米雇用統計後のドル高で149円台に到達、9月16日からの上昇トレンド継続
〇先週のドル円、石破首相・植田日銀総裁の利上げ否定姿勢を好感して146円超えへ急伸
〇週末は米雇用統計が予想を上回る強さを見せたことで148円台へ急伸し、5日未明には149円に到達
〇米長期債利回り大幅上昇、NYダウは史上最高値更新
〇149円到達により調整で下げやすいと注意、147円前後までで確りする内は一段高へ進み150円を試すか
〇147円割れから続落の場合は145.88を試すとみるが、割り込まない限りはに一段高へ進む可能性
【概況】
ドル円は2日夕刻の石破首相・植田日銀総裁会談と両者による当面の利上げ否定姿勢を好感して144円前後の水準から146円超えへ急伸し、3日午前に147.23円へ高値を伸ばして石破ショックによる9月27日高値146.47円からの急落幅を解消した。4日の日中は反騰一巡と夜の米雇用統計を控えた持ち高調整で午後に一時146円を割り込んだものの持ち直していたが、米雇用統計が予想を上回る強さを見せたことで直前安値146.52円から148円台へ急伸し、5日未明には149円に到達した。
米労働省による9月雇用統計では、景気動向を反映する非農業部門就業者数が前月比25万4000人増となり8月の15.9万人増及び市場予想の14万人増を大幅に上回り過去6カ月で最大の増加となった。7月分は速報から5万5000人上方修正され、8月分も1万7000人上方修正された。
失業率も8月の4.2%から4.1%へ改善し、インフレ指標である平均時給伸び率は前月比0.4%で8月の0.5%を下回ったものの予想の0.3%を上回り、前年同月比は8月の3.9%から4.0%へ加速した。
米労働市場の底固さを示すものと受け止められ、11月FOMCでの連続大幅利下げ期待はほぼ解消し、11月と12月は通常の0.25%利下げが続くとの見方が大勢となったために為替市場はドル全面高となりポンド、ユーロ、豪ドル等が揃って下落、ドル円は上昇した。
シカゴ連銀のグールズビー総裁は4日の雇用統計が底固さを示したものの、「雇用市場は幅広い指標から見て冷え込んでおり、インフレ率が目標の2.0%をアンダーシュートする兆候さえある」、「(政策金利は)今後12〜18か月で大幅に引き下げられる必要がある」と述べている。今回の雇用統計結果を受けて11月の利下げが見送られるとの見方はほとんどないようだ。
【米長期債利回り大幅上昇、NYダウは史上最高値更新】
10月4日の米長期債利回りは米雇用統計の堅調さにより総じて大幅上昇した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.12%上昇の3.97%となり、一時3.99%をつけて2023年10月5.02%以降の最低とした9月17日の3.60%後の最高として8月8日以来2カ月ぶりの水準へ戻した。週間では0.22%上昇した。
30年債利回りは0.07%上昇の4.25%となり、一時4.27%をつけて9月17日の3.90%以降の最高として8月9日以来2カ月ぶりの水準へ戻した。週間では0.14%上昇した。
政策金利動向に敏感な2年債利回りは連続大幅利下げがほぼなくなったとして前日比0.22%上昇の3.93%へ急伸し、25日の3.51%以降の最高として9月3日以来1カ月ぶりの水準へ戻し、週間では0.37%上昇した。
一方でNYダウは前日比341.16ドル高と大幅上昇して終値ベースの史上最高値を更新、ナスダック総合指数も219.37ポイント高と上昇、S&P500指数も51.13ポイント高と上昇した。
連続大幅利下げ期待は後退したものの通常ペースの利下げは継続し、米労働市場も底固いことからソフトランディングしつつ株高基調を継続するとの見方を背景に買われたが、米東海岸やメキシコ湾岸での港湾労働者のストライキが暫定合意したとの報道も株高に寄与した。
ドル円にとっては米長期債利回りの上昇による日米金利差面からの押し上げ効果と米国株高が日経平均の上昇へ寄与することでリスク選好感が継続しやすくなっていることも円安を助長する要因となっている。
【三尊天井の右肩形成へ】
ドル円は9月27日の自民党総裁選における反緊縮アベノミクス継承派の高市氏優勢から緊縮派でアベノミクス継承へ否定姿勢とされた石破氏の逆転勝利となったことを「石破ショック」として9月27日高値146.47円から30日安値141.64円まで下落幅4.83円となる大幅下落に見舞われたが、日経平均の大幅下落も招いていたため3日夕刻に石破首相・植田日銀総裁会談がもたれ、石破氏が当面は利上げする環境にないと考えているとし、植田日銀総裁も早期追加利上げに否定姿勢を示したことでショック安の解消へ向かい、10月3日高値147.23円で9月27日高値を超え、10月4日の米雇用統計後に149円到達へ大幅続伸した。
@9月16日安値139.57円を起点とした上昇は9月27日高値までを一段目とし、9月30日への急落を押し目形成として一段高に入ったために二段目の上昇期に入った。
A8月15日から9月3日にかけて戻り高値を切り下げてきた下降トレンドから脱却し、日足の一目均衡表では9日転換線と26日基準線がゴールデンクロスして両線共に上昇、7月後半に悪化した遅行スパンが好転し、10月4日の上昇で先行スパンへ潜り込んでいる。
