ドル円 法案成立、米長期金利上昇でドル買い(12/21)

米税制改革法案の議会通過などを受けて米国長期債が売られ、長期金利は上昇している。指標の米10年債利回りは20日に前日比0.04%上昇の2.50%となり、

ドル円 法案成立、米長期金利上昇でドル買い(12/21)

【概況】

レーガン政権以来30年ぶりとなるトランプ政権による大規模減税を柱とする税制改革法案が上下院を通過、成立した。週末に19日から20日にかけて成立する可能性が強まったとしてドル円は15日深夜に上昇、19日夜へ戻り高値を切り上げて113円台へ乗せたが、20日夜も続伸、21日早朝には113.46円まで高値を切り上げた。ただその後はやや下落している。

12月14日未明に三度目の利上げと2018年における3回の利上げ姿勢が示されたFOMCを前後して先週は大幅下落となり、15日夕には112円割れ寸前となったが、その後は税制改革法案成立見込みによる米長期金利上昇を背景として上昇に転じ、先週後半の下落に対して過半を解消した。しかし、12日深夜高値113.75円には届いていない。
米税制改革法案の年内成立期待を背景に上昇してきたNYダウも18日に史上最高値を更新したものの19日、20日と小幅続落しており、材料消化感も出始めている。

【米税制改革法案成立、米長期金利上昇】

米税制改革法案の議会通過などを受けて米国長期債が売られ、長期金利は上昇している。指標の米10年債利回りは20日に前日比0.04%上昇の2.50%となり、今年3月以来9か月振りの高値水準となった。日本の長期金利はより低水準で概ねフラットのため、米長期金利上昇なら日米長期金利差拡大でドル買い円売りとなりやすい。この金利差拡大が今週のドル円上昇を引き起こしてきたといえる。
一方ではドイツ政府が2018年に30年債を増発するとの方針を示したことによりドイツの長期債利回りも上昇しており、金利差ではユーロ高ドル安となっているため、メジャー通貨の加重平均であるドル指数は3日続落となっている。ユーロ高ドル安であり、ドル高円安という図式だ。

週末夜からのドル高円安基調が継続してゆけるかどうかは米長期金利上昇が基調として継続するかどうかにかかってくるかもしれない。
米税制改革による大規模減税は、米企業業績を押し上げ、海外からの資金還流を助長し、結果的に米経済成長が加速して税収が増えるという楽観論もある。それゆえトランプ・ラリーと言われる株高も年内成立期待を大きな根拠として上昇し続けてきた。しかし、期待で買って事実で売るというのが相場であり、クリスマス休暇、年末を控えた状況で材料消化による利食い優先の動きが株高にブレーキをかけている印象もある。

米長期金利上昇は債券から株への資金シフトによる債券安=長期債利回り上昇という側面と、先行きの米債務増を警戒した債券売りによる長期債利回り上昇という側面もある。大規模減税効果を先取りし2月にパウエル新議長体制となる米連銀が利上げペースを加速させる可能性もあるわけだが、一方では足元の米インフレ率は低く、利上げペースを加速させる状況に至っていない、ないしはより緩める可能性もある。
こうした諸要因が入り混じる中、22日には米個人消費統計の発表が控えている。そこで米連銀がインフレ進捗判断の目安としているコア個人消費支出指数が予想より強いかどうかが、米長期金利上昇継続かどうかの試金石になってくるのではないかと注目される。

【60分足 一目均衡表分析】

【60分足 一目均衡表分析】

60分足の一目均衡表では19日夜への上昇で遅行スパンが好転、先行スパンを上抜いた状況も維持されてきているが、上昇もすでに丸3日を経過しているので、新たな高値更新へ進めない状況が続く場合は遅行スパン悪化から先行スパン試しへと下落しやすい状況と思われる。遅行スパン好転中は高値試しの可能性ありとするが、113.15円割れからは基準線割れとなり、遅行スパンも悪化しやすくなる点に注意したい。悪化の場合は112円台後半試しへ向かいやすくなるとみる。

