<概況>
8月29日の北朝鮮による北太平洋へのミサイル3発発射騒動で29日夕刻には108.265円まで下落したが、その時は1日の反応で材料を消化、米経済指標改善等から31日には110.67円まで戻していた。しかし1日夜の米雇用統計が予想より弱かったこと、さらに3日の北朝鮮核実験による有事リスク上昇で下落再開となった。9日のミサイル騒動時のように1日では材料消化できずに9月6日夜まで続落し、有事リスクが一段と拡大した印象を与えた。
9月6日夜は買い戻しが入って109円台前半へ戻したのだが、この戻りも続かずに7日の日中はジリ安推移となり、7日夜のECB金融政策や米週間失業保険統計からドル安が再燃、ドル円は急落症状となって108.049円の安値を付け、今年の安値である4月17日の108.13円を割り込んだ。
【ECBの出口戦略と米雇用の悪化】
欧州中央銀行(ECB)は7日の定例理事会でマイナス金利や量的緩和策としての資産購入を継続、現状維持とした。量的緩和については月額600億ユーロの資産購入を年末まで継続するとした前回の決定を据え置いた。しかし理事会後にドラギECB総裁は記者会見で「量的緩和策の見直し議論に着手した」こと、「次回の10月会合で来年以降の方針を決定する」と発言した。理事会前に期待感からユーロは上昇していたが、総裁発言から秋には金融緩和政策の出口戦略がより具体化する可能性が高まったと市場は受け止め、また年初からのユーロ高基調に対してもブレーキをかけなかったとしてユーロは一段高となった。
ドラギ総裁会見の21時半と同時刻に発表された米週間新規失業保険申請件数は29万8000件で前週比6万2000件増となった。大型ハリケーン「ハービー」による避難、製油所操業停止等、洪水の影響と思われるが、2015年4月以来の高水準まで悪化した。さらにハービーよりも巨大でカテゴリー5へ発展しているハリケーン「イルマ」がフロリダ半島へ向かっているため、雇用状況はさらに悪化する可能性がある。これらは米連銀の追加利上げ判断を躊躇させるものとなり、ハト派姿勢が継続、12月の利上げ確率を引き下げるものとして市場はドル安反応となった。
日本時間8日早朝にニューヨーク連銀のダドリー総裁が講演で「緩和的な金融政策を段階的に引き締め続けることが妥当」「ハリケーンの影響は一時的」と述べ、年内あと1回とされるの利上げに意欲を示した。しかし市場の反応は限定的で、利上げ先送りの確率が高いとの見方に変化は見られないようだ。
【北朝鮮懸念】
9月9日には北朝鮮の建国記念日がある。国連安保理における追加制裁決議案には原油禁輸も含まれており、北朝鮮はこれに反発姿勢を強めている。拒否権のある中国とロシアの動向が注目されるが、中国は原油禁輸の是非についての言及はないものの追加制裁を支持する姿勢を見せている。ロシアは対話を主張し反対姿勢だが、何等かの追加制裁が決議されると思われる。
8月25日の北朝鮮先軍節の後となる29日に弾道ミサイルが発射された。9月9日の建国記念日はまだ先だったが9月3日に核実験(水爆実験)が強行された。北朝鮮の動きは活発であり、9日の建国記念日当日ないしは週明けにかけて、新たな軍事挑発行動に出る可能性が高まっているとみられる。
【4月17日安値を割り込む】
ドル円の下落要因はドル安、リスク回避の二つだ。7日はECB政策、雇用情勢を踏まえてドル安となった。北朝鮮問題もまだエスカレーションが続いている。この二つの問題が一服し、落ち着かないことには円高ドル安基調は継続してゆきやすい環境にある。
7日夜からの下落で4月17日安値を割り込んだ。昨年12月天井から4月へと下落した後は109円割れは買い戻され、114円台では戻り売りから反落するという循環的な往来相場で推移してきた。また3月10日高値からは6月11日高値、7月11日高値と2か月毎に高値を付けてきた。安値も4月17日、6月14日と2か月毎だったが、今回は安値を付けて反発できずにいる。このため、4月以降の往来型中段持合いから転落し始めた状況と懸念される。
7月11日からの下落規模が往来相場の下落レベルを超えてきているため、12月天井から4月安値への下落波動波へ発展すれば、105円割れ、103円台を試す可能性も出てきているのかもしれない。
【60分足 一目均衡表分析】
60分足の一目均衡表では、7日夜の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンを上抜くことに失敗して再び転落した。このため、遅行スパンが悪化しているうちは一段安警戒が優先されるとみる。強気転換は先行スパン突破から考える。
60分足の相対力指数は7日深夜の下落で30ポイントを割り込み、6日安値形成時の水準を割り込んだ。このため、現状は強気逆行となっていないため、さらに一段安する可能性が残るとみる。強気転換には50ポイント台の回復、維持が必要と思われる。
概ね3日から5日周期のサイクルでは、9月6日夜安値で前回のサイクルボトムを付けて反発したが、7日深夜の下落で底割れしたため、新たな下落期入りとして次の安値形成期となる11日夜から13日にかけての間へ下落を継続しやすくなったと思われる。サイクル的な強気転換には7日未明高値を上抜く必要があり、できないうちは一段安警戒が優先と思われる。
以上を踏まえ、当面のポイントを示す。
(1)108.70円前後までを戻り抵抗とし、108.50円以下での推移中は一段安警戒とし、安値更新の場合は107円台前半試しへ向かう可能性を考える。週末の北朝鮮動向次第では週明け朝の急落も警戒するが、その場合は107円割れの可能性も懸念される。
(2)108.70円超えの場合は109円試しとみるが、届かずに反落ならその後の下落もかえって厳しくなる可能性がある。109円台回復、維持へ進む場合は60分足の先行スパン突破となるので反騰入りの可能性を優先するが、そのためにはドル高円安を生じさせるきっかけ、新たな材料が必要と思われる。(了)<9:25執筆>
【当面の主な予定】
9月8日
未定 (中) 8月 貿易収支 米ドル建て (7月 467.4億ドル)
未定 (中) 8月 貿易収支 人民元建て (7月 3212億元)
14:00 (日) 8月 景気ウオッチャー調査-現状判断DI
21:45 (米)ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁、講演
23:00 (米) 7月 卸売在庫 前月比
9月9日
北朝鮮建国記念日
10:30 (中) 8月消費者物価指数 前年比
10:30 (中) 8月生産者物価指数 前年比
オーダー/ポジション状況
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