B日足の14日相対力指数は8月5日安値から9月16日への一段安に際して指数のボトムが切り上がる強気逆行を見せて60ポイント台へ切り返している。
C9月16日安値139.57円で昨年12月28日安値140.24円をわずかに割り込んだものの切り返しに入ったことで、仮に150円から152円前後にかけての水準へ上昇を継続する場合には、140円前後を三尊型のネックラインとなる下値支持線とし、7月3日高値161.94円を頭、昨年11月13日高値151.90円を左肩とする三尊型の右肩形成へ進むことも考えられる。その際は10月後半から11月にかけてピークを付けやすいと考える。
D日銀が追加利上げを急がないこと、米国が通常ペースの利下げサイクルに入る見通しが強まったことで、9月16日にかけての日銀追加利上げと米国の連続大幅利下げという対比での円高感は大幅に後退し、株高・米長期債利回り上昇再開によるドル円への押し上げ効果も継続しやすい状況とすれば、当面はドル高優勢の流れを背景にドル円も高値切り上げを試して行くのではないかと思われる。
以上を踏まえ、当面のポイントを示す。
(1)当面、147円を下値支持線、150円を上値抵抗線とする。
(2)目先は149円到達によるポジション調整で下げやすいと注意するが、147円前後までで確りする内は押し目形成から一段高へ進み150円を試してゆくとみる。150円前後は反落警戒とするが、米CPI等によりドル高の勢いが増す場合は151円を目指して行くとみる。
(3)147円割れから続落の場合は10月4日午後安値145.88円を試すとみるが、4日午後安値を割り込まない限りは底上げ基調の維持として次の上昇期に一段高へ進む可能性があるとみる。
【当面の予定】
10/7(月)
休場 中国
14:00 (日) 日銀地域経済報告「さくらリポート」
14:00 (日) 8月 景気先行指数CI・速報値 (7月 109.3、予想 107.2)
14:00 (日) 8月 景気一致指数CI・速報値 (7月 117.2、予想 113.6)
15:00 (独) 8月 製造業新規受注 前月比 (7月 2.9%)
15:00 (独) 8月 製造業新規受注 前年同月比 (7月 3.7%)
18:00 (欧) 8月 小売売上高 前月比 (7月 0.1%、予想 0.2%)
18:00 (欧) 8月 小売売上高 前年同月比 (7月 -0.1%、予想 1.0%)
26:50 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、質疑応答
28:00 (米) 8月 消費者信用残高 前月比 (7月 254.5億ドル、予想 134.0億ドル)
10/8(火)
07:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、対談
07:30 (米) ムサレム・セントルイス連銀総裁、講演
08:30 (豪) 10月 ウエストパック消費者信頼感指数 (9月 84.6)
08:30 (日) 8月 現金給与総額 前年同月比 (7月 3.6%、予想 3.1%)
08:30 (日) 8月 全世帯消費支出 前年同月比 (7月 0.1%、予想 -2.7%)
08:50 (日) 8月 経常収支・季調前 (7月 3兆1930億円、予想 2兆9451億円)
08:50 (日) 8月 経常収支・季調済 (7月 2兆8029億円、予想 2兆3972億円)
08:50 (日) 8月 貿易収支・国際収支ベース (7月 -4827億円、予想 -5116億円)
09:30 (豪) 9月 NAB企業景況感指数 (8月 3)
09:30 (豪) 豪中銀、金融政策会合議事要旨
14:00 (日) 9月 景気ウオッチャー現状判断DI (8月 49.0、予想 49.2)
14:00 (日) 9月 景気ウオッチャー先行き判断DI (8月 50.3、予想 50.3)
15:00 (独) 8月 鉱工業生産 前月比 (7月 -2.4%)
15:00 (独) 8月 鉱工業生産 前年同月比 (7月 -5.3%)
16:00 (米) クーグラーFRB理事、講演
21:30 (米) 8月 貿易収支 (7月 -788億ドル、予想 -717億ドル)
25:45 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
29:00 (米) コリンズ・ボストン連銀総裁、講演
10/9(水)
10:00 (NZ) ニュージーランド中銀 政策金利 (現行 5.25%、予想 4.75%)
15:00 (独) 8月 貿易収支 (7月 168億ユーロ)
21:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、会合挨拶
22:15 (米) ローガン・ダラス連銀総裁、講演
23:00 (米) 8月 卸売売上高 前月比 (7月 1.1%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
23:30 (米) グールズビー・シカゴ連銀総裁、会合挨拶
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨9月17-18日分
10/10(木)
休場 台湾
06:00 (米) コリンズ・ボストン連銀総裁、講演
