ドル円 8月31日高値までイッテコイで戻す(9/14)

ライアン米下院議長は新しい税制を来年には機能させる計画だと述べた。トランプ政権による税制改革が進展する可能性が出てきたことは株高要因となった。

ドル円 8月31日高値までイッテコイで戻す(9/14)

<概況・ポイント>

ドル円は一段高。9月3日の北朝鮮核実験騒動からリスク回避となり、8月31日高値110.67円からの下落基調へ入り、9月8日安値107.32円まで大幅下落した。しかし、9日の北朝鮮建国記念日を前後して新たな軍事挑発がなく、11日からは前週の下落をやや過剰だったとして反発に入った。12日未明には国連安保理による新たな北朝鮮制裁決議が全会一致で採決されたが、当初の米国案からはかなり緩和したこと、その直後にも北朝鮮からの注目すべきリアクションは見られなかったため、核実験騒動からのリスク回避相場がひとまず落ち着き、リスクオンへ走りやすくなった。

ライアン米下院議長は新しい税制を来年には機能させる計画だと述べた。トランプ政権による税制改革が進展する可能性が出てきたことは株高要因となった。また巨大ハリケーン「ハービー」に続いてフロリダ半島に上陸した「イルマ」の被害も当初の見通しからは大幅に縮小されてきたため、この点でも市場はやや悲観し過ぎたとして株買い意欲を拡大した。NYダウ等の米主要株価指数は3日続伸、史上最高値を更新している。

13日夜に発表された8月の米生産者物価指数は全体で+2.4%となり市場予想の+2.5%を下回ったものの前月の+1.9%からは改善した。コア指数前年比も+2.0%上となり、市場予想の+2.1%を下回ったものの前月の+1.8%を上回った。

14日夜には8月の米消費者物価指数の発表があり、前年比の市場予想は全体で+1.8%(前月は+1.7%)、コア指数で+1.6%(前月は+1.7%)となっており、前月からはやや改善見通しである。米連銀の目標とする消費者物価の2%超えへは到達していないものの、改善がみられれば米連銀の利上げ姿勢も現在の「かなりハト派的」なところから「ややタカ派的」なものへシフトする可能性も出てくるかもしれない。北朝鮮情勢が落ち着いている状況下では、物価動向、来週のFOMCがどうなるのか、というところに市場の関心も移ってゆくかもしれない。

8日まではユーロが大幅上昇してドル安を牽引、また北朝鮮情勢懸念でドル円も大幅下落してきたが、ユーロも8日高値から下落基調を継続し、13日夜からの下落で12日夜安値を割り込んで二段下げに入っているため、ドル円の上昇とともにドル安一服感が強まった印象だ。

【北朝鮮制裁決議 原案の厳しさ】

今回の国連安保理による北朝鮮制裁決議では当初の米国案からは大幅に緩和された内容となった。
米国案では原油、石油製品、天然ガス、繊維製品が完全禁輸であったが、最終決議では原油は現状維持、石油製品は年間200万バレルに制限、天然ガスと繊維製品は原案通り禁輸、派遣労働者は全面禁止から更新を認めない(現在の雇用は維持)と修正され、金正恩氏の資産凍結には言及なし、高麗航空については原案の資産凍結から言及なしとなった。船舶の臨検についても原案の国連指定による強制検査から船籍国同意が必要に緩和された。

つまり、原案は経済封鎖に近いものであり、今回決議されたレベルから今後は原案レベルまで制裁が強化されてゆく可能性があることを明示したと言える。もちろん、中国、ロシアが拒否権を行使すれば決議されないが、先行きは有志連合の形で船舶の臨検等へ進む可能性も否定できなくなる。そういう意味ではかなり強烈なインパクトのある内容であり、原案を見せた上で緩い現実案としたことで、今後、北朝鮮がさらに軍事挑発をエスカレートさせる場合には、今回の各項目で緩めたものを全面禁輸等へと厳しくして行くという恫喝になっているわけだ。既に石炭、鉄鋼、海産物などは禁輸対象である。もちろん、抜け道も多いと言われてはいるが、北朝鮮側も即、反撃的な行動に向かうのを躊躇しているのかもしれない。

【7月11日からの下落中で最大の反発】

9月8日への下落で107.32円まで下げ、4月17日安値108.13円も割り込んだ。107円台は2016年11月以来10カ月ぶりの安値水準であるが、9月13日への反発で110円台を回復、反発幅は今のところ3.37円幅である。これは7月以降の下落途中における反発幅としては最大であり、8月16日や8月31日への反発時を超えている。また、日足の相対力指数では8月前半の安値形成時から9月8日安値にかけては強気逆行も形成されている。

