『ドル円は年初来安値を更新。来週は日米金融政策イベントに注目』
〇今週のドル円、週明け早々の高値143.81から週末にかけて年初来安値140.28まで下落
〇日銀審議委員のタカ派発言、米大統領選討論会でのハリス氏優位、米大幅利下げ観測再台頭等が背景
〇ユーロドル、週央にかけ1.1002まで下落するも週末にかけ1.1102まで反発
〇ECB理事会の無難な結果、米長期金利の低下等が背景
〇ドル円、日足が主要テクニカルポイントを下抜け、強い売りシグナルも点灯地合い極めて弱い
〇ファンダメンタルズも日米金融政策の方向性の違い、米大統領選におけるハリス氏優勢報道等が重石に
〇来週は日米の金融政策イベントに注目、FOMCの大幅利下げ可能性、ドットチャートの内容要注視
〇日銀金融政策決定会合については政策金利の据え置きが見込まれ、市場の関心は総裁記者会見にシフト
〇引き続き、ドル円相場の下落(心理的節目140.00の下方ブレイク)をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):138.50ー143.50、(EURUSD):1.1000−1.1250
今週のレビュー(9/9−9/13)
<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初142.23で寄り付いた後、(1)本邦4ー6月期実質GDP速報値(結果+2.9%、予想+3.2%、※前期比年率)の市場予想を下回る結果や、(2)米FRBによる大幅利下げ観測後退(前週末金曜日に発表された米8月雇用統計は不冴な結果となったものの、ゴールドマンサックスやバークレイズなどの大手金融機関は9月FOMCでの50bp利下げを正当化するほどではないとの見解発表→9月FOMCでの大幅利下げ観測後退→米金利上昇→米ドル買い)、(3)欧米株の堅調推移(過度なリスク回避ムード後退)が支えとなり、週明け早々に、週間高値143.81まで上昇しました。
しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(4)米8月NFIB中小企業楽観指数(結果91.2、予想93.6、前回93.7)の市場予想を下回る結果や、(5)中川日銀審議委員による「見通しが実現していけば緩和度合いを調整していく」とのタカ派的な発言、(6)米大統領候補者討論会でのハリス氏優勢との見方の台頭(世論調査で63%がハリス氏勝利と回答→トランプトレードの逆流懸念→ドル売り圧力)、(7)8/5に記録した安値141.69を下抜けたことに伴う仕掛け的なドル売り・円買い、(8)田村日銀審議委員による「見通し期間後半には少なくとも1%程度まで利上げが必要」「市場動向に十分配慮しつつ、適時かつ段階的に利上げが必要」とのタカ派的な発言、(9)米8月生産者物価指数(結果+1.7%、予想+1.7%、前回+2.1%)の伸び率鈍化、
(10)米新規失業保険申請件数(結果23.0万件、予想22.7万件)の冴えない結果、(11)米ウォールストリートジャーナル紙による「政策担当者らが25bpか50bpか利下げ幅を決めかねている」とのサプライズ報道、(12)上記11を背景とした米FRBによる大幅利下げ観測再燃(米金利低下に伴うドル売り圧力)が重石となり、週末にかけて、年初来安値140.28(昨年12/28以来の安値圏)まで下落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間9/14午前2時00分現在)では、140.85前後で推移しております。尚、今週発表された米8月消費者物価コア指数(結果+0.3%、予想+0.2%)および、同スーパーコア指数(結果+0.327%、前回+0.205%)はいずれも上昇する結果となりましたが、ドル買いでの反応は一時的なものに留まりました。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.1082で寄り付いた後、(1)ユーロ圏9月投資家信頼感指数(結果▲15.4、予想▲12.2)の市場予想を下回る結果や、(2)欧州株の冴えない動き(独DAXが8/16以来の安値圏へ下落)、(3)欧州債利回り低下に伴うユーロ売り圧力、(4)ECB理事会を控えたポジション調整(ドル安の受け皿として積み上げられてきたユーロロングの解消)、(5)テクニカル的な地合いの悪化(日足ローソク足が21日移動平均線、一目均衡表基準線を下抜け)、(6)米8月消費者物価コア指数および同スーパーコア指数の伸び率上昇、(7)米FRBによる大幅利下げ観測後退が重石となり、週央にかけて、週間安値1.1002まで下落しました。
しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(8)心理的節目1.1000を背にした押し目買い圧力や、(9)ECB理事会およびラガルドECB総裁記者会見の無風通過(ECBは予想通り25bpの利下げを決定するも、今後の方向性については「特定の金利パスについて事前にコミットしない」「データ次第」と次回利下げ時期や利下げ幅に関するヒントを与えず→10月ECB理事会での追加利下げ観測後退→ユーロ反発)、(10)米8月生産者物価指数の伸び率鈍化、(11)米新規失業保険申請件数の冴えない結果、(12)米ウォールストリートジャーナル紙による「政策担当者らが25bpか50bpか利下げ幅を決めかねている」とのサプライズ報道、(13)上記12を背景とした米FRBによる大幅利下げ観測再燃(米金利低下に伴うドル売り圧力)が支えとなり、週末にかけて、週間高値1.1102まで上昇しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間9/14午前2時00分現在)では、1.1082前後で推移しております。
来週の見通し(9/16−9/20)
<ドル円相場>
