『リスクオフ一服でドル円の反発基調が続く見通し』
〇今週のドル円、日経平均大暴落に週明け早々141.69まで急落するも、週央にかけ高値147.90まで上昇
〇株価の下げ止まり、内田日銀副総裁のハト派発言、米指標の好調からの景気先行き懸念の後退等が背景
〇週末は146円台半ばで底堅い動き
〇ユーロドル、米長期金利急低下等に週明け1.1009の高値をつけるも、相場の巻き戻しに一時1.09割れ
〇ドル円、クライマックス・セリングを感じさせるチャート形状、株安・円高の流れに一服感も
〇ファンダメンタルズも日銀追加利上げ観測や米経済に対する過度な悲観論の後退がサポート
〇引き続き、ドル買い円売りトレンドの再開をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):144.50ー149.00、(EURUSD):1.0750−1.1050
今週のレビュー(8/5−8/9)
<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初146.51で寄り付いた後、(1)日経平均株価の大暴落(1987年10月のブラックマンデーを超える過去最大の下げ幅を記録)や、(2)上記1を背景としたリスク回避の円買い圧力(円キャリートレードの巻き戻し)、(3)米金利低下に伴うドル売り圧力(米経済のハードランディング懸念台頭→米FRBが緊急利下げや50bp以上の大幅利下げに追い込まれるのではないかとの思惑浮上)が重石となり、週明け早々に、週間安値141.69まで急落しました。
しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(4)急ピッチな下落に対する反動買いや、(5)米7月ISM非製造業景況指数(結果51.4、予想51.0)の市場予想を上回る結果、(6)シカゴ連銀グールズビー総裁による「7月の雇用統計はまだリセッションの可能性を示唆していない」との強気発言、(7)日経平均株価の急反発(リスク回避ムード後退)、(8)内田日銀副総裁による「当面、現在の水準で金融緩和をしっかりと続ける必要」「金融市場が不安定な状況で利上げをすることはない」「一定のペースで金利上げていかないとビハインド・ザ・カーブになるわけではない」「中立金利などの特定の金利水準を意識しているわけではない」とのハト派的な発言、(9)上記8を背景とした日銀の追加利上げ観測の大幅後退(円キャリートレードの再開期待)が支援材料となり、週央にかけて、週間高値147.90まで上昇しました。
その後も、(10)米新規失業保険申請件数(結果23.3万件、予想24.0万件)の良好な結果や、(11)上記10を背景とした米経済に対する過度な悲観論の後退、(12)米主要株価指数の堅調推移、(13)米金利上昇に伴うドル買い圧力が支えとなり、本稿執筆時点(日本時間8/10午前5時30分現在)においても、146.66前後での底堅い動きが続いております。尚、今週は日銀・財務省・金融庁による三者情報交換会談が実施された他、三村財務官より「為替は特定の水準ではなくボラティリティを見ている」「為替介入に関しては人が変わったから政策が変わるものではない」との発言が見られましたが、市場の反応は限られました。また、週後半にかけては、日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生し、南海トラフ地震への注意を呼びかける「南海トラフ地震臨時情報」が発表されましたが、ドル円相場への影響は限定的となっております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0922で寄り付いた後、(1)米経済に対する過度な悲観論の台頭や、(2)上記1を背景とした米長期金利の急低下(米FRBによる早期大幅利下げ観測)、(3)ユーロ圏7月総合PMI(結果50.2、予想50.1)の市場予想を上回る結果、(4)ユーロ圏6月生産者物価指数(結果▲3.2%、予想▲3.3%)の市場予想を上回る結果が支援材料となり、週明け早々に、週間高値1.1009(1/2以来、約7カ月ぶり高値圏)まで上昇しました。
しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(5)急ピッチな上昇に対する反動売りや、(6)米7月ISM非製造業景況指数の市場予想を上回る結果、(7)ユーロ圏6月小売売上高(結果▲0.3%、予想+0.1%)の市場予想を下回る結果、(8)中東情勢緊迫化に端を発した地政学的リスクの再燃(イランがイスラエルへの報復攻撃を警告)、(9)フィンランド中銀レーン総裁による「インフレが鈍化傾向にある限り利下げは妥当」とのハト派的な発言、(10)米新規失業保険申請件数の良好な結果(米経済に対する過度な悲観論の後退)、(11)米金利上昇に伴うドル買い圧力が重石となり、週後半にかけて、週間安値1.0882まで反落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間8/10午前5時30分現在)では、1.0917前後で推移しております。
