ドル円 3月 5月 7月相場とアナロジー(10月第三週)

日経平均は10月2日から13日まで9連騰した。13日高値は20933円で2015年6月天井の20952円を抜き、1996年7月以来、21年ぶりの高値となった。

ドル円 3月 5月 7月相場とアナロジー(10月第三週)

<概況・織り込みと揺れ返し>

7月11日高値から9月8日への下落期は北朝鮮有事リスク、米連銀の金融政策姿勢をハト派としたドル安円高、ECBの金融緩和出口戦略を意識したユーロ高ドル安からの円高であった。9月8日からはその流れが変わり、北朝鮮有事情勢は材料的に一服、ミサイル発射では反応しなくなった。またECBが10月の政策見直しを示した後はユーロ高が一服してユーロ安ドル高が発生した。米連銀も9月19−20日のFOMCで12月利上げ姿勢を示し、12月の利上げ確率はそれまでの5割から7割以上へ上昇した。しかし、それらを背景としたドル高円安は10月6日の米雇用統計に対する反応がピークとなり、10月6日夜高値113.43円から10月9日安値112.32円へ下落。112.50円を支持線として10日日中までは横ばいだったが10日夜には111.989円へ一段安。13日午前までは112円台を維持していたが13日夜には112円を割り込んだ。
株高が円高に対するブレーキにはなっていたのだろうが、株高連鎖での円安期待を超える円高感が週末の下落を発生させたことになる。

【株高と逆行する円高】

日経平均は10月2日から13日まで9連騰した。13日高値は20933円で2015年6月天井の20952円を抜き、1996年7月以来、21年ぶりの高値となった。この間、NYダウは9月27日から10月5日まで7連騰、その後は前日比でマイナスもあったが、13日はザラバで史上最高値を更新している。
日経平均がここまで上昇しているのは、第一に米国株価指数が連日史上最高値を更新し、欧州株も追従している世界的な株高への連想である。第二には今回の解散総選挙に対して、初期的には非自公勢力躍進による安部政権継続への危機感が先行する場面もあったが世論調査等で自公連立政権維持の可能性が高まり、政権維持=アベノミクス維持と株式投資家が期待していることが反映されている。アベノミクス相場の実体は超金融緩和による過剰流動性供給による資産バブル形成と日銀のETF等を通した株高政策であり、その継続性への期待が株買いを呼んでいるということだ。また北朝鮮情勢についても、現政権が国難の一つとしてテーマ化しているほどには緊迫感はなく、有事リスクへの過度の警戒感が株式市場では薄らいでいることも大きいだろう。

本来なら、株高のリスクオン心理は円安として為替市場へも伝播、連動を引き起こす。為替市場にとってのリスクオン=投機心理の強気化はユーロ、ポンド、豪ドル、NZドル、ランド、リラ等投機通貨を買うことであり、リスクオフはその手仕舞い=円の買い戻しである。リスクオンで海外通貨を買う=円を売るのは実需的に海外株、債券、資産買いのためという側面もあるだろうし、純粋投機的にクロス円の上昇期待で円売り他通貨買いへ動く場合もあるだろう。そして、日経平均が連騰に入ったり、一段高へ進む時にはクロス円、ドル円も上昇してきた。しかし、ドル円は10月6日の米雇用統計発表を受けた上昇で113.43円を付けて9月27日高値をわずかに超えたものの、その後の日経平均連日上昇に対して下落基調で推移しており、両者の逆行が目立っている。

米雇用統計後のドル円の下落がやや悲観し過ぎであるならば、株高続行に合わせてドル円も反騰し、キャッチアップへ進む可能性があるだろう。しかし、株高の一方でドル円が冴えない、あるいはさらに下落する場合には、両者の逆行が日経平均の楽観的な上昇に対する警鐘となりつつも、株高をよそにした円高の深刻さがより意識される状況になるかもしれない。

株式投資家の楽観と為替投資家の悲観を比較すると、日経平均が昨年6月底(ブレクジット・ショック)、トランプ・ショックを消化しつつ、1月、3月、6月と高値を更新してきたことで、結局は上昇するのだという「勝ち」意識であるのに対して、ドル円はトランプ・ラリーの後、昨年12月15日に天井をつけてからは3月、5月、7月のラリーもみな、戻り売りにつかまって下落してきた「負け」の教訓が根深くなっていることがあるのかもしれない。この「意識のずれ」は、トランプ政権が掲げた米中および米日の貿易不均衡是正姿勢、北朝鮮問題での徹底したリスクを煽る姿勢にあるのかもしれない。そこに円安へ走ることへの自重が出ている。

