ドル円 FOMC反応から再び北朝鮮情勢へ(9月第四週)

北朝鮮有事リスクを優先テーマとして下落した8月末から9月8日への流れへ回帰するのか、それとも9月8日以降の上昇基調を維持するのか、

ドル円 FOMC反応から再び北朝鮮情勢へ(9月第四週)

【ドル安一服とFOMC】

ドル円は9月8日に107.32円まで下落して年初来安値を更新した。下落の背景は北朝鮮の有事リスクがエスカレートしたこと、米連銀の金融政策に対するハト派的な姿勢が続いていたこと、ECBが緩和政策の出口戦略へ動き始めたこと等を背景としたドル安であった。その段階ではさらに円高ドル安が加速してゆく可能性も懸念されたが、9月11日以降、流れが変わった。
流れが変わった背景は北朝鮮情勢に対して材料的な一段感が出始めたこと、ユーロ高が9月7日のECB理事会(ドラギ総裁が10月に金融政策見直しを示す)でひとまずピークとなったこと、9月19−20日の米連銀FOMC接近によるポジション調整的なドル高であった。

特に北朝鮮問題においては、11日の国連安保理制裁決議が当初の米国案(原油禁輸等経済封鎖に近い内容)から緩和されたものにとどまったこと、それに対する北朝鮮側の反撃が北太平洋への弾道ミサイル1発発射だったことで新たな緊張のエスカレーションには至らないとして市場の反応も限られたものだった。
9月15日朝のミサイル発射では、ドル円は一時的に下落したが、当日夜には高値を更新し、かえってミサイル発射騒動が買い場を提供した格好となった。
9月18日からも米連銀FOMCを意識したドル高基調が継続した。

21日未明のFOMCでは政策金利が据え置かれ、バランスシート縮小開始が決定されたことは市場の予想通りだった。しかし年内あと一回の追加利上げに対する参加メンバーの予想では、あと二回を主張するものを含めて12名が支持する内容だったため、これまでの年内利上げ確率が五分五分だったところから7割強へと跳ね上がり、ドル高が加速する要因となった。
FOMCからのドル高円安は21日午後まで継続し、その後も高値圏を維持していたが、21日夜のトランプ大統領が北朝鮮への独自制裁を強化する大統領令に署名したこと、それに対する北朝鮮の反撃的な発言等から北朝鮮有事リスク問題が再燃、ドル円は111円台後半へ下落した。FOMCからのドル高円安にブレーキがかかった印象だ。

【北朝鮮有事リスク再燃】

トランプ米大統領は21日、北朝鮮と取引を行っている個人と企業を新たな制裁の対象にする大統領令に署名した。米大統領令には北朝鮮と取引する外国銀行を米金融システムから締め出すと明記した。トランプ大統領は「中国人民銀行が金融機関に北朝鮮との取引停止を指示した」とも述べた。
ムニューシン米財務長官は各国に北朝鮮との貿易停止を呼び掛け、「各国金融機関は取引先を米国か北朝鮮のどちらかを選択せよ」と述べた。

19日のトランプ大統領国連演説での「北朝鮮破壊」への言及も含め、北朝鮮の対応が注目されたが、22日に金正恩朝鮮労働党委員長は国営朝鮮中央通信を通じて、「わが国を消し去るという最悪の『宣戦布告』をした以上、我々もそれにふさわしい史上最高の超強硬対応措置の断行を慎重に考慮する」と表明した。また国連に派遣されていた北朝鮮外相が「太平洋での水爆実験」に言及した。金委員長自身が直接的に米国非難声明を発したのは初めてであり、米朝間の緊張感が一段とエスカレートする印象を市場に与えた。

トランプ米大統領は22日のアラバマ州における演説で「大量破壊兵器の太平洋上での爆発は大惨事を引き起こす」「小さなロケットマン」は「私が対処する」と述べた。
ソーントン米国務次官補代行(東アジア・太平洋担当)は22日の記者会見で「(水爆実験が実行されれば北朝鮮による前例のない侵略行為になる」「国際社会による報復を招く」と述べたが、北朝鮮が対話を求める呼び掛けに応じることを「希望し、待っている」とも述べている。

北朝鮮はグアムへの弾道ミサイル4発の包囲射撃計画についても「慎重に検討」とした上でまだ実行してない。今回も「慎重」という文言を使っているので、即座に実行されるようなものではないだろうが、避難合戦のレベルは軍事的な偶発的衝突も含めて有事リスクを一段とエスカレートさせた印象だ。
週末の状況で緊張状態が膠着すれば、9月8日から21日への円安ドル高のように、市場も北朝鮮情勢以外のテーマへと焦点をずらしてくると思われるが、緊張感がさらに拡大するような展開が見られる場合は市場の中心テーマとなってくる可能性があるだろう。

【当面のポイント】

【当面のポイント】

北朝鮮有事リスクを優先テーマとして下落した8月末から9月8日への流れへ回帰するのか、それとも9月8日以降の上昇基調を維持するのか、週明け序盤の市場動向により、市場自身がどちらを意識しているのかを見定める必要があるだろう。 高値更新か、FOMCからの上昇分を吐き出すのか、いずれかによって流れも見えてくると思う。

