148円を一時超えてから失速気味、147円を挟んだ持ち合い続く
〇ドル円、8/12夜に148.21まで高値伸ばし、8/5安値141.69からの上昇幅を6.52とする
〇NY連銀消費者期待インフレ率低下と米長期債利回り続落で148円台維持できず8/13朝147.01まで下げる
〇市場は9月利下げほぼ織り込み、0.25%に留まらず0.50%利下げもあり得るとみている
〇先週の週間足、141.69から週始値146.53まで5円近い長い「たくり足」つけ当面の売り一巡感示す
〇円高要因織り込んで新たな円安ドル高情勢に入れば、売り一巡からの反騰を数か月続ける可能性も
〇情勢悪化なら反騰後の下落再開から一段安か、140円台中心の持ち合いで方向感探る展開に留まることも
〇米長期債利回りは先週末から続落、米国主要株価指数はまちまちの動き
〇146.27上回るうちは上昇余地あり、148.21超えからは148円台後半への上昇を想定
〇146.27割れからは戻り一巡による下落期入りを疑い145円前後への下落を想定
【概況】
ドル円は7月31日の日銀追加利上げと8月1日早朝のFOMCで9月利下げ検討が明言されたこと、8月2日の米雇用統計が予想以上に弱かったことをきっかけとした世界連鎖株安により7月30日高値155.21円から8月5日安値141.69円まで大幅下落したが、世界連鎖株安が落ち着き、8月7日に日銀の内田副総裁が金融市場混乱期における追加利上げを否定したことで7日午後高値147.88円まで戻した。その後は決め手に欠く展開ながら8日午前に145.43円まで下げたところを買われて確りし、12日夜には148.21円まで高値を伸ばして8月5日安値からの上昇幅を6.52円としたが、NY連銀の7月消費者調査における1年先期待インフレ率の低下と米長期債利回りの続落により148円台を維持できず13日早朝に147.01円まで下げた。
8月12日にニューヨーク連銀が発表した7月消費者調査における期待インフレ率は1年先が2.97%となり3か月連続で低下して3年先も6月の2.93%から2.33%へ大幅に低下して1月以来の低水準となったが、これらは米国の9月利下げ判断に寄与するものと市場は受け止めた。
FRBのボウマン理事は8月10日に「インフレ率は目標の2%を不快なほど上回り上振れリスクがある」とする一方で過去数か月のインフレ鈍化については「歓迎すべきさらなる進展が見られた」と指摘した。利下げの可能性に含みを持たせつつ慎重姿勢だが、市場は9月利下げをほぼ織り込み、利下げが0.25%に留まらず0.50%利下げもあり得るとみている。
【週足の「たくり足」を活かせるか試される】
先週の週間足は安値141.69円から週始値146.53円まで5円に迫る長い下ヒゲを付けた。長大下ヒゲはいわゆる「たくり足」とされて当面の売り一巡感を示すものとされる。
2020年のパンデミックショック時には3月9日安値101.23円から同週始値104.20円まで2.97円の長大下ヒゲを付けてから3月24日高値111.71円へ反騰したもののその後は2021年1月6日安値102.56円まで下落基調が続いた。2019年1月3日安値104.82円から同週終値108.45円まで3.63円の長大下ヒゲを付けた時は2019年4月24日高値112.39円まで上昇が続いたが戻り一巡により2019年8月26日安値104.45円まで下落基調が続いている。
今回はそれらよりも大きな長大下ヒゲであり、円キャリー・トレードの7割が解消したとの見方もあるためひとまずは2020年3月9日からの反騰時並みに戻すことも考えられる。急落した時の円高要因をすべて織り込んだ上で新たな円安ドル高情勢に入れば売り一巡からの反騰を数か月続ける可能性もあるだろうが、円高ドル安を加速させる情勢悪化あれば反騰後の下落再開から一段安へ進むか、しばらく140円台中心の持ち合いで方向感を探る展開に留まる可能性もあると思われる。
長い下ヒゲによる「たくり足」は、まず翌週に下ヒゲ部分を潰す下落とならないことが大事であり、下ヒゲを潰すようなら「たくり足失敗」となり却って売り残り感で一段安へ進みかねない不安が増すものだ。144円を割り込む場合は下ヒゲの過半がつぶされるために「たくり足失敗」型の下落へ進みやすくなると注意する。
【米長期債利回りは先週末から続落、米株価指数は戻り一服】
8月12日の米長期債利回りは総じて低下した。
米雇用統計の悪化をきっかけとした世界連鎖株安による債券買い・利回り低下で10年債利回りは7月25日から8月5日まで8営業日連続低下となり5日に3.67%をつけ、4月25日の年初来ピークである4.74%以降の最低としたが、株安が落ち着いたことで6日から8日まで3連騰として4.02%まで戻した。9日は戻り一巡で前日比0.05%低下の3.94%で週を終えたが、週明けの12日は前日比0.03%低下の3.91%と続落した。
30年債利回りは8月5日に4.00%まで低下して4月25日の年初来ピークである4.85%以降の最低としたところから反騰入りして6日から8日までの3連騰で4.31%まで戻したが、9日は前日比0.06%低下の4.22%で週を終えて12日も前日比0.02%低下の4.20%と続落した。
政策金利動向に敏感な2年債利回りは8月5日に3.65%をつけて4月30日の年初来ピークである5.05%以降の最低としたところから反騰入りし、9日に一時4.08%まで続伸してから上げ幅を削ったものの前日比0.02%上昇の4.06%で週を終え、12日はNY連銀調査の期待インフレ率低下と今週の米CPI発表を控えて0.04%低下の4.02%となった。
一方で8月12日の米国主要株価指数はまちまちの動き。NYダウは8日に683.04ドル高と反騰してから9日の51.05ドル高と続伸して先週を終えていたが週明けの12日は140.53ドル安と反落した。7月31日に7月18日の史上最高値41376.00ドルに迫ったところから下落に転じて8月1日から5日にかけての3営業日で2000ドルを超える急落となり、その後は暴落商状が落ち着いて戻りを試しているものの8月5日の下落幅を解消したところに留まっている。
