ドル円 112円台半ばまで上伸後小緩み
昨晩の海外市場では米欧中央銀行トップの発言に久しぶりに相場に動意が見られました。
まず、昨夕ECBドラギ総裁がポルトガルで行ったECB年次フォーラムの開会演説で「すべての兆候はユーロ圏の景気回復の力強さと広がりを示している。デフレ圧力はリフレに変わった」と発言、また、従来通り金融緩和継続が必要との姿勢を崩さなかった半面、「インフレを抑制している要因は概ね一時的なもの」との認識を示しました。更に、景気回復が現在の政策スタンスをより緩和的なものとすることから、金融スタンスを維持するために政策手段を調整することがありうるとの趣旨の発言もあって、予想外に「タカ派」的な発言が市場にサプライズとなりました。
これを受けてユーロは対ドルで急伸、5月下旬以来何度もトライして到達できなかった昨年11月の米大統領選直後の瞬間値1.1300を上抜け一時1.1349の高値をつけています。ユーロがこの水準をつけたのは昨年8月以来のことです。
一方ドル円は欧州序盤のドラギ総裁発言を受けて欧州債が売られたことに米国債もつれ安し、米10年債利回りが一時2.12%から2.22%まで急上昇したことからドル買いとなり、その後発表となった6月の消費者信頼感指数、リッチモンド連銀景況指数がいずれも予想を上回ったこともあって112円台半ばまで上昇しました。
しかし、昨晩最も注目されたイエレン議長のロンドンでの講演では、従来の引き締めスタンスに変化は見られなかったものの「インフレ期待が低下しているように見受けられれば心配だ、そうした状況を回避したいのは確かだ」とやや弱気ととれる発言も見られたことからドル円は反落、アジア時間は112円台前半で戻ってきています。
昨晩はECBがややタカ派へFRBはややハト派へと市場の見方に微調整が生じたことからユーロが買われましたが、ECBの緩和スタンス、FRBの引き締めスタンスに根本的な変化が生じたわけではないため結局ユーロ金利の上昇にドル金利もつれて上昇、為替はユーロ>ドル>円の順番の強さとなったと見ることができます。
この流れの中ユーロ円は最も上昇が大きく、昨年4月以来の水準となる127円台前半で取引されています。尚、金利上昇がテーマの相場となったため昨晩欧米株式は軒並み下落しています。
ドルは昨晩「二番手」ではありましたが、昨晩の対円での上昇で、ドル円は日足の一目均衡表の雲をきれいに上抜けた形となっていて、110-112円で続いたレンジからも上放れ新たな局面に入ったように見えます。
昨晩は図らずも欧米の景気回復の堅調さと相対的な日本の回復の遅れを象徴するような動きとなりました。
今週ポルトガルのシントラで開催されているECBフォーラムには日銀黒田総裁も出席しており、中銀関係者の発言機会も多い中で、更にこのような構図が強調されるようなこととなれば、対主要通貨で一段の円安圧力が加わる可能性も出てくるものと思われます。
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