ドル円見通し FOMC議事録ハト派で下落(8/17)

FOMC議事録はハト派的な内容だったが、これまでの市場コンセンサスよりもややハト派度合いが増した印象を与えたため、ドルは全面高となり、

ドル円見通し FOMC議事録ハト派で下落(8/17)

<概況>

8月8日の米ワシントンポスト紙報道、トランプ大統領発言から米朝間の有事リスクが一挙に高まり、北朝鮮によるグアム近海へのミサイル発射計画からさらに一触即発的な危機感が強まったこと、また弱い米経済指標が続いたことからドル円は先週後半に急落、11日には108.727円まで下落して6月14日安値108.80円を割り込み、4月20日安値108.71円以来の水準となっていた。
先週末に新たな軍事的緊張は発生せず、15日午前に北朝鮮の金委員長がミサイル発射計画について「米国の行動を見守る」と発言したことが報じられたため、米朝間の緊張問題はひとまず落ち着いたとしてドルが巻き返しの上昇に入った。また米経済指標も強い数字のものが続きドル高を助長した。このためドル円は15日夜に110.84円まで上昇、8月8日のワシントンポスト紙報道前高値110.82円をわずかに上回るところまで揺れ返しの上昇を実現し、さらに16日夕刻には110.95円を付け、8月4日の米雇用統計が強かったことで付けた高値111.03円に迫り、110円台後半の水準を維持して17日未明の米連銀FOMCを迎えた。

FOMC議事録はハト派的な内容だったが、これまでの市場コンセンサスよりもややハト派度合いが増した印象を与えたため、ドルは全面高となり、ドル円は発表直後に110.03円まで下落した。また、発表直後の下落から戻せず、安値圏に止まり、17日朝には110円割れし始めている。

【FOMC議事要旨、直後の動き】

・複数の投票メンバー、利上げペースは今後の経済指標で判断
・数人の参加者、追加利上げを待つこと可能=インフレ確認必要
・多くの参加者、最近の弱いインフレは特殊要因を反映
・多くの参加者、インフレ低迷は年後半も継続する公算大と予想
・多数の参加者、インフレ2%未達は予想より長期化する可能性
・数人の参加者、利上げ判断前に弱いインフレが一時的との確認が必要
・大半の参加者、資産圧縮は「比較的早期」が適切で概ね一致
・2人の参加者、雇用が過熱している可能性を指摘
・大半の参加者、今後2、3年でインフレは2%目標到達を予想
・2人の参加者、最近の株高は金融システムのリスクではない
・2人の参加者、家族向け不動産価格が金融システム不安定化も

FOMC声明および議事録、米雇用統計等の重要イベントでは、発表直後に急落しても、目先の材料消化として売り一巡後に反騰し始めれば、発表前水準を超えて上昇再開となるケースがある。しかし、発表から急落し、その後も安値圏に止まるか安値を更新する場合は材料を消化しきれず、次の米国市場時間まで下落基調が継続して行くことが多い。
今回の議事録は7月27日未明に声明文が出された25−26日会合のものだが、その時は27日未明高値から1円以上の急落となり、27日昼まで続落した。その後に半値以上を戻したが下落分を解消できずに28日深夜から一段安へ向かっている。
今回もまず、日中の安値試しを想定し、その後に戻しても110.50円前後までで戻り売りにつかまるようなら夜間でもう一段安する可能性を警戒する。また110.50円を超える反騰の場合でも米国市場時間から反転下落の可能性に注意する。日中に反騰気配が見られない場合は下落圧力が大きいと仮定して、そのまま夜間へ安値を更新してゆく可能性を警戒する。

【地政学リスクは継続】

昨晩20時過ぎ、トランプ大統領が「北朝鮮のキムジョンウンは良い決断をした。そうしなければ受け入れがたい悲惨なことになっただろう」とつぶやいた。先の金委員長発言も踏まえれば両国首脳の攻撃的スタンスが緩んできたという印象もあるが、21日からの米韓軍事演習(豪軍も一部参加)が規模縮小せずに実行されれば北朝鮮の反感と攻撃性が再燃する可能性もある。北朝鮮は8月25日に先軍節・金正日の先軍指導開始50周年記念日があるので、まだ油断できない状況は続く。

16日夕刻にユーロが急落する場面があったが、これはドラギECB総裁が来週の米ジャクソンホール会合で金融政策に関する発言はしないと報じられたことがきっかけだったようだ。

【60分足 一目均衡表分析】

【60分足 一目均衡表分析】

60分足の一目均衡表では17日未明の急落により遅行スパンが悪化(実線を割り込む)、先行スパンにもぐりこんだ。すでに先行スパンの下限に来ているため、110円割れの状況が続くか安値を切り下げてくる場合は先行スパンからの転落となる。先行スパンから転落する場合は、その後の反発でも先行スパン下限が抵抗となり、遅行スパン悪化中の安値更新が続きやすくなるので、当面は遅行スパン悪化中の安値試しを優先的に考える。

60分足の14本相対力指数は15日夜の上昇で80ポイントを超え、16日夕刻に相場が高値を更新したのに対して指数が高値の山を切り下げる弱気逆行を見せた。議事録公開からの急落で30ポイント割れとなっているが、17日未明の下落以降で強気逆行等が見られないうちは50ポイント以下での推移に止まり、相場の安値更新余地が継続しやすいとみる。

概ね3日から5日周期の短期サイクルでは、8月11日夜安値からの上昇が続いてきたが、16日夕高値でサイクルトップを付けて下落期に入ったと思われる。今回の安値形成期は17日の日中から18日夜にかけての間と想定されるので、17日の日中、夜にかけては安値更新しやすい時間帯と思われる。

直近の高値から1円規模の下落だが、下落角度としては7月27日未明のFOMC声明発表からの下落開始時、8月8日深夜のワシントンポスト紙報道からの下落開始時に近い印象があるので、継続性があるとみる。

以上を踏まえ、当面のポイントを示す。
(1)110.20円台までを目先の抵抗とし、110円割れの状況が続くうちは一段安警戒とし、109.50円、さらに109円試しへの下落へ進む可能性を考える。
(2)安値から0.50円規模での反発に止まるうちは戻り売りから崩れやすいとみる。
(3)強気転換は11050円超えからとし、そこまで戻せないうちは反落、一段安警戒とみる。(了)<9:20執筆>

【当面の主な予定】

8月17日
20:30 (欧) 欧州中央銀行(ECB)理事会、議事要旨公表(7月20日開催分)
21:30 (米) 米新規失業保険申請件数 (前週 24.4万件)
21:30 (米) 米8月フィラデルフィア連銀製造業指数 (7月 19.5、予想 19.0)
22:15 (米) 米7月鉱工業生産 前月比 (6月 +0.4%、予想 +0.3%)
22:15 (米) 米7月設備稼働率 (6月 76.6%、予想 76.7%)
23:00 (米) 米7月景気先行指数 

8月18日
02:00 (米) カプラン米ダラス連銀総裁講演
23:00 (米) 米8月ミシガン大学消費者信頼感指数 速報値 (7月 93.4、予想 94.0)
23:15 (米) カプラン米ダラス連銀総裁講演

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