ドル円は一時140.28まで急落するなど、年初来安値を更新しました(最後の砦として意識されていた8/5安値141.69を下方ブレイク)。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、一目均衡表基準線、転換線、雲上下限、ボリンジャーミッドバンド)を軒並み下抜けしていることや、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」「弱気のバンドウォーク」「ダウ理論の下落トレンド」が点灯していること、1時間足や4時間足などの下位足でも強い売りシグナルが点灯していること、週足ベースで一目均衡表雲下限割れが実現したこと等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは極めて弱いと判断できます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)日銀による追加利上げ観測の高まり(先週発表された本邦実質賃金が2ヵ月連続のプラスを記録+共通事業所ベースの所定内給与も公表が始まった2016年以降で最高水準を記録+植田日銀総裁・高田日銀審議委員・中川日銀審議委員・田村日銀審議員らによる相次ぐタカ派発言)や、(2)米FRBによる大幅利下げ観測再燃(直近で発表された労働関連指標が軒並み悪化していることに加えて、今週は米ウォールストリートジャーナル紙による「政策担当者らが25bpか50bpか利下げ幅を決めかねている」とのサプライズ報道あり)、(3)上記1、2を背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米金利差縮小に伴うドル売り・円買い)、(4)米大統領選におけるハリス氏優勢報道(トランプトレード逆流の思惑→ドル売り圧力)など、ドル円相場の下落を連想させる材料が増えつつあります。
こうした中、来週は日米の金融政策イベントに注目が集まります。9/17ー9/18の日程で開催される米FOMCについては、これまで25bpの利下げが市場コンセンサスとなっていましたが、9/7のウォーラーFRB理事による「適切であれば利下げの前倒しを支持する」との発言や、9/12の米ウォールストリートジャーナル紙による「政策担当者らが25bpか50bpか利下げ幅を決めかねている」との報道を見る限り、50bp利下げの可能性もあり得ると考えられます(CMEが提供するFed Watch Toolによると、25bp利下げの織り込み度合が57.0%、50bp利下げの織り込み度合が43.0%と拮抗)。また、米FOMCでは同時に発表されるドットチャートにも注目が集まりそうです。6月時点のドットチャートでは、2024年に25bp、2025年に100bpの利下げが予測されていましたが、現在の金融市場は2024年に100bp、2025年に150bpの利下げを織り込んでいます。
今回発表される最新のドットチャートが金融市場の織り込み度合に近づく場合には、米FRBによるハト派化が意識されるため、米金利低下→米ドル売りの経路で、ドル円に強い下落圧力をもたらすことに繋がりそうです。一方、9/19ー9/20の日程で開催される日銀金融政策決定会合については、政策金利の据え置きが見込まれているため、市場の関心は植田日銀総裁の記者会見に移っています。直近で植田日銀総裁・高田日銀審議委員・中川日銀審議委員・田村日銀審議委員が相次いでタカ派的なスタンスを見せているため、記者会見でも同様のスタンス(追加利上げに対する強い意志)が見られれば、日銀による年内追加利上げ観測再浮上→円金利上昇→円買いの経路でドル円を強く押し下げそうです(日本株安の流れが加われば、ドル円相場が想定以上に値を崩す恐れあり)。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の下落(心理的節目140.00の下方ブレイク)をメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(USDJPY):138.50ー143.50
<ユーロドル相場>
ユーロドルは週央にかけて心理的節目1.1000近辺まで値を崩すも、週末にかけて持ち直す動きとなりました。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、一目均衡表転換線、基準線、雲上下限、ボリンジャーミッドバンド)の上側で推移していることや、強い買いシグナルを示唆する「強気のパーフェクトオーダー」「一目均衡表三役好転」が点灯していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは強いと判断できます。また、ファンダメンタルズ的に見ても、欧州側では、ECB理事会の無風通過(25bpの利下げを実施するも、会合後の記者会見でラガルドECB総裁は先行きに対するヒントを一切与えず)を経て10月利下げ観測が後退している一方、米国側はウォールストリートジャーナル紙の「政策担当者らが25bpか50bpか利下げ幅を決めかねている」との記事掲載を経て大幅利下げ観測が再燃しているため、欧米金利差縮小の観点でユーロ買い・ドル売りが出易い構造となっています(ドル売りの受け皿としてユーロが選好される構造)。
来週予定されているドイツ9月ZEW景況感指数が市場予想を上回る場合には、ユーロドルにもう一段強い上昇圧力が加わるシナリオも想定されるため、当方では引き続き、ユーロドル相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は欧州当局者発言(デギンドスECB副総裁、イタリア中銀パネッタ総裁、エルダーソンECB専務理事、オーストリア中銀ホルツマン総裁、クロアチア中銀ブイチッチ総裁、ドイツ連銀ナーゲル総裁、オランダ中銀クノット総裁、シュナーベルECB専務理事、ラガルドECB総裁)にも注目が集まります。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.1000−1.1250
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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