リスクオフの円買い加速に警戒(週報17年4月第一週)

先週は週初こそオバマケア代替案の取り下げから、トランプ政権の政策執行に対する懸念が高まりリスクオフの動きが先行。

リスクオフの円買い加速に警戒(週報17年4月第一週)

前週の主要レート(週間レンジ)

       始値   高値  安値  終値

ドル円    110.55 112.21 110.11 111.39
ユーロ円   119.90 120.45 118.60 118.72
ユーロドル  1.0846 1.0906 1.0651 1.0658
日経平均  19071.19 19251.30 18909.26 18909.26

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

3月27日(月)

週明けの早朝市場は、従来的な判断(トランプ政権の政策執行が難しくなる懸念)からドル売りが強まりました。ドル円は東京後場とNY朝方に110.11レベルを2度トライしたものの、110円の大台には買いがいること、また日計り組が勢いでドル売りを膨らませていたこともあって、110.66水準での引け。いっぽう、ユーロドルはドル売りの動きからユーロ買いが強まり、ストップオーダーも巻き込みながらNY市場では1.09台乗せの動きとなりました。

3月28日(火)

東京前場は前日NY市場の流れを継続してドルの買い戻しが先行しましたが、110円台後半では戻り売りを考える向きも多く、欧州市場序盤までは110円台半ばでのもみあいとなりました。その後、米金利の低下もあり改めてドル売りを仕掛ける向きも見られましたが前日安値には届かず、NYダウの上昇とともにリスクオフの巻き返しからドル買い戻しの動きに。複数のFOMCメンバーが年内残り2回の利上げに肯定的な発言を行ったことも米金利とドルの下支え要因となり引けは111円台に乗せました。ユーロドルもドル円同様にもみあいからドル買い戻しの動きに沿って一時1.08を割り込み、全般的にドル高地合いでの引けとなりました。

3月29日(水)

東京市場では期末スポットで実需の動きに対する思惑はあったものの静かな値動きを続けましたが、最近の円高の動きから買い戻し局面では丁寧にドルを売る向きが多い様子でした。またEU離脱表明が正式に行われることを材料に、ポンド円、ユーロ円での売りが見られましたが、予定されていたことであり方向感までは出ず、テクニカルにユーロが直近安値を抜けたこともあり、NY市場に入る頃にそれぞれ1.0740レベル、対円でも119.01レベルの安値を付けました。ドル円もユーロ円の売りから一時110.72レベルの安値をつけたものの、全般的なドル買い戻しの動きに引っ張られ111円台に乗せて引けました。

3月30日(木)

NY市場に入るまでのドル円は期末を控え111円台前半で方向感の無い展開を続けました。NY市場に入ると米国GDP確報値が予想よりも強かったことからドル買いの動きとなり、その後は為替報告書に関する観測記事でドル売り後、225先物が夜間取引で上昇する動きに沿ってリスクオンの円売りの動きとなりました。ドル円は111.94レベルまで上伸後に若干押してのクローズ、ユーロドルもドル円ほどの勢いは無かったものの前日からのユーロ売り・ドル買いの流れを継続して引けました。

3月31日(金)

期末の東京市場では仲値に向け円売りが強まり昼には112.21レベルの高値を付けましたが、後場には株価が大幅安となったこともあって頭打ち。その後も上値の重たい展開を辿りましたが、NY市場ではNY連銀総裁のハト派発言をきっかけにドル売りの動きとなり、短期筋のストップオーダーも巻き込みながら111.11レベルの安値を付け上値の重たいままでのクローズとなりました。ユーロドルは、値幅は狭いもののじり高の動きとなっていましたが、引けにかけユーロ円の119円割れのストップに伴った売りから週間安値圏で引けました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2017年FOMCメンバー(ニューヨーク、フィラデルフィア、シカゴ、ミネアポリス、ダラス)ではない地区連銀はカッコ付で示しました。わかりやすさ優先で、あえて正式呼称で表記していない場合もあります。

4月3日(月)
**:** 豪州・NZ冬時間
**:** 中国市場休場(〜4日)
08:50 本邦3月日銀短観
16:00 トルコ3月CPI
16:50 フランス3月製造業PMI確報値
16:55 ドイツ3月製造業PMI確報値
17:00 ユーロ圏3月製造業PMI確報値
17:30 英国3月製造業PMI
18:00 ユーロ圏2月失業率
18:00 ユーロ圏2月PPI
22:45 米国3月MarkIt製造業PMI確報値
23:00 米国3月ISM製造業景況指数
23:00 米国2月建設支出
23:30 NY連銀総裁講演
28:00 フィラデルフィア連銀総裁講演

4月4日(火)
**:** 香港市場休場
06:00 (リッチモンド連銀総裁講演)
10:30 豪州2月貿易収支
13:30 豪中銀政策金利発表
17:30 英国3月建設業PMI
18:15 豪中銀総裁講演
21:30 米国2月貿易収支
23:00 米国2月製造業受注指数
29:30 タルーロFRB理事講演、退任。

