石破ショックによる急落幅の6割戻してから失速、143円台で方向感探る
〇ドル円、「石破ショック」による過剰反応の修正で10/1午後144.53まで戻し急落幅の凡そ6割解消
〇その後、夜には中東情勢の緊迫化をきっかけとしたリスク回避的な円買いへ
〇米ISM製造業景況指数低調で一時143円割り込む反落、その後も143円台での揉み合いにとどまる
〇ユーロ、ポンド、豪ドル等が対ドルで下落、クロス円全般が下落しドル円も失速したため円高感強まる
〇米長期債利回り低下、中東情勢悪化によるリスク回避で株売り債券買い反応
〇142円台維持するうちは上昇余地あり、144.53超えからは145円試しとする
〇10/1深夜安値割れからは戻り一巡による下落期入りとして9/30午後安値141.64試しへ向かうとみる
【概況】
ドル円は9月27日の自民党総裁選における石破氏逆転勝利を「石破ショック」として146.47円から30日午後安値141.64円へ急落したが、過剰反応の修正で10月1日午後に144.53円まで戻し、急落幅4.83円に対して2.89円の上昇として凡そ6割を解消した。
1日午前の日銀金融政策決定会合(9月19-20日開催)「主な意見」で追加利上げを急がない姿勢が示されたことや、石破氏が金融緩和継続への期待感を示したことや、日経平均も9月30日の前日比1910.01円安から1日に同732.42円高と切り返したことがドル円を押し上げた。
しかし急落幅をすべて解消する勢いに欠け、1日夜はイランによるイスラエルへの大規模ミサイル攻撃報道をきっかけとしたリスク回避的な円買いやISM製造業景況指数が低調で一時143円を割り込む反落となり、その後も143円台での揉み合いにとどまっている。
イランによるイスラエルへの100発を大幅に超える弾道ミサイル攻撃は、イスラエルによるレバノン・ヒズボラへの地上侵攻等に対する報復とされているが、イラン・イスラエルが全面戦争化する懸念が高まったとして1日夜はユーロ、ポンド、豪ドル等が対ドルで下落する一方、クロス円全般が下落してドル円も失速したために円高感が強まった。NYダウ等が反落して日経平均先物も下落しており、中東情勢を意識したリスク回避的な動きが続きやすい状況となりながら、週末の米雇用統計へ向かう流れとなっている。
【日銀は利上げ急がず、石破政権も緩和継続希望】
日銀は10月1日午前に9月19-20日開催の金融政策決定会合における「主な意見」を公表した。「現在の緩和的な金融環境を粘り強く続ける我慢の局面」との主張や、「金融市場や米国経済の先行きの不確実性が高く丁寧に確認していくことが重要」との主張がみられ、追加利上げを急がない姿勢がみられた。
7月31日に追加利上げを決定したことをきっかけにドル円が急落し、さらに8月2日の米雇用統計悪化から世界連鎖株安と重なってドル円が大幅続落したことの影響も踏まえ、「金融市場が不安定な状況で利上げすることはない」「金融緩和の一段の調整は不確実性が低下した段階が妥当」との主張もあった。
石破首相は10月1日の会見で「日本経済はデフレを脱却の瀬戸際」、「(日銀と)緊密な連携の下に金融緩和の基本的な基調というものは維持されるべく、期待をしながら見守っている」とし、「政府があれこれ申し上げるべきではないが、具体的な手法は日銀に委ねられるべきもの」と述べた。9月27日午後からの石破ショックは、直前のアベノミクス継承派である高市氏優勢での株高円安(高市トレード)から石破氏勝利を悲観サプライズとした株安円高だったが、早期解散総選挙方針を示した上で岸田政権の政策継続姿勢を示しているため、ショック商状はひとまず落ち着いたといえる。
【米経済指標はまちまち】
10月1日の米経済指標は強弱まちまちだったが、イランのイスラエル攻撃報道に振り回されたことで指標内容に対する市場反応は鈍かった印象だ。
米労働省による8月の雇用動態調査(JOLTS)求人数は前月比32万9000件増の804万件となり、市場予想の765万5000件を上回った。7月分は速報の767万3000件から771万1000件に上方修正された。労働指標が悪化しなかったことは11月FOMCでの0.50%利下げ期待を後退させた。
一方で米サプライ管理協会(ISM)による9月製造業景況指数は前月と変わらず47.2となり市場予想の47.5を下回った。6か月連続の50割れで景気後退懸念を示したことはFOMCでの0.50%利下げを催促するものだった。内訳の中で雇用指数は前月の46.0から43.9へ悪化、価格は前月の54.0から48.3へ悪化した。
S&Pグローバルによる9月の米製造業PMI改定値は47.3となり速報の47.0から上方修正されたが、50を下回った弱い状況が続いている。夕刻の独製造業PMIが40.6、欧州PMIが45.0と低調でユーロ安要因となったが、欧米の製造業景況感悪化は顕著だ。
【米長期債利回り低下、NYダウは4日ぶり反落】
中東情勢の緊迫化により安全資産としてゴールドと共に米国債が買われたため債券高・利回り低下反応となり、長期金利指標の10年債利回りは前日比0.05%低下の3.73%、30年債利回りは同0.05%低下の4.07%、政策金利動向に敏感な2年債利回りは同0.03%低下の3.61%と揃って低下した。
