<概況>
イベントを無難に乗り切った格好で目立った方向感は観測されなかった。本日、方向性が確認出来そうな状況で流れを見定める局面だ。
先週末6月2日夜の米雇用統計前には、31日深夜安値110.49円から6月2日午後高値111.70円まで1日半、1.21円幅の戻りを入れたが雇用統計を嫌気して急落した。6日から一段安となり、7日夕刻安値109.11円まで続落したが109円割れをひとまず回避、8日夜の三大イベント前のポジション調整から戻しに入り、8日夜には110.38円の戻り高値をつけた。ちょうど1日半、戻り幅は1.27円幅であり、雇用統計前のリバウンドとほぼ同じ様なリズムで戻した。日付が変わって9日未明からはジリ安、110円を割り込んでいる。材料消化後の下値の不安が出てきたイメージだ。
【ECB 現状維持 出口はまだ先】
ECBは政策金利及びQEによる量的緩和政策の現状維持を決めた。主要政策金利は0.0%、上限金利の限界貸出金利は0.25%、下限金利の中銀預入金利はマイナス0.40%。2016年4月から10会合連続での据え置きとなった。QEについては月額600億ユーロ(約7.4兆円)の資産購入を年末まで継続する方針を確認した。
金利に関するフォワードガイダンスについては従来の「必要に応じて一段の利下げを辞さない」としてきた文言を削除し、これ以上の利下げはないという姿勢を示したが、先行きのインフレ率予想は下方修正し、ドラギ総裁は会見で「状況悪化すれば利下げ」の可能性を検討し、量的緩和についても「今後の拡大余地」を堅持、必要に応じて追加緩和に踏み切る姿勢も示した。
4月に物価目標に到達したことでECBが緩和政策の縮小、出口戦略へ傾斜するのではないかという見方が強まり、ユーロ高基調が続いてきたが、今回のECB声明、ドラギ総裁会見からは金融緩和終了への条件はまだまだ整っていないことを示し、ユーロ高基調にはブレーキとなった。ユーロ安ドル高とユーロ安円高が交錯するために直接的な円高要因とはならないだろうが、英国の総選挙によるポンド安、欧州で相次ぐテロ事件等を踏まえれば、4月17日から大きく反騰してきたユーロ円の失速による円高感が拡大してゆく可能性にも注意しておく。
【コミー証言】
コミー前FBI長官は米上院公聴会で証言したが、前日に公開された証言書面を超えるサプライズ的な内容は無かったため、特に株式市場はトランプ大統領への弾劾問題に対するリスク回避感による売り圧力は見られず、逆にNYダウは史上最高値を更新した。
ロシアゲート問題が発展してトランプ大統領への弾劾訴追へと進むのではないかという政治リスクが5月17日のドル円急落要因だったが、その後、この問題はくすぶりを続けているものの、新たな危機レベルへとは進んでいない印象だ。大統領弾劾の現実味がさらに増せばその時はNYダウも崩れるだろうが、今のところはそこまでの警戒感には至らずという事だろうか。
コミー氏はフリン氏捜査への圧力問題についてトランプ大統領からの指示と受け止めたと発言したが、捜査妨害及び違法性についてはモラー特別検察官の判断に委ねるとし、自身からは述べないとした。
【英国総選挙】
9日早朝に投票終了した英下院選挙の出口調査では与党保守党が過半数議席を割り込み、絶対多数政党不在になる見通しが報じられ、早朝から英ポンドが急落、ユーロ安へも波及している。BBCによれば、与党・保守党は第1党の座を維持するものの議席数を改選前の330から314に減らす見込み。最大野党・労働党は議席を266(改選前229)、EU残留派の自由民主党は14(同9)に増やす。野党・スコットランド民族党(SNP)は34(同54)の見込み。予想通りならどの政党も過半数に届かず、新政権樹立の行方は不透明になる。
英国の政治混乱が金融市場リスクとして拡大してゆくのかどうかは最終結果とその後の首班指名、政権発足まで見守る必要がある。ドル円にとってはリスク回避要因であり、円高圧力と考えられるが、9日午前時点ではまだ様子見的な反応に止まっている。
【60分足 一目均衡表分析】
60分足の一目均衡表では6月8日午前への上昇で遅行スパンが好転、8日の日中は先行スパン突破に失敗していたが、8日深夜への上昇により先行スパンを上抜けた。9日早朝への下落では先行スパン下限及び26本基準線まで押してきている。
7日安値からの戻りは今のところ1日半、1.27円幅であり、米雇用統計前にリバウンドした時の1日半、1.21円幅に近い戻りが観測中。
先行スパンを上回る状況を維持する内は8日夜高値110.38円試し、あるいは高値更新の場合は6/6高値の110.51円近辺から6/5高値110.72円への上昇へ進む可能性と、リバウンドを超えて雇用統計による急落前水準へ回帰する可能性も出てくるかもしれないが、8日夜高値を上抜けない内は26本基準線割れ、さらに先行スパンからの転落及び遅行スパン悪化と進んで下落再開へ向かう可能性が警戒される。
109.50円割れに至らない内はその後の反騰で上昇再開の可能性ありとするが、109.50円割れの場合は先行スパンからの転落、遅行スパンの悪化もそろってくるため下げ再開と仮定し、7日安値109.11円試しへ向かうと想定する。
概ね3日から5日周期の高値・安値形成サイクルでは、6月2日高値から4日半となる8日深夜高値で戻り一巡、下落期に入ってきている可能性がある。その場合、次の安値形成期は7日安値を基準として12日から14日にかけての間と想定されるため、7日安値を割り込んでの一段安へ向かいやすくなるとみる。(了)<9:40執筆>
【週末にかけての主な予定】
6月9日
英国総選挙開票
6月11日
フランス下院選挙、イタリア地方選挙
オーダー/ポジション状況
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