ドル円 戻り高値を見て改めて円高の流れか(週報8月第3週)

先週のドル円は、木曜NY市場までは146円台後半の買いと147円台半ばの売りとに挟まれ上下はあるものの方向感がはっきりしない展開が続きました。

ドル円 戻り高値を見て改めて円高の流れか(週報8月第3週)

戻り高値を見て改めて円高の流れか

〇先週のドル円、146円台後半の買いと147円台半ばの売りとに挟まれ方向感はっきりしない展開続く
〇木曜に149.40レベルまで上昇するも金曜は反落、週前半のもみあい水準に押して引け
〇中長期的にはドル安・円高トレンドが継続する中で短期的な戻しの高値を確認できた動きという見方
〇9月利下げ織り込み度は0.25%利下げが74%、0.5%利下げが26%で0.25%利下げがコンセンサス
〇シカゴ通貨先物、年末時点で最大1%程度日米金利差縮小の見通しで急速に円キャリーやめる方向に動く
〇今週は145.50レベルをサポート、148.80レベルをレジスタンスとする週を見る

先週のドル円は、日本がお盆休みということもあり木曜NY市場までは146円台後半の買いと147円台半ばの売りとに挟まれ上下はあるものの方向感がはっきりしない展開が続きました。木曜NY市場で発表された経済指標が強かったことで149.40レベルまで上昇しましたが、テクニカルなターゲットを達成したこともあり金曜は反落、週末前のポジション調整もあり週前半のもみあい水準に押して引けました。

先週はお盆休みということもあったのでしょうが、その前の週に動き過ぎた反動もあり方向感を探る状況に終始しました。それでも中長期的にはドル安・円高トレンドが継続する中で短期的な戻しの高値を確認できた動きという見方でよいでしょう。今週はFOMC議事要旨の公表、そして木曜からはジャクソンホールが開催されますので、議事要旨の内容を確認した上でパウエル議長の講演で9月利下げの確認をする流れとなりそうです。

現状、FF先物の取引状況から計算される9月の利下げ織り込み度は0.25%の利下げが74%、0.5%の利下げが26%となっていて、今後出てくる経済指標で変化はあるでしょうが、緩和への第1歩は0.25%利下げがコンセンサスとなってきました。パウエル議長講演で、9月利下げ開始がある程度確認できそうであれば、その流れで今後進んでいくこととなります。

また12月時点の利下げ織り込み度は見方が分かれているものの、3回利下げが42%、4回以上が58%と4回がコンセンサスと言えるでしょう。その場合、11月もしくは12月のFOMCで0.5%の利下げを行うという見通しになりますが、大統領選もありますし先のことは少なくとも9月のFOMC後に考えれば良いと思います。

週末にシカゴ通貨先物の円ポジションが発表されました。

戻り高値を見て改めて円高の流れか

7月には円売りが約18.4万枚と史上2番目(史上最大は2007年の約18.8万枚)の円売りサイズまで膨らんでいましたが、ここ1カ月半でついに円買いへと転じてきました。円買いポジションだったのは2021年3月までで、2021年1月から始まった円安トレンドとともに安定した円売りが続いてきたことを考えると大きな流れが変わってきたという感じがします。

先進国がインフレに悩み引き締め政策を続けている中で、日本だけが大規模緩和を継続していたことが円キャリートレードを膨らませ、個人投資家もスワップ金利を考えると円売りを進めてきたわけですが、日銀が引き締めに転じ、米国がいよいよ9月から緩和に転じ年末時点では現在よりも最大1%程度日米金利差が縮小するという見通しが急速に円キャリーをやめる方向に動かしたと言えます。今後も短期的には上下は見られるでしょうが中長期的にはドル安・円高の流れが本流となっていくという現われと考えています。

