石破ショックでドル円大暴落。来週は米雇用統計がメインイベント
〇今週のドル円、週末アジア時間午後にかけて、週間高値146.49(9/3以来の高値圏)まで急伸
〇FRB関係者のタカ派発言、日銀植田総裁のハト派的発言、総裁選高市氏優勢報道からの円売り等が背景
〇石破氏が総裁に選出されると、反動でドル円急落、米PCEの予想比下振れもあり、週末142.09まで下落
〇ユーロドル、世界的リスクオンの動きや米金利低下に、週央1.1214まで上昇、1.11台後半で底堅い
〇ドル円、石破ショックで主要テクニカルポイント下抜け、買いシグナルも消失、ドル買いムード鎮静化
〇ファンダメンタルズは日米金利差縮小観測後退、株価の堅調がドル円をサポート
〇一巡後に持ち直す展開を来週のインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):140.00ー145.00、(EURUSD):1.1050−1.1250
今週のレビュー(9/23−9/27)
<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初143.94で寄り付いた後、(1)高市早苗経済安全保障担当相による「金利を今上げるのはあほやと思う」との追加利上げの牽制発言や、(2)ミネアポリス連銀カシュカリ総裁による「利下げについて今後は小幅なステップを見込む」との慎重な発言、(3)アトランタ連銀ボスティック総裁による「今会合での50bp利下げは将来の利下げペースを確定させるものではない」との慎重な発言、(4)米9月総合PMI速報値(結果54.4、予想54.3)の市場予想を上回る結果、(5)植田日銀総裁による「物価上振れリスクの減少で政策判断にあたり時間的な余裕がある」との慎重な発言(日銀による過度な利上げ期待の後退)、(6)ボウマンFRB理事による「インフレが依然として目標を上回っているため50bp利下げへの反対は正当化される」「慎重な利下げペースが適切」との慎重な発言、
(7)中国人民銀行による大規模金融緩和発表(世界的なリスクオン再開→リスク選好の円売り圧力)、(8)米8月新築住宅販売件数(結果71.6万件、予想70.0万件)の市場予想を上回る結果、(9)米新規失業保険申請件数(結果21.8万件、予想22.3万件)の良好な結果、(10)米4ー6月期実質GDP確報値(結果+3.0%、予想+2.9%)の市場予想を上回る結果、(11)米8月耐久財受注速報値(結果±0.0%、予想▲2.7%)の市場予想を上回る結果、(12)米金利上昇に伴うドル買い圧力、(13)一部メディアによる「自民党の麻生太郎副総裁が総裁選で高市早苗経済安全保障担当相を支持する意向を固めた」との観測報道、(14)自民党総裁選・第1回投票でアベノミクス継承を掲げる高市早苗経済安全保障相が首位となったことを好感した株買い・円売りが支援材料となり、週末アジア時間午後にかけて、週間高値146.49(9/3以来の高値圏)まで急伸しました。
しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(15)自民党総裁選・決選投票で緊縮財政+金融政策正常化を掲げる石破茂元幹事長が新総裁に選出されたことや、(16)上記15を背景とした失望の株売り・円買い(高市氏が破れたことでアベノミクス継承に対する期待感が剥落→石破ショック発動→ドル円急落)、(17)短期筋の大規模ロスカット、(18)米8月PCEコアデフレータ(結果+0.1%、予想+0.3%、※前月比)の市場予想を下回る結果、(19)米金利低下に伴うドル売り圧力が重石となり、週末米国時間午後にかけて、週間安値142.09まで急落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間9/28午前4時00分現在)においても、142.20前後での上値の重い展開が続いています。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.1163で寄り付いた後、(1)フランス9月製造業PMI速報値(結果44.0、予想44.2)および、同9月非製造業PMI速報値(結果48.3、予想53.1)の大幅悪化(※非製造業PMIは6カ月ぶり低水準)や、(2)ドイツ9月製造業PMI速報値(結果40.3、予想42.3)および、同9月非製造業PMI速報値(結果50.6、予想は51.0)の市場予想を下回る結果、(3)ユーロ圏9月製造業PMI速報値(結果44.8、予想45.7)および、同9月非製造業PMI(結果50.5、予想52.3)の市場予想を下回る結果、(4)上記1、2、3を背景としたECBによる追加利下げ観測再燃(欧州債利回り低下に伴うユーロ売り圧力)が重石となり、週明け早々に、週間安値1.1083まで下落しました。
しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(5)中国人民銀行による大規模金融緩和の発表や、(6)上記5を背景とした世界的なリスクオン再開、(7)直近高値突破に伴う仕掛け的なユーロ買い・ドル売りが支えとなり、週央にかけて、週間高値1.1214(昨年7/20以来の高値圏)まで上昇しました。その後も、(8)米8月PCEコアデフレータ(結果+0.1%、予想+0.3%、※前月比)の市場予想を下回る結果や、(9)上記8を背景とした米長期金利の急低下、(10)欧州株の堅調推移が支えとなり、本稿執筆時点(日本時間9/28午前4時00分現在)においても、1.1166前後での底堅い動きが続いています。
来週の見通し(9/30−10/4)
<ドル円相場>
ドル円は石破ショック発動で142.09まで暴落する冴えない動きとなりました。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、一目均衡表転換線、基準線)を下抜けした他、4時間などの下位足で点灯していた強い買いシグナルも消失するなど、先週来続いてきたドル買い・円売りムードは沈静化しました。
但し、ファンダメンタルズ的に見ると、(1)米FRBによる過度な利下げ期待の剥落(米経済のハードランディング懸念が後退する中、米国の利下げペースは緩やかなものに留まるとの見方の台頭)や、(2)日銀による過度な利上げ期待の剥落(アベノミクス継承を掲げる高市氏は総裁選で敗北したものの、植田日銀総裁は今週も「物価上振れリスクの減少で政策判断にあたり時間的な余裕がある」と慎重な発言。石破氏は金融政策正常化を掲げる人物であるが、解散総選挙前の株安は避けたいと見られることから過度に金融政策正常化を志向する公算は小さい)、(3)上記1、2を背景とした円キャリートレードの再開期待(日米金利差は当面縮まらないとの見方から日米金利差に着目したドル買い・円売りが再開する可能性あり)、(4)株式市場の堅調推移(米中をはじめ世界の主要国が利下げサイクル入り→リスク選好の円売り要因)など、ドル円相場の一巡後の反発を連想させる材料が揃っています。
来週予定されている米国の主要経済指標(米8月JOLT求人件数、米9月ISM製造業景況指数、米9月ADP雇用統計、米9月ISM非製造業景況指数、米9月雇用統計)が市場予想を上回る場合には、米国のハードランディング懸念後退→ソフトランディング期待浮上→米金利上昇と米株高の並走再開の経路で、ドル円には再び強い上昇圧力が加わるシナリオが想定されます。週前半は石破ショックの余韻で下値余地を探る可能性があるものの、一巡後に持ち直す展開を来週のインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(USDJPY):140.00ー145.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は週央にかけて年初来高値を更新するなど、高値圏での底堅い動きが続いています。日足ローソク足が全ての主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、一目均衡表転換線、基準線、雲上下限、ボリンジャーミッドバンド)の上側で推移していることや、強い買いシグナルを示唆する「強気のパーフェクトオーダー」「一目均衡表三役好転」が継続点灯していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは強いと判断できます。但し、アップサイドに強力なレジスタンスとして意識されている1.1200の抵抗帯が残っているため、ここからの更なる上昇は容易では無いと判断できます。
事実、今週は週央にかけて1.1214まで上昇するも、1.1200より上での滞空時間は2時間にも満たず、上値の重さを再確認する形となりました。また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済の先行き不透明感の高まり(今週発表されたユーロ圏各国のPMI速報値や、ドイツIFO景況感指数はいずれも冴えない結果)や、(2)上記1を背景としたECBによる根強い追加利下げ観測、(3)米FRBによる過度な利下げ期待の剥落、(4)上記1、2を背景とした欧米金融政策の方向性の違い(欧州経済のハードランディング懸念vs米国経済のソフトランディング期待)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週はラガルドECB総裁議会証言をはじめとしたECB当局者発言(デギンドスECB副総裁、ドイツ連銀ナーゲル総裁、フィンランド中銀オッリ・レーン総裁、シュナーベルECB専務理事、レーンECB専務理事、フランス中銀ビルロワドガロー総裁など)や、ユーロ圏9月HICPなどに注目が集まります。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.1050−1.1250
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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