昨年6月24日の英国国民投票ショックによる安値から5か月目の11月9日にトランプショックで安値をつけた。さらに5か月目の今年月17日に安値をつけ、さらに5か月目が現在である。昨年7月21日の戻り高値から5か月目の昨年12月15日で天井をつけ、5か月目の5月11日で戻り高値をつけている。この5か月周期によって戻すとすれば、次は10月に高値を形成する順番となる。

昨年12月天井からの下落第一波は今年4月17日安値まで4か月の下落、5月11日高値から9月8日安値までも4か月である。5か月周期の底打ち、4か月の下落で一波動、というリズムで見れば、9月8日で底をつけ、10月へ戻しに入るという単純な発想も出てくるのだが、果たしてどうか?
現状は8月31日高値110.67円をわずかに上回るところまでV字反騰、イッテコイとなったので、高値警戒感も出やすいところだが、109円台前半程度までで調整安を消化して次の上昇で戻り高値を切り上げるとすれば、上昇基調がもう少し続く可能性も出てくるかもしれない。あくまでも北朝鮮情勢が落ち着き、米経済指標がやや強めでドル高感が継続することが前提だが。

【60分足 一目均衡表分析】

【60分足 一目均衡表分析】

60分足の一目均衡表では11日夜の一段高から遅行スパンが好転、先行スパンも上抜いた。その後も続伸して両スパン好転は維持されているので、遅行スパン好転中は高値をさらに試す可能性ありとするが、既に8月31日高値水準までイッテコイとなっていることも踏まえれば高値警戒感も持ちつつ、遅行スパン悪化からは弱気転換を警戒して先行スパンの中へ突っ込む可能性を考える。ただし、先行スパン上部で支えられて確りするなら次の上昇で一段高へ進みやすくなるとみる。

60分足の14本相対力指数は9月11日からの高値更新に対して13日午前、13日深夜と弱気逆行が連続しているので高値警戒感があるが、連続逆行で指数が持合い型を形成するなら、50ポイント前後までの下げで落ち着き、次の上昇へ進む可能性がある。50ポイント割れへと崩れて早々に反発できない場合は弱気転換警戒とみる。

概ね3日から5日周期の短期サイクルでは、9月8日夜安値からのV字反騰で直前高値の7日未明高値を上抜いたため、8日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクルに入った。今回の高値形成期は7日未明高値を基準として12日未明から14日未明にかけての間と想定されるため、上昇一巡からの反落警戒とみるが、もう一つの可能性としては、13日夕刻の安値でこのサイクルの底をつけ、既に高値更新により新たな上昇期に入っている可能性も考えられるということ。このため、14日午前に下落、午後続落の場合は戻り一巡からの下落として14日夕刻から15日夜への下落を想定するが、午後へ高値更新してくる場合は新たな強気サイクル入りの可能性を優先して14日夜、15日へ続伸しやすいとみる。

以上を踏まえ、当面のポイントを示す。
(1)13日夕安値109.90円を支持線とし、割り込まないか、一時的に割り込んでも早々に回復する内はまだ上昇余地ありとし、13日深夜高値110.69円超えの場合は111.00円から111.25円にかけてのゾーンを試すとみる。またその場合は15日以降に111.50円超えへと一段高する可能性が出てくるとみる。
(2)13日夕安値割れからは弱気サイクル入りの可能性を踏まえ、109.50円前後試しを想定する。109.50円前後では押し目買いも入りやすいとみるが、109.50円割れからさらに続落し始める場合は円高再開により下げがきつくなる可能性がある。特に北朝鮮情勢で新たな展開があれば崩れるという、土台の脆い状況は変わらないとみる。(了)<9:10執筆>

【当面の主な予定】

9月14日
10:30 (豪) 8月就業者数 (7月 +2.79万人、予想 +1.90万人)
10:30 (豪) 8月失業率 (7月 5.6%、予想 5.6%)
11:00 (中) 8月小売売上高 前年比 (+10.4%、予想 +10.5%)
11:00 (中) 8月鉱工業生産 前年比 (7月 +6.4%、予想 +6.6%)
13:30 (日) 7月鉱工業生産 前月比 確報値 (速報 -0.8%)
16:30 (ス) スイスSNB政策金利発表 (現行の1.25〜0.25%に据え置き予想)
20:00 (英) BOE政策金利発表 (現行の0.25%に据え置き予想)
20:00 (英) BOE資産購入枠 (現行の4350億ポンドで据え置き予想)
20:00 (土) トルコ中銀政策金利発表 (現行の8.00%に据え置き予想)
21:30 (米) 8月消費者物価指数 前年比 (7月 +1.7%、予想 +1.8%)
21:30 (米) 8月消費者物価指数・コア 前年比 (7月 +1.7%、予想 +1.6%)
21:30 (米) 米新規失業保険申請件数 (前週 29.8万件、予想 30.0万件))

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