ドル円見通し (週報17年6月第三週)

2015年12月の利上げ再開。大幅に先送りされた後の2016年12月利上げ。2017年に3回の利上げ予想が示されていた中での2017年3月利上げ。これらは皆、ドル円としては

ドル円見通し (週報17年6月第三週)

<概況>

6月2日の米雇用統計での非農業部門就業者増加数が予想外に低かったことからドル円は直前高値111.71円から当日深夜安値110.33円まで1.38円幅の急落となった。さらに6月7日安値109.11円への続落で下落幅は2.60円幅と広がった。その時の市場心理は「6月FOMCでの利上げは確実としても、その後の利上げ時期、あるいは利上げできるのかどうかは曖昧だ」というものであった。

急落一服で6月9日へ戻した後、15日未明のFOMC前は110円台序盤での持合い。雇用統計で下落した時の安値水準に近いところにあった。そこに14日夜、米消費者物価、小売売上高が予想外に悪かったため、6月2日の米雇用統計で急落した時の市場心理がぶり返して109円割れまで急落、6月7日安値を割り込んだ。市場心理は「あるいはFOMCが今回の利上げ決定をしたとしても、残り1回の利上げについては相当に慎重になる=ハト派になるのではないか」という過剰な期待であった。

しかし、15日未明、FOMCは従来からの想定通り、追加利上げを決定し、かつ、残り1回の利上げ姿勢も堅持、特段のハト派色を見せなかった。直前に期待が膨らんでいたこと(ドル円にとっては悲観に走ったこと)により、本来なら想定通りの答えだったことを悲観(ドル円としては楽観)、14日夜の下落は過剰反応だったとして揺れ返しが発生した。

6月15日夜はNY連銀景況指数、フィラデルフィア連銀景況指数ともに予想を上回った為にこの揺れ返しには勢いが付いてしまった。その流れのまま16日夜には111.41円まで回復、FOMC時点の安値108.80円からの上昇幅は2.61円幅となったわけだが、これは6月2日の雇用統計前高値から7日への下落幅2.60円とほぼ同じである。状況的には雇用統計前の水準へ、振り出しに戻ったと言える。

【米連銀当局者講演で流れを見定める】

2015年12月の利上げ再開。大幅に先送りされた後の2016年12月利上げ。2017年に3回の利上げ予想が示されていた中での2017年3月利上げ。これらは皆、ドル円としては事前の上昇により材料消化となり、利上げ決定後には下落=円高ドル安へと進むきっかけとなってきた。
今回の追加利上げも、3月利上げが濃厚となった段階から予想され、4月以降はほぼ確実とみられてきたため、材料的には織り込み済としてこれまでのようにドル安円高の再開となるきっかけになっても不思議ではなかった。しかし、14日夜の先走った市場反応がアダとなって、これまでの反応の仕方とは異なる状況となった。また、冷静に今回のFOMC声明を踏まえれば、FOMCは市場予想よりもしっかりと利上げペースを守っており、2016年に4回やるといって結局は年末の1回しかできなかった時とは違うという印象を与えた。

一番の違いは株高であり、ダウ等主要3指数は史上最高値を更新しており、現在でも最高値近辺にある。英国のブレクジット、フランス大統領選挙への波乱リスク、朝鮮半島有事リスク、ロシアゲート事件によるトランプ大統領弾劾リスク等が警戒されてきたものの、株式市場を見る限り、リスク警戒感よりも楽観主義は優勢であり、米連銀も世界連鎖株安の引き金になりたくないという懸念に悩まされずにいる。
そうしたことを改めて考えれば、株高、債券から株へのマネーフローによる米長期債安・長期金利上昇、結果としてのドル高という流れが出来ても不思議ではない。少なくとも、15日未明から16日夜にかけての円安ドル高は、そうした市場心理を反映したものと考える。この市場心理が正しいのかどうか、6月19日のNY連銀総裁、20日のフィッシャー副議長等の連銀当局者による講演、発言が続く中で検証されて行くと思われる。

今年2月時点では、3月の利上げ確率は低いと市場は見ていた。それが2月末のNY連銀総裁から相次いだ当局者講演、発言で一挙に利上げムードへと変わった。6月19日からの一連の当局者講演も、市場のトレンド継続か否かを決めてゆく大きな手掛かりになるのではないかと思われる。

【日足 一目均衡表分析】

【日足 一目均衡表分析】

6月14日は長い下ヒゲの付いた陰線。15日は大陽線。16日は上ヒゲの小陰線という週後半3日間であった。
16日高値は26日基準線とほぼ一致する。先行スパンには届いておらず、遅行スパンもまだ好転できていない。
16日高値111.41円を超えてくれば、上ヒゲの抵抗感が消え、26日基準線超えへ進むため、112円超えからの遅行スパン好転、さらに先行スパン突破へと上昇基調が鮮明化する可能性がある。しかし、安値日を含めて3日目が上ヒゲ陰線の場合、翌日が上ヒゲをつぶす上昇にならずに下げる場合、短期的な戻り一巡から下落再開となるケースも多い。

このため、16日終値110.87円を割り込んだ状況が続き始める場合は3日間の上昇の半値押しとなる110.125円割れ、110円割れへと下落してゆく可能性を警戒する。逆に、110.87円を上回る状況が続き始める場合は上ヒゲ潰しへの上昇とし、高値更新なら上昇基調継続として112円台後半から113円を窺う可能性を考える必要があるだろう。その場合、基準線や75日移動平均線などが集中する111.41円近辺が最初の苦戦のポイントになる。仮に110円割れから下げ再開となる場合は14日安値108.80円割れからの一段安へ進み、4/17安値108.13円、107円台、106円台と段階的に下値目途を切り下げてゆく可能性が警戒される。(了)<18日21:00執筆>

【今週の主な予定】

6月19日
(日) 8:50 5月貿易収支
(米) 21:00 ダドリー米NY連銀総裁、講演

6月20日
(米) 8:00 エバンス米シカゴ連銀総裁、講演
(米) 16:15 フィッシャーFRB副議長、講演
(米) 20:45 ローゼングレン米ボストン連銀総裁、講演
(米) 21:30 米1-3月期経常収支

6月21日
(米) 4:00 カプラン米ダラス連銀総裁、講演
(日) 8:50 日銀政策決定会合議事要旨(4月26-27日分)
(日) 15:36 黒田日銀総裁、全国信用金庫大会であいさつ
(米) 23:00 米5月中古住宅販売件数

6月22日
(NZ) 6:00 RBNZオフィシャル・キャッシュレート発表
(欧) EU首脳会議(於;ブリュッセル、-23日)
(日) 10:30 岩田日銀副総裁、講演
(米) 21:30 米新規失業保険申請件数
(米) 23:00 パウエルFRB理事、上院銀行委員会公聴会で証言
(米) 23:00 米5月景気先行指数

6月23日
(米) 23:00 米5月新築住宅販売件数

6月24日
(米) 0:15 ブラード米セントルイス連銀総裁、講演
(米) 1:40 メスター米クリーブランド連銀総裁、講演
(米) 3:15 パウエルFRB理事、講演

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