ドル円円高トレンド加速リスク拡大(週報7月第五週)

今週はファンダメンタルな面からドル円相場を考えます。

ドル円円高トレンド加速リスク拡大(週報7月第五週)

前週の主要レート(週間レンジ)

       始値   高値  安値   終値

ドル円   110.93 112.20 110.55 110.70
ユーロ円  129.59 130.61 128.87 130.08
ユーロドル 1.1681 1.1777 1.1613 1.1750
日経平均 19973.67 20176.39 19901.88 19959.84

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

7月24日(月)

東京市場では先週末の流れを受けリスクオフの円買いが先行したものの、その後は株価の上下に沿う形で買い戻しが入った後に下落、上値の重さを確認すると欧州市場序盤には110.62レベルと直近の安値を下回る動きとなりました。海外市場に移ってからはOPEC・非OPEC会合でナイジェリアの生産調整等、減産遵守の流れが見られたことで原油価格が上昇、リスクオフの巻き戻しから株価にも買い戻しが見られ、ドル円は111円台を回復しての引けとなりました。いっぽうユーロドルは、朝方に1.1684レベルと金曜高値をわずかに上回ったものの後が続かず、短期筋の利食いが出たことから終日じり安の展開とはなったものの、米国のFOMCを前に引き続きECBの秋以降のテーパリング議論への思惑が下支えとなり、金曜安値圏では買いも見られました。

7月25日(火)

東京市場では高寄りした株価がじり安となる動きに沿って為替市場は円高の動きとなりましたが、海外市場に移ると主要株価指数、原油価格が大幅高となりこれまでのリスクオフ巻き返しの動きが目立ちました。ドル円は東京市場の高値を超え、114円台半ばからの下降チャンネルを上抜けると円売りの動きが活発化し、NY市場では111.96レベルと112円間近の水準へと上伸し高値引け。いっぽうユーロドルは、NY市場朝方まではこれまでの買いが続き、一時1.17台乗せもあったもののドル高の動きから失速。短期筋の利食いも出て、1.16台半ばへ押しての引けとなりました。

7月26日(水)

ドル円は早朝市場こそ前日の流れを継続し円安が先行したものの、株式市場開始と同時に上値の重さを嫌気した円買い戻しとなりました。NY市場まではじり安の動きとなりましたが、NY市場では強い株価の動きを受けドル買いの動きとなり、112円台を回復してのFOMC待ち。しかし、FOMCの内容が前回のイエレン議長議会証言同様にハト派な内容であったことから一転ドル売りとなり、ドル円は111.06レベルまで水準を切り下げ安値圏での引け。ユーロドルはNY市場まで上値が重たい動きとなっていたものの、FOMC後に1.1740レベルと直近高値を更新し、こちらもドル安値圏での引けとなりました。

7月27日(木)

東京前場はFOMC後の流れを受けドル売りが継続し、ドル円が110.78レベル、ユーロドルは1.1777レベルのドル安値をつけました。しかし、ユーロドルの利食いやドル円も110円台後半では買いたい向きも多く反転、欧州市場ではスイスフランを中心とした欧州通貨安からドル買い戻しが目立ちました。NY市場では株高も手伝ってドル円は111.71レベルまでドル買いが進みましたが、ムニューシン財務長官が不均衡是正に伴い為替条項にも触れたことから、対米黒字の多い国の代表として円買いの動きとなり、再び111円を割り込んだ後にやや戻しての引けとなりました。いっぽうユーロドルは短期筋の利食いが目立ちNY市場でも上値が重く1.16台後半でのクローズとなりました。

7月28日(金)

水曜FOMC、木曜ニューシン財務長官発言と、NY後場にドル売り・円買いの材料が出て、それが翌日の東京市場で円買いを先行させるという流れが続き、金曜も東京前場からドルの上値の重たい展開が続いていました。欧州市場に入るとあらたためてユーロ買いが強まったこと、またNY市場に入り事前に予想はされていたものの北朝鮮がミサイルを試射したことから、主役を入れ替えリスクオフの円買いとなりました。ドル円は110.55レベルまで水準を下げ、ユーロドルも1.1764まで買われ、それぞれドルの安値引けの動きとなりました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2017年FOMCメンバー(ニューヨーク、フィラデルフィア、シカゴ、ミネアポリス、ダラス)ではない地区連銀はカッコ付で示しました。わかりやすさ優先で、あえて正式呼称で表記していない場合もあります。

