ドル円見通しFOMCハト派姿勢継続?(7月第五週)

FOMC声明が発表され、バランスシート縮小開始は「比較的早期」を示したが、インフレ目標については従来の「幾分下回っている」との表現から幾分を削除して

ドル円見通しFOMCハト派姿勢継続?(7月第五週)

<概況>

7月11日高値114.49円からの大幅下落が続いて7月24日夕刻に110.61円の安値を付けたが、27日未明のFOMCを控えたポジション調整的な買い戻しにより上昇、FOMC直前には112.18円まで戻していた。しかしFOMC声明をハト派的なものとしてドルは全面安となり、発表からの急落で27日昼には110.78円の安値を付けた。
27日夜へいったん戻したものの111.50円超えを維持できずに反落して27日未明高値からは三角持合いの様相となっていた。
28日夜、米4-6月期のGDP速報値が発表されたが総じて予想を下回ったため、FOMCのハト派姿勢は続くとみてドル安反応となり、ドル円は24日、27日の安値ラインを割り込んで一段安となり、29日未明には110.54円まで下げて終了した。

【FOMC、GDP、雇用統計】

7月27日未明、FOMC声明が発表され、バランスシート縮小開始は「比較的早期」を示したが、インフレ目標については従来の「幾分下回っている」との表現から幾分を削除して「下回っている」としたため、FOMCは追加利上げへ向けてのインフレ状況に満足していないことを示したとして、ハト派的=利上げを急がない姿勢の表れとしてドル安反応となった。28日の米GDP、さらに8月4日の米雇用統計がFOMCをタカ派へ変化させるほどの内容でなければドル安基調が続くというのが市場のコンセンサスとなった印象だった。

7月28日夜、米4-6月期のGDPが発表された。伸び率は+2.6%で市場予想の+2.7%を下回った。1-3月期は当初の+1.4%から+1.2%へ下方修正された。GDPデフレーターは+1.0%で市場予想の+1.3%を下回り、前期の+1.9%(+2.0%へ上方修正)から減速した。コア・デフレーターは+0.9%で市場予想の+0.7%を上回ったが、前期の+2.0%(+1.8%へ下方修正)から減速した。これらGDPデータは総じてやや弱い数字として、米FOMCのハト派的な姿勢を変更させるものではないと市場は受け止め、7月11日以降の流れ=ドル安継続としてドル円は安値を更新した。
深夜に北朝鮮がICBM発射実験を行ったことについて、市場の反応は限定的ではあったが、朝鮮半島リスクがさらに高まったとして、GDP発表からの下落一巡による戻りを抑える円高要因となった印象がある。

深夜に北朝鮮がICBM発射実験を行ったことについて、市場の反応は限定的ではあったが、朝鮮半島リスクがさらに高まったとして、GDP発表からの下落一巡による戻りを抑える円高要因となった印象がある。

8月4日には7月の米雇用統計がある。市場の事前予想では、失業率が前月の4.4%から4.3%へ改善するとみられる。非農業部門雇用者数は18.3万人増の予想で、前月の22.2万人増からはやや減速するが高水準を維持するとみられている。予想通りか予想以上に良ければ、いったんドル高反応があるかもしれないが、7月11日以降のドル安基調を覆すようなサプライズでなければ一時的なドル高反応を消化してからドル安が再開する可能性がある。予想よりも悪ければドル安加速要因となってくると思われる。

【2か月周期】

昨年12月15日にトランプラリーによるピークを付けて4月17日へ下落した。この間、戻り高値は3月10日、5月11日、そして7月11日と2か月周期で到来している。安値も4月17日、6月14日(15日未明)とほぼ2か月周期である。このリズムが継続すると仮定すれば、次の安値形成期は6月14日安値から2月後の8月半ばという計算になる。

7月21日への下落により、日足では一目均衡表の26日基準線を割り込んだ。1か月程度の上昇から反落し、26日基準線を割り込むのは、5月11日高値からの下落途中における5月17日の急落、3月10日高値からの下落当初における3月15日の急落でみられる。26日基準線を割り込んだ直後に切り返せば強いが、切り返せずに続落する場合は下落が長引くケースが多い。

4月17日安値以降、高値は5月11日と7月11日でわずかに高値を更新した。安値は4月17日から6月14日へわずかに切り上がっている。このため中勢レベルとしてはやや右肩上がりの往来型持合い相場といえる。安値切り上がりで反騰に転じ、26日基準線を上抜き返せば、この間の高値更新へ進む可能性が考えられるが、今回の下落で6月14日安値を割り込む場合は切り上がりパターンが崩れるため、往来型持合いから転落して一段安へ進む可能性が高まると思われる。ユーロ、ポンド、カナダドル、新興国通貨高等の全般的なドル安基調を踏まえると、週末の米雇用統計で下落にブレーキがかからない場合は往来相場からの転落による円高の本格化も警戒されるところだ。

