来週の為替相場見通し:『ドル円は一時153円台まで急上昇。本邦衆院選の影響は限定的か』(10/26朝)

ドル円は9/16に記録した年初来安値139.58をボトムに切り返すと、今週半ばにかけて、約3カ月ぶり高値となる153.19(7/31以来の高値圏)まで急伸しました。

来週の為替相場見通し:『ドル円は一時153円台まで急上昇。本邦衆院選の影響は限定的か』(10/26朝)

『ドル円は一時153円台まで急上昇。本邦衆院選の影響は限定的か』

〇今週のドル円、トランプトレード再開、米金利上昇等に週央にかけ153.19まで急伸
〇買い一巡後は、介入警戒感、衆院選を控えてのポジション調整等に152円台前半まで値を崩す
〇今週発表の米経済指標はいずれも良好な結果示す
〇ユーロドル、ECB関係者のハト派発言、米金利上昇等に週央にかけ、安値1.0761まで下落
〇売り一巡後は、独指標の好調、ECB関係者のタカ派発言に1.07台後半に持ち直す
〇ドル円、主要テクニカルポイント上抜け、強い買いシグナルも成立、地合い強い
〇日米金利差縮小観測後退、米大統領選でのトランプ氏優位報道等もドル円をサポート
〇衆議院議員総選挙での自公過半数割れでも円買い反応は一時的か
〇ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):150.00ー155.00、(EURUSD):1.0600−1.0900

今週のレビュー(10/21−10/25)

<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初149.47で寄り付いた後、早々に週間安値149.07まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(1)トランプ氏優勢報道(トリプルレッド期待)に端を発した対主要通貨でのドル買い圧力や、(2)米金利上昇に伴うドル買い圧力(米10年債利回りが7/26以来の高水準となる4.26%へ急上昇)、(3)テクニカル的な地合いの好転(一目均衡表雲上限突破に伴う三役好転の成立および200日移動平均線の上方ブレイク)、(4)米10月リッチモンド連銀製造業指数(結果▲14、予想▲17)の市場予想を上回る結果、(5)直近高値突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売り、(6)海外勢を中心とした円キャリートレードの再開期待が支えとなり、週央にかけて、週間高値153.19(7/31以来の高値圏)まで急伸しました。

もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(7)急ピッチな上昇に対する反動売り(利食い売り)や、(8)青木官房副長官による「為替動向を高い緊張感を持って注視する」との円安牽制発言、(9)加藤財務相による「投機的な動向も含め為替市場の動向を緊張感をさらに高めて注視していく」「足元では一方的な急速な動きがみられる」との円安牽制発言、(10)上記8、9を背景とした為替介入警戒感、(11)週末に実施予定の衆議院議員総選挙を控えたポジション調整(自公過半数割れリスクを織り込む動き)が重石となり、本稿執筆時点(日本時間10/26午前6時00分現在)では、152.30前後まで値を崩す動きとなっております。

尚、今週発表された一連の米経済指標【米新規失業保険申請件数(結果22.7万件、予想24.2万件)、米10月製造業PMI速報値(結果47.8、予想47.5)、米10月非製造業PMI速報値(結果55.3、予想55.0)、米9月新築住宅販売件数(結果73.8万件、予想72.0万件)、米9月耐久財受注速報値(結果▲0.8%、予想▲1.0%)、米10月ミシガン大学消費者信頼感指数(結果70.5、予想69.0)】はいずれも良好な結果を記録するなど、米経済の底堅さを示す内容となりました。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0860で寄り付いた後、早々に週間高値1.0872まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(1)フランス中銀ビルロワドガロー総裁による「ユーロ圏の消費者物価上昇率は2025年序盤にECB目標の2%に到達する見込み」とのハト派的な発言や、(2)リトアニア中銀シムカス総裁による「ディスインフレのトレンドは着実に進行中」「景況感の下振れリスクが高まってきている」とのハト派的な発言、(3)ラトビア中銀カザークス総裁による「インフレ率が低下するにつれて金利は引き続き低下するだろう」とのハト派的な発言、(4)スロバキア中銀カジミール総裁による「インフレ低下ペースが加速し続ければ更なる緩和を行う強い立場にある」とのハト派的な発言、(5)ドイツ9月生産者物価指数(結果▲1.4%、予想▲1.1%)の市場予想を下回る結果、(6)ポルトガル中銀センテノ総裁による「中立レベルまで徐々に金利を引き下げる」「雇用市場が軟化すれば50bpの利下げも可能」とのハト派的な発言、

(7)オーストリア中銀ホルツマン総裁による「ディスインフレは予想よりも急速に進展」「金利引き下げは適切」とのハト派的な発言、(8)ラガルドECB総裁による「金利引き下げペースは未定ながら金利が向かっている方向は明らか」とのハト派的な発言、(9)米金利上昇に伴うドル買い圧力、(10)テクニカル的な地合いの悪化(直近安値を下方ブレイク)が重石となり、週央にかけて、週間安値1.0761(7/3以来の安値圏)まで下落しました。

もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(11)オーストリア中銀ホルツマン総裁による「市場の利下げ観測は踏み込み過ぎの公算大」とのタカ派的な発言や、(12)ドイツ10月製造業PMI速報値(結果42.6、予想40.8)の市場予想を上回る結果、(13)ドイツ10月非製造業PMI速報値(結果51.4、予想50.6)の市場予想を上回る結果、(14)ドイツ連銀ナーゲル総裁による「利下げを急ぐべきではない」とのタカ派的な発言、(15)リトアニア中銀シムカス総裁による「50bpの利下げ根拠は見当たらない」とのタカ派的な発言、(16)ドイツ10月IFO景況感指数(結果86.5,予想85.6)の良好な結果が支えとなり、本稿執筆時点(日本時間10/26午前6時00分現在)では、1.0796前後まで持ち直す動きとなっております。

来週の見通し(10/28−11/1)

<ドル円相場>
ドル円は9/16に記録した年初来安値139.58をボトムに切り返すと、今週半ばにかけて、約3カ月ぶり高値となる153.19(7/31以来の高値圏)まで急伸しました。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、一目均衡表転換線、基準線、雲上限、ボリンジャーミッドバンド)を軒並み上抜けしていることや、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「ダウ理論の上昇トレンド」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは極めて強いと判断できます(4時間足や週足ベースでも強い買いシグナルが継続点灯中)。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)日銀による過度な利上げ期待の後退(石破首相は10/2に「現在は追加利上げをするような環境にはない」と市場で燻る早期利上げ観測を牽制→日銀による利上げペースが半年に1度など緩やかなものに留まるとの見方が浸透→円金利先高観後退→円売り再開)や、(2)米FRBによる過度な利下げ期待の後退(直近で発表された米経済指標が軒並み力強い結果となったことで米経済のソフトランディング期待が台頭→米FRBによる大幅利下げ観測後退→米長期金利に上昇圧力→米ドル買い要因)、(3)上記1、2を背景とした円キャリートレードの再開期待(海外勢を中心に円ショートを再構築)、(4)米大統領選におけるトランプ氏優勢報道(トリプルレッド期待浮上→トランプトレード再開→ドル買い要因)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。

目先は政府・日銀による介入警戒感や、週末の衆議院議員総選挙での自公過半数割れリスクを背景に、ドル円ロングの巻き戻し(ポジション調整)が生じていますが、前者については、このタイミングで株価急落を招き得る円買い為替介入に踏み切る公算は小さいと見られる他、後者についても、例え自公過半数割れが実現したとしても、政局不透明感の高まりを通じて日銀による金融引き締めの後ずれ観測が浮上すると見られることから、円買いでの反応は一時的なものに留まりそうです。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は上記(衆議院議員総選挙)以外にも、日銀金融政策決定会合(政策金利は据え置かれる可能性が高いものの、足元の円安進行に鑑み、金融政策が過度にハト派的と受け止められないように、記者会見などでバランスを取った発言が出てくる可能性あり)や、米主要経済指標(米9月JOLT求人件数、米10月コンファレンスボード消費者信頼感指数、米10月ADP雇用統計、米第3四半期GDP速報値、米10月チャレンジャー人員削減数、米9月PCEデフレータ、米10月雇用統計、米10月ISM製造業景況指数)など、重要イベント目白押しとなるため、週を通してボラタイルな相場展開に注意が必要でしょう。

来週の予想レンジ(USDJPY):150.00ー155.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は9/25に記録した年初来高値1.1214をトップに反落に転じると、今週半ばにかけて、約3カ月半ぶり安値となる1.0760(7/3以来の安値圏)まで急落しました。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、一目均衡表転換線、基準線、雲上下限、ボリンジャーミッドバンド)を軒並み下抜けしていることや、強い売りシグナルを示唆する「21日線と90日線のデッドクロス」「一目均衡表三役逆転」「8/26高値1.1202と9/25高値1.1214を天井とするダブルトップのネックライン割れ」「ダウ理論の下落トレンド」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは「極めて弱い」と判断できます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済の先行き不透明感や、(2)次回ECB理事会での大幅利下げ観測(今週も複数のECB高官よりハト派的な発言あり→12/12会合での50bp利下げを織り込む動き)、(3)米FRBによる過度な利下げ期待の後退(良好な米経済指標を背景に米経済のソフトランディング期待台頭→米長期金利に上昇圧力)、(4)上記2、3を背景とした欧米金融政策の方向性の違い、(5)米大統領選におけるトランプ氏優勢報道(トリプルレッド期待浮上→トランプトレードのドル買い再開)、(6)中東情勢を巡る地政学的リスクなど、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。

来週予定されているユーロ圏第3四半期GDP速報値や、ユーロ圏10月消費者物価指数が市場予想を下回る場合には、ユーロドルにもう一段強い下落圧力が加わるシナリオが想定されるため、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落(6/26に記録した安値1.0664を試す展開)をメインシナリオとして予想いたします。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0600−1.0900

注:ポイント要約は編集部

『ドル円は一時153円台まで急上昇。本邦衆院選の影響は限定的か』

ドル円日足

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