ドル円見通し 日銀総裁国会答弁からの波乱に注意しつつ夜のFRB議長講演へ向かう
〇ドル円、8/22早朝144.45へ下げたが米長期債利回り上昇・ドル高優勢の動きとなり、夜146.52へ上昇
〇その後の146円割れも買われ、8/23朝時点では146円台序盤に付ける
〇本日は日銀総裁の国会答弁、ジャクソンホール・シンポジウムでのFRB議長講演が予定されている
〇昨日発表の米経済指標はまちまちだったが、サービス業PMIと中古住宅販売が好調で米長期債利回り上昇
〇米長期債利回りは上昇、NYダウ・ナスダックはともに下落
〇145.50を上回るうちは一段高余地ありとし、146.52超えからは147円台への上昇を想定する
〇145.50割れから続落の場合は、下落再開とみて8/22早朝安値144.45試しとする
【概況】
ドル円は日銀利上げやFOMCでの9月利下げ想定及び8月2日の米雇用統計悪化による世界連鎖株安で8月5日安値141.69円へ大幅下落し、その後の買い戻しで8月16日早朝高値149.38円まで戻したが、8月21日夜の米労働省による雇用統計年次改定での就業者数大幅下方修正と22日早朝のFOMC議事要旨をきっかけとして22日早朝安値144.45円まで下げ幅4.93円の下落となった。
145円割れに対する突っ込み警戒感から買い戻され、22日夜の米経済指標はまちまちだったもののサービス業PMIが好調で中古住宅販売件数も予想を上回ったことで米長期債利回りが上昇してドル高優勢の動きとなったために22日夜に146.52円まで持ち直し、その後の146円割れも買われて23日朝時点では146円台序盤に付けている。
本日は午前と午後に日銀総裁の国会答弁がある。7月31日に3月以来の追加利上げをした際に植田総裁は0.50%を利上げの壁とせず利上げを継続する姿勢を示したが、8月2日から5日にかけての世界連鎖株安に対して8月7日に内田副総裁が金融市場が動揺している場合の利上げはないとしたことで円高が落ち着いた経緯がある。世界連鎖株安が落ち着いて日経平均や米主要株価指数がV字反騰したことにより内田副総裁が示した利上げへの否定姿勢が解除されて年末にかけて利上げのタイミングを伺う姿勢へと回帰しているのかどうか注目される。
今夜はカンザスシティ連銀主催のジャクソンホール・シンポジウムがありパウエルFRB議長講演で9月利下げ開始及び年内追加利下げペースへ向けた姿勢が顕著に示されるかどうか注目されるが、市場は9月の0.25%利下げをほぼ確実とみており、年内3回の会合毎に0.25%ずつの利下げがあるのではないかとみている。
フィラデルフィア連銀のハーカー総裁は22日に「9月に金利引き下げのプロセスを開始する必要がある」、「整然とした引き下げを開始する必要がある」とし、「25か50かの陣営には入っていない、あと数週間のデータを確認する必要がある」と述べて0.25%ないし0.50%利下げの可能性に言及した。
ボストン連銀のコリンズ総裁も「近く利下げを開始する見通し」とし「漸進的で整然としたペースでの利下げが適切」との見方を示した。カンザスシティー連銀のシュミッド総裁も「9月利下げを支持するかどうかはデータ次第」として利下げ開始の可能性を示唆している。
【米経済指標はまちまち】
8月22日に米労働省が発表した新規失業保険申請件数は8月17日までの週間で前週比4000件増の23万2000件となり3週ぶりに悪化したが市場予想の23万人に近かった。失業保険受給者総数は8月10日までの週間で186万3000人となり前週から4000人増加した。
S&Pグローバルによる8月の米製造業PMI速報値は48.0となり7月の49.6から悪化して8カ月ぶりの低水準となり市場予想の49.6を下回ったが、サービス業PMIは55.2となり7月の55.0から上昇して市場予想の54を上回った。
米不動産業者協会(NAR)による7月中古住宅販売件数(年換算)は前月比1.3%増の395万戸となり市場予想の393万戸を上回った。前年同月比は2.5%減、販売価格中央値は前月比1.0%低下の42万2600ドル、前年同月比は4.2%上昇だった。
【米長期債利回りは上昇、米主要株価指数は下落】
8月22日の米長期債利回りは米国の経済指標がまちまちだったもののサービス業PMIと中古住宅販売が好調だったために総じて上昇した。
長期金利指標の10年債利回りは8月16日から21日まで4営業日連続で低下していたが、22日は前日比0.06%上昇の3.86%となり、30年債利回りは前日比0.05%上昇の4.13%で21日から続伸し、政策金利動向に敏感な2年債利回りは8月16日から21日まで4営業日連続で低下していたが22日は前日比0.08%上昇の4.01%と戻した。
一方で22日の米主要株価指数は米長期債利回り上昇を見て総じて下落した。
NYダウは高値で41026.64ドルを付けて8月5日安値38499.27ドル以降の高値を更新してから下落に転じて前日比177.71ドル安の40712.78ドルで終了し、ナスダック総合指数も高値で18017.69へ上昇して8月5日安値15708.54以降の最高値としてから反落に転じて前日比299.64ポイント安の17619.35で終了した。
本日は日銀総裁の国会答弁を見ての日経平均動向と、パウエル議長講演から米長期金利と米国主要株価指数の動向も大きく左右されると注目したい。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は8月16日早朝種149.38円から22日早朝安値144.45円まで5円近い下落となったが、22日夜に146.52円まで戻した。日銀総裁の国会答弁次第で波乱含みと思われるが、22日夜高値を超える場合は上昇継続とみて23日の日中から27日の日中にかけての間への上昇を想定し、145.50円割れからは下げ再開を疑い、22日早朝安値を割り込む場合は27日早朝から29日午前にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表で8月22日夜への上昇で遅行スパンが好転して先行スパンも上抜いたため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、先行スパンから転落する場合は下落再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は8月22日夜の上昇時に60ポイントを超えたがその後は伸びずに50ポイント台を維持できるか試している。次の60ポイント超えからは上昇再開として70ポイント台を試すとみるが、45ポイント割れからは下落再開とみて30ポイント前後への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、145.50円を下値支持線、8月22日夜高値146.52円を上値抵抗線とする。
(2)145.50円を上回るうちは一段高余地ありとし、146.52円超えからは147円台への上昇を想定する。147.30円以上は反落注意とするが、146円を上回っての推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)145.50円を一時的に割り込んでも146円超えへ戻す場合は上昇継続とするが、145.50円割れから続落の場合は下落再開とみて22日早朝安値144.45円試しとし、底割れからは143円台への下落を想定する。日銀総裁答弁やFRB議長講演等で円高が加速する場合は142円台へ下値目途を引き下げ、週明けも続落しやすいとみる。
【当面の予定】
8/23(金)
ジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催シンポジウム、24日まで)
植田日銀総裁、衆院財務金融委員会(9時半から)、参院財政金融委員会(13時から)
23:00 (米) 7月 新築住宅販売件数・年率換算 (6月 61.7万件、予想 62.3万件)
23:00 (米) 7月 新築住宅販売件数 前月比 (6月 -0.6%、予想 1.0%)
23:00 (米) パウエル米FRB議長、講演
24:00 (英) ベイリー英中銀総裁、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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