来週の見通し(8/12−8/16)
<ドル円相場>
ドル円は週明け早々に一時141.69まで下げ足を速めるも、週央以降は一転、146.00ー148.00エリアに回復するなど、クライマックス・セリングを感じさせるチャート形状となっております。日足ベースで「弱気のバンドウォーク」が終了した他、下位足でも売りシグナルが消失するなど、先週来強まった「株安・円高」の流れに一服感が見えつつあります。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)日銀による追加利上げ観測の後退(先週は日銀金融政策決定会合で追加利上げが実施された他、植田日銀総裁からも予想外にタカ派的な見解が示されましたが、今週は内田日銀副総裁より「当面、現在の水準で金融緩和をしっかりと続ける必要」「金融市場が不安定な状況で利上げをすることはない」との火消し発言が見られるなど、市場で高まる過度な利上げ織り込みを牽制→これを受けてほぼ100%織り込まれていた年内追加利上げ観測が来年後半以降に後ずれ→円売り再開)や、(2)米FRBによる大幅利下げ観測の後退(先週発表された米雇用統計が不冴な結果となったことで、米経済のハードランディング懸念が台頭し、次回9月FOMCでの50bp利下げが織り込まれましたが、今週発表された米7月ISM非製造業景況指数や、米新規失業保険申請件数が良好な結果を示したことで、米経済に対する過度な悲観論が後退→米FRBによる大幅利下げ観測が後退する中、米金利上昇→米ドル買いの流れが再開)、
(3)上記1、2を背景とした円キャリートレードの再開期待(日米金利差は当面縮まらないとの見方からドル買い・円売りが再開する見通し)、(4)株式市場の持ち直し(リスク回避ムード後退)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。来週発表される米国の主要経済指標(米7月消費者物価指数や、米7月小売売上高)は弱い内容が既に織り込まれているため、予想に反して市場予想を上回った場合のポジティブサプライズ(米金利上昇→米ドル買い)に警戒が必要でしょう。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル買い・円売りトレンドの再開をメインシナリオとして予想いたします(株式市場や米金利の動向に振らされつつも、ドル買い・円売りと、株高・米金利高が並走する展開を想定)。尚、来週は上記(米7月消費者物価指数、米7月小売売上高)以外にも、米7月生産者物価指数や、米8月ニューヨーク連銀景況指数、米8月フィラデルフィア連銀景況指数、米新規失業保険申請件数、米7月鉱工業生産、米7月住宅着工件数、米8月ミシガン大消費者信頼感指数、本邦4ー6月期GDP速報値、米当局者発言(アトランタ連銀ボスティック総裁、セントルイス連銀ムサレム総裁、フィラデルフィア連銀ハーカー総裁、シカゴ連銀グールズビー総裁など)など、重要イベントが複数予定されております。
来週の予想レンジ(USDJPY):144.50ー149.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は4/16に記録した安値1.0601をボトムに切り返すと、今週前半にかけて、約7ヵ月ぶり高値となる1.1009まで上昇しました。日足ローソク足が主要テクニカルポイントの上側に位置していることや、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの好転を期待させるチャート形状となりつつあります。
但し、ファンダメンタルズ的に見ると、(1)欧州経済の先行き不透明感や、(2)欧州域内の財政悪化懸念(欧州委員会がフランスやイタリアを含む7カ国に「過剰財政赤字手続き」開始を6/19に勧告し、9/20までに構造改革案を要求している他、フランスで財政拡張を掲げる左派連合が勝利したことで、フランスの財政健全化期待も後退)、(3)欧米金利差に着目した構造的なユーロ売り・ドル買い圧力(ECBは米FRBに先行して利下げサイクルに突入しているため、金融政策面でユーロドルに下落圧力が加わり易い)、(4)中東情勢緊迫化に伴う地政学的リスクの高まりなど、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。来週予定されているドイツ8月ZEW景況指数や、ユーロ圏6月鉱工業生産が市場予想を下回る場合には、上記1で示して欧州経済の先行き不安を通じて、ユーロドルにもう一段強い売り圧力が加わるシナリオが想定されるため、当方では引き続き、ユーロドル相場の一巡後の反落をメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0750−1.1050
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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