ナスダック総合指数は8日の464.21ポイント高から9日に85.28ポイント高と連騰し、週明けの12日も35.31ポイント高と小幅ながら3連騰した。7月11日の史上最高値18671.07から8月5日安値15708.54まで凡そ16%の下落率で2022年10月以降で最大の下落規模となり、その後の反騰で週足始値から終値への上昇規模もこの間で最大だが、先週の陽線による反騰幅を削り始める場合は天井形成による弱気相場入りの印象も強まりかねないと思われる。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は8月5日午後安値141.69円から7日午後高値147.88円まで戻してから10日早朝にかけては147円を挟んだ揉み合いで推移していたが、12日夜に148.21円を付けての間の高値を更新したため、持ち合い終点である9日深夜安値146.27円を起点とした上昇期に入ったと思われる。ただし148円台を維持できずに失速して上値も重いため、9日深夜安値割れを回避する内は14日から16日にかけての間への上昇余地ありとするが、9日深夜安値を割り込む場合は下落期入りとみて14日夜から16日深夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では8月12日夜への上昇で遅行スパンが好転して先行スパンも上抜いたが、その後の失速で遅行スパンは悪化しやすい位置にある。先行スパンからの転落を回避する内は遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンから転落する場合は下落期入りを疑い遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は8月12日夜に70ポイントへ到達してから50ポイント割れへ失速している。9日深夜の下落時は40ポイントを試してから反騰しているので40ポイント台を維持する内は55ポイント超えから上昇再開とするが、40ポイント割れから続落する場合は下落継続とみて20ポイント台への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8月9日深夜安値146.27円を下値支持線、12日夜高値148.21円を上値抵抗線とする。
(2)146.27円を上回るうちは上昇余地ありとし、148.21円超えからは148円台後半への上昇を想定する。149円手前は反落警戒とするが、147円を上回るか一時的に割り込んでも回復している場合は14日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)146.27円割れからは戻り一巡による下落期入りを疑い145円前後への下落を想定する。145円前後は買われやすいとみるが、146.27円を割り込んだ後も146.50円以下での推移なら14日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の予定】
8/13(火)
10:30 (豪) 4-6月期 賃金指数 前期比 (1-3月 0.8%)
10:30 (豪) 7月 NAB企業景況感指数 (6月 4)
15:00 (英) 6月 失業率・ILO方式 (5月 4.4%、予想 4.5%)
18:00 (独) 8月 ZEW景況感 (7月 41.8、予想 32.0)
21:30 (米) 7月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (6月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (6月 2.6%、予想 2.3%)
21:30 (米) 7月 コアPPI・食品エネルギー除く 前月比 (6月 0.4%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 コアPPI・食品エネルギー除く 前年同月比 (6月 3.0%、予想 2.7%)
26:15 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
8/14(水)
11:00 (NZ) ニュージーランド中銀 政策金利 (現行 5.50%)、12時から総裁会見
15:00 (英) 7月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (6月 0.1%、予想 -0.1%)
15:00 (英) 7月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (6月 2.0%、予想 2.3%)
15:00 (英) 7月 コアCPI 前年同月比 (6月 3.5%、予想 3.4%)
15:00 (英) 7月 RPI(小売物価指数) 前年同月比 (6月 2.9%、予想 3.3%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP改定値 前期比 (速報 0.3%、予想 0.3%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 0.6%,予想 0.6%)
18:00 (欧) 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 -0.6%、予想 0.5%)
18:00 (欧) 6月 鉱工業生産 前年同月比 (5月 -2.9%、予想 -2.8%)
21:30 (米) 7月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (6月 -0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (6月 3.0%、予想 3.0%)
21:30 (米) 7月 コアCPI・食品エネルギー除く 前月比 (6月 0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 コアCPI・食品エネルギー除く 前年同月比 (6月 3.3%、予想 3.2%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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