07:00 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、講演
08:50 (日) 9月 国内企業物価指数 前月比 (8月 -0.2%、予想 -0.3%)
08:50 (日) 9月 国内企業物価指数 前年同月比 (8月 2.5%、予想 2.3%)
21:30 (米) 9月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (8月 0.2%、予想 0.1%)
21:30 (米) 9月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (8月 2.5%、予想 2.3%)
21:30 (米) 9月 コアCPI(食品エネルギー除く) 前月比 (8月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 9月 コアCPI(食品エネルギー除く) 前年同月比 (8月 3.2%、予想 3.2%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 182.6万人)
23:45 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、懇談会に参加
24:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、会議で基調講演
10/11(金)
休場 香港
08:50 (日) 9月 マネーストックM2 前年同月比 (8月 1.3%)
15:00 (独) 9月 CPI(消費者物価指数)・改定値 前月比 (8月 0.0%)
15:00 (独) 9月 CPI(消費者物価指数)・改定値 前年同月比 (8月 1.6%)
15:00 (英) 8月 鉱工業生産 前月比 (7月 -0.8%)
15:00 (英) 8月 鉱工業生産 前年同月比 (7月 -1.2%)
15:00 (英) 8月 貿易収支・物品 (7月 -200.03億ポンド)
15:00 (英) 8月 貿易収支 (7月 -75.14億ポンド)
21:30 (米) 9月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (8月 0.2%、予想 0.1%)
21:30 (米) 9月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (8月 1.7%)
21:30 (米) 9月 コアPPI(食品エネルギー除く) 前月比 (8月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 9月 コアPPI(食品エネルギー除く) 前年同月比 (8月 2.4%)
22:45 (米) グールズビー・シカゴ連銀総裁、講演
23:00 (米) 10月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (9月 70.1、予想 70.5)
23:45 (米) ローガン・ダラス連銀総裁、パネル討論会
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.12.21
来週の為替相場見通し:『日米金融政策格差に着目したドル買い・円売り基調が続く見通し』(12/21朝)
ドル円は12/3に記録した約2カ月ぶり安値148.64(10/11以来の安値圏)をボトムに反発に転じると、今週は一時157.93(7/17以来の高値圏)まで急伸しました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.12.20
東京市場のドルは一時156円台まで下落、口先介入の影響力は限定的で円安ドル高再燃か(24/12/20)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、158円台に迫る場面が見られたものの、加藤財務大臣らによる口先介入などが重しとなり156円台まで下落する場面が見られた。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.12.20
ドル円 上昇リスク高いが、調整の動きにも要注意(12/20夕)
東京市場はドルが弱含み。本邦要人からの口先介入もあり、円の買い戻しが優勢だった。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.10.07
ドル円 ドル高リスク再燃だが短期的には行き過ぎか(週報10月第1週)
先週のドル/円相場はドルが大幅高。週末には一時149円台と、約1ヵ月半ぶりの高値を示現している。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.10.05
来週の為替相場見通し:『ドル円は約1カ月半ぶり高値を更新。心理的節目150.00が視野に』(10/5朝)
ドル円は石破ショック発生後に記録した安値141.65をボトムに切り返すと、週末にかけて一時148.80まで急伸しました(7円超の急騰劇)。
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。