【戻り1か月で一巡、26日移動平均割れから下落期入りのパターン】

【戻り1か月で一巡、26日移動平均割れから下落期入りのパターン】

あまり強くない時のドル円の上昇はおよそ1か月で一巡する。昨年5月3日から5月30日まで1か月で5.91円幅、昨年6月24日の英国ショックから7月21日への反騰が1か月、8.45円幅、今年も4月17日から5月11日まで1か月弱、6.25円幅、6月14日安値から7月11日高値まで1か月、5.65円幅、そして今回は9月8日から10月6日まで1か月で6.11円幅となって失速気味となっている。今回の戻り幅は5月と7月の戻り幅と同レベルである。また3月10日高値も含め、ここ半年は1か月戻してから下落に転じるパターンが繰り返されている。
10月6日の雇用統計からさらに上昇していれば、114円台への期待も強まったと思うが、その後の株高と逆行した下落により、一段高期待よりもこれまでと同様の循環的な戻りが一巡して下落に転じる可能性、リスクを市場が意識し始めているのではないかと懸念される。

日足の移動平均分析では、上昇トレンドにあるときは9日移動平均が支持線となり、一時的に割り込んでも切り返すうちはさらに一段高へ進みやすい。しかし9日移動平均割れからの下落が継続し、9日移動平均自身が下げ始めると弱気転換となりやすい。その場合は26日移動平均前後が次の支持線となり、26日移動平均まで下げてから切り返せば上昇再開へ向かう可能性ありだが、同線割れから続落し始める場合は弱気転換として下落が長期化する傾向がある。3月10日からの下落、5月11日からの下落、7月11日からの下落は26日移動平均割れからさらに加速している。また前述した1か月程度の戻り一巡から下落に転じた前例としての昨年5月10日からの下落、7月21日からの下落も同様である。

26日移動平均は週末時点で111.75円、終値は111.78円である。現状から切り返して113円超えならそのまま10月6日高値超えへ進んで一段高となり、114円台前半を目指す可能性がある。しかし、10月16日の週が続落となって26日移動平均割れが続く場合は1か月の戻り一巡による下げ再開として9月8日安値を目指す下落期に入る可能性を警戒すべきだろう。(了)<15日21:30執筆>

【当面の主な予定】

10月16日
第2回日米経済対話(麻生財務相、ペンス米副大統領)

10:30 (中) 9月消費者物価指数 前年比 (8月 +1.8%、予想 +1.6%)
10:30 (中) 9月生産者物価指数 前年比 (8月 +6.3%、予想 +6.4%)
13:30 (日) 8月鉱工業生産確報値 (速報 +2.1%)
21:30 (米) 10月NY連銀製造業景況指数 (9月 24.4、予想 21.0)

10月17日
09:30 (豪) オーストラリア準備銀行(RBA)金融政策決定理事会議事録公表(10月3日開催分)
17:00 (欧) コンスタンシオECB副総裁、講演
17:15 (英) カーニーBOE総裁、ラムスデンBOEE副総裁議会証言
18:00 (独) 10月ZEW景気期待指数 (9月 17、予想 20)
22:15 (米) 9月鉱工業生産 前月比 (8月 -0.9%、予想 +0.3%)
22:15 (米) 9月設備稼働率 (8月 76.1%、予想 76.1%)
23:00 (米) 10月NAHB住宅市場指数 (9月 64、予想 64)

10月18日
02:00 (米) ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁講演

シンガポール市場休場(ディーパバリ)
    (中) 第19回中国共産党大会開幕
10:30 (日) 桜井日銀審議委員講演
17:10 (欧) ドラギECB総裁講演
21:00 (米) ダドリーNY連銀総裁、カプラン・ダラス連銀総裁討論会で発言
21:30 (米) 9月住宅着工件数 (8月 118.0万件、予想 117.5万件)
21:30 (米) 9月建設許可件数 (8月 130.0万件、予想 13.5万件)

10月19日
03:00 (米) 地区連銀経済報告(ベージュブック)
    (欧) EU首脳会議(ブリュッセル、19日〜20日)
アジア太平洋経済協力会議APEC財務相会合(ベトナム、19日〜21日)
08:50 (日) 9月貿易収支 5598億円の黒字 1136億円の黒字

11:00 (中) 7-9月期GDP 前年比 (前期 +6.9%、予想 +6.8%)
11:00 (中) 9月小売売上高 前年比 (8月 +10.1%、予想 +10.2%)
11:00 (中) 9月鉱工業生産 前年比 (8月 +6.0%、予想 +6.4%)
21:30 (米) 10月フィラデルフィア連銀製造業指数 (9月 23.8、予想 20.5)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 24.3万件、予想 24.5万件)
23:00 (米) 9月景気先行指数 前月比 (8月 +0.4%、予想 +0.1%)

10月20日
    (欧) EU首脳会議(ブリュッセル、19日〜20日)
アジア太平洋経済協力会議APEC財務相会合(ベトナム、19日〜21日)
15:35 (日) 黒田日銀総裁、全国信用組合大会挨拶
23:00 (米) 9月中古住宅販売件数 (8月 535万件、予想 530万件)

10月21日
03:00 (米) メスター米クリーブランド連銀総裁講演
アジア太平洋経済協力会議APEC財務相会合(ベトナム、19日〜21日)
08:30 (米) イエレンFRB議長講演

10月22日
(日) 衆議院議員総選挙投開票

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る