『ドル円は約2カ月ぶり高値を更新。心理的節目150.00が射程圏内』
〇今週のドル円、週初147.34まで反落するも、週後半にかけ8/2以来の高値149.57まで上昇
〇FRB関係者のタカ派発言、中国の財政出動期待の再燃、米CPIの堅調等が背景
〇週末は149円前後での推移
〇ユーロドル、1.09台で方向感に欠ける動き
〇ドル円、テクニカル的には地合いの好転を強く印象づけるチャート形状、150.00突破が射程圏内
〇ファンダメンタルズも日米金利差縮小観測後退がドル円をサポート
〇引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):147.00ー151.00、(EURUSD):1.0750−1.1050
今週のレビュー(10/7−10/11)
<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初148.73で寄り付いた後、(1)急ピッチな上昇に対する反動売り(先週末金曜日に発表された米雇用統計が想像以上に力強い結果→米金利急上昇→ドル円急伸→ロング勢による利食い売り活発化)や、(2)三村財務官による「投機的な動きを含めて為替市場の動向を注視する」との円安牽制発言、(3)中国国家発展改革委員会による期待外れの経済対策、(4)アジア株(特に香港株)の大幅下落(リスク回避の円買い圧力)が重石となり、翌10/8にかけて、週間安値147.34まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(5)アトランタ連銀ボスティック総裁による「経済が強すぎるリスクがあり政策の再調整を妨げる可能性がある」との慎重な発言や、(6)ボストン連銀コリンズ総裁による「利下げには慎重でデータに基づくアプローチが適切」との慎重な発言、
(7)中国財政省による「財政政策調整の強化に関して10/12の午前中に記者会見を行う」との発表(中国の財政出動期待→リスクオン再開)、(8)ダラス連銀ローガン総裁による「金利正常化に向けてより緩やかな道筋を支持する」との慎重な発言、(9)米9月消費者物価指数(結果+2.4%、予想+2.3%)の市場予想を上回る結果、(10)米9月コアCPI(結果+3.3%、予想+3.2%)の市場予想を上回る結果、(11)米金利上昇に伴うドル買い圧力が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値149.57(8/2以来となる約2カ月ぶり高値圏)まで上昇しました。その後は、(12)米新規失業保険申請件数(結果25.8万件、予想23.0万件)の冴えない結果や、(13)氷見野日銀副総裁による「経済・物価の見通しが実現するより高い確度が得られれば金融緩和の度合いを修正する」とのタカ派的な発言を背景に、一時148.31まで値を崩す場面も見られましたが、一巡後に下げ渋ると、
(14)アトランタ連銀ボスティック総裁による「11月の金利据え置きについて私は間違いなくオープン」「今年の利下げをスキップしても全く問題ない」とのタカ派的な発言や、(15)米10月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値の1年先期待インフレ率(結果2.9%、前回2.7%)の前回を上回る結果が支えとなり、本稿執筆時点(日本時間10/12午前1時45分現在)では、149.05前後まで持ち直す動きとなっております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0976で寄り付いた後、(1)ユーロ圏10月投資家信頼感指数(結果▲13.8、予想▲15.4)の市場予想を上回る結果や、(2)オーストリア中銀ホルツマン総裁による「インフレとの戦いはまだ終わっていない」とのタカ派的な発言が支えとなり、翌10/8にかけて、週間高値1.0998まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(3)心理的節目1.1000を背にした戻り売り圧力や、(4)中東情勢緊迫化に伴う地政学的リスク、(5)ラトビア中銀カザークス総裁による「データは10月理事会での利下げを示唆」とのハト派的な発言、(6)ポルトガル中銀センテノ総裁による「ユーロ圏のインフレ率は目標に向かって収斂しつつある」とのハト派的な発言、(7)フランス中銀ビルロワドガロー総裁による「ECBは来週予定されている政策決定会合で利下げを実施する公算が極めて大きく、またこれが最後になるわけではない」とのハト派的な発言、
(8)スロバキア中銀カジミール総裁による「10月会合での利下げの可能性を排除することはできない」とのハト派的な発言、(9)ドイツ政府による「2024年のGDP見通しを▲0.2%に下方修正した」とのネガティブ発表、(10)米9月消費者物価指数および、同コアCPIの市場予想を上回る結果、(11)アトランタ連銀ボスティック総裁による「11月の金利据え置きについて私は間違いなくオープン」「今年の利下げをスキップしても全く問題ない」とのタカ派的な発言が重石となり、週後半にかけて、週間安値1.0900(8/8以来となる約2カ月ぶり安値圏)まで下落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間10/12午前1時45分現在)では、1.0945前後で推移しております。
来週の見通し(10/14−10/18)
