<概況>
8月4日の米雇用統計が予想を上回ったことで米連銀のハト派姿勢が崩れるのではないかとドル高となり、4日夜に111.049円まで上昇した。
8月8日夜のワシントンポスト紙報道から米朝間の有事緊張が激化、リスク回避の円買い戻しにより11日夜には108.727円まで下落した。
8月14日からは米朝間の有事緊張が緩和したとして反騰、米経済指標も強かったために16日には110.95円まで上昇した。
8月17日未明の米連銀FOMC議事録公開からドル安が再開、18日夜には108.60円まで下げて11日安値を割り込んだ。
いったん戻した後の21日夜への下落で108.634円まで下げたが、新たな底割れを開始したことでダブル底感が発生、23日には109.822円まで戻した。
8月24日に108.847円まで下げるも切り返し、25日夜には109.846円を付けたが、ジャクソンホール・シンポジウムのイエレン議長講演では金融政策姿勢へ触れなかったためにハト派姿勢は変わらずとして反落している。
【往来相場だが、レンジ縮小】
8月4日から18日までの往来相場は109円弱から111円前後までのおよそ2.40円幅であったが、23日への反発、25日への反発では110円に届かず、およそ1.20円幅での往来相場となり、それまでの往来相場レンジの下半分での推移に止まっている。
持合い相場が往来を続けつつも、その下半分での推移に止まり始める場合は下抜けやすくなる傾向もある。
8月17日未明から18日へ下げた後にレンジを縮小して持ち合いとなっている姿は、7月27日未明から8月1日へ下げたあと、8月8日まで1円強の値幅で5日間持合いしていた時に近い印象がある。その時は8日夜から一段安へ崩れている。
8月18日安値の後は、21日夜安値、24日夜安値と安値はやや切り上がっており、25日深夜の反落でも24日安値割れには至っていない。
23日高値109.822円に対して25日夜高値109.846円はわずかながら高値が切り上がっているが、ほぼ同値であり、戻りのダブルトップ形成となっている可能性もある。
週明け、24日安値を割り込まないうちは、安値切り上げの後の戻り高値切り上げへ進む可能性も考えられるが、25日深夜安値109.11円を割り込んでくる場合は24日安値試しとなり、109円割れからは21日安値と24日安値を結ぶ支持線割れとなるため18日安値試しまで下値支持線が切り下がり、18日安値割れの場合はこれまでの往来相場からの転落として一段安開始へ向かう可能性が考えられる。
【ジャクソンホール講演の反応】
8月25日夜、ジャクソンホール・シンポジウムにおけるイエレン議長の講演があった。市場予想通り、議長は具体的な金融政策姿勢、利上げへの積極度合い、情勢判断についてのヒントは話さなかった。過去2回の出席でも同様であったので、今回も何も刺激的なことは言わないだろうという見方が多かったと思う。しかし、何も言わなければそれは現状までに市場がコンセンサスとしている「ハト派姿勢=年内あと1回の利上げも先送りされる可能性あり」という認識を否定しないことであり、ドル安基調の継続根拠と解釈する。このため議長講演からドル円は反落した。
26日早朝、ECBのドラギ総裁の講演があった。多弁な総裁が何かしゃべるのではないか、特に年初から続いているユーロ高をけん制するのではないかとの見方も多少あったようだが、何もヒントをしゃべらない=ユーロ高の放置として講演をきっかけにユーロが急騰した。ユーロ円も大幅高となったが、ドル円に対してはユーロ高ドル安、ユーロ高円安が相殺となって影響を及ぼさず、明け方の相場は小動きにとどまった。
欧米当局が金融政策に対する姿勢の強調あるいは変更に対する示唆をしなかったことで、これまでのドル安円高、ユーロ高ドル安の流れは継続してゆくと仮定すべきだろう。それを覆す程に米経済指標が強い数字を続ける場合、特にインフレ指標としての米消費者物価、GDPコアデフレーター、PCEI個人消費価格指数伸び率等が利上げを引き寄せるものにならなければ、年内の米連銀利上げ可能性は今よりも後退し、ドル安が進む可能性が高まると思われる。
週末には米雇用統計がある。その前に米GDPコアデフレーター、PCEIコア指数の発表もある。一連の統計が強ければもう一度ドル高反応が発生すると思うが、8月4日の米雇用統計での反発が続かなかったように、上昇反応はよほどサプライズでなければ一時的なものに止まるのではないかとみる。逆に弱ければドル円が一段安してゆくきっかけになると思われる。
【60分足 一目均衡表分析】
60分足の一目均衡表では、25日夜の急落で遅行スパンが悪化した。先行スパンからわずかに下抜けたがその後は先行スパンに絡んだところでとどまっている。109.20円以下での推移が続けば先行スパンからの転落感が強まるため、24日安値、18日安値を試しに下落しやすくなるとみる。109.50円超えの上昇が続き始める場合は先行スパンを上抜き返すことになるため、もう一段高へ戻しにかかる可能性が出てくるが、109.50円まで戻せずに109.20円割れしてくる場合は先行スパン突破失敗感が強まると思う。