7月31日(月)
10:00 中国7月製造業・非製造業PMI
10:00 NZ7月ANZ企業信頼感
18:00 ユーロ圏7月CPI速報値
18:00 ユーロ圏6月失業率
21:00 南ア6月貿易収支
22:45 米国7月シカゴ購買部協会景気指数
23:00 米国6月中古住宅販売保留件数指数
23:00 米国7月ダラス連銀製造業活動指数

8月1日(火)
10:45 中国7月MarkIt製造業PMI
13:30 豪中銀政策金利発表
16:50 フランス7月製造業PMI確報値
16:55 ドイツ7月製造業PMI確報値
16:55 ドイツ7月失業率
17:00 ユーロ圏7月製造業PMI確報値
17:30 英国7月製造業PMI
18:00 ユーロ圏4〜6月期GDP速報値
21:30 米国6月個人所得・消費支出
22:45 米国7月MarkIt製造業PMI確報値
23:00 米国7月ISM製造業景況指数
23:00 米国6月建設支出

8月2日(水)
07:45 NZ4〜6月期失業率
17:30 英国7月建設業PMI
18:00 ユーロ圏6月PPI
21:15 米国7月ADP全国雇用者数
23:30 米国週間原油在庫
25:00 (クリーブランド連銀総裁講演)
28:30 (サンフランシスコ連銀総裁講演)

8月3日(木)
10:30 豪州6月貿易収支
10:45 中国7月MarkItサービス業PMI
16:00 トルコ7月CPI
16:50 フランス7月サービス業PMI確報値
16:55 ドイツ7月サービス業PMI確報値
17:00 ユーロ圏7月サービス業PMI確報値
17:30 英国7月サービス業PMI
20:00 英中銀MPC結果公表、四半期インフレ報告
20:30 米国7月チャレンジャー人員削減予定数
21:30 米国新規失業保険申請件数
22:45 米国7月MarkItサービス業PMI確報値
23:00 米国7月ISM非製造業景況指数
23:00 米国6月製造業受注指数

8月4日(金)
10:30 豪中銀四半期経済政策報告
21:30 米国7月雇用統計
21:30 米国6月貿易収支

今週の週間見通し

先週は週初に円高水準からスタートし月曜に110.62レベルをつけた後、週半ばには112.20レベルまで値を戻したものの、週末にかけ再び円高の動きとなり、金曜NY市場では110.55レベルと、1週間かけての行って来い相場となりました。今週はファンダメンタルな面からドル円相場を考えます。

先週半ば以降のテーマとしては、(1)水曜FOMC、(2)木曜ムニューシン財務長官発言、(3)金曜北朝鮮ミサイル試射、(4)同じく金曜IMF報告書と4つの材料が円高の流れへと軌道修正させたと言えます。これら4点について順番に見ていきましょう。

(1) FOMC

FOMCでは先のイエレン議長議会証言と同様に年後半の利上げについて慎重な姿勢を示したことで、市場参加者の利上げ思惑が後退したことによるドル安の動きとなりました。米国株式市場は慎重な姿勢を好感したことで最高値更新の動きと、為替市場とは対比的な動きとなっています。

引き続き、FOMCメンバーの見通しは年内もう一回の利上げと今後のバランスシート縮小議論の開始という点にブレはありませんので、あまりハト派よりの見通しをしているとこれまで同様にブレているのは市場参加者だけの状態を繰り返すこととなります。ちなみに12月時点の利上げ織り込み度(25bp以上すべて)は50.4%と現状維持の49.6%をかろうじて上回っていますが、織り込み度の判断では利上げの可能性は半々というのが現在(28日NYクローズ時)の状況です。