<ドル円相場>
ドル円は9/16に記録した安値139.58をボトムに切り返すと、週後半にかけて、約2カ月ぶり高値となる149.57まで上昇しました。この間、日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、50日線、一目均衡表転換線、基準線、雲下限、ボリンジャーミッドバンド)を上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する「強気のバンドウォーク」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの好転を強く印象づけるチャート形状となりつつあります(心理的節目150.00突破が射程圏内)。
また、ファンダメタルズ的に見ても、(1)日銀による過度な利上げ期待の剥落(石破首相は10/2に「現在は追加利上げをするような環境にはない」と市場で燻る早期利上げ期待を牽制)や、(2)米FRBによる過度な利下げ期待の剥落(先週発表された米9月雇用統計が文句なしの力強い結果となった他、今週発表された米9月消費者物価指数も市場予想を上回る結果)、(3)上記1、2を背景とした海外勢による円キャリートレードの再開期待(8月以降円ロングにシフトしていたポジションを再び円ショートに振り直す可能性)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が増えつつあります。
来週発表される米主要経済指標(米10月ニューヨーク連銀製造業景況指数、米9月小売売上高、米10月フィラデルフィア連銀景況指数、米新規失業保険申請件数、米9月鉱工業生産、米9月住宅着工件数など)が力強い結果を示す場合や、日本の9月消費者物価指数が市場予想を下回る場合には、日米金利差拡大に着目したドル買い・円売りが一段と活発化するシナリオが想定されるため、当方では引き続き、ドル円相場の続伸をメインシナリオとして予想いたします(但し、心理的節目150.00を超えてくると、政府・日銀による円安牽制を目的とした口先介入の活発化が見込まれる点には留意が必要)。尚、本日(10/12)は、中国財政省による財政政策調整の強化に関する記者会見が予定されています。市場が期待しているような大型財政出動が発表される場合には、週明けの金融市場がリスクオン一色となることが想定されるため、リスク選好の円売りを通じてドル円にも強い上昇圧力が加わりそうです。
来週の予想レンジ(USDJPY):147.00ー151.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は9/25に記録した年初来高値1.1214をトップに反落に転じると、今週後半にかけて、約2カ月ぶり安値となる1.0900まで急落しました。この間、日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、一目均衡表転換線、基準線、雲上下限、ボリンジャーミッドバンド)を下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」「8/26高値1.1202と9/25高値1.1214を天井とするダブルトップのネックライン割れ」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いは極めて弱いと判断できます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済を巡る先行き不透明感(ドイツ政府は今週、2024年のGDP見通しを▲0.2%へ下方修正)や、(2)ECBによる根強い利下げ観測(ラガルドECB総裁は先週「10月の次回政策会合でそれを考慮に入れる」と発言。今週はフランス中銀ビルロワドガロー総裁より「ECBは来週予定されている政策決定会合で利下げを実施する公算が極めて大きく、またこれが最後になるわけではない」との踏み込んだ発言あり)、(3)米FRBによる過度な利下げ期待の剥落(米長期金利に上昇圧力)、(4)上記2、3を背景とした構造的なユーロ売り・ドル買い(欧米金利差に着目したユーロ売り・ドル買い)、
(5)中東情勢を巡る地政学的リスク(リスク回避のユーロ売り+有事のドル買いの組み合わせ)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が増えつつあります。こうした中、来週は10/17に予定されているECB理事会に注目が集まります。25bpの追加利下げは既に織り込み済みとなっているため、市場の関心は次回12月理事会での利下げ有無に関するヒントが発せられるか否かに移っています。ラガルドECB総裁よりハト派的な見解(欧州経済の下振れリスクやインフレの更なる鈍化を強調すると共に、次回12月理事会での利下げ可能性について言及)が示される場合には、ユーロドルが8/1に記録した直近安値1.0776に向かって、もう一段下げ足を速める恐れも出てくるため、当方では引き続き、ユーロドル相場の続落をメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0750−1.1050
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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