テクニカルにはいつもの日足チャートをご覧ください。

上値の目途となっていた年初来(7月)高値と8月安値の38.2%戻しとなる149.42は先週高値が149.40レベルとなったことでほぼ一致を見たと言えます。当面の戻り高値を見たことで今後は148円台後半がレジスタンスとして意識されることとなるでしょう。いっぽうで下値の目途は8月安値と戻り高値との38.2%押しが146.41、半値押しが145.50となっています。

下げる時は速そうですし、ジャクソンホールのパウエル議長講演前後でドル売りが強まる可能性も考えて、低い方のサポートを考えたいと思います。今週は145.50レベルをサポートに、148.80レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。

戻り高値を見て改めて円高の流れか 2枚目の画像

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2024年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

8月19日(月)
23:00 米国7月景気先行指数

8月20日(火)
10:30 豪中銀理事会議事要旨公表
15:00 ドイツ7月PPI
18:00 ユーロ圏7月CPI
18:00 ユーロ圏6月建設支出
26:35 アトランタ連銀総裁講演 ☆

8月21日(水)
08:50 本邦7月貿易収支(通関)
20:00 パネッタECB理事講演 ☆
23:30 週間原油在庫統計
27:00 FOMC議事要旨公表 ☆

8月22日(木)
16:15 フランス8月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
16:30 ドイツ8月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
17:00 ユーロ圏8月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
17:30 英国8月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
20:30 ECB理事会議事要旨公表 ☆
21:30 米国新規失業保険申請数 ☆
22:45 米国8月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
23:00 ユーロ圏8月消費者信頼感
23:00 米国7月中古住宅販売
**:** ジャクソンホール(〜24日)☆

8月23日(金)
08:01 英国8月消費者信頼感
08:30 本邦7月CPI ☆
15:45 フランス8月企業景況感
23:00 パウエルFRB議長講演 ☆
23:00 米国7月新築住宅販売 ☆
24:00 英中銀総裁講演

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時ーNY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

8月12日(月)
週明けのドル円は東京市場が休場となる中、株式市場が落ち着きを取り戻し底堅い展開となっていることから146円台後半から円売りが先行、先週高値を上抜けるとストップオーダーも巻き込みNY朝方には一時148.22レベルの高値をつけました。しかしNY市場では米金利が低下したこと、イランによるイスラエル攻撃のリスクが高まっていることによる米株安の動きも重なり147円台前半へと1円ほど下げて引けました。

8月13日(火)
連休明けの東京市場では日経平均株価がじり高となる動きとともにドル円も上昇、欧州市場序盤には147.95レベルの高値をつけました。しかし前日つけた148円台では戻り売りのオーダーも目立ちその後はじり安の展開、NYの引けに向けて米金利低下の動きから146.59レベルまで押し、若干戻して引けました。

8月14日(水)
ドル円は東京前場に岸田首相が総裁選に不出馬とのニュースで株式市場が下落、ドル円も146.07レベルの安値をつけました。政局が不透明という反応でしたが、そこまで反応するほどのニュースとも思えずすぐに元の水準へ。その後は上下しながらも米国CPI発表直後に147.59レベルの高値から146.50レベルの安値と乱高下も見られましたが、引けにかけては147円台前半を落ち着きどころとしてもみあいのまま引けました。

8月15日(木)
ドル円はNY市場までは147円台前半での小動きを続けていましたが、強い経済指標に反応して米金利が上昇、為替市場はドル高で反応しました。昨夜の経済指標ではあまり動かないだろうと考えていた参加者も多く、思いのほか動いたことでストップも巻き込みながら149.40レベルへと上昇。そのまま高値圏での引けとなりました。

8月16日(金)
ドル円は前日NY引け間際に週間高値をつけましたが、テクニカルなターゲットを達成したことから反落、欧州市場以降は米金利低下の動きも手伝って下げを加速しました。NY市場では弱い経済指標も重なり147円台半ばへ水準を下げ、NY昼前に148円台前半へと戻す場面も見られましたが、改めて147円台半ばで安値をつけそのまま安値圏での引けとなりました。



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