4月5日(水)
16:50 フランス3月サービス業PMI確報値
16:55 ドイツ3月サービス業PMI確報値
17:00 ユーロ圏3月3月サービス業PMI確報値
17:30 英国3月サービス業PMI
21:15 米国3月ADP全国雇用者数
22:45 米国3月MarkItサービス業PMI確報値
23:00 米国3月ISM非製造業景況指数
23:30 米国週間原油在庫
27:00 FOMC(3月15日)議事録公表

4月6日(木)
10:45 中国3月MarkItサービス業PMI
15:00 ドイツ2月製造業受注
20:30 ECB理事会(3月9日)議事要旨公表
20:30 米国3月チャレンジャー人員削減予定数
21:30 米国新規失業保険申請件数
22:30 (サンフランシスコ連銀総裁講演)
**:** 米中首脳会談(〜7日)

4月7日(金)
15:00 ドイツ2月鉱工業生産
17:30 英国2月鉱工業生産
17:30 英国2月貿易収支
21:30 米国3月雇用統計
23:00 米国3月卸売売上高・在庫
**:** ユーロ圏財務相会合(〜8日)

今週の週間見通し

先週は週初こそオバマケア代替案の取り下げから、トランプ政権の政策執行に対する懸念が高まりリスクオフの動きが先行。しかし、110円の大台トライを何度かしたものの下げきれず、その後は利食いの買い戻しや四半期末に向けた実需のドル買いの動きが目立つ展開となりました。そこに出てきたのが、木曜の為替報告書に関する憶測記事でしたが、実際に31日に貿易赤字の調査に関する大統領令に署名しました。

トランプ政権が始まってから、公約はほとんど実現できていませんし、インフラ投資や減税といったポジティブな材料はある程度市場は織り込み済みで、ユーフォリアから現実を見る方向に修正が入り始めています。支持率も36%まで低下し、早くもオバマ政権時の最低支持率であった38%を割り込んでいて、支持率回復のためにも米国の巨大な貿易赤字を何とかしようという動きに出て来る可能性が高まってきました。

これまでトランプ大統領自身が言ってきたことや、先のG20におけるムニューシン財務長官の発言を見る限り、米国第一主義における保護主義は大きな柱であり、大統領令に署名する前の演説でも「ルールを破った貿易相手国は厳しい代償を払う」と述べ、商務省とUSTRは大統領令に沿って90日以内に調査し大統領に報告することになりますが、商務長官は、米国の貿易赤字の最大の相手国である中国、そして続く日本とドイツに関しての調査することを表明しています。大統領は明らかに貿易赤字を減らすことに舵を切ってきたことは間違いありませんし、USTRも既に301条(貿易相手国との協議、相手国に対し関税等の制裁を定めた通商法で、かつて日本の自動車部品で有名になった)の適用を示唆しています。

こうした中で、まず注目されるイベントが今週6〜7日に行われる米中首脳会談です。会談の中で当然対中赤字を削減するために米国側から何らかの提案をすることは間違いないでしょう。また、301条がさらに強化されたスーパー301条というのもかつて話題となりましたが、これまで制裁にまで至ったケースはありません。WTO(世界貿易機関)を敵に回してまでということが大きいと思いますが、G20における米国の主張から声明変更にまで持ち込んだことを考えると、トランプ政権は孤立を選んでも制裁にまで話を進める可能性を否定できません。

そうなると、関税といった通商面だけでなく為替調整といった為替政策の話にまで及ぶリスクも否定できず、少なくとも市場関係者はそうした思惑で動くと考えざるを得ません。となると今週は先週何度かトライして抜けられなかった110円の大台を再度試す可能性がありますし、日本の個人投資家がここ1年で最高レベルのドル買いポジションを持っている状態であることを考慮すると、110円の大台を抜けた場合には大きなストップロスが出るリスクが高いと考えられます。

テクニカルには、先週示した通り「トランプ相場が始まった昨年11月9日安値101.20と12月15日高値118.66の半値押しにあたる109.93」、「更には12月高値118.66を起点に、2月安値111.60までの押し、その後の3月高値115.50までの戻しを逆N波のフィボナッチ・エクスパンションの100%エクスパンションが108.45、トランプ相場の61.8%押しが107.87」と引き続き警戒すべきポイントが下にあります。

今週は、米中首脳会談、米国雇用統計とイベントが多い週ですが、米国保護主義による日米間の通商政策を懸念したリスクオフの円買いがもっとも気になるところです。今週のドル円は、ドルの上値が重たい展開を考え「109.50レベルをサポートに、111.90レベルをレジスタンス」する週を見ておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみ平均足と同様とすることで、短期的な方向性(緑=上昇、赤=下降)を見やすく加工した当週報独自のチャートとなっています。また、国内外で人気の高い一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。トレンドラインは週初の段階で過去一定期間から自動的に表示される自動トレンドライン(無い場合もあります)となっています。

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