60分足の14本相対力指数は25日朝高値を25日夜高値で上抜いたが、その間に指数のピークが切り下がっており、ミニ逆行となっている。また23日午前高値を25日夜高値でわずかに上抜いたが、23日の指数が70ポイントを超えたのに対して25日夜は届いておらず、両高値間で弱気逆行となっている。このため、23日と25日の高値を戻りのダブルトップとして下落を継続しやすい状況にあると思われる。18日安値形成時のように20ポイント台への下落も警戒される。強気転換には60ポイント超え戻す状況が必要と思われる。
概ね3日から5日周期の高値・安値形成サイクルでは、23日と25日高値をダブルトップとした下落サイクルに入っている可能性が考えられる。このため、25日夜高値を上抜けないうちは一段安警戒を優先し、ダブルトップの谷間となる24日安値を基準として、次の安値形成期となる29日午前から31日朝にかけて下落継続しやすい状況と思われる。
当面の予想レンジは、109.50円を抵抗とし、上抜く場合は25日夜高値試し、高値更新なら110.50円前後試しとその後の反落を警戒する。
109円を支持線とし、割り込む場合は18日安値試し、底割れなら108円から107円台後半試しを想定する。(了)<7:00執筆>
【今週の主な予定】
8月28日
(英) ロンドン市場休場(サマーバンクホリデー)
21:30 (米) 米7月卸売在庫 (6月 +0.7%、予想 +0.3%)
23:30 (米) 8月ダラス連銀製造業活動指数
8月29日
08:30 (日) 7月失業率 (6月 2.8%、予想 2.8%)
08:30 (日) 7月有効求人倍率 (6月 1.51、予想 1.52)
22:00 (米) 6月S&P/ケースシラー住宅価格指数 前年比 (5月 +5.7%、予想 +5.6%)
23:00 (米) 8月消費者信頼感指数 (7月 121.1、予想 120.0)
8月30日
メイ英首相来日(8月30日-9月1日)
21:15 (米) 8月ADP全国雇用者数 (7月 +17.8万人、予想 +18.5万人)
21:30 (米) 4-6月期GDP・改定値 前期比年率 (速報値 +2.6%、予想 +2.7%)
21:30 (米) 4-6月期個人消費・改定値 前期比年率 (速報値 +2.8%)
21:30 (米) 4-6月期GDPデフレーター・改定値 前期比年率 ( 速報値 +1.0%、予想 +1.0%)
21:30 (米) 4-6月期コアPCEデフレーター・改定値 (+0.9%)
22:15 (米) パウエルFRB理事講演
8月31日
08:50 (日) 7月鉱工業生産・速報値 (6月 +2.2%、予想 -0.3%)
10:00 (中) 8月製造業PMI (7月 51.4、予想 51.3)
10:00 (中) 8月非製造業PMI (7月 54.5)
10:30 (日) 政井日銀審議委員講演
20:30 (米) 8月チャレンジャー人員削減予定数
21:20 (欧) ドンブレト独連銀理事講演、シェリング・オーストリア財務相講演
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.4万件、予想 23.6万件)
21:30 (米) 7月個人所得 (6月 +0.0%、予想 +0.3%)
21:30 (米) 7月個人消費 (6月 +0.1%、予想 +0.4%)
21:30 (米) 7月コアPCEデフレーター前年比 (6月 +1.5%、予想 +1.4%)
22:45 (米) 8月シカゴ購買部協会景気指数 (7月 58.9、予想 58.5)
23:00 (米) 7月中古住宅販売保留件数指数 前月比 (6月 +1.5%、予想+0.5%)
9月1日
シンガポール市場休場(ハリラヤハジ、イスラム教巡礼祭)
北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉、第2回会合(メキシコ、5日日まで)
08:50 (日) 4-6月期法人企業統計・設備投資 前年比 (前期 +4.5%、予想 +8.3%)
10:45 (中) 8月財新製造業PMI (7月 51.1、予想 51.0)
21:30 (米) 8月非農業部門雇用者数 (7月 +20.9万人、予想 18.0万人)
21:30 (米) 8月平均時給 前月比 (7月 +0.3%、予想 +0.2%)
21:30 (米) 8月失業率 (7月 4.3%、予想 4.3%)
23:00 (米) 8月ミシガン大学消費者信頼感指数 確報値 (速報 97.6、予想 97.4)
23:00 (米) 7月建設支出 前月比 (6月 -1.3%、予想 +0.5%)
23:00 (米) 8月ISM製造業景況指数 (7月 56.3、予想 56.5)
オーダー/ポジション状況
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