トランプ氏圧勝、ドル全面高・米長期債利回り急伸で154円台後半
〇昨日のドル円、トランプ氏優勢報道により151.28から154.32へ急伸、いったん反落後に一段高
〇トランプ政権発足ならインフレ再燃懸念を招くとの見方で長期債利回りが急伸、ドル全面高に
〇明朝FOMC政策金利発表、利下げ見送り姿勢ならドル高円安進行か
〇米長期債利回りは大上昇、NYダウ、ナスダック、ビットコインは史上最高値更新
〇154.69超えからは155円台前半への上昇を想定
〇153.50割れからは153円前後への下落を想定
【概況】
ドル円は米大統領選挙開票速報でのトランプ氏優勢報道から6日午前安値151.28円から昼に154.32円へ3円を超える急伸となり、いったん153.12円まで1円を超える反落後に一段高へ進み、7日未明には154.69円を付けて9月16日安値139.57円以降の高値を更新した。
米大統領選挙では接戦やハリス氏優勢との報道も交錯したことからトランプ氏の圧勝はサプライズ感を招き、共和党が上院で過半数を超え、下院でも過半数超えの見通しとなり共和党が大統領・上下院を制する「トリプル・レッド」の様相となった。
トランプ政権発足なら大型減税と財政拡大による国債増発や、保護主義や関税強化によるインフレ再燃懸念を招くとの見方で米国債が売られて長期債利回りが急伸してドル全面高となり、NYダウが史上最高値を更新して日経平均もリスク選好で大幅上昇したことが押し上げ要因となり、ドル円の日足で11月6日は前日比3.04円の円安ドル高となり、石破ショックによる急落後の石破・植田会談で反騰した10月2日の上昇(前日比2.90円の円安ドル高)を超えた。
ドル円の9月16日安値からの上昇波動は9月27日までを一段目とし、石破ショックを通過して10月28日までを二段目とすれば、11月6日から三段目の上昇期に入った印象だ。
7月3日高値161.94円から9月16日安値139.57円までの下げ幅22.37円に対する3分の2戻し154.48円も超えたことで155円を突破する場合は160円台回復へ向かうとの声も高まりやすくなる。そうなれば政府・日銀の市場介入への警戒感も強まり、日銀も円安けん制的な発言を増やしつつ12月の追加利上げへも可能性が高めてゆくと思われるが、米FRBが利下げペースを緩めて様子見の姿勢を採り始める場合は先行きの米国インフレ再燃感による米長期債利回り上昇・ドル高の流れが勝ることにもなりかねない。
明朝、FOMCの政策金利発表とパウエルFRB議長会見がある。政権からの独立性を強調しつつ、当面はインフレ鈍化傾向を踏まえて年内2回のFOMCで0.25%ずつの利下げが見込まれるが、年内2回の内1回を政権交代による不透明感から利下げ見送りとする姿勢がみられる場合には、米長期債利回りの上昇継続とドル高円安が進行しやすくなると思われる。
【米長期債利回りは大上昇、NYダウやナスダックは史上最高値更新】
米大統領選でのトランプ氏勝利を受けて米長期債利回りは急伸した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.16%上昇の4.43%となり、一時4.49%をつけて9月16日に付けた3.60%以降の最高を大幅に更新した。30年債利回りも前日比0.17%上昇の4.61%となり、一時4.67%をつけて9月16日に付けた3.90%以降の最高を更新した。
政策金利動向に敏感な2年債利回りは前日比0.09%上昇の4.27%となり一時4.30%をつけて9月25日に付けた3.51%以降の最高を更新した。
トランプ氏の主張する大型減税による財政悪化・国債増発懸念、一律10〜20%の追加関税による輸入インフレへの懸念が強まったこと、NYダウの大上昇等で株買い・債券売り・利回り上昇反応が勢い付いたことが背景だ。
一方、NYダウは前日比1508.05ドル高の大上昇で取引時間中及び終値の史上最高値を更新、ナスダック総合指数も544.30ポイント高の大上昇で取引時間中及び終値の史上最高値を更新、S&P500指数も146.28ポイント高の大幅上昇で取引時間中及び終値の史上最高値を更新した。
