<概況>
8月17日未明の米連銀FOMC議事録内容がハト派的だったことでドル安円高となり、18日には108.60円まで下落。その後は109円割れは買い戻されるが110円には届かない持合いが続いていたが、25日深夜のジャクソンホール会合におけるイエレン議長講演が金融政策スタンスの変更姿勢を示さなかったことでハト派的スタンスは継続として下落を再開。29日には北朝鮮が弾道ミサイル3発を発射したことで有事リスクが強まって29日朝に急落、夕刻には108.265円まで一段安した。
しかし、グアム方向への弾道ミサイル発射ではなかったため、これ以上のエスカレートはないのではないかとして29日夜からは揺れ返しとなり、また米経済指標が強かったことも背景として31日には110.67円まで切り返していた。
31日夜の米個人消費統計等が弱かったことから再びドル安となり、1日夜の米雇用統計も弱い内容だったために109.56円まで下げる場面があったが、材料消化で110円台を回復して先週は終わっていた。
9月3日に北朝鮮が核実験を行い「ICBM用の水爆実験に成功した」と報じられた。これに対してトランプ大統領が「北朝鮮とビジネスをするすべての国との貿易停止を検討」の旨を発言、また軍事オプションもちらつかせたことで有事リスクが一挙に高まった。
9月4日早朝、ドル円は109.58円まで急落開始、週末終値の110.25円から0.67円下落となった。さらに15時過ぎには韓国聯合ニュースが「北朝鮮が新たな核実験、ICBM発射を準備」「米韓がB1爆撃機や空母の終結を協議」している旨を報じたことで一段安となり、109.38円まで安値を更新した。その後は新たな刺激はなく、米国市場がレーバーデーの祝日だったために小動きとなり、新たな安値更新は回避されている。
【北朝鮮リスク続く】
8月29日の弾道ミサイル発射の際、早朝に急落し、午後に一段安したが、その後はいったん材料的に落ち着いたとして揺れ返しに入った。今回も同様にひとまず核実験に対するリスク回避行動一服で戻しに入る可能性はある。国連安保理の新たな制裁等決議も11日前後とされているため、それまでは米国からの先制攻撃的な動きはないだろうという見方もある。
しかし、9月9日に北朝鮮の建国記念日を控え、その前後には新たな軍事的挑発行動を起こす可能性があるので、8月29日のミサイル発射騒動一巡から大幅上昇に転じたような状況の再現は難しいのではないかと思われる。建国記念日の9日、翌日の10日、11日早朝にかけては北朝鮮の新たな挑発的行動も警戒されるため、簡単にはリスクオンへと転じられないのではないかと思われる。
【60分足 一目均衡表分析】
60分足の一目均衡表では、31日深夜の下落で遅行スパンが悪化、4日朝の一段安で先行スパンから転落した。4日午後安値以降はやや戻し気味に推移しているため、遅行スパンは好転しやすくなっているが、110円にかけては先行スパンが抵抗帯として待ち構えている印象だ。このため、先行スパン下限から上限となる110円を試す可能性があるが、そこは戻り売りにつかまりやすいと思われる。ただし、110円超えから続伸の場合は先行スパン突破となるため、市場の楽観的心理回復により110.50円手前を試しにかかる可能性も考えられる。4日の安値を割り込む下落の場合はしばらく先行スパンから転落した状況が続くと思われるので、遅行スパン悪化中の安値試しを優先的に考える。
60分足の相対力指数は4日への下落で30ポイント割れまで下落し、その後のジリ高で50ポイントまで戻している。60ポイントを超えてくるようだと上昇感が強まるが、50ポイント台に乗せても維持できずに40ポイント割れしてくる場合は下げ再開、一段安警戒とみる。まだ強気逆行は見られない。
概ね3日から5日周期のサイクルでは、29日夜安値から4日目となる9月4日午後安値で底を付けた可能性がある。このため、4日午後安値割れ回避のうちは110円台序盤へ上昇する可能性があるが、4日午後安値割れからは底割れによる新たな下落期入りとなり、次の安値形成期となる7日から11日への一段安へ進みやすくなると思われる。
以上を踏まえ、当面のポイントを示す。
(1) 4日午後安値109.38円割れ回避のうちは上昇余地ありとし、110.00円前後を試す可能性があるが、110円前後では戻り売りにつかまりやすいとみる。ただし、110円台を維持して続伸し始める場合、市場がリスクオン心理を取り戻し始める場合には110.20円前後まで戻す可能性も検討される。
(2) 109.60円割れからは下げ再開注意として4日午後安値割れを試すとみる。底割れの場合は新たな下落期入りの可能性も踏まえて109円前後試しへの下落を想定する。
(3) 新たに朝鮮半島有事リスクを高める報道、軍事的行動等が見られる場合には4日午後の下落のように、0.50円以上の下落がいつ発生しても不思議なく、その場合は下げ一服後にもう一段安へ進みやすいと注意する。(了)<9:15執筆>
【当面の主な予定】
9月5日
10:45 (中) 8月 財新サービス部門PMI (7月 51.5)
13:30 (豪) 豪準備銀行(中銀)政策金利発表 (現状 1.50%、予想 1.50%)
21:00 (米)ブレイナード米FRB理事、講演
23:00 (米) 7月 製造業新規受注 前月比 (6月 3.0%、予想 -3.2%)
9月6日
02:10 (米)カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁、講演
08:00 (米)カプラン米ダラス連銀総裁、講演(豪にて)
21:30 (米) 7月 貿易収支 (6月 -436億ドル、予想 -441億ドル)
23:00 (加) カナダ銀行 政策金利 (現状 0.75%、予想 0.75%)
23:00 (米) 8月 ISM非製造業景況指数 (7月 53.9、予想 55)
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
オーダー/ポジション状況
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