【60分足 一目均衡表分析】

【60分足 一目均衡表分析】

60分足の一目均衡表では、7月27日未明のFOMCから急落して先行スパンから転落、その後は先行スパンが戻り抵抗となっている。111.50円にかけては先行スパンが構えているので、かなり抵抗感がありそうだ。このため、当面、111.50円を超えないうちは一段安警戒とみる。

60分足の相対力指数は27日昼への下落で26ポイントまで下落、29日未明への下落では28ポイント台にとどまっているので、31日午前から反騰して50ポイントを超える場合は強気逆行となっていったん戻しに入る可能性があるが、31日の日中へ続落する場合は指数が26ポイントを割り込んで逆行とならず、一段安が継続しやすくなると思われる。

概ね3日から5日周期の高値・安値形成サイクルでは、7月24日夕安値で前回のサイクルボトムをつけ、27日未明高値で直近のサイクルトップをつけて下落期に入った。24日安値からは4日を経過しているのえ、サイクルボトムを付けての反騰へ進む可能性があるが、27日昼安値ですでに直近のサイクルボトムを付けて新たな下落期に入っている可能性も考えられ、その場合は8月1日から3日にかけての下落継続となる可能性がある。31日の日中に反騰して111.50円に迫る場合は前者、安値を更新し、111円以下での推移が続く場合は後者の可能性が考えられる。

以上を踏まえると、111.50円以下での推移中、特に111円以下での推移が続くうちは一段安警戒を優先し、下値目途は110円試し、109.50円、109.00円試しと段階的に切り下がる可能性を警戒する。111.50円超えからは短期サイクル的なリバウンド期入りとして111円台後半を試すとみるが、27日未明高値を上抜けないうちは、週末の米雇用統計からさらに一段安する可能性も警戒しておく。(了)<30日22:30執筆>

【今週の主な予定】

7月31日
08:50 (日) 6月鉱工業生産 速報 (5月 -3.6%、予想 +1.5%)
10:00 (中) 中国7月製造業PMI  (6月 51.7、予想 51.5)
10:00 (中) 中国7月非製造業PMI (6月 54.9)
18:00 (欧) ユーロ圏7月消費者物価指数(HICP)速報値 (6月 +1.3%、予想 +1.3%)
22:45 (米) 米7月シカゴ購買部協会景気指数 (6月 65.7、予想 60.0)
23:00 (米) 米6月中古住宅販売保留件数指数前月比 (5月 -0.8%、予想 +1.0%)
23:30 (米) 米7月ダラス連銀製造業活動指数

8月1日
10:45 (中) 中国7月財新製造業PMI (6月 50.4、予想 50.4)
13:30 (豪) 豪中銀政策金利発表 (予想 1.5%に据え置き)
18:00 (欧) ユーロ圏4-6月期GDP・速報値 前期比 (前期 +0.6%、予想 +0.6%)
18:00 (欧) ユーロ圏4-6月期GDP・速報値 前年比 (前期 +1.9%、予想 +2.1%)
21:30 (米) 米6月個人所得 (5月 +0.4%、予想 +0.4%)
21:30 (米) 米6月個人消費 (5月 +0.1%、予想 +0.1%)
21:30 (米) 米6月コアPCEデフレーター 前年比 (5月 +1.4%、予想 +1.4%)
23:00 (米) 米7月ISM製造業景況指数 (6月 57.8、予想 56.2)
23:00 (米) 米6月建設支出

8月2日
21:15 (米) 米7月ADP全国雇用者数 (6月 +15.8万人、予想 +19.5万人)

8月3日
01:00 (米) メスター米クリーブランド連銀総裁講演
04:30 (米) ウィリアムズ米サンフランシスコ連銀総裁講演
17:00 (欧) ECB経済報告
20:00 (英) 英中銀 政策金利 (予想 0.25%に据え置き)
20:00 (英) 英中銀 資産購入枠 (予想 4350億ポンドに据え置き)
21:30 (米) 米新規失業保険申請件数 (前週 24.4万件)
23:00 (米) 米7月ISM非製造業景況指数 (6月 57.4、予想 56.8)
23:00 (米) 米6月製造業受注指数

8月4日
21:30 (米) 米7月非農業部門雇用者数 (6月 +22.2万人、予想 +18.3万人)
21:30 (米) 米7月失業率 (6月 4.4%、予想 4.3%)
21:30 (米) 米7月平均時給 前月比 (6月 +0.2%、予想 +0.3%)
21:30 (米) 米6月貿易収支 (5月 -465億ドル、予想 -455億ドル)

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