 +0.9%)
22:30 (米) 12月耐久財受注 前月比:除輸送用機器 (11月 -0.1%、予想 +0.7%)
22:30 (米) 10-12月期GDP・速報 前期比年率 (前期 +3.2%、予想 +2.9%)
22:30 (米) 10-12月期個人消費・速報 前期比年率 (前期 +2.2%)
22:30 (米) 10-12月期GDPデフレーター・速報 前期比年率 (前期 +2.1%、予想 +2.4%)
22:30 (米) 10-12月期コアPCEデフレーター・速報 前期比年率 (前期 +1.3%)

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