今週は雇用統計もありますが、ポジション的に円売りが積み上がっている(シカゴ投機筋の円売りは121,189枚と依然高水準の円売り)ことを考えると、予想より弱い経済指標、米国株価指数の調整等、何がきっかけとなってもドル売りに動きやすい要素であるとの認識でいたほうがよいでしょう。

(2) ムニューシン財務長官発言

ムニューシン財務長官は、長期的なドル高を望むというこれまでの財務長官のスタンスを崩してはいませんが、以前にも短期的なドル高に対する警戒感には言及していました。今回は米国の貿易赤字を念頭にした発言ですが、不均衡是正に対して為替条項に言及するこれまでよりも一歩踏み込んだとも思える発言を行いました。

財務省といえば、4月と10月の年2回公表する為替報告書が注目されますが、中国との経済対話が不発に終わる中、同報告書において監視リストに入っている中国、日本、ドイツの次は日本とドイツに対して何らかの圧力を加えてくる可能性があります。サミットでも日本に対して不均衡是正を要求していましたが、為替報告書をまとめる時期までに為替調整に関する何らかのニュースが出てきてもおかしくありません。円高、ユーロ高の要素として注意が必要です。

(3)北朝鮮ミサイル試射

米国としては着実に技術を上げてきている北朝鮮に与えられる時間的な猶予が無くなりつつあることに危機感を抱いていることは間違いありません。これまでの北朝鮮ならばチキンレースの芝居という見方もできたのでしょうが、金正恩が何を考えているのかわかりかねる中で、そろそろ何か手を打たないとまずいという状況になってきていると考えられます。

本当に戦争開始となると隣国の韓国はもちろん近隣の日本も日本売りという動きに繋がる可能性があり、そうなるとリスクオフの円買いが正しいのかどうか悩ましいのですが、そこまでは無いという前提の上で、緊張の高まりはリスクオフに繋がるという考え方で良いと思われます。そうなると、株安、あるいは円高というリスクオフの動きが継続しやすいということになるわけです。

(4)IMF報告書

金曜にIMFの報告書が公表されましたが、その中で米ドルは10〜20%過大評価されているとの説明があります。いっぽう日本円と、ユーロ圏としてのユーロは適正水準であるもののドイツとユーロとの関係ではユーロは過小評価されていると説明されていました。となると、ドル円は関係ないのではないかとも思われますが、(2)の為替報告書とも絡めて今後のユーロ高、円高、ドル安という動きは警戒が必要です。

以上、(1)〜(4)までどれをとってもドル安・円高という材料であって、今後の中期的な流れとしては円高トレンドを加速させやすいという見方でいます。

今週は110.00の大台をトライし、更なる円高の動きはより中期的な流れの中で捉えることが必要ではあるものの、早晩6月安値108.83レベルを視野に入れる流れを考えておく必要はありそうです。今週は109.40レベルをサポートに、111.40レベルをレジスタンスとする週を見ておくこととします。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみ平均足と同様とすることで、短期的な方向性(緑=上昇、赤=下降)を見やすく加工した当週報独自のチャートとなっています。また、国内外で人気の高い一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。トレンドラインは週初の段階で過去一定期間から自動的に表示される自動トレンドライン(無い場合もあります)となっています。

ディスクレーマー

アセンダント社が提供する本レポートは一般に公開されている情報に基づいて記述されておりますが、その内容の正確さや完全さを保証するものではありません。また、使用されている為替レートは実際の取引レートを提示しているものでもありません。記述されている意見ならびに予想は分析時点のデータを使ったものであり、予告なしに変更する場合もあります。本レポートはあくまでも参考情報であり、アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、為替やいかなる金融商品の売買を勧めるものではありません。取引を行う際はリスクを熟知した上、完全なる自己責任において行ってください。アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、本レポートの利用あるいは取引により生ずるいかなる損害の責任を負うものではありません。なお、許可無く当レポートの全部もしくは一部の転送、複製、転用、検索可能システムへの保存はご遠慮ください。

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る