G20を経て円高の流れに(2017年3月第三週)

先週は主要国の一連の金融政策イベントが続きましたが、各イベントとも結果自体はコンセンサス通りであったものの、

G20を経て円高の流れに(2017年3月第三週)

前週の主要レート(週間レンジ)

     始値     高値    安値     終値

ドル円  114.76 115.20 112.57 112.71
ユーロ円  122.68 122.89 120.83 121.04
ユーロドル 1.0690 1.0782 1.0600 1.0739
日経平均  19545.74 19656.48 19454.17 19521.59

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

3月13日(月)

週明けの東京市場では、週末雇用統計後のドル売りの動きを受け、ドル円、ユーロドルともにドル売りが先行しました。欧州市場に入り、ユーロドルが1.07台で反転すると米長期金利の低下やイベント前のポジション調整も入って、再びドル買いの動きとなりました。ドル円は朝方の水準、ユーロドルは雇用統計直後の水準まで戻し一日を終えました。

3月14日(火)

東京市場では一連の金融政策イベントを前に全くの動意薄でしたが、欧州市場に入りポンド安をきっかけとしたドル買いの動きが一時ドル円でも115円台に戻す動きを演じました。ただ、115円台では売りオーダーも残っていた様子で、株価や原油の下げも嫌気されドル円は114円台半ばまで押し上値の重たい流れでの引けとなりました。いっぽうユーロドルは戻しが弱く、オランダ議会選挙前ということも重なり終日売りが目立ち、結果としてユーロ円が日中高値から1円下げての引けとなりました。

3月15日(水)

注目のFOMCを前にし東京からNYの後場まで主要通貨は膠着状態が続き、まったく方向感の無いままに結果を待つこととなりました。0.25%の利上げは完全に織り込んでいたものの、2017年末までの金利見通しには前回12月の会合から変化が無かったため、一部で年4回の利上げとペースが速まることを考えていた向きもあったことから、ドルは急落、米株は急騰という結果になりました。ドル円は113.18レベル、ユーロドルは1.0740レベルとそれぞれドル安値をつけ安値圏での引けとなりました。

3月16日(木)

FOMCの後は日銀、英中銀と主要国の会合が続きましたが、日銀は現状維持で総裁会見も特に材料となりませんでした。欧州市場序盤にストップを付けに行く動きから一時112.91レベルの安値をつけましたがすぐに元の水準へと戻し、その後は113円台前半でもみあいのまま引けました。英中銀は現状維持ではあったものの利上げを主張した委員がいたことからポンドが上昇、またNY市場に入りオーストリア中銀総裁が政策金利前の預金金利引き上げも選択肢と発言したことからユーロも上昇しての引けとなりました。

3月17日(金)

東京市場では前日NY市場の流れを受けユーロが対ドル、対円で底堅い動きを続けていました、ドル円自体は3連休を控えて動意薄となりました。海外市場では週末G20への警戒感に加え米長期金利が低下したことからドル円を中心にドル売りの動きとなり、NY市場に入り日米財務相会談で特段円相場の話は出なかったものの戻しは鈍く、ドル円、ユーロ円ともに円高地合いでの週末クローズとなりました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2017年FOMCメンバー(ニューヨーク、フィラデルフィア、シカゴ、ミネアポリス、ダラス)ではない地区連銀はカッコ付で示しました。わかりやすさ優先で、あえて正式呼称で表記していない場合もあります。

3月20日(月)
**:** 東京市場休場
21:30 米国2月シカゴ連銀全米活動指数
25:45 ドイツ連銀総裁講演
26:10 シカゴ連銀総裁講演

3月21日(火)
09:30 豪中銀理事会(7日)議事録公表
18:30 英国2月CPI、PPI
19:00 NY連銀総裁講演
21:30 米国10〜12月期経常収支
25:00 (カンザスシティ連銀総裁講演)

3月22日(水)
07:00 (クリーブランド連銀総裁講演)
08:50 日銀会合(1月30・31日)議事要旨公表
17:00 南ア2月CPI
17:00 南ア10〜12月期経常収支
18:00 ユーロ圏1月経常収支
22:00 米国1月住宅価格指数
23:00 米国2月中古住宅販売件数
23:30 米国週間原油在庫
29:00 NZ中銀政策金利発表

3月23日(木)
16:00 ドイツ4月GFK消費者信頼感
16:45 フランス3月企業景況感
18:00 ECB経済月報
18:30 英国2月小売売上高
21:00 イエレンFRB議長講演
21:30 米国新規失業保険申請件数
23:00 米国2月新築住宅販売件数
23:45 ラウテンシュレーガーECB理事講演
24:00 ユーロ圏3月消費者信頼感速報値
25:30 ミネアポリス連銀総裁講演