トランプ氏を支援したイーロン・マスク氏が率いるテスラは15%高、規制緩和期待でゴールドマン等金融株も買われた。また仮想通貨への好意的姿勢によりドル建てのビットコインは7万6000ドル台へ上昇して史上最高値を更新した。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は11月6日午前安値からの反騰で10月28日午前と29日夜の両高値をダブルトップとした右肩下がりの下降トレンドから脱却してダブルトップラインも超えた。急騰後の修正安も警戒されるが、153円台中盤を維持する内は7日の日中から9日早朝にかけての間への上昇余地ありとし、153円割れからはいったん下げに入るとみて9日早朝から13日午前にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では11月6日午前安値からの急騰で遅行スパンが好転して先行スパンも上抜いた。急騰一服で横ばいからジリ安推移に入る場合は遅行スパンが悪化する可能性があるが、153.50円を上回るうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところから上昇再開とし、153.50円割れからは下落継続とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は6日昼の急伸で80ポイントに迫った後は相場の続伸に対して指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられる。60ポイントを割り込んでも回復する内は一段高余地ありとするが、55ポイント割れからはいったん下げに入る可能性を警戒して40ポイント台への低下してから反騰する流れとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、153.50円を下値支持線、7日未明高値154.69円を上値抵抗線とする。
(2)153.75円を上回るうちは一段高余地ありとし、154.69円超えからは155円台前半への上昇を想定し、FOMCを強気で通過する場合は155円台後半への上昇を想定する。
(3)153.75円割れを弱気転換注意とし、153.50円割れからは153円前後への下落を想定する。153円前後は買われて次の上昇起点となるのではないかと考えるが、FOMCを通過して下落する場合は152円台中盤へ下値目途を引き下げる。
【当面の予定】
11/7(木)
中国全人代常務委員会(11/8まで)
未 定 (中) 10月 貿易収支・米ドル建て (9月 817.1億ドル、予想 760.3億ドル)
16:00 (独) 9月 鉱工業生産 前月比 (8月 2.9%、予想 -1.0%)
16:00 (独) 9月 鉱工業生産 前年同月比 (8月 -2.7%、予想 -3.0%)
16:00 (独) 9月 貿易収支 (8月 225億ユーロ、予想 209億ユーロ)
19:00 (欧) 9月 小売売上高 前月比 (8月 0.2%、予想 0.4%)
19:00 (欧) 9月 小売売上高 前年同月比 (8月 0.8%、予想 1.3%)
21:00 (英) 英中銀 政策金利 (現行 5.00%、予想 4.75%)
21:30 (英) ベイリー英中銀総裁、会見
22:30 (米) 7-9月期 非農業部門労働生産性・速報値 前期比 (4‐6月 2.5%、予想 2.3%)
22:30 (米) 7-9月期 単位労働コスト・速報値 前期比年率 (4‐6月 0.4%、予想 1.0%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.6万件、予想 22.1万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 186.2万人、予想 187.5万人)
24:00 (米) 9月 卸売売上高 前月比 (8月 -0.1%、予想 0.2%)
28:00 (米) 米FOMC 政策金利 (現行 4.75-5.00%、予想 4.50-4.75%)
28:30 (米) パウエルFRB議長、会見
29:00 (米) 9月 消費者信用残高 前月比 (8月 89.3億ドル、予想 145.0億ドル)
11/8(金)
中国全人代常務委員会(最終日)
08:30 (日) 9月 全世帯消費支出 前年同月比 (8月 -1.9%、予想 -1.8%)
14:00 (日) 9月 景気先行指数CI・速報値 (8月 106.9、予想 109.0)
14:00 (日) 9月 景気一致指数CI・速報値 (8月 114.0、予想 115.5)
24:00 (米) 11月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (10月 70.5、予想 70.6)
25:00 (米) ボウマンFRB理事、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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