60分足の相対力指数は19日深夜への上昇時と21日早朝高値形成時との間では指数のピークが切り下がる弱気逆行を見せているため、21日早朝高値で戻り一巡となって下落再開へ進みやすい姿と思われる。60ポイント以下での推移中は安値試しへ向かいやすいと注意する。

概ね3日から5日周期の短期サイクルでは、15日夕安値で目先の底を付けて戻してきたが、直近のサイクルトップと思われた18日朝高値を上抜いたことにより、18日朝高値を基準として今回のトップ形成期が21日朝から25日朝にかけての間へと伸びたと思われる。ただしすでに21日朝高値で3日を経過しているのでトップアウト注意期に入っている。
113円台を維持するうちは高値更新余地ありとするが、高値更新の場合は先週の逆で22日午後から深夜にかけてのピーク形成とその後の反落が警戒される。113円割れから続落の場合は21日深夜から26日未明にかけての間への下落期入りが考えられる。

以上を踏まえ、当面のポイントを示す。
(1)当初、21日朝高値113.46円を抵抗、113.15円を支持線とみておく。
(2)113.15円を上回るうちは上昇継続余地ありとし、高値更新なら113.50円台、さらに12日深夜高値113.75円試しの可能性を考えるが、113.50円以上は反落警戒圏とみる。高値更新後に0.30円以上の下落となる場合は弱気転換に注意する。
(3)113.15円割れからは弱気転換注意とし、113円から112.70円台への下落を想定する。113円前後ではいったん買い戻しも入ってくると思われるが、切り返せなくなる場合は21日夜へ続落の可能性ありとし、週末にかけて112.50円前後まで下値目途が切り下がる可能性を考える。(了)<9:35執筆>

【当面の主な予定】

12月21日
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合結果公表
    (欧) スペイン・カタルーニャ州議会選挙
15:30 (日) 黒田日銀総裁、記者会見
22:30 (米) 7-9月期GDP・確報値 前期比年率 (改定値 +3.3%、予想 +3.3%) 
22:30 (米) 7-9月期個人消費・確報値 前期比年率 (改定値 +2.3%
22:30 (米) 7-9月期GDPデフレーター・確報値 前期比年率 (改定値 +2.1%、予想 +2.1%)
22:30 (米) 7-9月期コアPCEデフレーター・確報値 前期比年率 (改定値 +1.4%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.5万件、予想 23.3万件)
22:30 (米) 12月フィラデルフィア連銀製造業指数 (11月 22.7、予想 21.0)
23:00 (米) 10月住宅価格指数 前月比 (9月 +0.3%、
24:00 (欧) ユーロ圏12月消費者信頼感・速報値 (11月 0.1、予想 0.2)
24:00 (米) 11月景気先行指数 前月比 (10月 +1.2%、予想 +0.4%)

12月22日
18:30 (英) 7-9月期GDP・確報値 前期比 (速報 +0.4%、予想 +0.4%)
18:30 (英) 7-9月期GDP・確報値 前年比 (速報 +1.5%、予想 +1.5%)
22:30 (米) 11月個人所得 前月比 (10月 +0.4%、予想 +0.4%) 
22:30 (米) 11月個人消費 前月比 (10月 +0.3%、予想 +0.4%)
22:30 (米) 11月コアPCEデフレーター 前月比 (10月 +0.2%、予想 +0.1%)
22:30 (米) 11月コアPCEデフレーター 前年比 (10月 +1.4%、予想 +1.5%)
22:30 (米) 11月耐久財受注 前月比 (10月 -0.8%、予想 +2.0%)
22:30 (米) 11月耐久財受注 除輸送用機器 前月比 (10月 +0.9%、予想 +0.5%)
24:00 (米) 11月新築住宅販売件数 (10月 68.5万件、予想 65.0万件)
24:00 (米) 12月ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値 (速報 96.8、予想 97.2)

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