ドル円 米金融政策よりも半島有事リスク?(8/9)

米労働省が8日夜に発表した6月の求人数は616万3000件で前月から46万1000件増加した。市場予想の575万件を大幅に上回り、この統計が始まってからの最高記録となった。

ドル円 米金融政策よりも半島有事リスク?(8/9)

<概況 JOLTで反発、半島情勢で反落>

8月4日の米雇用統計発表前に109.84円まで下落していたが、米雇用統計が予想を上回る良好さだったことでのドル高により111.04円まで上昇、8月2日高値をわずかに上回った。しかしその後は新たな高値更新には進めず、7日は111円を目前としつつほぼ横ばいの推移に止まり、8日午前には110.60円割れから売り優勢となり、8日21時台には110.24円まで下落した。
米労働省のJOLT統計が予想を大幅に上回る良好さだったことでいったん反騰、110.82円まで戻したが、その後に北朝鮮の核弾頭ミサイルに関する報道、トランプ大統領発言から有事リスクが強まるとして反落した。9日朝には8日夜安値を割り込んで110.10円台まで下落してきている。

【米労働市場は良好だが有事リスク再燃】

米労働省が8日夜に発表した6月の求人数は616万3000件で前月から46万1000件増加した。市場予想の575万件を大幅に上回り、この統計が始まってからの最高記録となった。この発表により米連銀の利上げ確率が上昇するとの思惑が拡大して米長期金利は上昇、ドルも反発した。
米連銀は7月27日のFOMC声明文において、インフレ見通しについては前回の「目標の2%を幾分下回っている」という表現から「幾分」を削除し、FOMCとしてはインフレ率に対する不満足を示した。そのため年内あと1回とされる利上げが後ズレするのではないかと受け止められてその後のドル安要因となった。7月28日の米4-6月期GDPがさえなかったことで8月1日へ一段安、さらに4日夜の米雇用統計前に7月11日以降の安値を更新した。

8月4日の米雇用統計が予想を上回る良好さだったためにドルは反発した。8月8日のJOLT統計も含め、労働市場環境は良好であり、米連銀に利上げを催促する内容といえる。しかし、もう一方のインフレへの不満足さはまだ解消していない。10日には米生産者物価、11日には米消費者物価が発表されるので、それらが市場予想を下回る場合は米連銀の利上げ確率低下によるドル安、予想を上回る場合は利上げ確率上昇によるドル高反応となってゆくと思われるので、米連銀の姿勢を判断してゆくにはこれらの統計を見定める必要があるだろう。

ワシントンポスト紙は8日、北朝鮮はミサイルに搭載可能な小型の核弾頭を開発したと米当局が分析していると報じた。その後にトランプ大統領が「北朝鮮は脅しを続けるならば火と怒りに見舞われることになる」と述べた。これらの動きから朝鮮半島有事リスクが高まったとして安全資産として円とゴールドが上昇した。ユーロ、ポンド等は下落しており、メジャー通貨の加重平均であるドル指数は上昇したが、円にとっては全般的なドル高を超えて円高という反応になっている。

朝鮮半島有事リスクについては、米空母が日本海へ向かったときに緊張感が高まったが、現実問題として米軍が軍事力行使した場合の惨劇を踏まえれば軍事衝突の可能性は低いとして、その後はこの問題への反応は薄まってきた。しかし最近の北朝鮮によるICBM発射実験の相次ぐ成功により、米国での脅威論が高まってきているともいえる。
トランプ大統領が先に中国への失望をつぶやいていることも踏まえれば、現実性は低いとはいえ、有事リスクが先週よりも高まり、相場のテーマとして意識されるレベルに入っていると考えるべきかもしれない。シカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティ指数(VIX)は11%に急伸している。

【60分足 一目均衡表分析】

【60分足 一目均衡表分析】

60分足の一目均衡表では、8月4日夜の米雇用統計からの反騰で先行スパンを上抜き、8日午前まではその状況を維持していたが、8日昼への下落から先行スパンへ潜り込み、20時過ぎには転落した。米JOLT統計からの反騰で先行スパンを上抜きかけるところまで一時的に戻したが突破に失敗、その後の朝鮮半島リスクによる反落で再び転落している。遅行スパンも8日午前から悪化し、実線との乖離が拡大している。
先行スパン下限は110.50円前後にあるため、当面は110.50円前後が大きな抵抗となりやすいと思われる。先行スパンから転落しているうちは一段安警戒が優先されるとみる。

60分足の14本相対力指数は8日夜の下落時に30ポイントを割り込み、いったんは60ポイント近くへ戻したが、その後の反落で30ポイントに迫ってきている。8日夜の指数安値を割り込まないうちは小規模の強気逆行から反発する可能性を示唆するが、8月4日への下落時の水準を割り込んでいるので強気転換には8日深夜のピークを越えて60ポイント台を付ける必要がありそうだ。

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでみれば、4日午前安値を前回のサイクルボトム、4日深夜高値をサイクルトップとして下落期に入っている印象のため、次の安値形成期となる9日午前から11日への下落が想定される。早ければ9日の日中に安値を付けて反騰入りする可能性もあるが、110.50円を下回るうちは一段安警戒とみる。

8月4日安値、その前の8月1日安値はいずれも110円割れから切り返しているので、今回も8月4日安値前後から戻せば、三点底を形成する可能性と、110円弱から111円前後までのレンジによるボックス型持合い相場へ進む可能性もあるが、4日安値を割り込み、その後も110円以下での推移が続く場合は、7月11日高値を起点とした下落=ドル安円高が7月24日までを一段目、8月4日までを二段目とし、三段下げの三段目に入る可能性が高まり、下値目途が108円台へ切り下がることも警戒される。

以上を踏まえ、9日の日中から10日朝へのポイントを示す。
(1)8月4日安値109.84円を試すとみるが、安値更新回避から戻す場合は、110.50円前後を戻り抵抗と考える。その際は、三点底ないしはボックス型持合い相場を形成する可能性を考える。
(2)8月4日安値割れの場合、当面の下値目途は109.50円から109.20円台にかけての間と想定する。109.50円以下は突っ込み警戒、反発注意とみるが110円前後が戻り抵抗になりやすいとみる。109.50円前後まで下げる場合は先行きもさらに一段安する可能性が高まるとみる。(了)<8:20執筆>

【当面の主な予定】

8月9日
シンガポール市場休場(独立記念日)
南ア市場休場(女性の日)
10:30 (中) 中国7月消費者物価指数 前年比 (6月 +1.5%、予想 +1.5%)
10:30 (中) 中国7月生産者物価指数 前年比 (6月 +5.5%、予想 +5.6%)
21:30 (米) 米4-6月期単位労働コスト・速報値
21:30 (米) 米4-6月期非農業部門労働生産性・速報値
23:00 (米) 米6月卸売売上高、在庫

8月10日
06:00 (NZ) RBNZオフィシャル・キャッシュレート  (予想 1.75%に据え置き)
08:50 (日) 6月機械受注 前年比 (5月 +0.6%、予想 -1.1%) 前月比 (5月 -3.6%、予想 +3.7%)
13:30 (日) 6月第3次産業活動指数 前月比 (5月 -0.1%、予想 +0.2%)
21:30 (米) 米新規失業保険申請件数 (前週 24.0万件、予想 24.5万件)
21:30 (米) 米7月生産者物価指数 前年比 (6月 +2.0%、予想 +2.3%)
21:30 (米) 米7月生産者物価指数・コア 前年比 (6月 +1.9%、予想 +2.1%)
23:00 (米) ダドリー米NY連銀総裁記者会見

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