一方で前日に3連騰で史上最高値を更新したNYダウは前日比173.18ドル安と4日ぶりに下落し、ナスダック総合指数も278.81ポイント安と下落、S&P500指数も53.73ポイント安と下落した。中東情勢悪化によるリスク回避で株売り債券買い反応となったようだ。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は9月27日午後高値146.47円からの石破ショック安で30日午後安値141.64円まで下げ幅4.83円の大幅下落となったが、1日未明に144円へ迫る反騰を見せたために1日午前時点では30日午後安値を底として戻りを試しているところとし、142.50円割れからは下落再開を疑うとした。
1日午後高値144.53円へ続伸してから深夜に一時143円を割り込んだため、すでに1日午後高値で戻り一巡から下落期に入っている可能性があるとみて、1日深夜安値142.97円を割り込む場合は3日から5日午後にかけての間への下落を想定する。ただし、144円超えからは1日午後高値144.53円試しとし、高値更新からは30日午後安値を起点とした上昇の継続として2日午後から4日午後にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では1日午後からの反騰で遅行スパンが悪化しているが先行スパンへ潜り込んだものの転落は回避している。先行スパンを上抜き返す場合は上昇再開として遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパン転落からは下落継続として遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は1日午後に70ポイントへ迫ってから50ポイント割れへ失速し、その後は50ポイントを挟んで揉み合いとなっている。60ポイント超えからは上昇再開として70ポイント試しとするが、その際に指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられる場合は反落警戒とする。40ポイント割れからは下落継続として20ポイント台への低下へ向かうとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、10月1日深夜安値142.97円を下値支持線、1日午後高値144.53円を上値抵抗線とする。
(2)142円台を維持するうちは上昇余地ありとし、144.53円超えからは145円試しとする。145円前後は反落警戒とするが、144円を上回っての推移なら3日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)1日深夜安値割れからは戻り一巡による下落期入りとして30日午後安値141.64円試しへ向かうとみる。142円割れは買われやすいとみるが、30日午後安値を割り込む場合は下落の長期化を疑い、先行きで9月16日安値139.57円を試しに向かう流れと考える。
【当面の予定】
10/2(水)
休場 中国、インド
14:00 (日) 9月 消費者態度指数・一般世帯 (8月 36.7、予想 37.0)
15:30 (日) 植田日銀総裁、全国証券大会で挨拶
18:00 (欧) 8月 失業率 (7月 6.4%、予想 6.4%)
21:15 (米) 9月 ADP非農業部門民間雇用者数 前月比 (8月 9.9万人、予想 12.0万人)
23:05 (米) ムサレム・セントルイス連銀総裁、会合挨拶
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
24:00 (米) ボウマンFRB理事、講演
25:15 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
10/3(木)
休場 中国、韓国
10:30 (豪) 8月 貿易収支 (7月 60.09億豪ドル、予想 55.00億豪ドル)
10:30 (日) 野口日銀審議委員、懇談会出席、14:30〜記者会見
16:55 (独) 9月 HOCBサービス業PMI・改定値 (速報 50.6、予想 50.6)
17:00 (欧) 9月 HOCBサービス業PMI・改定値 (速報 50.5、予想 50.5)
17:30 (英) 9月 S&PGサービス業PMI・改定値 (速報 52.8、予想 52.8)
18:00 (欧) 8月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (7月 0.8%、予想 0.4%)
18:00 (欧) 8月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (7月 -2.1%、予想 -2.3%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.8万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 183.4万人)
22:45 (米) 9月 S&PGサービス業PMI・改定値 (速報 55.4)
23:00 (米) 9月 ISMサービス業景況指数 (8月 51.5、予想 51.5)
23:00 (米) 8月 製造業新規受注 前月比 (7月 5.0%、予想 0.3%)
23:40 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁とボスティック・アトランタ連銀総裁が対談
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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