3月24日(金)
 06:45 NZ2月貿易収支
 08:00 ダラス連銀総裁講演
 16:45 フランス10〜12月期GDP確報値
 17:00 フランス3月製造業・サービス業PMI速報値
 17:30 ドイツ3月製造業・サービス業PMI速報値
 18:00 ユーロ圏3月製造業・サービス業PMI速報値
 21:00 シカゴ連銀総裁講演
 21:30 米国2月耐久財受注
 22:05 (セントルイス連銀総裁講演)
 22:45 米国3月MarkIt製造業PMI速報値

3月26日(日)
 **:** 欧州・英国夏時間開始

今週の週間見通し

先週は主要国の一連の金融政策イベントが続きましたが、各イベントとも結果自体はコンセンサス通りであったものの、FOMCではメンバーと市場参加者の思惑とのズレや、英中銀の結果が満場一致では無かったこと等、イベント直後には通貨ごとに一時的な振れが見られました。

最大の注目材料はFOMCであったわけですが、改めて昨年12月と同じ金利見通しが示されたことで、少なくとも6月の会合までは現在の金融政策が継続されることは間違いないところですし、日銀の金融政策は当面変化が見込まれないことから、円相場という観点では金融政策から離れ他の材料を探す流れへと変化しつつある段階と言えます。

そうした中、もうひとつの注目材料となっていたG20が17・18日に開催され、米国のムニューシン財務長官としては初の公式会合デビューということ、また麻生財務相との日米財務相会合が行われることも為替関係者を神経質にさせる材料となり先週末のドルの上値が重たかった理由のひとつとなりました。

今週はこのG20に絡んでの個人的な思惑を書いていきます。

まず、金曜NY市場で出た日米財務相会合の内容ですが、為替相場に関して新しい話は出なかったものの「これまでのG7、G20での合意内容を維持する」ことの確認がされています。これまでの合意内容としては、「為替レートの過度の変動や無秩序な動きは悪影響があること」、「為替市場に関して緊密に協議すること」、「通貨の競争的な切り下げを回避することや競争力のために為替レートを目標とはしないこと」というところが柱であり、今回のG20でも踏襲されました。

次にG20での米国の主張ですが、これはトランプ政権の米国第一主義を色濃く反映し「保護主義に反対する」という一文が削除されました。ムニューシン財務長官も為替よりもこの通商政策の部分に言及し「過去の声明は必ずしも適切ではない」と保護主義に反対という文言を削除したことについて米国の立場を鮮明にしています。この点はトランプ大統領がこれまで発言してきたことを重ねると、中国を筆頭に米国の貿易赤字の原因となっている国に対しては今後あらゆる手段を取ってくる可能性があり、それは為替調整も例外では無いと考えておいた方が後々驚かないで済みます。

今回のG20は米国新政権にとってはデビュー戦であり、今回は議長国のドイツが米国に花を持たせた結果となりましたが、おそらく米国はこの結果に気を良くし7月のG20サミットに向け色々な要求が突きつけようと今後も動いてくるリスクがあります。あまりに米国第一主義を貫くとG20では19対1となってしまいますが、外圧に弱そうな日本をターゲットにすることで米国内(米国民、議会)への成果作りを水面下で算段しているに違いないと思っています。

金曜の日米財務相会合も表向きの発表は穏やかなものとなっていますが、前に麻生財務相が120円発言をした時と同様に、何かオフレコでの話があった可能性も考え、当面は円高バイアスがシナリオを立てる際に常に考えるべき重要な要素となってくると見ています

日足チャートをご覧ください。

1月12日以降2か月以上に渡って111円台半ばと115円台半ばとの4円レンジ(黄色のラインマーカー)の中での上下を繰り返す動きを続けていますが、直近のところではこのレンジの下限を試したいと思わせる動きとなってきました。そして、ここまで書いてきたように米国のわがままとも言える米国第一主義に為替市場も翻弄されるかもしれないリスクが出てきたわけです。

為替市場は実際に問題が起きなくてもその可能性で動くことがしばしばあり、そうなると仮に円高の動きが始まった時にどこまで下押しする可能性があるのかを考えておく必要があります。大きくは大統領選開票日の安値101.20から昨年12月高値118.66の半値押しにあたる109.93、大きくは110円の大台が大きなターゲットとなります。

また、もう少し手前の水準では12月高値118.66を起点に、2月安値111.60までの押し、その後の3月高値115.50までの戻しを逆N波のフィボナッチ・エクスパンションの各計算ポイントと考えると50%のエクスパンションが111.99とこれは2月安値よりは上の水準ですが、61.8%は111.66ですし、78.6%(61.8%の平方根)は109.96とこれは先ほどの大きなターゲットとほぼ一致しています。

今週とは思いませんが、3月期末あるいは新年度入りした4月早々にでも110円の大台近辺をトライしに行ってもおかしくはないと見ています。今週のドル円は、引き続きドルの上値が重たい展開を考え111.00レベルをサポートに、113.50レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみ平均足と同様とすることで、短期的な方向性(緑=上昇、赤=下降)を見やすく加工した当週報独自のチャートとなっています。また、国内外で人気の高い一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。トレンドラインは週初の段階で過去一定期間から自動的に表示される自動トレンドライン(無い場合もあります)となっています。

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