(1) 9月21日の高値を上抜く上昇となる場合、市場は北朝鮮情勢への懸念よりも9月8日からの上昇基調の継続を優先していると考えられる。そのため、今回の上昇が5月11日や7月11日への上昇波動並へ伸びる可能性ありとし、5月と7月の高値がある114円台へ向かう可能性が高まると思われる。

(2) 111円割れへ下落する場合、FOMCからの上昇を打ち消すこととなるため、市場は北朝鮮情勢を意識したリスク回避型行動へ進む可能性が高まると思われる。その場合、当初の下値目処は一目均衡表の26日基準線がある110円試しと想定する。さらに同線割れの場合は9月8日からの戻り一巡、下げ再開として円高が本格的にぶり返す可能性を懸念する。(了)<7:50執筆>

【当面の主な予定】

9月25日
南ア市場休場
14:30 (日) 黒田日銀総裁講演
16:00 (欧) コンスタンシオECB副総裁講演
16:45 (日) 黒田日銀総裁記者会見
17:00 (独) 9月Ifo景況感指数 (8月 115.9、予想 116.0)
18:15 (欧) メルシュECB理事講演
21:30 (米) ダドリー米NY連銀総裁講演
22:00 (欧) ドラギECB総裁講演
23:45 (欧) クーレECB理事講演

9月26日
01:40 (米) エバンス米シカゴ連銀総裁講演
06:15 (豪) ブロックRBA総裁補佐講演
07:30 (米) カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁講演
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨(7月19-20日開催分)
21:00 (欧) プラートECB理事講演
22:00 (米) 7月S&P/ケースシラー住宅価格指数 前年比 (6月 +5.7%、予想 +5.7%) 
22:30 (米) メスター米クリーブランド連銀総裁講演
23:00 (米) 8月新築住宅販売件数 (7月 57.1万件、予想 59.0万件)
23:00 (米) 9月消費者信頼感指数
23:00 (米) 9月リッチモンド連銀製造業指数 (8月 14、予想 13)
23:30 (米) ブレイナードFRB理事講演

9月27日
01:30 (米) ボスティック米アトランタ連銀総裁講演
01:45 (米) イエレンFRB議長講演
21:30 (米) 8月耐久財受注 前月比 (7月 -6.8%、予想 +1.0%) 
23:00 (米) 8月中古住宅販売保留件数指数 前月比 (7月 -0.8%、予想 -0.5%)

9月28日
00:45 (加) ポロズBOC総裁講演、 01:55 記者会見
02:30 (米) ブラード米セントルイス連銀総裁講演
03:00 (米) ブレイナードFRB理事講演
05:00 (NZ) RBNZオフィシャル・キャッシュレート発表 (現行 1.75%、予想 据え置き)
08:00 (米) ローゼングレン米ボストン連銀総裁講演
17:00 (欧) プラートECB理事講演
17:15 (英) カーニーBOE総裁講演
18:00 (豪) デベルRBAA総裁補佐講演
20:10 (欧) ラウテンシュレーガーECB専務理事講演
21:30 (米) 4-6月期GDP確報値 前期比年率 (改定値 3.0%、予想 3.1%)
21:30 (米) 4-6月期個人消費確報値 前期比年率 (改定値 +3.3%、予想 +3.2%)  
21:30 (米) 4-6月期GDPデフレーター確報値 前期比年率 (改定値 +1.0%、予想 +0.1%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 25.9万件、予想 26.5万件)
22:45 (米) ジョージ米カンザスシティ連銀総裁講演
23:00 (米) フィッシャーFRB副議長講演

9月29日
02:30 (米) ボスティック米アトランタ連銀総裁講演
08:30 (日) 8月全国消費者物価指数、9月東京都区部消費者物価指数
08:30 (日) 8月失業率 8月有効求人倍率
08:50 (日) 日銀 金融政策決定会合「主な意見」公表(9月20-21日開催分)
08:50 (日) 8月鉱工業生産 速報値
10:45 (中) 9月財新製造業PMI 
17:30 (英) 4-6月期GDP確報値 
18:00 (欧) ユーロ圏9月消費者物価指数(HICP)速報値 前年比 (8月 +1.5%、予想 +1.2%)

21:30 (米) 8月個人所得 前月比 (7月 +0.4%、予想 +0.2%) 
21:30 (米) 8月個人消費支出 前月比 (7月 +0.3%、予想 +0.1%)
21:30 (米) 8月コアPCEデフレーター 前月比 (7月 +0.1%、予想 +0.2%)
21:30 (米) 8月コアPCEデフレーター 前年比 (7月 +1.4%、予想 +1.4%)
21:30 (英) ブロードベントBOE副総裁講演
22:45 (米) 9月シカゴPMI (8月 58.9、予想 58.5)
23:00 (米) 9月ミシガン大学消費者信頼感指数確報値 (速報 95.3、予想 95.3)
23:15 (欧) ドラギECB総裁、カーニーBOE総裁講演
00:00 (米) ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁講演

9月30日
10:00 (中) 9月製造業PMI (8月 51.7、予想 51.7)
10:00 (中) 9月非製造業PMI

オーダー/ポジション状況

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